あなたの県の新しい下限額と発効日は、もう決まっています
パートや非常勤で時給制で働いている看護師、看護補助者、扶養の範囲で働いている方に向けた記事です。2026年9月3日、厚生労働省が「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」と公表し、47都道府県すべての改定額と発効予定日が一つの表で見られるようになりました。この記事を読むと、自分の勤務地の新しい下限額がいくらで、何月何日から適用され、給与明細のどの月を見れば反映を確認できるかが分かります。確認したいのは、勤務地の県の改定額、発効予定日、自分の時給、給与の締め日と支払日の四つです。判断に迷ったときの相談先は、勤務先の所在地の都道府県労働局と労働基準監督署です。
8月14日に公開した最低賃金の目安と時給の点検手順をまとめた記事では、全国加重平均1,176円はまだ試算であり、都道府県ごとの確定額と発効日は労働局の発表を待つ必要があると書きました。今回はその続報です。目安の仕組み、時給の点検ステップ、手当の付け替えへの注意、扶養内の時間数の見直し、施設側の事情は前回の記事に譲り、この記事では新しく分かった内容だけを扱います。
厚生労働省が9月3日に公表した数字
厚生労働省の報道発表と別紙「令和8年度地域別最低賃金答申状況」に書かれている内容を、そのまま並べます。
- 47都道府県すべてで、地方最低賃金審議会が改定額を答申した
- 引上げ額は54円から65円の範囲
- 答申額を全国で加重平均した額は1,177円で、改定前の1,121円から56円の引上げ
- 全国加重平均56円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で2番目の高さ
- 最高額が1,280円、最低額が1,085円
- 最高額に対する最低額の比率は84.8%(前年度は83.4%)で、この比率は12年連続の改善
- 発効の予定は、最も早い県が2026年10月1日、最も遅い県が12月2日で、県ごとに順次
- 発効日は、答申公示後の異議の申出の状況などにより変更となる可能性がある
引上げ額の分布も報道発表に載っています。65円が1県、64円が1県、63円が2県、62円が2県、61円が4県、60円が4県、59円が5県、58円が4府県、57円が7県、56円が11道県、55円が3県、54円が3都府県です。合計すると47になります。
ここで一つ、前回の記事との違いを押さえてください。前回は「1,176円は目安どおりに改定された場合の試算」と書きましたが、今回の1,177円は各都道府県の審議会が実際に答申した額を加重平均した数字です。目安の試算より1円高くなったのは、多くの県が目安を上回る額を答申したためで、この点は後の節で県ごとに見ていきます。
一方で、答申はまだ最終決定ではありません。報道発表には、答申された改定額は都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続きを経たうえで、都道府県労働局長の決定により発効する、と書かれています。別紙にも、発効日は異議の申出の状況などにより変更となる可能性がある、という注記があります。この記事の表は「答申の段階で予定されている額と日付」だと理解して読んでください。
47都道府県の改定額と発効予定日の一覧
別紙を、北から南へ地方ブロック順に並べ替えた表です。「改定前」は現在適用されている額、「引上げ額」は改定額から改定前を引いた額、「目安差額」は答申された引上げ額から中央最低賃金審議会の目安額を引いた額です。目安額はAランク(埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・大阪)が54円、BランクとCランクが56円でした。
| 地方 | 都道府県 | 改定額 | 改定前 | 引上げ額 | 目安差額 | 発効予定日 |
|---|
| 北海道・東北 | 北海道 | 1,131円 | 1,075円 | 56円 | ±0 | 2026年10月1日 |
| 北海道・東北 | 青森 | 1,090円 | 1,029円 | 61円 | +5 | 2026年10月29日 |
| 北海道・東北 | 岩手 | 1,090円 | 1,031円 | 59円 | +3 | 2026年12月1日 |
| 北海道・東北 | 宮城 | 1,098円 | 1,038円 | 60円 | +4 | 2026年10月1日 |
| 北海道・東北 | 秋田 | 1,090円 | 1,031円 | 59円 | +3 | 2026年10月14日 |
| 北海道・東北 | 山形 | 1,092円 | 1,032円 | 60円 | +4 | 2026年10月30日 |
| 北海道・東北 | 福島 | 1,094円 | 1,033円 | 61円 | +5 | 2026年10月16日 |
| 関東 | 茨城 | 1,136円 | 1,074円 | 62円 | +6 | 2026年10月18日 |
| 関東 | 栃木 | 1,125円 | 1,068円 | 57円 | +1 | 2026年10月1日 |
| 関東 | 群馬 | 1,120円 | 1,063円 | 57円 | +1 | 2026年10月3日 |
| 関東 | 埼玉 | 1,196円 | 1,141円 | 55円 | +1 | 2026年10月1日 |
| 関東 | 千葉 | 1,195円 | 1,140円 | 55円 | +1 | 2026年10月1日 |
| 関東 | 東京 | 1,280円 | 1,226円 | 54円 | ±0 | 2026年10月1日 |
| 関東 | 神奈川 | 1,279円 | 1,225円 | 54円 | ±0 | 2026年10月1日 |
| 中部 | 新潟 | 1,108円 | 1,050円 | 58円 | +2 | 2026年10月1日 |
| 中部 | 富山 | 1,119円 | 1,062円 | 57円 | +1 | 2026年10月1日 |
| 中部 | 石川 | 1,113円 | 1,054円 | 59円 | +3 | 2026年10月3日 |
| 中部 | 福井 | 1,112円 | 1,053円 | 59円 | +3 | 2026年10月4日 |
| 中部 | 山梨 | 1,113円 | 1,052円 | 61円 | +5 | 2026年11月1日 |
| 中部 | 長野 | 1,117円 | 1,061円 | 56円 | ±0 | 2026年10月2日 |
| 中部 | 岐阜 | 1,121円 | 1,065円 | 56円 | ±0 | 2026年10月1日 |
| 中部 | 静岡 | 1,154円 | 1,097円 | 57円 | +1 | 2026年10月15日 |
| 中部 | 愛知 | 1,195円 | 1,140円 | 55円 | +1 | 2026年10月1日 |
| 近畿 | 三重 | 1,143円 | 1,087円 | 56円 | ±0 | 2026年10月1日 |
| 近畿 | 滋賀 | 1,136円 | 1,080円 | 56円 | ±0 | 2026年10月3日 |
| 近畿 | 京都 | 1,180円 | 1,122円 | 58円 | +2 | 2026年11月16日 |
| 近畿 | 大阪 | 1,231円 | 1,177円 | 54円 | ±0 | 2026年10月1日 |
| 近畿 | 兵庫 | 1,172円 | 1,116円 | 56円 | ±0 | 2026年10月1日 |
| 近畿 | 奈良 | 1,107円 | 1,051円 | 56円 | ±0 | 2026年10月4日 |
| 近畿 | 和歌山 | 1,101円 | 1,045円 | 56円 | ±0 | 2026年10月3日 |
| 中国 | 鳥取 | 1,090円 | 1,030円 | 60円 | +4 | 2026年10月3日 |
| 中国 | 島根 | 1,092円 | 1,033円 | 59円 | +3 | 2026年10月10日 |
| 中国 | 岡山 | 1,104円 | 1,047円 | 57円 | +1 | 2026年10月2日 |
| 中国 | 広島 | 1,141円 | 1,085円 | 56円 | ±0 | 2026年10月11日 |
| 中国 | 山口 | 1,101円 | 1,043円 | 58円 | +2 | 2026年10月8日 |
| 四国 | 徳島 | 1,103円 | 1,046円 | 57円 | +1 | 2026年11月1日 |
| 四国 | 香川 | 1,092円 | 1,036円 | 56円 | ±0 | 2026年10月1日 |
| 四国 | 愛媛 | 1,093円 | 1,033円 | 60円 | +4 | 2026年11月1日 |
| 四国 | 高知 | 1,086円 | 1,023円 | 63円 | +7 | 2026年10月29日 |
| 九州・沖縄 | 福岡 | 1,114円 | 1,057円 | 57円 | +1 | 2026年10月4日 |
| 九州・沖縄 | 佐賀 | 1,095円 | 1,030円 | 65円 | +9 | 2026年11月15日 |
| 九州・沖縄 | 長崎 | 1,087円 | 1,031円 | 56円 | ±0 | 2026年11月2日 |
| 九州・沖縄 | 熊本 | 1,092円 | 1,034円 | 58円 | +2 | 2026年12月1日 |
| 九州・沖縄 | 大分 | 1,096円 | 1,035円 | 61円 | +5 | 2026年11月1日 |
| 九州・沖縄 | 宮崎 | 1,085円 | 1,023円 | 62円 | +6 | 2026年10月24日 |
| 九州・沖縄 | 鹿児島 | 1,090円 | 1,026円 | 64円 | +8 | 2026年10月25日 |
| 九州・沖縄 | 沖縄 | 1,086円 | 1,023円 | 63円 | +7 | 2026年12月2日 |
表を見るときは、金額の行だけでなく右端の日付を必ず一緒に見てください。同じ地方ブロックでも、隣の県と日付が1か月以上ずれている組み合わせがいくつもあります。北海道・東北では宮城が10月1日、岩手が12月1日です。九州では福岡が10月4日、佐賀が11月15日、熊本が12月1日です。
発効日は10月1日から12月2日まで散らばる:明細はどの月を見るか
表の発効予定日を月ごとに数えると、次のようになります。
| 発効予定日 | 都道府県数 | 該当する都道府県 |
|---|
| 10月1日 | 15 | 北海道、宮城、栃木、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、富山、岐阜、愛知、三重、大阪、兵庫、香川 |
| 10月2日〜10月31日 | 22 | 青森、秋田、山形、福島、茨城、群馬、石川、福井、長野、静岡、滋賀、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、高知、福岡、宮崎、鹿児島 |
| 11月 | 7 | 山梨、京都、徳島、愛媛、佐賀、長崎、大分 |
| 12月 | 3 | 岩手、熊本、沖縄 |
「最低賃金は10月1日から上がる」と言えるのは、47のうち15の都道府県だけです。Aランクの6都府県はすべて10月1日ですが、Cランクの13県には10月1日発効の県が一つもありません。残りの32府県は、10月の途中か、11月か、12月です。
月の途中で発効する県では、その月の明細に新旧の時給が混ざる
発効日が月の途中にある県では、発効日の前日までは改定前の時給、発効日からは改定後の時給が下限になります。たとえば鹿児島の発効予定日は10月25日なので、10月24日までの勤務は下限が1,026円、10月25日からの勤務は下限が1,090円です。時給が下限ぎりぎりだった人の場合、10月の給与は前半と後半で単価が違う計算になります。
この状態の明細は、ひと目では「上がったかどうか」が分かりません。確認するには、勤務日ごとの時給を分けて集計してもらうか、発効日以降だけの勤務時間と支給額を取り出して時間当たりの額を出す必要があります。明細に日ごとの単価が出ない職場では、発効日をまたぐ月だけ、勤務表と明細を両方とも手元に残しておくと安心です。
締め日と支払日で、見るべき明細は1〜2か月後ろにずれる
もう一つ見落としやすいのが、給与の締め日と支払日です。月末締め翌月払いの職場なら、10月1日発効の県でも、新しい時給が初めて反映されるのは11月に支払われる給与です。発効日が10月25日なら、10月分の給与に新旧が混ざり、全期間が新しい時給になるのは11月分、つまり12月に支払われる給与からです。15日締め当月払いのような職場では、また別のずれ方をします。
「発効日の月の明細を見たが変わっていなかった」という話は、適用漏れではなく、まだ反映される月になっていないだけということがあります。逆に、反映されるはずの月を過ぎても変わっていなければ、そのときは職場に確認する材料になります。自分の職場の締め日と支払日を確かめ、新しい時給で全期間が計算される最初の明細が何月に届くかを、先に決めておいてください。
11月・12月発効の県は、年内の給与にほとんど反映されない
11月に発効する7府県と、12月に発効する3県では、新しい時給で計算された給与が年内に支払われる回数はごく限られます。特に岩手、熊本、沖縄の12月発効では、締め日と支払日の組み合わせによっては、年内の給与に改定後の単価が全く入らないこともありえます。
扶養の範囲で働いている方にとって、これは二つの意味を持ちます。一つは、今年の年収への影響は小さいということです。年末調整の時期と発効日が重なるため不安になりやすいのですが、年内に反映される分がわずかなら、今年の見込み年収を大きく計算し直す必要はありません。もう一つは、来年は1月から少なくとも今回の改定額が丸ごと適用されるということです(例年どおりなら秋にはさらに次の改定が入ります)。今年の感覚のままの時間数で来年も働くと、想定より年収が増えます。時給の上がり幅と年間の勤務時間を掛け合わせて、来年の見込みを今のうちに出しておいてください。扶養の考え方そのものは扶養内・パートで復職する看護師の年収の壁と働き方の整理で扱っています。
答申後の異議申出で、額や日付が変わる可能性がある
繰り返しになりますが、表の額と日付は答申の段階のものです。都道府県労働局での異議申出の手続きを経て、労働局長が決定します。別紙の注記にあるとおり、発効日は異議の申出の状況などによって変更になる可能性があります。決定と公示が出たら、勤務地の労働局の発表で改めて確認してください。この記事の表は、確認のための出発点として使うものです。
目安を上回った県が33、目安どおりが14、下回った県はゼロ
別紙の「目安差額」の列を数えると、目安を上回る引上げ額を答申した県が33、目安どおりが14、目安を下回った県はありません。
上回った幅が大きい順に並べると、佐賀が+9円(引上げ額65円)、鹿児島が+8円(64円)、高知と沖縄が+7円(63円)、茨城と宮崎が+6円(62円)、青森・福島・山梨・大分が+5円(61円)です。この10県のうち茨城と福島と山梨を除く7県はCランクで、Cランク13県のうち目安どおりだったのは長崎だけです。Aランクでは、埼玉・千葉・愛知が目安を1円上回る55円、東京・神奈川・大阪は目安どおりの54円でした。
引上げ額が大きい県ほど、下限を下回る人が出やすい
看護の職場でこの列をどう読むかを考えます。引上げ額が大きい県では、改定前の時給が下限のすぐ上にあった人ほど、改定後の下限を下回る形になりやすくなります。たとえば佐賀は改定前の下限が1,030円、改定後が1,095円です。改定前の下限1,030円と改定後の1,095円の間の時給で働いていた看護補助者は、改定前は下限を上回っていても、11月15日以降はその時給では働けません。事業所は少なくとも1,095円まで引き上げる必要があります。
これは施設にとって対象者が多くなりやすいということでもあり、賃金表全体をどう組み替えるかの判断を迫られる場面です。看護補助者の時給が引き上げられる一方でパート看護師の時給が動かない、という差の縮み方が起きやすいのは、こうした引上げ額の大きい県です。この現象そのものと、手当の付け替えで「上がったことにされる」パターンの見分け方は、前回の記事で整理しています。
目安差額が大きい10県は、いずれも10月1日発効ではない
もう一つ、表から読み取れる事実があります。目安差額が+5円以上だった10県の発効予定日は、青森10月29日、福島10月16日、茨城10月18日、山梨11月1日、高知10月29日、佐賀11月15日、大分11月1日、宮崎10月24日、鹿児島10月25日、沖縄12月2日で、10月1日の県は一つもありません。別紙には日付が遅い理由は書かれていないので、なぜそうなったかはこの記事では断定しません。ただ、上げ幅が大きい県で働いている方ほど「10月1日から上がる」という思い込みで明細を見ると空振りしやすい、という実務上の注意にはなります。
最高1,280円と最低1,085円、差195円を看護の時給で読む
改定額が最も高いのは東京の1,280円、最も低いのは宮崎の1,085円で、差は195円です。改定前は東京1,226円に対し高知・宮崎・沖縄が1,023円で、差は203円でした。差は8円縮み、最高額に対する最低額の比率は83.4%から84.8%に上がりました。報道発表はこの比率を12年連続の改善と説明しています。
改定額を水準で分けると、1,200円以上は東京、神奈川、大阪の3都府県、1,100円台が26道府県、1,100円未満が18県です。1,100円未満の18県は、Cランクの13県すべてと、Bランクの宮城、福島、島根、香川、愛媛です。
同じ看護補助者の仕事でも、下限は県で195円違う
この差を看護の時給で言い換えると、同じ看護補助者の仕事をしていても、法律上の下限が県によって195円違う、ということです。仮に1日8時間、月に20日働くとすれば、下限の差だけで1日1,560円、月に31,200円の開きです。これは下限どうしの比較であって、実際の時給が県ごとにこの差で並んでいるという意味ではありません。東京の施設が1,280円で募集しているとは限りませんし、宮崎の施設が1,085円ぎりぎりとも限りません。分かるのは、その県で「これより下はない」という線の位置だけです。
比率が12年連続で改善しているというのは、下限の差が相対的には縮んできたということです。ただ、円で見た差は今年もまだ195円あります。比率の改善と実額の差は別のものとして受け取ってください。
隣の県と、額も日付も違う
県境に近い場所で働いている方は、隣県との差を具体的に見ておくと役に立ちます。九州で並べると、福岡1,114円(10月4日)、佐賀1,095円(11月15日)、大分1,096円(11月1日)、熊本1,092円(12月1日)です。福岡と佐賀では下限が19円違い、発効日は1か月以上ずれます。関東でも、東京1,280円と埼玉1,196円、千葉1,195円では下限が84円から85円違い、茨城1,136円との差はさらに広がります。
自分に適用されるのは、勤務先の事業場がある都道府県の額です。住んでいる県と働いている県が違う場合は、働いている県の行を見てください。訪問看護で複数の事業所に登録している方や、県をまたいで掛け持ちしている方は、事業所ごとに適用される額と発効日が違うことになります。
求人票の時給が「改定前の下限」のままになっていないか
転職や掛け持ちを考えている方は、求人票の時給を表と突き合わせてみてください。求人票に書かれた時給が、その県の改定後の下限を下回ったままなら、発効日以降はその額では働けないため、求人票が更新されていないか、掲載時点の情報が古いかのどちらかです。応募前に「10月以降の時給はいくらか」を確かめる材料になります。この確認は、求人票の時給が改定前の下限に近い県ほど意味を持ちます。
今の職場で確認すること
以下の順に見ていきます。前回の記事の点検ステップと重なる部分は省き、今回の発表で新しく必要になった確認だけを挙げています。
- 上の表で、勤務先の事業場がある都道府県の改定額と発効予定日を見る
- 勤務地の都道府県労働局の発表で、決定額と発効日が答申と同じかを確認する
- 自分の現在の時給が、改定後の額を下回っていないかを見る
- 職場の給与の締め日と支払日を確かめ、新しい時給で全期間が計算される最初の明細が何月に届くかを決める
- 発効日が月の途中の県では、その月の勤務表と明細を両方残す
- 雇用契約書や労働条件通知書の時給欄が、発効日以降に書き換えられるかを職場に聞く
- 扶養の範囲で働いている場合は、来年1月から12月の見込み年収を新しい時給で計算し直す
- 11月・12月発効の県では、年内の給与に反映される回数が限られることを前提に、今年の見込み年収を確認する
- 発効日を過ぎた明細で時給が変わっていない、または手当が減っている場合は、勤務表と明細を持って職場に確認する
職場に確認しても納得できる説明が得られない場合や、発効日以降も改定後の額を下回る時給が続いている場合は、勤務先の所在地を受け持つ労働基準監督署のほか、都道府県労働局に置かれた総合労働相談コーナーも使えます。どの窓口に何を持ち込むかは労基署と総合労働相談コーナーの使い分けの記事にまとめています。相談に行く前に、明細と勤務表と契約書をそろえておくと話が早く進みます。
転職で解決しやすいこと、しにくいこと
最低賃金の改定は県単位の話なので、転職で何が変わり、何が変わらないかを分けておきます。
転職で解決しやすいのは、時給が下限に張り付いている状態から抜けることです。下限は県で決まりますが、下限からどれだけ上乗せするかは施設の賃金表で決まります。同じ県内でも、下限ぎりぎりの施設と、下限より大きく上の施設があります。今の職場が改定のたびに下限まで引き上げるだけで、上乗せ幅が年々縮んでいるなら、上乗せ幅の大きい職場へ移ることで解消できる可能性があります。
転職で解決しにくいのは、県そのものの下限の低さです。同じ県内で職場を変えても、法律上の下限も発効日も変わりません。1,100円未満の18県で働いている方が下限の位置を変えるには県を越える必要があり、それは生活の場所を変えることと同じです。時給の差だけで決められる話ではありません。
もう一つ、転職では解決しにくいのが、発効日をまたぐ時期の混乱です。発効日直前に転職すると、前の職場では改定前の時給、新しい職場では改定後の時給という形で、二つの明細を別々に確認する手間が増えます。転職を考えている方は、発効日と入職日の関係も見ておいてください。
転職先の時給が自分の経験や地域の水準に見合っているかは、給与コンパスで立場ごとの目安を確認してから比べると、下限だけを基準にした判断を避けられます。
よくある質問
「答申」と書かれていますが、もう決まったのですか?
答申は、都道府県ごとに置かれた地方最低賃金審議会が「この額への改定が適当」と労働局長に示した段階です。この後、都道府県労働局で関係労使からの異議申出の手続きを経て、労働局長が決定し、発効します。報道発表にはこの流れが書かれており、別紙には発効日が異議の申出の状況などにより変更となる可能性があると注記されています。額と日付の最終確認は、勤務地の労働局の発表で行ってください。
自分の県の発効日が11月や12月なのはなぜですか?
別紙には各県の発効予定日だけが示されていて、県ごとに日付が違う理由は書かれていません。この記事でも理由には踏み込みません。分かっているのは、10月1日発効が15都道府県、10月中の他の日が22、11月が7、12月が3という分布と、発効日が異議申出の状況などで変わる可能性があることです。理由よりも、自分の県の日付と、締め日・支払日の関係で最初に反映される明細が何月かを押さえるほうが実務では役に立ちます。
目安差額がプラスの県は、目安より得をしたということですか?
目安差額は、答申された引上げ額から中央最低賃金審議会の目安額を引いた数字です。プラスなら、その県の審議会が目安より大きい引上げ額を答申したという意味で、時給の水準が高いという意味ではありません。たとえば佐賀は+9円で全国で最も目安を上回りましたが、改定額は1,095円で、1,100円未満の18県に入ります。引上げ額の大きさと、改定後の額の高さは分けて読んでください。
発効日より前に、職場が時給を上げてくれることはありますか?
法律上の義務が生じるのは発効日からですが、施設の判断で発効日より前に賃金表を改定することは妨げられません。答申が出そろった9月の時点で、施設側が10月以降の賃金表をどうするか検討している可能性はあります。時給がいつから変わるのかを職場に聞いてみる材料として、発効予定日を伝えるのは自然な聞き方です。ただし、前倒しがあるかどうかは施設ごとに違い、この記事で一般化はできません。
扶養の範囲で働いています。12月発効の県では今年の年収に影響しますか?
12月発効の岩手、熊本、沖縄では、締め日と支払日の組み合わせによって、年内に支払われる給与に改定後の時給が全く入らない場合と、わずかに入る場合があります。いずれにしても今年の年収への影響は限られます。影響が大きいのは来年で、1月から12月まで全期間が新しい時給になります。来年の勤務時間を今年と同じにするかどうかを、新しい時給で計算し直したうえで決めてください。自分の条件でどうなるかは、勤務先の給与担当や年金事務所などに条件を伝えて確かめるのが確実です。
まとめ
- 2026年9月3日、厚生労働省が47都道府県すべての最低賃金の答申をまとめ、全国加重平均は1,177円、最高1,280円、最低1,085円、比率は84.8%
- 発効予定日は10月1日から12月2日まで散らばり、10月1日は15都道府県のみ、11月が7、12月が3
- 月の途中で発効する県では、その月の明細に新旧の時給が混ざり、締め日と支払日で見るべき明細が1〜2か月後ろにずれる
- 目安を上回った県は33、目安どおりが14で、佐賀+9円、鹿児島+8円、高知・沖縄+7円が大きく、目安差額+5円以上の10県はいずれも10月1日発効ではない
- 東京1,280円と宮崎1,085円の差195円は下限どうしの差であり、実際の時給がその差で並んでいるわけではない
- 答申の額と日付は異議申出で変わる可能性があるので、勤務地の労働局の発表で最終確認する
参考資料