「賃上げのニュース」と「自分の手取り」は分けて見る
2026年6月時点で、医療機関や訪問看護ステーションに向けた賃上げ支援、診療報酬改定でのベースアップ評価料、看護職の処遇改善は大きなテーマになっています。
一方で、現場で働く看護師さんにとって一番大事なのは「制度があるか」ではなく、「自分の給与明細にどう出るか」です。ニュースでは賃上げと聞いても、基本給が上がるのか、手当で出るのか、一時金なのか、夜勤手当込みで見かけ上増えているだけなのかで、生活への影響は変わります。
この記事では、2026年6月24日時点で確認できる一次情報をもとに、看護師の給料が本当に上がるのか、なぜ副業・複業に関心が集まっているのか、副業を考える前に何を確認すべきかを整理します。対象は、病院、クリニック、訪問看護、介護施設などで働きながら「給料を上げたい」「夜勤だけに頼る働き方を変えたい」と感じている看護師さんです。
既存の給与明細で賃上げ支援を見る記事では制度と給与明細の確認に絞っています。この記事では、そこから一歩進めて、夜勤負担、副業・複業、転職や資格まで含めた収入アップの選択肢を扱います。
判断材料になる一次情報
この記事は、次の公開情報をもとにしています。
この記事は、個別の給与額、副業可否、労務判断を断定するものではありません。実際の支給額、就業規則、副業・兼業の扱いは勤務先ごとに異なるため、給与明細、雇用契約書、就業規則、職場説明を確認してください。
2026年6月、看護師の賃上げは制度上どう進んでいるか
厚生労働省の賃上げ・物価上昇支援事業では、病院に対して「使用許可病床数×84,000円」の病院賃上げ支援事業が示されています。対象は、令和8年2月1日時点でベースアップ評価料を届け出ている病院です。
診療所等賃上げ支援事業では、有床診療所、無床診療所、薬局、訪問看護ステーションも対象に含まれます。訪問看護ステーションは1施設228,000円、無床診療所は1施設150,000円など、病院以外にも関係する支援が示されています。
日本看護協会は、令和8年度診療報酬改定について、令和7年度以前から継続的な賃上げを実施している医療機関・訪問看護ステーションが一段高く評価される仕組みに触れています。つまり、病院勤務だけでなく、訪問看護や診療所で働く看護師さんにも関係する話です。
ただし、ここで注意したいのは、支援の単位が「施設」や「病床」であり、看護師1人あたりに自動で同じ額が支給される仕組みではないことです。勤務先がどの制度を使い、誰に、いつ、どの給与項目で反映するかを確認する必要があります。
それでも「給料が上がった実感」が出にくい理由
賃上げ支援があっても、看護師さんが「生活が楽になった」と感じにくい理由は複数あります。
| 見えにくい理由 | 給与明細で見るところ |
|---|
| 基本給ではなく手当で出る | 基本給、処遇改善手当、調整手当 |
| 一時金で終わる | 支給月、支給条件、継続有無 |
| 社会保険料や税控除で手取り差が小さい | 総支給額、控除額、差引支給額 |
| 夜勤手当込みで増えたように見える | 夜勤回数、夜勤単価、基本給 |
| 賞与に反映されない | 賞与算定基礎、基本給連動か |
| 非常勤・時短・夜勤専従で扱いが違う | 雇用形態別の支給条件 |
日本看護協会の協会ニュースでは、2026年度診療報酬改定率3.09%のうち1.7%が賃上げ分として確保された点を評価しつつ、40代後半では夜勤手当を含めても全産業平均と月額約9.5万円の差があると指摘しています。
これは「制度が進んでいない」というより、制度上の賃上げと、長年の賃金格差、夜勤負担、物価上昇、手取りの実感が別問題だということです。だからこそ、給与明細では「総額が少し増えたか」だけでなく、「基本給が増えたか」「賞与に効くか」「夜勤依存が強まっていないか」を見ます。
夜勤手当は収入を支えるが、続けられる条件も見る
看護師の収入を考える時、夜勤手当は大きな要素です。ただし、夜勤で収入を維持している状態と、夜勤を健康的に続けられる状態は同じではありません。
日本看護協会の「2025年 看護職員実態調査」では、夜勤中の実際の休憩時間・仮眠時間が規程より短いという回答が多いことが示されています。また、夜勤を担い続けるための条件として、納得感のある夜勤手当、夜勤明け翌日の休日確保、夜勤中の休憩・仮眠の確保が上位に挙げられています。
給料を考える時は、夜勤1回の単価だけでなく、次の5点をセットで確認してください。
| 確認項目 | 見る理由 |
|---|
| 夜勤1回の手当 | 収入への直接影響が大きい |
| 月の夜勤回数 | 収入と疲労の両方に影響する |
| 仮眠・休憩の実態 | 医療安全と体調維持に関わる |
| 明け翌日の休み | 回復時間が確保されるか |
| 夜勤を減らした時の年収 | 夜勤依存度を把握できる |
「夜勤を増やせば稼げる」は事実でもありますが、休憩が取れない、明けで残業が続く、家庭や体調に影響が出ているなら、長期的には続けにくくなります。夜勤がつらい時の条件チェックも合わせて確認し、収入と体調を分けて見てください。
看護師の副業・複業に関心が集まる理由
日本看護協会の「2025年 看護職員実態調査」では、今後、複数の仕事を持つことへの興味について、36.9%が「ある」と回答し、「ない」の29.2%を上回りました。
この数字は、単に「副業で稼ぎたい人が増えた」という話だけではありません。背景には、次のような不安があります。
- 基本給がなかなか上がらない
- 夜勤を減らすと収入が落ちる
- 物価上昇で手取りの余裕が減っている
- 今の診療科だけでキャリアを続ける不安がある
- 訪問看護、健診、教育、医療ライターなど専門性を別の形で使いたい
- 将来、日勤中心や在宅寄りの働き方に移りたい
看護師の副業・複業は、単なるお小遣い稼ぎではなく、夜勤依存から少し離れる、専門性を広げる、次のキャリアを試す、という意味を持つ場合があります。
ただし、医療職の副業は「できるか」より先に「安全にできるか」を確認する必要があります。
副業を始める前に必ず確認すること
看護師の副業で大切なのは、金額よりも安全性です。特に、病院勤務を続けながら単発勤務、訪問看護スポット、健診、イベント救護、医療記事執筆、オンライン相談などを考える場合は、次を確認してください。
| 確認すること | なぜ必要か |
|---|
| 就業規則・兼業規程 | 副業禁止、届出制、許可制の違いを見る |
| 労働時間の通算 | 本業と副業の労働時間が過重にならないか |
| 睡眠・休息 | 夜勤明け副業や連続勤務は医療安全に関わる |
| 守秘義務 | 患者情報、職場情報、症例情報を出さない |
| 医療安全 | 疲労時の判断低下、単発現場での責任範囲を確認 |
| オンライン相談の範囲 | 診断・治療指示に踏み込まない |
| 住民税・確定申告 | 税務上の扱いを自分で確認する |
特に注意したいのは、夜勤明けや休日に副業を詰め込みすぎることです。短期的には収入が増えても、睡眠不足で本業の判断力が落ちる、体調を崩す、インシデントリスクが上がるなら本末転倒です。
副業を始めるなら、まず「月いくら増やしたいか」ではなく、「月何時間までなら安全に増やせるか」から考えてください。
収入を増やす3つの選択肢
給料が上がらないと感じた時、すぐに副業か転職の二択にする必要はありません。現実的には、次の3つを順番に整理すると判断しやすくなります。
1. 今の職場で賃上げ・手当を確認する
まずは、給与明細と職場説明を見ます。
- ベースアップ評価料や賃上げ支援の反映はあるか
- 基本給、処遇改善手当、調整手当のどれで出ているか
- 賞与や退職金、残業代単価に影響するか
- 夜勤手当の単価や回数は変わったか
- 非常勤、時短、夜勤専従も対象か
説明が曖昧な場合は、怒りをぶつけるより「給与明細のどの項目で確認すればよいですか」と聞く方が具体的です。
2. 副業・スポット勤務で月数万円を作る
副業が認められる職場で、体調に無理がないなら、健診、ワクチン、イベント救護、訪問看護スポット、医療記事執筆、教育・講座などが選択肢になります。
ただし、看護師免許を使う副業ほど責任も大きくなります。単発勤務では、現場の指揮系統、記録方法、緊急時対応、賠償責任、業務範囲を事前に確認してください。在宅副業でも、医療監修やオンライン相談では守秘義務と責任範囲が重要です。
3. 資格・転職・訪問看護・美容・産業保健で年収を上げる
副業よりも、本業の年収や働き方を変えた方がよい場合もあります。たとえば、夜勤回数が多いのに基本給が低い、休憩が取れない、賞与が伸びない、昇給説明がない職場では、収入アップの余地を外に探す意味があります。
比較する時は、年収だけでなく、基本給、賞与、夜勤回数、オンコール、残業、年間休日、教育体制、通勤時間を同じ表に並べてください。看護師の年収相場の見方と給与診断を使うと、夜勤込み年収と夜勤を減らした年収を分けて整理できます。
今日から確認するチェックリスト
| 今日見るもの | 確認すること |
|---|
| 直近の給与明細 | 基本給、手当、控除、夜勤回数 |
| 前年同月の給与明細 | 賃上げが一時的か継続的か |
| 就業規則 | 副業禁止、届出制、許可制 |
| 勤務表 | 夜勤明け、休息、連続勤務 |
| 求人票 | 基本給、賞与、夜勤手当、固定残業代 |
| 体調メモ | 睡眠、疲労、頭痛、集中力低下 |
この6つを見れば、「賃上げを待つ」「副業を少し試す」「夜勤を減らす」「転職を比較する」のどれが現実的か見えやすくなります。
まとめ
2026年6月時点で、看護師の賃上げ支援やベースアップ評価料は進んでいます。ただし、それが自分の手取りや基本給にどう届くかは職場ごとに違います。
見るべきなのは、制度名ではなく給与明細です。基本給、処遇改善手当、夜勤手当、賞与算定、控除、支給開始月を分けて確認してください。
副業・複業への関心が高まるのは自然な流れですが、看護師の副業は安全確認が先です。就業規則、労働時間、睡眠、守秘義務、医療安全、責任範囲を確認したうえで、今の職場での賃上げ確認、副業、資格・転職のどれが合うかを選びましょう。
今の条件が負担に見合っているか整理したい場合は、給与診断で基本給、夜勤、残業、賞与を分けて確認できます。転職を決めるためではなく、まずは「今の働き方で何が収入を支えているか」を見える化してください。
よくある質問
賃上げ支援があれば、看護師の給料は必ず上がりますか?
必ずとはいえません。制度は医療機関や事業所に対する支援であり、看護師個人への反映方法は勤務先によって異なります。基本給、手当、一時金、賞与算定、支給開始月を確認してください。
手取りが少し増えていれば安心ですか?
手取りだけでは判断できません。基本給が増えたのか、夜勤回数が増えただけなのか、処遇改善手当が一時的に出ているのかで意味が変わります。前年同月の給与明細と比べることが大切です。
看護師の副業は始めても大丈夫ですか?
勤務先の就業規則や兼業規程によります。許可制・届出制の場合もあります。労働時間、睡眠、守秘義務、医療安全、オンライン相談の責任範囲を確認してから始めてください。
夜勤を減らすと収入が落ちるのが不安です。
まず夜勤手当を抜いた年収を出してください。そのうえで、副業、資格、訪問看護、美容、産業保健、日勤高めの職場などを比較します。夜勤を減らす判断は、収入だけでなく体調と休息も含めて考える必要があります。
参考資料