最低賃金は毎年上がるのに、あなたの時給が変わらないなら「実質賃下げ」です
子育てや介護と両立するためにパート・非常勤で働く看護師さんから、「最低賃金が上がったというニュースは毎年見るのに、自分の時給は何年も変わらない」という声をよく聞きます。これは気のせいではなく、数字で確かめられる問題です。
現在の地域別最低賃金は全国加重平均1,121円(令和7年度改定・前年から66円増)で、全47都道府県で初めて1,000円を超えました(Source: 厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧)。一方、パート(短時間労働者)の看護師の平均時給は1,946円です(Source: 令和6年賃金構造基本統計調査)。最低賃金が毎年大きく上がる局面では、最低賃金に近い求人の時給は自動的に押し上げられる一方、もともと高めの時給は据え置かれやすい——つまり、あなたの時給と最低賃金の「差」が年々縮んでいるなら、相対的な価値は下がり続けていることになります。この記事では、その点検方法と、2026年度の引き上げ審議の見通しを整理します。
この記事でわかること
この記事の対象:パート・非常勤・扶養の範囲で働く看護師さん、准看護師さん、看護助手として働く方です。
読むと判断できること:自分の時給が地域と職種の相場に対して妥当か、最低賃金の引き上げが自分の働き方にどう影響するかです。
今の職場で確認すること:自分の時給、直近3年の改定の有無、昇給の仕組みの有無です。
次にできること:時給の点検結果をもとにした、職場との話し合いと求人比較の手順を案内します。
判断材料になる一次情報
まず現在地:パート看護職の時給相場と最低賃金
公的統計(令和6年賃金構造基本統計調査・短時間労働者・10人以上規模)による平均時給と、最低賃金との関係を整理します。
| 職種 | 平均時給(所定内) | 全国平均の最低賃金1,121円との差 |
|---|
| 看護師(短時間) | 1,946円 | +825円 |
| 准看護師(短時間) | 1,688円 | +567円 |
| 看護助手(短時間) | 1,258円 | +137円 |
| (参考)短時間労働者全体 | 1,476円 | +355円 |
(Source: 令和6年賃金構造基本統計調査)
この表から読み取れることが2つあります。第一に、看護師資格のあるパートの時給は最低賃金よりかなり高い位置にあり、最低賃金の引き上げが直接時給を押し上げる効果は限定的です。だからこそ「職場が時給を見直す仕組みがあるか」が重要になります。第二に、看護助手の平均時給は最低賃金との差が137円しかありません。最低賃金が今年も大きく上がれば、地域によっては看護助手の求人時給が法律上の引き上げを迫られる水準で、看護補助者の確保がさらに難しくなり、結果として看護師の業務負担に跳ね返る可能性もあります。
2026年度の引き上げはどうなる?:6月諮問・7月答申の見込み
2026年度(令和8年度)の最低賃金審議は2026年2月27日に始まっており、例年どおりなら6月頃に厚生労働大臣が目安を諮問し、7月頃に目安答申、その後の都道府県ごとの審議を経て10月頃から順次発効します(Source: 中央最低賃金審議会)。金額はまだ決まっていないため、本記事では断定しません。
背景として、政府は骨太方針2025で「2020年代に全国加重平均1,500円」という目標を掲げており、引き上げ圧力の強い状態が続いています。また今年は、都道府県のランク区分の見直しや、昨年度ばらついた発効日のあり方も論点になっています。パートで働く側として押さえておくべきは、「今年も相応の引き上げが審議される」「発効は秋」という2点です。答申が出たタイミングで、自分の県の新しい額と自分の時給の差を計算し直してください。
自分の時給を点検する3ステップ
- ステップ1:「最低賃金からの距離」を計算する。自分の時給 −(自分の県の最低賃金)を出し、3年前の同じ計算と比べます。差が縮んでいるなら、昇給が物価・賃金水準に追いついていないサインです。
- ステップ2:職種・地域の相場と比べる。上の表の全国平均に加え、求人サイトで自分の地域・職種(外来・健診・施設・訪問など)の募集時給を5件ほど見れば、地域相場はつかめます。
- ステップ3:職場の昇給の仕組みを確認する。パートにも昇給規定があるか、何年も「採用時の時給のまま」になっていないかを雇用契約書・就業規則で確認します。なお、正社員と仕事内容が同じなのに手当や福利厚生に不合理な差がある場合は、パートタイム・有期雇用労働法の「不合理な待遇差の禁止」に関わる問題で、説明を求めることができます。
点検の結果、相場より明らかに低ければ、契約更新のタイミングが交渉の機会です。「最低賃金が上がり、近隣の募集時給も上がっています。私の時給の見直しをお願いできますか」という事実ベースの伝え方が現実的です。フルタイム換算でいくらに相当するのか、年収ベースの妥当性も含めて確かめたい場合は給料コンパスの適正年収診断が使えます(働き方の条件を分けて整理するには年収診断も便利です)。
扶養の範囲・働き方の壁との関係
時給が上がると、同じ労働時間でも年収が増え、扶養や社会保険の基準との関係が変わることがあります。いわゆる「年収の壁」は税金と社会保険で基準が別々にあり、制度改正も続いている分野なので、具体的な金額の判断は、勤務先の労務担当・市区町村・年金事務所の最新情報で確認してください。重要なのは、壁を理由に時給の低い職場に留まる必要はないことです。時給が高い職場に移って労働時間を調整するほうが、同じ年収でも自分の時間を多く残せます。
職場を変えると解決しやすいこと
パートの時給は職場ごとの設定の差が大きく、同じ地域・同じ仕事内容でも数百円違うことは珍しくありません。昇給の仕組みがない職場で交渉を続けるより、時給設定の高い職場(健診・訪問看護・施設など職種によっても差があります)に移るほうが早いケースは多くあります。求人の比較は求人を探すから始められます。
職場を変えても解決しにくいこと
地域全体の賃金水準と最低賃金は、個人では変えられません。また、時給だけで選ぶと、シフトの融通・急な休みへの理解・通勤時間といった、パートで働く本来の目的を損なうことがあります。時給は「最低賃金からの距離」と「地域相場」で適正を確かめつつ、両立条件と合わせて総合判断してください。給与とお金の考え方全体は給料・お金の完全ガイドで整理しています。
まとめ
最低賃金は全国平均1,121円まで上がり、2026年度も6月諮問・7月答申の流れでさらなる引き上げが審議されます。パート看護師の平均時給1,946円・准看護師1,688円・看護助手1,258円という公的統計を物差しに、「最低賃金からの距離」が縮んでいないか、地域相場とずれていないかを点検してください。差が縮み続けているなら、契約更新時の交渉か、時給設定の高い職場への移動が選択肢です。年収ベースの妥当性は給料コンパスで確かめられます。
よくある質問
最低賃金が上がったら、私の時給も自動的に上がりますか?
自分の時給が新しい最低賃金を下回る場合のみ、法律上自動的に引き上げが必要です。それ以上の時給の人には自動の引き上げ義務はありません。だからこそ、最低賃金より高い時給帯で働く看護師は、職場の昇給の仕組みと自分からの交渉が大切になります。
2026年10月にいくら上がるかは決まっていますか?
まだ決まっていません。例年6月頃に国の審議会へ諮問され、7月頃に引き上げ額の目安が答申され、そのあと都道府県ごとに決まります(Source: 中央最低賃金審議会)。答申が出たら、自分の県の額を厚労省の一覧で確認してください。
パートにも交通費や手当は出ますか?
パートタイム・有期雇用労働法により、正社員との間で不合理な待遇差を設けることは禁止されており、通勤手当などはその代表例として説明が求められる項目です。支給条件は雇用契約書と就業規則で確認し、不合理と感じる差があれば説明を求めることができます。
夜勤バイト(夜勤専従パート)の相場はどう見ればいいですか?
夜勤は時給ではなく「1回いくら」の設定が多く、深夜割増(22時〜5時は25%以上)を含むため、時給換算して比較するのが確実です。1回の金額÷実労働時間で時給を出し、日勤の時給×1.25と比べてみてください。夜勤の負担と報酬の考え方は夜勤・シフトの完全ガイドで詳しく扱っています。
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※本記事は2026年6月12日時点の公表資料に基づいています。最低賃金の最新額・扶養や社会保険の基準は、厚生労働省・市区町村・年金事務所の最新情報でご確認ください。


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