「この夜勤、あと何年続けられるだろう」と迷っている方へ
夜勤明けの帰り道に、「この働き方をあと何年続けられるだろう」と考えてしまう看護師さんは少なくないと思います。夜勤がつらいと感じると、つい「自分の体力や根性が足りないのでは」と自分を責めてしまいがちです。
けれど、夜勤を続けられるかどうかは、本人の頑張りだけで決まるものではありません。夜勤手当が労力に見合っているか、夜勤中に仮眠や休憩を実際に取れるか、夜勤明けの翌日に休めるか、月の夜勤回数を選べるか、急変や欠員のときに応援が来るか——こうした「職場側の条件」が大きく影響します。
この記事は、夜勤をやめたいというより「できれば続けたい、でも今のままだと不安」という看護師さんに向けて、夜勤を続けられる職場の条件を最新の全国調査から整理するものです。なお、夜勤を減らして収入を保つ方法は別の記事に譲り、ここでは「続ける前提で何を整えればよいか」に集中します。
この記事でわかること
この記事の価値:夜勤手当・仮眠・夜勤回数の全国的な実態を知り、「自分の職場がしんどいのか、夜勤とはそういうものなのか」を感覚ではなくデータで照らし合わせられます。
読むと判断できること:今の職場が「夜勤を続けられる条件」を満たしているかを、チェック項目で見分けられるようになります。
次にできること:今の職場で確認・相談すべきことと、働き方を変えて解決しやすいこと・しにくいことが整理できます。
読むポイントは次のとおりです。
- 夜勤手当は本当に上がっているのか(2010年からの推移)
- 仮眠・休憩は実際にどれくらい取れているのか
- 夜勤回数と「月平均72時間」の考え方
- 続けられる職場が用意している働き方の選択肢
- 今の職場で確認できること/場所を変えて解決しやすいこと・しにくいこと
判断材料になる一次情報
この記事の内容は、下記の公的・専門機関による一次情報を踏まえて整理しました。掲載した数値はいずれも各調査の公表時点のもので、夜勤手当や仮眠体制の実際の運用は職場ごとに違うため、最終的には在籍先の看護部や就業規則で確認してください。
夜勤を続けられるかどうかは、本人の根性ではなく、手当・仮眠・明け休み・回数という「職場側の条件」がそろっているかで決まる。データは、その条件が整っているかを点検するために使う。
夜勤手当の現実——2010年からほぼ横ばい
夜勤を続けるうえでまず確認したいのが、夜勤手当が労力に見合っているかです。
2025年病院看護実態調査によると、看護師の月額基本給与は前年より上がっている一方で、定額の夜勤手当は2010年からほぼ横ばいが続いています(Source: 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」)。
実額の推移を見ると、定額夜勤手当の平均は次のとおりで、15年間でわずかしか伸びていません(Source: 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」)。
| 区分 | 2010年 | 2025年 |
|---|
| 二交代制の夜勤 | 10,745円 | 11,470円 |
| 三交代制の深夜勤 | 5,053円 | 5,211円 |
| 三交代制の準夜勤 | 4,077円 | 4,300円 |
基本給や賞与が上がっているのに夜勤手当が据え置きということは、夜勤1回あたりの評価が、ほかの待遇に比べて目減りしているとも読めます。夜勤を多く担っている看護師さんほど、手当が労力に見合っているかを、給与明細で一度確認しておく価値があります。基本給・賞与の伸びと、夜勤1回あたりの手当を分けて見ると、自分の働き方に対する評価が見えやすくなります。
なお、夜勤手当の額面そのものより、「1回あたりいくらで、月何回入ると手取りがどう変わるか」を把握しておくと、続けられるかどうかの判断がしやすくなります。
ここで「続ける条件」という視点から一歩踏み込んで考えたいのが、夜勤手当が2010年から横ばいである一方で、夜勤負担が一部の人に偏り続けている、という現場のゆがみです。後述するように、72時間を超える夜勤者が33.9%いる裏で夜勤0時間の人も6.7%いるという偏りは、夜勤負担が「入れる人」に集まり続けていることを示します。本来であれば、負担が特定の人に集中するほど、その夜勤1回あたりの手当は引き上げられてしかるべきです。しかし実額がほぼ動いていないということは、夜勤を続ける人の貢献が金銭面では十分に評価されきっていない可能性がある、ということです。だからこそ、続けると決めるなら「手当の額」だけでなく、回数を選べる仕組みや仮眠・明け休みといった非金銭の条件まで含めて、自分の負担に見合っているかを点検しておく意味があります。
仮眠・休憩は「制度として取れるか」を見る
夜勤手当と並んで、続けられるかを左右するのが仮眠・休憩の取りやすさです。
夜勤の負担は、拘束時間の長さだけでなく、その間に体を休められるかどうかで大きく変わります。規程上は仮眠時間が設定されていても、実際にはナースコールや急変対応で取れない、という声は珍しくありません。
ここで見るべきは「仮眠の規程があるか」ではなく、「その仮眠が実際に取れているか」です。職場を見極めるときは、次のような点を確認するとよいでしょう。
- 仮眠の時間帯に、フロアを離れて休める仮眠室があるか
- 仮眠中にコールを代わって受ける応援体制があるか
- 仮眠が取れなかったときに、勤務時間として扱われる/代替休憩が取れるか
- 夜勤帯の記録・残務が、休憩時間に食い込んでいないか
仮眠・休憩は健康と医療安全の両方に関わります。慢性的に仮眠が取れない状態が続くと感じるときは、一人で抱え込まず、後述する相談先も活用してください。
夜勤回数と「月平均72時間」の考え方
夜勤を続けられるかは、月の夜勤回数とも直結します。
一般病棟の入院基本料には、看護職員1人あたりの月平均夜勤時間数を72時間以下に抑えるという考え方(いわゆる「月平均72時間ルール」)があります。これは個人の上限ではなく病棟単位の平均で見る仕組みですが、夜勤負担が一部の人に偏らないようにするための目安として知っておくと役立ちます(Source: 日本看護協会「看護職の働き方改革」)。
一方で、2025年9月時点の一般病棟では、72時間を超える夜勤をしている看護職員の割合が33.9%にのぼり、夜勤時間が0時間の看護職員も6.7%いました(Source: 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」)。つまり、夜勤負担は職場や個人によってかなり差があるということです。
夜勤を続けられる職場かを見るときは、「自分が月に何回入っているか」だけでなく、「病棟全体で夜勤が特定の人に偏っていないか」「回数を選べる仕組みがあるか」もあわせて確認すると、長く続けられるかの見通しが立てやすくなります。
続けられる職場が用意している条件
2025年病院看護実態調査では、病院が看護職員(正職員)を確保するために導入している働き方も尋ねています。これらは「夜勤をやめさせるための制度」というより、夜勤を担う人の負担をやわらげ、続けられるようにするための受け皿として読み替えると、続ける側にとっての意味が見えてきます(Source: 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」)。
夜勤を続ける看護師さんがまず使えるのは、「夜勤回数や夜勤時間、曜日が選択できる」仕組みで、導入率は44.1%でした。体調やライフイベントに合わせて入る回数や曜日を動かせれば、夜勤そのものを手放さずに負担の山を低くできます。「短時間勤務(育児・介護休業法に定める場合を除く)」の39.3%も、夜勤を残したまま日勤側の拘束を軽くして体力の帳尻を合わせる調整に使えます。「本人の希望の専門領域・部署への配属」の38.7%は、同じ夜勤でも急変頻度や受け持ちの重さが部署で違うため、続けやすい持ち場を選ぶ手がかりになります。
一方で「日勤のみ」を導入する病院は54.7%と最も多く、「夜勤のみ」も31.2%、「兼業・副業を可能としている」病院も26.6%ありました(Source: 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」)。これらは夜勤を続ける人が直接使う手段ではありませんが、職場が働き方の幅をどこまで用意しているかの目安になります。回数や曜日を選べる選択肢が制度として用意され、しかも実際に運用されている職場ほど、夜勤を長く続けやすいと考えられます。
夜勤を続けられる職場かどうかは、次の条件がそろっているかで見分けやすくなります。
| 条件 | 確認すること |
|---|
| 夜勤手当 | 1回あたりの金額と、月回数による手取りの変化 |
| 夜勤明け翌日の休日 | 回復にあてられる時間が確保されるか |
| 仮眠・休憩 | 規程ではなく実際に取れているか/代替があるか |
| 夜勤回数 | 月の回数や曜日を選べる仕組みがあるか |
| 応援体制 | 急変・欠員時に支援が来るか |
| 記録・残務 | 夜勤明けの残業が常態化していないか |
夜勤手当が高くても、仮眠が取れず、明けで残業し、翌日も勤務が入る——という状態が続けば、長く続けるのは難しくなります。手当の額だけでなく、回復と休息がセットで確保されているかを見ることが大切です。
夜勤を続けられる職場かのチェックリスト
今の職場、または検討中の職場が「夜勤を続けられる条件」を満たしているかを、次の項目で確認してみてください。あてはまる数が多いほど、長く続けやすい職場と考えられます。
- 夜勤1回あたりの手当額と、月の回数による手取りの違いを把握できている
- 夜勤明けの翌日に勤務が入らない(または入っても調整できる)
- 仮眠室があり、仮眠中はコールを代わってもらえる
- 月の夜勤回数や曜日を、相談・調整できる仕組みがある
- 急変・欠員のときに、リーダーや他チームの応援が機能している
- 夜勤明けの記録・残務が、慢性的な残業になっていない
- 体調やライフイベントに応じて、一時的に回数を減らす相談ができる
すべてを満たす職場ばかりではありませんが、「どこが欠けているか」が分かれば、次の「今の職場で確認できること」につなげやすくなります。
いまの職場で確認できること
夜勤がつらいと感じたとき、すぐ辞める前に、今の職場で確認・相談できることがあります。大事なのは「夜勤が無理です」で終わらせず、続けるために何を変えたいかを具体化することです。
- 一定期間だけ夜勤回数を減らせるか(体調・育児・介護などの事情を添えて)
- 夜勤明けの翌日に勤務を入れない調整ができるか
- 仮眠が取れない原因(人員配置・コール対応)を一緒に確認できるか
- 夜勤帯の記録時間を見直し、明けの残業を減らせるか
- 手当・回数・休息の内訳を、看護部や人事に確認できるか
これらは、辞めるかどうかを決める前に、今の職場でまだ使える選択肢が残っていないかを確かめる作業です。心身の不調を感じているときは、産業医や上司に相談するほか、職場の外の公的窓口も利用できます。働く人のメンタルヘルス相談窓口「こころの耳」(電話相談 0120-565-455)や、各都道府県の総合労働相談コーナー(0120-601-556)では、匿名・無料で相談できます。
夜勤そのものがつらく、続けるかどうかから迷っている場合は、夜勤がつらいときの判断基準を整理した記事もあわせて読むと、自分の状態を整理しやすくなります。
「働き方を変える」で解決しやすいこと・しにくいこと
調整しても改善しないときは、夜勤回数の少ない職場や、勤務体制の異なる職場への異動・転職も選択肢になります。ただし、何が変わって何が変わらないかを分けて考えると、後悔の少ない判断につながります。
働き方を変えると解決しやすいこと
- 月の夜勤回数や曜日、二交代・三交代といった勤務形態の枠組み(選べる制度のある職場へ移れば調整できる)
- 仮眠室の有無や夜間の応援体制など、同じ「夜勤あり」でも職場ごとに差が出る環境面
- 夜勤明け翌日を休みにできるか、明けの記録・残務をどう運用しているかといった回復のしやすさ
- 自宅から職場までの距離や勤務地など、夜勤明けの体力回復を左右する生活面の条件
働き方を変えても解決しにくいこと
- 夜勤を続ける以上、深夜帯に働くこと自体の生体リズムへの負荷は、職場を変えても残ること
- 患者さんの容態を夜間に少人数で見守る責任の重さなど、看護の仕事そのものに伴う緊張
- 「今がしんどいから」という理由だけで動くと、移った先の夜勤体制で別の不満が出やすいこと
解決しやすいのは「夜勤の条件や枠組み」、解決しにくいのは「夜勤・看護という仕事の本質的な負担」です。自分が変えたいのがどちらなのかを分けて考えると、判断がぶれにくくなります。なお、日勤のみの職場でも残業や土日勤務が多い場合はあるため、夜勤がなくなる=楽になる、とは限らない点にも注意が必要です。
まずは、自分の手当と働き方を数字で確認する
「全国的にどうか」を見たあとは、自分自身の現在地を数字で確認しておくと、職場を比べるときの基準になります。はたらく看護師さんの給料コンパス(年収診断)を使うと、夜勤手当も織り込んだ今の年収が、同じ地域・経験年数・施設規模の中でどのあたりに位置するかを見られます。夜勤に月何回入って、その手当が年収にどれだけ効いているかを数字で押さえておけば、「この条件なら続けられる」「ここは交渉したい」という判断の土台ができます。
2026年の賃上げ・ベースアップ評価料が自分の給料にどう関わるかを知りたい場合は、2026年の賃上げを現場目線で確認する記事もあわせて読むと、待遇の全体像がつかみやすくなります。
「続けるのは難しいかもしれない」と感じたときは、夜勤を減らしながら収入を保つ方向もあります。夜勤を減らして収入を維持する方法を整理した記事で、続ける・減らすの両方を見比べてから判断すると、後悔の少ない選択につながります。
まとめ
2025年病院看護実態調査では、夜勤手当が2010年からほぼ横ばいであること、一般病棟で72時間を超える夜勤者の割合が33.9%いること、夜勤回数や曜日を選べる働き方を導入する病院が44.1%あることが示されました(Source: 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」)。夜勤を続けられるかは、根性ではなく、手当・仮眠・休息・回数という条件で決まります。
確認の3ステップは次のとおりです。
- 夜勤1回あたりの手当・仮眠・明け休み・回数を、チェックリストで点検する
- 給料コンパスなどで、自分の待遇が全国の中でどの位置かを数字で押さえる
- 改善が難しいなら、夜勤回数を選べる制度・仮眠体制・応援体制まで含めて、複数の職場を比較する
夜勤を続けるかどうかは、つらさの大きさだけでなく、今の職場で整えられる条件と、ほかの職場の夜勤環境を並べて判断しましょう。
よくある質問
夜勤手当は上がっているのですか?
看護師の月額基本給与は前年より上がっている一方で、定額の夜勤手当は2010年からほぼ横ばいが続いています。実額では二交代制の夜勤が2010年10,745円から2025年11,470円、三交代制の深夜勤が5,053円から5,211円と、15年でわずかな伸びにとどまっています(Source: 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」)。夜勤を多く担う場合は、基本給・賞与の伸びと夜勤1回あたりの手当を分けて、給与明細で確認しておくとよいでしょう。
夜勤手当が高ければ良い職場ですか?
手当の額だけでは判断できません。仮眠が実際に取れるか、夜勤明けの翌日に休めるか、急変・欠員時の応援体制があるか、明けの残業が常態化していないかも、続けられるかを左右します。手当と休息・回復がセットで確保されているかを見ることが大切です。
夜勤の回数に上限はありますか?
一般病棟の入院基本料には、看護職員1人あたりの月平均夜勤時間数を72時間以下に抑えるという考え方があります。これは個人の上限ではなく病棟単位の平均で見る仕組みです(Source: 日本看護協会「看護職の働き方改革」)。実際には72時間を超える夜勤をしている看護職員が33.9%いるという調査結果もあり、職場によって負担に差があります。回数が偏っていないか、回数を選べる仕組みがあるかを確認しましょう。
夜勤を減らしたいと言うのは甘えですか?
甘えではありません。体調と医療安全を守るための相談です。「無理です」で終わらせず、一定期間だけ回数を減らしたい、明けの翌日勤務を避けたい、仮眠が取れない原因を確認したい、といった形で具体的に伝えると、職場も調整しやすくなります。心身の不調を感じるときは、産業医や「こころの耳」(0120-565-455)など職場の外の窓口にも相談できます。
夜勤のある職場を続けるか、変えるか迷っています。何を基準にすればよいですか?
まず今の職場で、夜勤回数の調整・仮眠体制・明け休みの改善が相談できるかを確認します。そのうえで改善が難しいなら、夜勤回数や曜日を選べる制度のある職場と比較します。働き方を変えて解決しやすいのは「夜勤の条件や枠組み」、解決しにくいのは「夜勤・看護そのものの負担」です。自分が変えたいのがどちらかを分けて考えると、判断がぶれにくくなります。
参考資料


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