公的統計の実数
まず、看護師(男女計)の数字をそのまま置きます。単位は原資料のとおり千円です。
| 項目 | 実数 |
|---|
| 年齢 | 42.1歳 |
| 勤続年数 | 9.8年 |
| 所定内実労働時間数 | 156時間 |
| 超過実労働時間数 | 6時間 |
| きまって支給する現金給与額 | 365.9千円(36万5,900円) |
| 所定内給与額 | 333.2千円(33万3,200円) |
| 年間賞与その他特別給与額 | 856.4千円(85万6,400円) |
年収に換算すると、次の計算になります。
365,900円 × 12か月 + 856,400円 = 5,247,200円
これが「看護師の平均年収 524万7,200円」の中身です。月額に賞与を足しただけで、それ以上の加工はありません。
ここで見落とされやすいのが、きまって支給する現金給与額(365,900円)と所定内給与額(333,200円)の差です。差額の32,700円が、超過労働などに対して支払われた分にあたります。つまり平均的な看護師の月収の約9%は、残業や夜勤などの割増部分ということになります。
企業規模で、年収は約100万円ちがいます
同じ表には、企業規模別の数字も載っています。ここは競合サイトがあまり出していない部分です。
| 企業規模 | 月額 | 年間賞与 | 年収換算 | 労働者数 |
|---|
| 1,000人以上 | 386.8千円 | 1,057.1千円 | 569万8,700円 | 341,690人 |
| 100〜999人 | 357.7千円 | 770.4千円 | 506万2,800円 | 422,520人 |
| 10〜99人 | 339.5千円 | 624.2千円 | 469万8,200円 | 138,850人 |
| 計(10人以上) | 365.9千円 | 856.4千円 | 524万7,200円 | 903,060人 |
(原表の労働者数は「十人」単位で記載されているため、人数に換算しています)
1,000人以上と10〜99人で、年収換算の差は100万500円です。
差が大きいのは月額より賞与のほうです。月額の差は47.3千円(約14%)ですが、年間賞与は1,057.1千円と624.2千円で、約1.7倍の開きがあります。
つまり、規模の大きい職場との差は、毎月の給料より賞与で開いています。 転職で年収を比べるとき、月給だけを見比べると、この差を見落とします。
労働時間にも違いがあります。1,000人以上は超過実労働時間が9時間、100〜999人は4時間、10〜99人は5時間です。ただし規模に沿って単調に増えてはいないため、「規模が大きいほど残業が長い」とまでは言えません。
男女で、年収は約31万円ちがいます
| 区分 | 年齢 | 月額 | 年間賞与 | 年収換算 |
|---|
| 男 | 39.1歳 | 385.6千円 | 892.8千円 | 552万円 |
| 女 | 42.5歳 | 363.3千円 | 851.6千円 | 521万1,200円 |
男性のほうが年齢が3.4歳若いにもかかわらず、年収換算で30万8,800円高いという形です。
この差がなぜ生じているかは、統計からは分かりません。診療科や勤務形態の分布の違い、夜勤回数の違いなどが考えられますが、この表はそこまで示していません。分かるのは差があるという事実までです。
「中央値」は、月額なら公表されています
多くの記事が「看護師の年収の中央値は約480万円」と書いています。この記事ではその数字を使いません。ただし理由は「中央値が存在しないから」ではありません。
同じ調査の(職種)第17表には、看護師の所定内給与額(月額)の分位数が実際に公表されています。
| 区分 | 所定内給与額(月額) |
|---|
| 第9・十分位数(上位10%の入口) | 431,900円 |
| 第3・四分位数(上位25%の入口) | 376,700円 |
| 中位数(ちょうど真ん中) | 321,500円 |
| 第1・四分位数(下位25%の入口) | 278,800円 |
| 第1・十分位数(下位10%の入口) | 250,700円 |
十分位分散係数は0.28、四分位分散係数は0.15です。
注意すべきは、これが「所定内給与額」の分位数であって、年収の分位数ではないこと。 賞与も残業代も含まれていません。だから「年収の中央値は約480万円」という数字は、この表からは出てきません。世の中で見かける「看護師の年収中央値」は、公的統計に直接載っている数字ではないということです。
では、この表をどう使うか。 給与明細の基本給と、所定労働時間に対して支払われる手当を足した額が「所定内給与額」に近い概念です。その額を上の目盛りに当ててください。手当の名称だけでは判断せず、給与規程の支給条件も確認します。
- 278,800円未満なら、あなたは下から4分の1の区間にいます。
- 321,500円あたりなら、ちょうど真ん中です。
- 376,700円を超えているなら、上から4分の1の区間にいます。
平均値524万7,200円と自分を比べても「高いか低いか」しか分かりませんが、この目盛りなら「分布のどの区間にいるか」まで分かります。ただし、下位側にいることだけで転職後の上昇余地が大きいとは判断できません。地域、施設規模、経験年数、夜勤回数をそろえて求人条件を比べる必要があります。
なお、1,000人以上の企業規模に限った分位数も公表されており、中位数334,200円、第1・四分位数289,600円、第3・四分位数386,100円です。全体より上にシフトしています。
経験年数で、賃金はどう伸びるか
平均値と分位数は「今どこにいるか」を示しますが、「これからどう伸びるか」は示しません。同じ調査の(職種)第14表に、経験年数階級別の実数があります。
| 経験年数 | 所定内給与額(月) | 年間賞与 |
|---|
| 0年 | 278,200円 | 114,100円 |
| 1〜4年 | 304,700円 | 778,800円 |
| 5〜9年 | 314,800円 | 801,400円 |
| 10〜14年 | 326,500円 | 812,600円 |
| 15年以上 | 358,600円 | 1,007,700円 |
| 計 | 333,200円 | 856,400円 |
0年目と15年以上の差は、月額で80,400円。年収換算では185万8,400円です。
表では、0年と1〜4年の所定内給与額に26,500円、1〜4年と10〜14年に21,800円、10〜14年と15年以上に32,100円の差があります。
ただし、これは同じ人を15年間追った昇給表ではなく、調査時点で経験年数が異なる集団を比べた横断データです。「15年を超えれば自分の賃金が32,100円上がる」とは読めません。 自分の昇給見込みは、勤務先の賃金表、定期昇給の実績、役職要件で別に確認してください。また0年の年間賞与は、算定期間を満たさない人を含み得るため、通常の1年分として他区分と単純比較しないほうが安全です。
なお、この表の年収換算(所定内給与額×12+年間賞与)は、冒頭の524万7,200円(きまって支給する現金給与額×12+年間賞与)より低く出ます。所定内給与額には残業・夜勤の割増が含まれていないためです。2つの数字を混ぜて比較しないでください。
准看護師・助産師と比べると
同じ第14表には、准看護師と助産師の数字も並んでいます。資格による違いを実数で確認できます。
| 職種 | 所定内給与額(月) | 年間賞与 | 年収換算(所定内ベース) |
|---|
| 助産師 | 343,900円 | 988,200円 | 511万5,000円 |
| 看護師 | 333,200円 | 856,400円 | 485万4,800円 |
| 准看護師 | 279,400円 | 636,800円 | 398万9,600円 |
看護師と准看護師の差は、年収換算で86万5,200円。 月額では53,800円、年間賞与では219,600円の差です。進学を検討している方にとっては、この2つを足した金額が判断材料になります。
助産師と看護師の差は年26万200円。月額の差は10,700円しかなく、差の大半(131,800円)は賞与から生まれています。
給与明細と、突き合わせてみてください
統計を自分の状況に当てはめる手順です。
1. 月額を比べる
給与明細の通常月の「支給総額(控除前)」が、統計の「きまって支給する現金給与額」に近い概念です。あらかじめ定めた条件で毎月支払う通勤手当も含め、賞与や臨時に支払われた賃金は含めません。365,900円と比べてください。ただし統計は6月分なので、夜勤回数が平均的な月と比べるのが妥当です。
2. 所定内と超過を分ける
基本給と固定的な手当の合計が「所定内給与額」(統計は333,200円)、残業・夜勤の割増分が差額(統計は32,700円)にあたります。自分の場合、この割増部分が統計より大きいなら、収入を時間で買っている度合いが高いということになります。
3. 賞与を確認する
年間の賞与合計を856,400円と比べます。ここが大きく下回る場合、月額が同じでも年収では差がつきます。
4. 労働時間を見る
所定内156時間、超過6時間が平均です。超過が月20時間、30時間となっている場合、同じ年収でも時間あたりの単価はまったく違います。
この4番目が、いちばん見落とされます。 年収が平均より高くても、超過労働が平均の5倍なら、割に合っているとは言えません。
今の職場で確認できること
数字を見て気になる点が出てきたら、次を確認してみてください。
- 賞与の支給月数と、算定の基準(基本給の何か月分か)
- 固定残業代が含まれているか、含まれる場合は何時間分か
- 夜勤手当の1回あたりの額と、月の回数
- 昇給の幅と、直近数年の実績
賞与の算定基準は、特に確認する価値があります。 企業規模別の表で見たとおり、年収差の多くは賞与から生まれています。基本給が同じでも、支給月数が違えば年間では大きく変わります。
職場を変えて解決しやすいこと、しにくいこと
職場選びで比較しやすいのは、規模、賞与水準、超過労働です。 統計上、企業規模別の年収換算には約100万円の差がありますが、これは集団平均の差であり、大規模施設へ移れば同額上がるという意味ではありません。候補ごとに基本給、賞与の算定基準、夜勤回数、残業実績を確認してください。
変えにくいのは、看護職という職種の水準そのものです。 どこへ移っても、この統計の分布の中にあることは変わりません。大幅な年収増を期待する場合、職種や領域の変更まで含めて考える必要があります。
規模別の超過実労働時間は、1,000人以上9時間、100〜999人4時間、10〜99人5時間で、規模に沿って一方向に増減してはいません。年収だけで選ばず、候補施設自身の残業実績とセットで比べてください。
給与の交渉や条件の見方は看護師の給料・お金の完全ガイドに、求人票での給与条件の読み方は求人票の給与条件チェックにまとめています。
自分の条件を入力して現在地を整理したい方は、年収・職場条件の診断も利用できます。診断結果は転職の結論ではなく、今の職場へ確認する項目と、比較する求人条件を決めるために使ってください。
よくある質問
Q. 看護師の平均年収はいくらですか。 A. 令和7年賃金構造基本統計調査(職種第1表・企業規模10人以上)にもとづくと、きまって支給する現金給与額365,900円×12+年間賞与856,400円=524万7,200円です。平均年齢は42.1歳です。
Q. 手取りはどれくらいになりますか。 A. 手取り額は社会保険料と税額によって変わり、扶養の有無や自治体で異なります。統計は支給額ベースの数字なので、この記事では手取りの目安額を示しません。ご自身の給与明細の控除欄でご確認ください。
Q. 中央値はいくらですか。 A. 所定内給与額(月額)の中位数なら公表されており、321,500円です(令和7年賃金構造基本統計調査・職種第17表)。第1・四分位数278,800円、第3・四分位数376,700円です。ただしこれは年収の中央値ではありません。 賞与も残業代も含まない月額の分位数です。年収の分位数を公表した公的統計は確認できませんでした。
Q. 男女で差があるのはなぜですか。 A. 統計は差があることを示すのみで、理由は示していません。年齢は男性のほうが3.4歳若く、年収換算では約31万円高い形になっています。
Q. この数字はいつ時点のものですか。 A. 2025年6月分の賃金と、2024年(1〜12月)の年間賞与を集計したものです。調査対象は企業規模10人以上の事業所です。
参考資料
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」結果の概況 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/index.html
- 政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 第1表(職種小分類別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額)」 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tstat=000001011429
- 政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和7年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)第14表・第17表」 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?cycle=0&tclass=000001229512
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
本記事の数値は、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の(職種)第1表・第14表・第17表から引用し、年収換算のみ編集部で計算したものです。第1表ベースの年収換算は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与」、第14表ベースは「所定内給与額×12+年間賞与」で、後者は残業・夜勤の割増を含まないぶん低く出ます。 記事中では両者を混ぜていません。統計は企業規模10人以上の事業所を対象としており、個人の実際の支給額は勤務先・手当・勤務実績によって変わります。