「訪問看護は稼げる」かどうかは、ステーション次第。ただし今年は見分けやすい
病棟の夜勤に疲れて訪問看護への転職を考えるとき、いちばん気になるのは「本当に給料は良いのか」「ステーションによる差が大きいと聞くけれど、どう見分ければいいのか」ではないでしょうか。
結論からお伝えすると、2026年は訪問看護に国の賃上げ原資が3系統で同時に動いている特殊な年です。①賃上げ・物価上昇対策の緊急補助金、②介護保険の処遇改善加算の新設(2026年6月1日施行)、③医療保険のベースアップ評価料の引き上げ——の3つです(Source: 日本訪問看護財団 告知・厚生労働省 令和8年度介護報酬改定)。原資が「ある」ことが公的に分かっているので、それを職員の給与に回しているかどうかでステーションの姿勢を見分けられる、転職検討者にとっては判断材料の多いタイミングです。この記事では、3つのお金の流れと、求人票・面接での確かめ方を整理します。
この記事でわかること
この記事の対象:訪問看護への転職を検討し始めた病棟・外来の看護師さん、すでに訪問看護で働いていて自分のステーションの処遇に疑問がある看護師さんです。
読むと判断できること:2026年に訪問看護へ流れている賃上げ原資の種類と、それが自分(または転職先)の給与に反映されるべきものなのかどうかです。
今の職場・候補先で確認すること:補助金の申請状況、処遇改善加算の届出区分、ベースアップ評価料の届出の有無です。
次にできること:面接で聞く質問リストと、訪問看護の年収相場に対する自分の立ち位置の確かめ方を案内します。
判断材料になる一次情報
2026年、訪問看護に流れている「3つのお金」
訪問看護ステーションは、医療保険と介護保険の両方から収入を得ています。いま動いている賃上げ原資を、看護師さん目線で表に整理します。
| 原資 | 中身 | 職員の給与との関係 |
|---|
| ① 緊急補助金(2025年12月〜2026年5月分) | 介護分野:訪問看護費請求額の13.2%を交付。医療分野:1ステーションあたり22.8万円(2026年3月1日までのベースアップ評価料届出が要件) | 医療分野の給付金は全額を賃金改善に充てる必要があると明記。介護分野も賃上げ・職場環境改善が目的 |
| ② 介護保険:処遇改善加算(2026年6月1日施行) | これまで対象外だった訪問看護に加算率1.8%で新設 | 加算額以上の賃金改善が算定の条件。配分対象には看護職員が含まれる |
| ③ 医療保険:ベースアップ評価料(2026年6月引き上げ) | 訪問看護ベースアップ評価料の点数引き上げ・区分拡充 | 評価料はそもそも職員の賃上げ(ベア)に充てるための仕組み |
つまり、①〜③をきちんと申請・届出しているステーションには、職員の賃金に回すことが前提のお金が入っています。②の制度の詳しい中身と給与明細での確認手順は訪問看護の処遇改善2026の解説記事で、施設で働く場合は介護報酬改定と施設看護師の給与明細の記事で整理しているので、本記事は「転職先選びにどう使うか」に絞ります。
求人票と面接で「賃上げ本気度」を見分ける質問
転職の場面では、次の質問がそのまま判断材料になります。どれも制度上の事実確認なので、聞くこと自体は失礼にあたりません。
- 「ベースアップ評価料は届け出ていますか」——医療保険の訪問看護を行うステーションなら届出可能な仕組みです。届け出ていない場合、緊急補助金(医療分野)の要件も満たせていないことになります
- 「介護の処遇改善加算は算定予定ですか。看護職員への配分方針はどうなっていますか」——2026年6月から算定できる新しい加算です。「算定しない」「配分は未定」という回答なら、原資を取りにいかない・配分が不透明なステーションだと分かります
- 「賃上げ・物価高騰の補助金は申請しましたか」——申請は事業所の判断です。申請していて、賃金改善の形(基本給か手当か一時金か)まで答えられるステーションは、お金の流れが透明です
- 「直近1年で基本給や手当の改定はありましたか」——制度より過去の実績のほうが確実な証拠です
回答が曖昧でも、それ自体が情報です。制度名を出して質問できる応募者は足元を見られにくくなる、という実利もあります。
給与以外で必ず確かめること
訪問看護の働きやすさは給与だけでは決まりません。あわせて次も確認してください。
- オンコールの体制と手当:月の回数、待機手当と出動手当の額、翌日の勤務調整。オンコールの実態は訪問看護のオンコール解説記事で詳しく扱っています
- 1日の訪問件数とエリア:件数のノルマ、移動手段、直行直帰の可否
- 教育体制:同行訪問の期間、病棟出身者の定着率
- 規模:常勤換算の人数が少ないステーションは、休みの取りやすさやオンコール頻度に直結します
病棟から訪問看護への移り方全体は病院から訪問看護へ移るときの確認記事と訪問看護への転職ガイドにまとまっています。
場所を変えると解決しやすいこと
同じ訪問看護でも、加算・補助金を取り切って職員に配分するステーションと、申請すらしないステーションの差は、個人の交渉では埋まりません。制度対応に積極的なステーションを選ぶこと自体が、給与と職場環境の改善になります。候補を集めるときは求人を探すも使ってください。
場所を変えても解決しにくいこと
訪問看護全体の加算率(介護分野1.8%)は病棟系サービスより低く設定されており、制度由来の賃上げ幅自体はどのステーションでも大きくはありません。「訪問看護に移れば必ず年収が上がる」わけではなく、基本給・訪問件数・オンコール手当の組み合わせで決まります。移る前に、訪問看護の給与水準に対する自分の希望年収が現実的かを給料コンパスの適正年収診断で確かめておくと、求人の条件を冷静に比較できます。
まとめ
2026年の訪問看護には、緊急補助金・処遇改善加算・ベースアップ評価料という3系統の賃上げ原資が動いています。原資があることは公的資料で確認できるので、「申請・届出をしているか」「職員にどう配分するか」を質問すれば、ステーションの賃上げ本気度をかなりの精度で見分けられます。給与以外のオンコール・訪問件数・教育体制とあわせて確認し、自分の希望年収の妥当性は給料コンパスで先に確かめてから動いてください。
よくある質問
補助金や加算のお金は、必ず自分の給与に入るのですか?
必ずではありません。医療分野の給付金は全額賃金改善に充てる必要があり、処遇改善加算も加算額以上の賃金改善が条件ですが、誰にいくら配分するかは事業所の計画次第です(Source: 日本訪問看護財団 告知)。だからこそ、入職前に配分方針を質問する価値があります。
面接で加算や補助金のことを聞いたら、印象が悪くなりませんか?
制度上の事実確認なので、質問自体が失礼にあたることはありません。むしろ制度を理解している応募者として受け取られるのが普通です。答えをはぐらかされた場合は、お金の流れが不透明な職場である可能性を考慮に入れてください。
今働いているステーションが補助金を申請していたか、後から確認できますか?
職員への個別通知義務はありませんが、医療分野の給付金は全額賃金改善に充てる必要があるため、申請していれば何らかの形(手当・一時金・ベア)で反映されているはずです。管理者に「賃上げ支援の給付金は申請しましたか。賃金改善はどの形で行われますか」と事実確認として聞くことができます。
訪問看護とクリニック、夜勤なしで働くならどちらが良いですか?
一概には言えません。訪問看護はオンコールの有無と手当、クリニックは基本給と昇給幅が比較のポイントになります。夜勤を減らす・なくす働き方の選択肢は夜勤・シフトの完全ガイドで整理しています。
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※本記事は2026年6月12日時点の公表資料に基づいています。補助金・加算の申請要件や期限は変更されることがあるため、最新情報は厚生労働省・日本訪問看護財団の公式資料でご確認ください。


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