結論から言うと、制度はまだ何も決まっていません
2026年9月4日、厚生労働省年金局が「国民年金第3号被保険者制度等に関する検討会」の第1回を開きました。配偶者の扶養に入ってパートで働いている看護師さん、育児や介護で今は離職している看護師さん、これから扶養内で復職しようと考えている方のための記事です。
先に結論です。第1回の資料には、第3号被保険者制度を「いつ」「どう」変えるかは書かれていません。書かれているのは、2万人規模の実態調査を行って結果を令和8年度中にまとめるという日程と、制度の現状と論点です。今日の時点で、自分の働き方を急いで変える理由はありません。
一方で、読み終えたときに次の4点に答えが出るように書きました。自分が第3号被保険者に当たるのか。130万円のほかにどのラインを見ておくべきか。勤務先の何を確認しておけば、制度が動いたときに慌てずに済むか。そして、いつ何を見に行けばよいか、です。
確認先は、勤務先の給与・社会保険担当と年金事務所です。数字の当てはめは本人と配偶者の状況で変わるため、この記事では一般的な考え方と、確認の順番を示します。
9月4日に開かれた検討会で何が話されたか
議事次第によると、第1回は2026年9月4日(金)の15時から17時、全国都市会館で開かれました。議題は次の3つです。
- 座長の選出について
- 第3号被保険者制度を巡る現状について
- 第3号被保険者等に関する実態調査について
開催要綱(資料1)では、検討事項は「第3号被保険者制度及び関連する制度について検討を行う」とだけ書かれています。検討会は厚生労働省年金局長が構成員の招集を求めて開催し、必要に応じて保険局がオブザーバーとして出席します。庶務は年金局年金課です。会議は原則公開で、非公開にする場合は理由を明示し、座長の認める範囲で議事要旨と会議資料を公開するとされています。
構成員は16名です。名簿には大学の研究者のほか、日本経済団体連合会、日本労働組合総連合会、日本商工会議所、JAM、NPO法人子育てひろば全国連絡協議会などの幹部や実務責任者が並びます。座長は構成員の互選で選ばれます。名簿を見る限り、医療や看護の団体は入っていません。夜勤やオンコール、掛け持ちといった看護師に固有の事情は、後述する実態調査やヒアリングを通じてしか検討会に届かない構造だと読めます。
自分が第3号被保険者かどうかを要件で確かめる
資料2「第3号被保険者制度を巡る現状について」には、国民年金法第7条に基づく要件が示されています。
| 要件 | 資料2の記載 | 看護師さんが見るところ |
|---|
| 年齢と配偶者 | 20歳以上60歳未満で、厚生年金保険の被保険者(第2号被保険者)の配偶者であること | 配偶者が厚生年金に加入しているか |
| 国内居住 | 日本国内に住所を有すること | 住民票の所在 |
| 生計維持 | 第2号被保険者の収入により生計を維持していること。認定には年間収入130万円未満が必要(健康保険の被扶養者認定の取扱いを勘案) | 自分の年収見込みが130万円未満か |
年間収入は「今後1年間の収入を見込んで判断」し、過去の収入、現時点の収入、将来の見込みなどを用いるとされています。見落としやすいのが令和8年4月からの運用、つまり雇用契約上の年収が130万円未満であることが明らかな場合には、その時点で第3号被保険者(被扶養者)と認定するという扱いです。復職時の雇用契約書に書かれた時給、所定労働時間、年収見込みが、そのまま認定の根拠になりうるということです。
被扶養者の認定に関する通知(昭和52年4月6日保発第九号、平成5年3月5日最終改正)も抜粋されています。同じ世帯に住んでいる場合の原則は、本人の年間収入が130万円未満であること、そして配偶者(被保険者)の年間収入の半分に満たないことの両方です。年齢が60歳以上か、障害厚生年金を受け取れる程度の障害を持つ人の場合は、この額が180万円未満に置き換わります。
給付と負担の関係も資料2に明記されています。第3号被保険者の期間は保険料納付済期間として基礎年金の給付に反映されます。本人は保険料を負担せず、第2号被保険者全体が第3号被保険者分も含めた基礎年金の費用を厚生年金保険料として負担します。配偶者個人の保険料に上乗せされる仕組みではなく、被用者年金制度全体で負担する仕組みだと説明されています。
検討会が置かれた根拠と、すでに決まっている日程
検討会の根拠として、資料2と資料3に3つの文書が引かれています(開催要綱が直接引くのは改正法附則と骨太の方針2026の2つです)。
| 文書 | 日付 | 第3号被保険者に関する記述 |
|---|
| 年金制度改正法(正式名称は「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」、令和7年法律第74号)附則第2条第4項 | 令和7年 | 在り方について国民的な議論が必要との認識の下、実情に関する調査研究を行い、在り方について検討を行う |
| 社会保障改革項目に関する具体的な骨子(自由民主党・日本維新の会 社会保障制度改革協議体) | 令和8年7月7日 | 項目(10)。縮小に向け短時間労働者等への適用拡大を早期に進展させ、実態調査を実施して令和8年度中に結果をとりまとめ課題を整理。検討会を令和8年夏頃を目途に立ち上げ |
| 経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太方針2026) | 令和8年7月21日閣議決定 | 13の社会保障改革項目について骨子に基づき、2026年度中に具体的な制度設計を行い、順次実行 |
注意したいのは、文書ごとに言葉の強さが違うことです。法律の附則は「調査研究を行い、在り方について検討」です。与党の骨子は「その縮小に向け」と方向を書いています。骨太方針は「2026年度中に具体的な制度設計」と期限を書いています。ただし骨太方針の「制度設計」は13項目全体にかかる表現で、第3号被保険者制度について何をどう設計するかは書かれていません。
衆議院(令和7年5月30日)と参議院(令和7年6月12日)の厚生労働委員会の附帯決議には、調査研究に当たって「現行制度に関わる当事者の意見を聴取するよう努めること」とあります。扶養内で働く看護師さんは、この「当事者」に含まれます。
2024年12月25日の社会保障審議会年金部会「議論の整理」も資料2に抄録されています。そこでは制度への評価が「様々」であることが明記され、時代にそぐわない、女性のキャリア形成を阻害している、といった見直し論と、所得保障としての機能がある、応能負担の原則に基づく制度だ、といった意義論が併記されています。当面の方向性は「引き続き適用拡大を進めることにより、第3号被保険者制度の縮小を進めていくことが基本的な方向性」とされ、論点として所得保障機能の維持、特定の者への配慮、第1号被保険者とのバランス、年金財政の構造、3号分割制度の在り方が挙げられています。
さらに、労働時間や収入を問わず被用者保険に加入できるようになれば、第3号被保険者制度を維持しても「壁」は解消されるので、働き控えの問題と制度の是非は切り離して議論すべきだ、という意見も記録されています。
まとめると、「第3号は廃止される」「〇年から保険料がかかる」という記述は、どの文書にもありません。決まっているのは、調べる、まとめる、設計するという順番と、そのおおまかな期限です。
実態調査で何を聞くのか。看護師に関係する設問を拾う
資料3によると、実態調査はアンケート調査とヒアリング調査の2本立てです。
アンケート調査は独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)に研究要請し、Webアンケート(層化割付回収)で実施します。対象は20〜59歳の男女(学生を除く)で、年収260万円以下の人です。260万円は令和4年国民生活基礎調査の特別集計に基づく中央値です。規模は全体で2万人、内訳は第1号5,000人、第2号5,000人、第3号9,000人で、第3号から第2号に転換した人1,000人を第2号の内数として確保します。性別、年齢層、配偶関係、居住地域ブロック、就業状況、被保険者区分を組み合わせた768区分に割り付けます。結果は令和8年度中にまとめます。
調査の趣旨として、第3号被保険者には「出産・育児や介護・看護等の事情により働けない者」「いわゆる年収の壁を意識している者」「希望により扶養の範囲内に留まる者」が混在しており、どの要因から扶養内に留まっているのか、どのような割合で構成されているのかを明らかにする、とあります。
設問のうち、看護師さんの状況と重なるものを拾います。
- 働く時間を制限している理由の選択肢に「看護・介護のため」「税制や社会保険などにおける負担を回避したい」「勤め先での、仕事や役割を限定したい」「希望する条件の仕事が、ない・ありそうにない」
- 就業調整で意識している制度の選択肢に「厚生年金・健康保険に自ら加入して保険料を負担」「配偶者の勤務先からの配偶者手当・家族手当の有無」「勤務先の制度や雇用条件、勤務先の意向」
- ケア(手助けや見守り)を必要とする家族・親族の有無、要介護認定や障害者認定の有無、ケアに従事する時間と期間
- 第3号から第2号に転換した理由の選択肢に「最低賃金が上昇し、労働時間を抑制するのはもったいないと思った」「人手不足により、勤務時間の延長など就労機会が増えた」「会社の制度変更(適用拡大への対応など)により、加入が必須となった」
- 仮に制度が見直された場合にどう行動するか(何もしない、働く時間を大幅に増やす、やや増やす、減らす、新たにフルタイムやパートで働き始める、など)
- 将来受け取る公的年金額を把握しているか、老後の資金をどの程度準備できていると思うか
ヒアリング調査は民間事業者に委託し、オンラインの深層面接(1人あたり60分)で合計70名程度に行います。第3号被保険者は約50名で、無業かパートか、末子の年齢、同居の子の有無、年代で14グループに分け、「介護などの働く上での制限」がある人のグループ(4人)と男性(2人)も含まれます。比較対象として第1号被保険者約10名、第2号被保険者約10名も対象です。
ヒアリングの質問例には「被用者保険に加入する程度(週20時間以上)まで、労働時間を延ばすことができるか」「働く時間を延ばすうえでのハードルはあるか」があります。看護師のパートであれば、この答えは時給や年収だけでは決まりません。夜勤に入れるか、オンコールを持てるか、子どもの送迎と勤務が重ならないか、といった勤務の形に左右されます。この調査は、そうした「延ばせない理由」を集める設計になっています。
このニュースを看護師の働き方で見ると
ここからは、検討会の資料を看護師の勤務実態に当てはめた読み解きです。資料が言っていないことは、推測として書き分けます。
壁は年収だけでなく、夜勤に入れるかどうかと表裏です
扶養内で働く看護師さんの年収は、時給と所定労働時間と勤務日数の掛け算に、夜勤手当やオンコール手当、賞与や寸志が乗る形で決まります。日勤だけで130万円未満に収めていても、人手が足りない月に夜勤を1回引き受けるたびに、手当の分だけ壁に近づきます。
年収の壁をめぐる議論は「働く時間を増やせるか」を中心に組み立てられています。しかし看護師の場合は、時間の長さよりも「どの時間帯の勤務を引き受けるか」で年収が大きく動きます。実態調査の設問「働く時間を制限する理由がなくなった場合、現在以上に働くことを希望するか(可能か)」を自分に当てはめるなら、増やせるのは日勤の日数なのか、夜勤の回数なのかを分けて考えると、答えがはっきりします。
見るラインは130万円のほかに、週20時間と勤務先の従業員数があります
資料2は、いわゆる「130万円の壁」は第3号被保険者が第1号被保険者に移動する際に生じるものであり、いわゆる「106万円の壁」は令和8年10月に撤廃予定で、以後は労働時間要件(週20時間)により判定される、と説明しています。
短時間労働者への被用者保険(厚生年金・健康保険)の適用は、現在は従業員51人以上の企業等が対象です。2025年改正で企業規模要件は段階的に撤廃され、2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上、2035年10月に全ての企業等が対象になります。従業員数は企業の「厚生年金保険の適用対象者数」で判断し、フルタイムの従業員数と、週所定労働時間および月所定労働日数がフルタイムの4分の3以上の従業員数を合計した数です。50人以下の企業でも、労使合意により任意で適用を拡大できます。
週20時間は所定労働時間で判断し、残業時間等を含みません。月額8.8万円の賃金要件は所定内賃金で判断し、残業代等を含まないとされています。この賃金要件は、最低賃金の状況を踏まえて2026年10月に撤廃予定です。
看護師さんにとっての意味はこうです。大きな病院に勤めていれば、勤務先はすでに適用拡大の対象で、扶養内で働くには所定労働時間を週20時間未満に抑える形になっているはずです。規模の小さい診療所や訪問看護の事業所に勤めている場合は、勤務先の従業員数によって、2027年10月、2029年10月、2032年10月、2035年10月のどこかで対象に入ります。同じ「週3日の日勤」でも、勤務先の規模と時期次第で、加入対象かどうかの答えが違ってきます。
資料2には、第3号被保険者が被扶養者でなくなる場合の負担と給付の例も載っています。厚生年金保険・健康保険に加入する場合、年収106万円(標準報酬月額8.8万円)の人で本人負担が月12,500円、会社負担が月12,500円という試算です。給付は基礎年金に加えて厚生年金(終身)が付き、傷病手当金と出産手当金を受給できるようになります。国民年金・国民健康保険に加入する場合は、年収130万円の人で本人負担が月23,600円という試算で、保険料負担が発生するものの給付に変化はない、と説明されています。実際の保険料は勤務先の健康保険や住んでいる自治体の国民健康保険で異なるため、この数字は2つの経路の構造を比べるための例として読んでください。
掛け持ちの合算は、事業所ごとに判断されます
看護師のパートは、クリニックと訪問看護ステーション、病院の外来と単発の健診の仕事、といった掛け持ちが珍しくありません。資料2は、社会保険の適用要件は事業所ごとに判断すると説明しています。週20時間の事業所と週10時間の事業所なら、20時間の事業所でのみ適用されます。週15時間と週15時間なら、合計は30時間でも、どちらの事業所でも適用されない場合があります。複数の事業所で適用される場合は、各事業所の報酬を合算して保険料を決めます。
つまり、掛け持ちで週の合計時間が20時間を超えていても、自動的に厚生年金に入るわけではありません。逆に、1か所だけを週20時間以上にすると、その1か所で加入対象になります。扶養内を維持したいのか、加入して保障を厚くしたいのかによって、勤務時間の配分の仕方が変わります。与党の骨子が「マルチワーカーへの対応等」を挙げているのは、まさにこの点です。ここも今後の論点であり、現時点で変更は決まっていません。
「介護・看護のため働けない」層は、看護師自身にも重なります
資料2は令和4年就業構造基本調査を引いて、就業を希望しない理由として、20歳代・30歳代の非就業女性では「出産・育児」が主な理由であり、40歳代では「理由はない」「家事」「病気・けが」が増え、50歳代になると「介護・看護」を理由に挙げる人が大きく増える、と説明しています。年金部会の議論の整理でも、第3号被保険者の過半を占める非就業の中に、出産・育児や介護・看護、健康上の理由ですぐには仕事に就けない人が混在している、とあります。
看護師は職業として看護を担う一方で、家族の介護を引き受けやすい立場でもあります。親の要介護認定の申請、通院の付き添い、施設入所の手続きを「家族の中で医療が分かる人」として引き受け、その期間だけ配偶者の扶養に入る、という選択をした方もいるでしょう。実態調査は、ケアを必要とする家族の有無、要介護認定、ケアに従事する時間と期間を聞く設計で、ヒアリングでも「介護などの働く上での制限」がある人のグループを設けています。
年金部会の論点にある「特定の者への配慮」は、一定の理由で就業できない人や、希望する働き方を実現できない人にどう配慮するか、という論点です。何をどう配慮するかは未定ですが、少なくとも「働きたくても働けない層」を数字で切り分けることが、この調査の目的だと読めます。
「制度が変わった」と「自分の勤務先が変わった」を分けて読む
実態調査の転換理由には「会社の制度変更(適用拡大への対応など)により、加入が必須となった」という選択肢があります。今後、報道で「第3号見直し」という見出しが出たとき、それが国の制度設計の話なのか、勤務先の従業員数が段階的撤廃の対象に入った話なのか、最低賃金の改定で年収が壁に近づいた話なのかを、切り分けて受け取ってください。この3つは別の日程で動きます。
最低賃金については、都道府県ごとの改定額と発効日が公表されています。時給が上がれば、同じ所定労働時間でも年収は上がります。自分の県の発効日は47都道府県の最低賃金の改定額と発効日の一覧で確認できます。
今の職場で確認すること
制度が動く前に、次の項目を手元の書類で確かめておくと、動いたときに自分がどこに立っているかを即座に把握できます。
- 雇用契約書または労働条件通知書に書かれた週の所定労働時間と時給、年収見込みの記載の有無
- 直近1年分の給与明細を合計した実績年収と、130万円までの残り額
- 夜勤、オンコール、休日出勤の手当が年収のどのくらいを占めているか
- 賞与や寸志の有無と、それを年収見込みに含めているか
- 勤務先の厚生年金保険の適用対象者数が51人以上か、36人以上か、それ未満か
- 勤務先が50人以下の場合、労使合意による任意の適用拡大をしているか
- 掛け持ちしている場合、事業所ごとの週所定労働時間
- 配偶者の勤務先の配偶者手当や家族手当に、年収の基準があるか
- 自分の年間収入が配偶者の年間収入の2分の1未満か
- 配偶者の勤務先の健康保険の被扶養者認定で、雇用契約書の提出を求められるか
給与や社会保険の担当者への質問の順番や言葉選びに詰まったら、カンゴさんに聞き方を組み立ててもらうこともできます。時給と勤務日数から年収の見込みを組み立て直したいときは、給与コンパスが使えます。
この記事は社会保険の側だけを扱っています。所得税の配偶者控除の側と合わせて壁を並べ直したい方は、復職前に税と社会保険の壁を分けて理解する記事を先に読むと、この記事の数字がどこに当たるかがつかめます。常勤からパートへ移る前に見ておく項目は、非常勤に変える前の社会保険と扶養の確認点にまとめています。
転職で解決しやすいこと、しにくいこと
「制度が変わるなら、今のうちに職場を変えたほうがよいのでは」と考える方もいるでしょう。動かせるものと動かせないものを分けます。
転職や職場選びで動かせること
- 所定労働時間を週20時間未満にするか、20時間以上にするかの設計
- 夜勤やオンコールの有無を契約で固定できるかどうか
- 勤務先の従業員数(段階的撤廃のどの時期に対象になるか)
- 掛け持ちを1か所にまとめるか、分けたままにするか
- 雇用契約書に年収見込みを明記してもらえるかどうか
転職しても動かせないこと
- 第3号被保険者制度の設計そのもの(検討会と国の判断で決まる)
- 130万円の被扶養者認定基準と、配偶者の年間収入の2分の1未満という条件
- 企業規模要件の撤廃スケジュール(2027年、2029年、2032年、2035年)
- 配偶者の勤務先が定める配偶者手当の年収基準
- 家族の介護や育児に使う時間の総量
転職で変えられるのは勤務の形であり、制度の行方ではありません。制度の中身が未定の今、転職の判断材料にできるのは「自分がどの勤務時間で、どの規模の職場で働きたいか」までです。制度の結論を待ってから職場を選ぶか、勤務の形を先に決めて制度の変化に合わせるかは、家計と家族の状況で変わります。
これから確認する日程
| 時期 | 何が起きるか | 看護師さんが見るもの |
|---|
| 2026年9月4日 | 検討会第1回(座長選出、現状、実態調査) | 開催ページの資料 |
| 第2回以降 | 開催日は今回の資料に記載なし | 開催ページの更新 |
| 2026年10月 | 月額8.8万円の賃金要件が撤廃予定。以後は週20時間で判定 | 自分の週所定労働時間 |
| 令和8年度中(2027年3月まで) | アンケート調査とヒアリング調査の結果とりまとめ | 「介護・看護」「就業調整」に関する結果 |
| 2026年度中 | 骨太方針2026に基づく制度設計 | 第3号被保険者制度について何が書かれるか |
| 2027年10月 | 従業員36人以上の企業等に適用拡大 | 勤務先の従業員数 |
| 2029年10月、2032年10月、2035年10月 | 21人以上、11人以上、全ての企業等に順次拡大 | 同上 |
第2回以降の開催日は、開催ページに追加される資料で確認します。実態調査の結果が出た段階で、「介護・看護のため」を理由に挙げた人の割合や、制度が見直された場合の行動の分布が公表される可能性があります。そこが、看護師さんにとって次に読むべき数字になります。
よくある質問
第3号被保険者制度は廃止が決まったのですか?
決まっていません。第1回の資料には、制度をいつどう変えるかは書かれていません。与党の骨子には「縮小に向け」という方向が、骨太方針2026には「2026年度中に具体的な制度設計」という期限が書かれていますが、第3号被保険者制度について何を設計するかは示されていません。年金部会の議論の整理でも、見直し論と意義論の両方が併記されています。
扶養内で働くパート看護師は、今すぐ働き方を変えるべきですか?
制度の中身が未定の今、制度を理由に働き方を変える必要はありません。ただし、制度とは別に、2026年10月の賃金要件の撤廃と、2027年10月からの企業規模要件の段階的撤廃はすでに決まっています。自分の週所定労働時間と勤務先の従業員数を確認しておけば、どの時期に何が自分に関係するかが分かります。
夜勤を1回引き受けると扶養から外れますか?
1回で直ちに外れるとは言えません。被扶養者の認定は年間収入130万円未満かどうかで判断され、年間収入は今後1年間の見込みで見ます。ただし、夜勤手当は年収に加算されるため、日勤だけで組んだ年収見込みに余裕がない場合、夜勤の回数が積み重なると130万円に近づきます。夜勤の依頼を受ける前に、実績年収と残り額を見ておくと、引き受けるかどうかを数字で決められます。
掛け持ちで合計週20時間を超えたら厚生年金に入りますか?
自動的には入りません。資料2によると、適用要件は事業所ごとに判断されます。週15時間と週15時間の掛け持ちなら、合計30時間でもどちらの事業所でも適用されない場合があります。一方、1か所で週20時間以上になれば、その事業所で加入対象になります。複数の事業所で適用される場合は報酬を合算して保険料が決まります。
家族の介護で離職している看護師は、この検討会でどう扱われますか?
実態調査は、ケアを必要とする家族の有無や要介護認定、ケアに従事する時間と期間を聞く設計です。ヒアリング調査でも「介護などの働く上での制限」がある人のグループが設けられています。年金部会の論点には「特定の者への配慮」があり、一定の理由で就業できない人への配慮が検討対象です。何をどう配慮するかは未定で、調査結果は令和8年度中にまとめられます。
まとめ
2026年9月4日に始まった検討会は、第3号被保険者制度の結論を出す場ではなく、実態を調べて論点を整理する場として立ち上がりました。2万人規模のアンケートと約70名のヒアリングの結果は令和8年度中にまとめられ、骨太方針2026は2026年度中の制度設計を求めています。
配偶者の扶養内で働く看護師さんが今できることは、制度の行方を心配することではなく、自分の位置を書類で確かめることです。雇用契約書の所定労働時間と年収見込み、実績年収と130万円までの残り額、夜勤やオンコールの手当の比重、勤務先の従業員数、掛け持ちの時間配分です。これらが手元にあれば、検討会の資料や報道が出るたびに、自分に関係する話かどうかをその場で判断できます。
制度の話と勤務先の話と最低賃金の話は、別々の日程で動きます。混ぜずに読むことが、扶養内で働く看護師さんの身を守る読み方です。
参考資料