「処遇改善は介護職だけ」は、2026年6月からは古い思い込みです
特養・老健・デイサービス・有料老人ホームなどで働く看護師さんの中には、「処遇改善加算は介護職員のためのお金で、自分には関係ない」と思っている方が少なくありません。結論からお伝えすると、2026年(令和8年)6月1日に施行された介護報酬の臨時改定で、処遇改善加算の対象は「介護職員のみ」から、看護職員・リハビリ職・事務職員などを含む「介護従事者」全体に拡大されました(Source: 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」)。
改定率は全体で+2.03%(うち処遇改善分+1.95%)で、介護従事者を対象に幅広く月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置とされています(Source: 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」)。ただし、誰にいくら配分するかは事業所の計画に委ねられているため、「自分の給与に実際に反映されているか」は6月以降の給与明細で確認する必要があります。この記事では、確認の手順と、配分されていなかった場合の行動を整理します。
この記事でわかること
この記事の価値:2026年6月施行の介護報酬臨時改定を、厚生労働省の一次資料に基づき「介護施設の看護師さんの給与にどう関係するか」だけに絞って整理しています。
読むと判断できること:自分の職場(特養・老健・デイ・有料老人ホームなど)が今回の拡充の対象か、自分が配分対象に含まれるのか、給与明細のどこを見ればよいかが判断できます。
今の職場で確認すること:6月以降の給与明細の基本給・手当・賞与欄の変化と、職場が周知しているはずの処遇改善計画書の配分方針です。
次にできること:配分が確認できないときの質問の仕方、納得できないときの選択肢、配分後の年収が適正水準かを知るための診断を案内します。
判断材料になる一次情報
2026年6月から何が変わったか:配分対象が「介護従事者全体」に
今回の改定は、2027年度(令和9年度)の本改定を待たずに行われた期中の臨時改定です。ポイントは次の3つです(Source: 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」)。
- 処遇改善加算の対象を「介護職員のみ」から「介護従事者」に拡大し、加算率を引き上げる。介護従事者を対象に幅広く月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置とされています。
- 生産性向上や協働化に取り組む事業者には上乗せの加算区分(加算Ⅰロ・Ⅱロ)を新設。この上乗せ分(月0.7万円・2.4%)の対象は介護職員で、介護職員については定期昇給0.2万円込みで最大月1.9万円(6.3%)の賃上げとされています。
- これまで対象外だった訪問看護(加算率1.8%)・訪問リハビリテーション(1.5%)・居宅介護支援等(2.1%)に加算を新設。
処遇改善加算という仕組み自体は以前からあり、2024年度に3つの加算が「介護職員等処遇改善加算」へ一本化されていました。これまでも事業所の判断で介護職員以外へ配分すること自体は可能でしたが、今回の改定で初めて、加算の設計そのものが「介護従事者全体の賃上げ」を前提に拡大されました。厚労省のQ&Aでは、配分対象には介護職員以外の全職種が含まれるとして、看護師・准看護師・理学療法士・介護支援専門員・生活相談員・事務職などが明示されています(Source: 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問2-1-2)。
一方で、「月1.0万円」は政策として実現を目指す水準であり、一人ひとりに一律1万円が保証される仕組みではありません。看護職員にいくら配分するかは職場ごとの計画次第です。だからこそ、次の表とチェックリストで自分の状況を確かめることが大切です。
あなたの職場は対象?サービス種別ごとの変更点
主なサービスの加算率(加算Ⅳ〜Ⅰロの幅)と今回の変更点は次のとおりです(Source: 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」)。
| 働いている場所(サービス種別) | 加算率の幅 | 看護師さんから見た変更点 |
|---|
| 特養(介護老人福祉施設・短期入所生活介護) | 11.3〜17.6% | 従来から加算対象の施設。配分対象が介護従事者全体に拡大され、看護職員も賃上げ措置の対象に |
| 老健(介護老人保健施設) | 5.9〜9.7% | 同上 |
| デイサービス(通所介護) | 8.3〜12.0% | 同上 |
| 介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護) | 10.8〜15.9% | 同上 |
| グループホーム(認知症対応型共同生活介護) | 14.9〜22.8% | 同上 |
| 看護小規模多機能型居宅介護 | 12.5〜17.7% | 同上 |
| 訪問看護(介護保険) | 1.8%(新設) | 加算そのものが今回新設。施設とは事情が異なります |
訪問看護で働く看護師さんに向けては、加算新設の中身と確認手順を訪問看護の処遇改善2026の解説記事で別に整理しています。なお、住宅型有料老人ホームは、併設する訪問介護や通所介護などのサービス単位で加算を算定する形になるため、自分の所属がどのサービスの指定を受けているかを確認してください。
6月以降の給与明細でここを確認する
賃金改善は基本給・手当・賞与のいずれの形でも実施できます(Source: 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問1-1)。給与明細では次の点を確認してください。
- 基本給:5月以前と比べて増額されているか(時給制の場合は時給の引き上げも基本給の改善に当たります)
- 手当欄:「処遇改善手当」のほか、職能手当・資格手当など別名称で新設・増額されていないか
- 賞与:夏・冬の賞与に処遇改善分の上乗せが予定されていないか(一時金での配分も認められています)
- 支給時期:6月分の配分は「6月中に見込額で支払う」「7月に支払う」「介護報酬の入金後の8月に支払う」の3パターンが認められており、6月の明細に変化がなくても直ちに「配分なし」とは言えません(Source: 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問1-8-1)
- 計画書の周知:処遇改善計画書の内容は全職員への周知が必要です。掲示や回覧で配分方針を確認しましょう(Source: 同Q&A 問1-10)
明細のどの欄をどう読むか自体に自信がない場合は、賃金制度の見直しと給与明細の読み方の解説記事も参考にしてください。
配分されていないときの確認と行動
8月支給分まで待っても変化がない場合、次の順で確認しましょう。
- まず事務担当者や施設長に「今回の拡充で看護職員への配分はどうなっていますか」と事実確認として質問する(計画書を見せてもらうお願いから入るのが現実的です)
- 職場が算定している加算区分(Ⅰイ・Ⅰロなど)を確認する(区分により原資の大きさが変わります)
- 「看護職員は対象外」という配分方針自体は直ちに違法ではありません。配分は事業所内で柔軟に認められており、看護職員への配分は義務ではないためです。ただし、加算額以上の賃金改善を行わない場合は加算の返還対象になるため、原資はどこかに配分されているはずです(Source: 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問1-9)
- 納得できない場合は、職員代表や労働組合経由で配分方針の説明を求める方法もあります
「制度上は対象なのに、自分の職場では配分の見込みがない」と分かったときは、働く場所の選択肢を考える材料になります。配分後の年収が地域・経験年数に対して適正水準かどうかは、給料コンパスの適正年収診断で客観的に確かめられます。交渉の前提にも、転職を考える前の現在地確認にも使えます。
場所を変えると解決しやすいこと
処遇改善加算の上位区分(原資が大きい区分)を算定し、看護職員にも明確に配分している施設を選べば、同じ仕事内容でも手取りが変わる可能性があります。施設形態ごとの働き方や給与の違いは訪問看護・介護施設で働く選択肢の解説記事で比較できます。求人段階で「処遇改善加算の算定区分」「看護職員への配分実績」を質問するのは合理的な確認です。
場所を変えても解決しにくいこと
配分が事業所の裁量である構造は、どの介護施設に移っても同じで、「次の職場なら必ず満額もらえる」保証はありません。加算率はサービス種別ごとに決まっているため、施設形態による原資の差も変わりません。転職で解決するのは「配分方針が不透明な職場から離れること」であって、制度の構造そのものではない点は冷静に見ておく必要があります。
まとめ
2026年6月1日施行の介護報酬臨時改定で、処遇改善加算の対象は介護職員のみから介護従事者全体に拡大され、介護施設で働く看護師さんは制度上、賃上げ措置の対象に明確に位置づけられました。ただし配分は事業所の計画次第で、支給時期も6〜8月と幅があります。まずは給与明細と処遇改善計画書を確認し、変化がなければ事実確認の質問から始めてください。あわせて自分の年収の現在地を給料コンパスで確かめておくと、職場と話すときも、働く場所を考え直すときも、判断の軸ができます。
よくある質問
介護施設の看護師は、結局いくら給料が増えるのですか?
一律の金額は決まっていません。今回の改定は「介護従事者を対象に幅広く月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置」とされていますが、これは政策目標の水準で、個人への保証額ではありません(Source: 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」)。なお、最大月1.9万円(定期昇給込み)は生産性向上等に取り組む事業者の「介護職員」向け上乗せを含む数字で、看護職員にそのまま当てはまるものではありません。
看護師に配分されない場合、職場に請求できますか?
事業所内の配分は柔軟に認められており、看護職員への配分は法的な義務ではないため、当然に請求できる権利とまでは言えません。ただし処遇改善計画書は全職員への周知が必要とされており、配分方針の説明を求めることはできます(Source: 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問1-10)。不透明な場合は職員代表や労働組合を通じて確認する方法があります。
パートや派遣の看護師も対象になりますか?
対象になり得ます。時給の引き上げは基本給の改善として認められ、派遣労働者も派遣元と協議のうえ対象とすることが可能です(Source: 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問1-4・問2-4)。ただし事業所の計画に含まれていることが前提なので、雇用形態を理由に対象外とされていないか計画書で確認してください。
6月の給与明細に変化がありません。配分されていないということですか?
まだ断定できません。6月分の配分は、6月中の見込額支払いのほか、7月支払い、介護報酬の入金を待つ8月支払いも認められています(Source: 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問1-8-1)。賞与での一時金配分の可能性もあるため、配分方針自体は計画書で先に確認するのが確実です。
病院で働く看護師には関係ない話ですか?
今回は介護報酬の改定なので、医療保険で運営される病院・クリニック勤務の看護師さんは直接の対象ではありません。ただし、病院が介護医療院や老健、デイケアなどを併設している場合、そちらに勤務する職員は対象になり得ます。
参考資料


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