「訪問看護に移ると、給料は本当に上がるの?」という方へ
病院の賃上げニュースを見て、「訪問看護で働く自分には関係ないのかな」「在宅に移ると年収が下がるのでは」と感じている看護師さんは多いと思います。やりがいや働き方の自由度に惹かれつつも、家計を考えると踏み切れない、という方もいるはずです。
この記事は、訪問看護への転職を考えている看護師さん、いま訪問看護ステーションで働いている看護師さんに向けて、2026年の賃上げ支援が訪問看護にどう関係するのか、給料に反映される前提は何か、事業所選びで何を確認すればよいかを、働き方の目線で整理するものです。読み終えたあとに、いまの職場で確認できること、転職紹介サービスに聞ける質問が具体的に見えるようにしています。
最初にひとつだけ押さえておきたいのは、「制度が見直される」ことと「自分の月収が上がる」ことは同じではない、という点です。原資が事業所に入ったあと、誰の基本給等にどう配分されるかは、事業所ごとの届け出と判断で決まります。だからこそ、ニュースの見出しではなく、自分の給与明細と勤務先の運用で確認することが大切になります。
この記事でわかること
- 2026年の賃上げ支援が訪問看護ステーションにどう関係するのか
- 「訪問看護ベースアップ評価料」と「介護報酬の処遇改善加算」の違い
- 給料に反映されるには、どんな前提が必要なのか
- 給与明細・求人票で見る、訪問看護ならではの確認点(オンコール・件数・移動・記録)
- いまの事業所で確認できること/訪問看護に移って変わること・変わらないこと
判断材料になる一次情報
この記事は、以下の公的な一次情報をもとに整理しています。具体的な要件や算定ルールは、施設基準告示・通知と各都道府県の地方厚生局通知に従ってください。
「賃上げ支援の対象になる」と「自分の月収が上がる」は同じではありません。原資が事業所に入ったあと、誰の基本給等にどう配分されるかは、事業所ごとの届け出と判断で決まります。
訪問看護ステーションも賃上げ支援の対象に含まれる
「賃上げは病院の話」と思われがちですが、訪問看護ステーションも支援の対象に含まれます。厚生労働省の診療所等賃上げ支援事業では、令和8年3月1日時点で訪問看護ベースアップ評価料を届け出ている訪問看護ステーションに対し、1施設あたり228,000円が示されています(Source: 厚生労働省「医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業について」)。
ここで注意したいのは、これは施設に対する支援額であって、看護師1人にそのまま同額が支給されるわけではないという点です。228,000円という数字を「自分の給料がいくら上がる」と読み替えることはできません。施設に入った原資が、賃金規程に沿ってどの職員のどの項目に配分されるかは、事業所ごとに異なります。また、この支援を受ける前提として「令和8年3月1日時点でベースアップ評価料を届け出ている」という条件が付いている点も、勤務先で確認したいポイントです。
ベースアップ評価料と処遇改善加算は別の制度
訪問看護の給料を考えるうえで、もう一つ整理しておきたいのが、保険の入口が二つあることです。訪問看護ステーションは、利用者が医療保険か介護保険かで算定する制度が変わり、賃金改善の原資もそれぞれ別ルートになります。
- 医療保険(診療報酬)で算定する訪問看護:賃金改善の原資は「訪問看護ベースアップ評価料Ⅰ・Ⅱ」で扱われます。令和6年度改定で導入された仕組みで、令和8年度改定でも見直しの対象です(Source: 公益社団法人日本看護協会「令和8年度診療報酬改定」)。
- 介護保険(介護報酬)で算定する訪問看護:令和8年度の臨時介護報酬改定で「介護職員等処遇改善加算」が新設され、新たに対象となりました(令和8年6月施行)。これはベースアップ評価料とは別制度・別の届出です(Source: 公益財団法人日本訪問看護財団「令和8年度臨時介護報酬改定(処遇改善加算)について」)。
つまり「処遇改善加算は訪問看護には関係ない」のではなく、医療保険側はベースアップ評価料、介護保険側は処遇改善加算という、別々のルートが用意されています。多くの訪問看護ステーションは医療保険・介護保険の両方の利用者を持つため、実際には両方が関わってきます。なお、ベースアップ評価料については、令和6年3月時点と比較した賃上げ水準を基準とする評価で、令和7年度以前から継続的に賃上げを実施してきた医療機関・訪問看護ステーションには一段高い評価を適用する見直しが行われ、令和8年6月の算定に向けては令和8年5月中の届出が必要とされています(Source: 公益社団法人日本看護協会「令和8年度診療報酬改定」)。
評価料の中身そのものをもう少し詳しく知りたい方は、訪問看護ベースアップ評価料と事業所選びを整理した記事もあわせて読むと、転職判断の比較材料になります。
給料に反映されるには、どんな前提があるのか
支援や評価料があっても、それがそのまま自分の月収に乗るとは限りません。給料への反映には、次のような前提が乗ります。
- 勤務先が支援事業や評価料を届け出ていること
- 算定要件どおりに対象職員の基本給等を引き上げていること(基本給または決まって毎月支払われる手当)
- 賞与・オンコール手当・移動手当への波及は、事業所ごとに異なること
- 利用者数・訪問件数による収入構造により、原資の規模が事業所ごとに違うこと
つまり「2026年になれば訪問看護師は皆上がる」ではなく、「届け出て算定し、対象職員の基本給等に原資を乗せる事業所で働く看護師は、反映されうる」というのが正確な理解です。具体的な金額は、勤務先に確認する必要があります。給与明細のどこに反映されたかを自分で確認したい方は、給与明細で賃上げ支援の反映を確認する記事が手がかりになります。
訪問看護ならではの給与項目を分けて見る
訪問看護は、病院とは給与の構造が違います。月給が高く見えても、オンコール込み・件数込み・管理者込みの場合があります。病院と比較するときは、項目を分けて確認しましょう。
| 項目 | 確認すること |
|---|
| 基本給 | ベースアップ・支援が反映されたか |
| 件数手当 | 訪問件数で変動しすぎないか |
| オンコール手当 | 待機と出動を分けて支給しているか |
| 緊急訪問手当 | 夜間・休日の単価はいくらか |
| 記録時間 | 勤務時間に含まれるか |
| 移動時間 | 労働時間として扱われるか |
| 賞与 | 基本給連動か、一時金で吸収していないか |
比較するときは、「オンコールなしの年収」と「オンコール込みの年収」を分けて見ると、実態に近い判断ができます。年収例の数字だけで決めると、賞与・手当の波及のばらつきを見落としやすくなります。
いまの職場で確認できること
すでに訪問看護で働いている看護師さんは、転職を考える前に、いまの事業所で確認・相談できることがあります。
- 賃上げ支援・訪問看護ベースアップ評価料の届け出状況と、対象職員の範囲
- 2026年の賃金改定スケジュールの社内告知があるか
- 基本給・件数手当・オンコール手当の内訳の説明
- オンコールは月何回で、出動実績はどのくらいか
- 記録時間・移動時間は勤務時間に含まれるか
- 非常勤・時短スタッフも処遇改善の対象か
ベースアップ評価料や賃上げ支援は、本来、職員一人ひとりの賃金改善に配分される前提の仕組みです。給与明細・賃金規程・社内告知で根拠を確認し、不明点を管理者や事務担当に質問することと、信頼関係を壊すことは別物として捉えて構いません。
「働き方を変える」で解決しやすいこと・しにくいこと
訪問看護への転職や、事業所の移動を考えるなら、何が変わって何が変わらないかを分けて考えると、後悔の少ない判断につながります。
場所を変えると解決しやすいこと
- 評価料・支援を届け出て算定する事業所への移動による、基本給等の底上げ
- 賃金規程や手当ルールが文書で整っている法人で働く安心感
- オンコール頻度・訪問件数など、生活リズムに直結する条件の改善
- 在宅未経験からの段階的な教育・同行訪問を受けられる事業所への移動
場所を変えても解決しにくいこと
- 訪問看護全体の業務量や、少人数チームという構造そのもの
- オンコールがある以上、完全に呼ばれない生活はつくれないこと
- 「年収例」だけを見て選んだときの、賞与・手当の波及のばらつき
- 「いまがつらいから」という理由だけで決めたときに、移った先で別の不満が出やすいこと
転職すれば必ず給料が上がる、とは言えません。上がるかどうかは、移った先の事業所が賃金改善に前向きで、基本給等にきちんと反映する運用かどうかで決まります。
まずは、いまの給料水準を整理してみる
「訪問看護に興味はあるけど踏み切れない」「いまの事業所、本当に上がるのか不安」という気持ちは、職場では聞きにくいものです。判断の前に、まず自分の年収が地域・経験年数の中でどのあたりかを把握しておくと、求人票の数字を冷静に比べられます。
匿名で使える看護師の年収診断(給料コンパス)で、いまの給与水準を整理してみてください。現状の立ち位置がわかると、「訪問看護に移ると上がるのか・下がるのか」を、感覚ではなく数字で考えられるようになります。
求人票だけではわからない部分を、確認材料にする
訪問看護で長く働けるかどうかは、やりがいだけでなく、賃金改善に前向きな運営かどうかでも決まります。評価料や支援を届け出ない、賃金規程が口頭運用、オンコールの扱いが曖昧、という事業所は、求人票の「年収例」からは見分けがつきません。
いますぐ転職を決めなくても、ほかの事業所の体制を知っておくことには意味があります。レバウェル看護のような看護師専門の転職紹介サービスでは、求人票だけではわからない次のような点を、事業所に確認して教えてもらえます。
- 賃上げ支援・訪問看護ベースアップ評価料の届け出状況と、基本給等への反映方法
- オンコール体制と、1日の訪問件数・移動範囲の実態
- 看護師の人数配置と、夜間・緊急時のバックアップ
- 在宅未経験からの教育・同行訪問の実績
まとめ:確認の3ステップ
- いま訪問看護で働いているなら、賃上げ支援・評価料の届け出状況と、基本給等への反映を事業所に確認する
- 転職を検討するなら、求人票の「年収例」だけでなく、評価料・賃金規程・オンコール体制・移動/記録時間の扱いを含めて事業所を比較する
- いずれの場合も、「オンコール込みか・なしか」を分け、基本給・賞与・手当の構造で見る
訪問看護で長く働くかどうかは、やりがいと処遇の両方で決まります。賃上げのニュースを、自分の給与明細と働き方の話に翻訳していきましょう。
よくある質問
2026年から、訪問看護師の給料は必ず上がるのですか?
必ず上がるわけではありません。訪問看護ステーションは賃上げ支援や訪問看護ベースアップ評価料の対象になり得ますが、原資が職員の基本給等に届くには、勤務先が届け出て算定し、対象職員の基本給等を引き上げる必要があります(Source: 厚生労働省「医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業について」)。届け出ていない事業所では反映されません。
賃上げ支援の「1施設228,000円」が、そのまま給料に出るのですか?
いいえ。228,000円は令和8年3月1日時点でベースアップ評価料を届け出ている訪問看護ステーションに対する施設への支援額で、看護師1人への支給額ではありません(Source: 厚生労働省「医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業について」)。施設に入った原資が、誰のどの項目に配分されるかは事業所ごとに異なります。
ベースアップ評価料と処遇改善加算は何が違うのですか?
ベースアップ評価料は医療保険(診療報酬)側、介護職員等処遇改善加算は介護保険(介護報酬)側の仕組みで、別制度・別の届出です(Source: 公益財団法人日本訪問看護財団「令和8年度臨時介護報酬改定(処遇改善加算)について」)。多くの訪問看護ステーションは両方の利用者を持つため、実際には両方が関わってきます。
訪問看護に移ると給料は下がるのですか?
一概には言えません。夜勤手当がなくなる代わりに、訪問件数やオンコール対応に応じた手当・基本給で構成され、評価料を算定する事業所では基本給等への反映があり得ます。「年収例」ではなく、基本給・賞与・手当の構造で比較することが大切です。
賃上げ支援は非常勤にも出ますか?
一律には言えません。対象範囲は事業所の支給ルールと雇用形態別の取り扱いによります。非常勤・時短スタッフが対象に含まれるかは、勤務先の賃金規程や社内告知で確認してください。
参考資料


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