「ニュースは賃上げ、でも自分の基本給は変わらない」と感じている方へ
「看護師の賃金が上がる」「処遇改善が進む」というニュースを目にする一方で、自分の給与明細の基本給はほとんど変わっていない――。そんなギャップに、もやもやしている看護師さんは多いのではないでしょうか。夜勤を重ね、責任も増えているのに、土台となる基本給が上がらない感覚は、働き続ける気力にも関わってきます。
その感覚は、データにも表れています。日本看護協会の「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」によると、病院に勤務する看護師(正規雇用・フルタイムの非管理職)の基本給月額は、2012年から2024年までの12年間で5,868円(約2.3%)の増加にとどまっています(Source: 公益社団法人日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査 報告書」)。12年でこの伸びは、物価の上昇を考えると、実感として「ほとんど上がっていない」に近い水準です。
この記事は、基本給が上がらない感覚を持つ看護師さんに向けて、「なぜ上がらないのか」という構造と、「職場ごとの差をどう見極めるか」を整理するためのものです。
この記事でわかること
この記事の価値:看護職員の基本給が長期で見てどれだけ上がっているか、その構造的な背景が分かります。
読むと判断できること:賃上げ報道と自分の基本給のギャップが、なぜ生まれるのかを理解し、職場ごとの差として捉えられるようになります。
今の職場で確認すること:自分の基本給と昇給の仕組みを、どこで確認すればよいかが分かります。
次にできること:基本給の土台を上げるために、職場選びで何を見ればよいかが整理できます。
読むポイントは次のとおりです。
- 基本給は12年でどれだけ上がったのか
- なぜ基本給は上がりにくいのか
- 「基本給が上がる職場」「上がりにくい職場」の違い
- 今の職場で確認できること
- 土台を上げるための職場選び
判断材料になる一次情報
この記事は、以下の一次情報をもとに整理しています。
この記事で確認したいポイントは、次のとおりです。
「賃上げ」のニュースと、自分の基本給が上がらない感覚のギャップは、気のせいではない。基本給の伸びは長期で見ると小さく、その差は職場ごとの賃金制度に表れる。
基本給は12年でどれだけ上がったのか
日本看護協会の「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」では、病院に勤務する看護師(正規雇用・フルタイムの非管理職)の基本給月額は、2012年の調査と比べて12年間で5,868円(約2.3%)の増加にとどまったと報告されています。一方で、税込給与総額は2万9,936円(約8.5%)増えており、協会は「ベースアップ(基本給の引き上げ)ではなく、手当などによる給与の引き上げが行われている」と分析しています(Source: 公益社団法人日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査 報告書」)。
具体的な水準として、勤続10年・31〜32歳・非管理職の看護師の基本給月額は、平均25万2,450円でした(Source: 公益社団法人日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査 報告書」)。基本給そのものの伸びが小さい一方で、給与総額が手当で底上げされている――この構造が、「働いているのに土台が上がらない」という実感につながっています。
この調査は、全病院および無作為抽出した訪問看護ステーションを対象とした施設調査と、協会会員から無作為抽出した看護職員を対象とした個人調査からなり、2025年1月から2月にかけて実施されたものです(Source: 公益社団法人日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査 報告書」)。
日本看護協会の秋山智弥会長は、「離職防止に賃金の引き上げは重要な要素。他業種の賃金に遅れを取らないよう、すべての看護職のさらなる処遇改善に向けて全力を尽くしていきたい」と述べています(Source: 公益社団法人日本看護協会「看護職員の処遇改善に向けて」)。基本給の伸び悩みは、協会自身が課題として挙げている問題です。
なぜ基本給は上がりにくいのか
基本給が上がりにくい背景には、いくつかの構造的な要因があります。
- 看護職の賃金は、賞与や夜勤手当などの手当が占める割合が比較的大きく、土台の基本給が伸びにくい
- 賃上げ施策の原資が、基本給ではなく一時金(賞与)で吸収される場合がある
- 病院の経営状況によって、賃上げの余力に差がある
- 昇給カーブが、中堅以降でなだらかになる職場が多い
賃上げのニュースが報じられても、その原資をどう配分するかは職場ごとの判断です。基本給に乗せる職場と、賞与や手当で調整する職場とでは、長期的な基本給の伸びが変わってきます。「上がらない」という感覚は、こうした構造と職場差から生まれています。
「基本給が上がる職場」「上がりにくい職場」の違い
同じ「看護師」でも、基本給の伸び方は職場によって変わります。違いを生むポイントを整理します。
基本給が上がりやすい職場の特徴
- 昇給の仕組みが賃金規程で明文化され、毎年の昇給額が見える
- 賃上げの原資を、賞与だけでなく基本給に反映している
- 役割・資格・経験に応じた手当や等級の制度が整っている
- 賃金規程を職員が閲覧でき、説明を受けられる
基本給が上がりにくい職場の特徴
- 昇給のルールが不透明で、毎年の昇給額が分からない
- 賃上げ分を一時金(賞与)だけで吸収し、基本給に乗せない
- 中堅以降の昇給がほぼ止まる
- 賃金規程の内容が職員に共有されない
「昇給の仕組みが明文化されているか」「賃上げを基本給に乗せるか、賞与で済ますか」――この2点が、長期的な基本給の差を一番大きく分けます。基本給は、賞与や手当の計算の土台にもなるため、土台が低いと総額にも効いてきます。
今の職場で確認できること
転職を考える前に、いまの職場で確認できることがあります。
- 賃金規程に、昇給のルール(毎年の昇給額・昇給の条件)が明記されているか
- 自分の基本給が、経験年数に対してどの水準か
- 賃上げ施策が、基本給に反映されているか、賞与だけか
- 役割・資格に応じた手当や等級制度があるか
- 賃金について、人事・労務に質問できる雰囲気か
基本給や昇給の話は、遠慮なく確認して構いません。賃金規程は職員が閲覧できることが原則です。まずは自分の昇給の仕組みを把握することが、判断の出発点になります。
「働き方を変える」で解決しやすいこと・しにくいこと
基本給の伸び悩みをきっかけに転職や働き方の見直しを考えるなら、何が変わって何が変わらないかを分けて考えると、後悔の少ない判断につながります。
場所を変えると解決しやすいこと
- 昇給の仕組みが明文化された、賃金制度の整った職場に移ること
- 賃上げを基本給に反映する法人で働くこと
- 役割・資格に応じた手当・等級のある職場を選ぶこと
場所を変えても解決しにくいこと
- 看護職全体の賃金水準という、業界全体の構造
- 基本給だけでなく、賞与・夜勤・残業を含めた総額で考える必要があること
- 求人票の年収例だけでは、昇給の伸びまでは分からないこと
転職で土台を上げられる余地はありますが、「どこかに行けば一気に上がる」ものでもありません。基本給・賞与・手当を含めた総額と、昇給の伸びまで含めて比べることが大切です。
まずは、カンゴさんに気持ちを整理してみる
「これだけ働いても基本給が変わらない」「ニュースは賃上げなのに、自分には関係ない」「給料の不満を口にするのは、はしたない気がする」。こうした気持ちは、職場では話しづらいものです。
はたらく看護師さんのカンゴさんには、匿名で気持ちを話せます。責任に見合う賃金を求めるのは、わがままではありません。給料のもやもやを、まず言葉にするところから一緒に整理してみてください。
「基本給の土台が上がる職場か」を知る材料に
基本給の伸びは、昇給の仕組みが明文化されているか、賃上げを基本給に乗せるかで決まります。賞与や手当で見かけの年収を整えていても、土台の基本給が低いままだと、長期では差が開きます。いまの職場の昇給が不透明なら、賃金制度の整った職場を知っておくことには意味があります。
いますぐ転職を決めなくても、ほかの職場の賃金制度を知っておくと、判断の材料になります。レバウェル看護のような看護師専門の転職紹介サービスでは、求人票だけでは分からない次のような点を、職場に確認して教えてもらえます。
- 昇給の仕組み(毎年の昇給額・条件)と、賃金規程の整備状況
- 賃上げが基本給に反映されているか、賞与だけか
- 役割・資格に応じた手当・等級制度の有無
- 基本給・賞与・手当を含めた、経験年数ごとの総額の目安
「いまが安いから」ではなく、「基本給の土台が伸びる場所はどこか」を考える材料として、選択肢を知っておくのがおすすめです。給料の全体像は看護師の給料を網羅した記事、上げ方の具体策は給料を上げる方法をまとめた記事、なぜ安く感じるのかは看護師の給料が安い理由を整理した記事が参考になります。続けるか迷う気持ちも併せて整理したい方は、「続けられるか不安」を整理した記事もあわせて読むと、賃金以外の軸も見えてきます。なお、この記事は基本給の「長期的な伸び」に焦点を当てたものです。2026年6月の診療報酬改定で給与明細が今すぐどう変わるかを確認したい方は、改定後の給与の見方をまとめた記事が役立ちます。
まとめ
賃上げのニュースが続く一方で、日本看護協会の調査では、病院に勤務する看護師(正規・フルタイムの非管理職)の基本給月額は12年間(2012~2024年)で5,868円(約2.3%)の増加にとどまっています(Source: 公益社団法人日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」)。「上がらない」という感覚は、気のせいではありません。
確認の3ステップは次のとおりです。
- いまの職場の賃金規程で、昇給の仕組み(毎年の昇給額・条件)を確認する
- 賃上げが基本給に反映されているか、賞与だけかを確認する
- 職場を比べるときは、基本給の昇給の伸びまで含めて、総額で考える
基本給は、賞与や手当の土台になる大事な部分です。ニュースの「賃上げ」に流されず、自分の昇給の仕組みを把握し、土台が伸びる場所を選んでいきましょう。
よくある質問
看護師の基本給は、長期で見てどれくらい上がっていますか?
日本看護協会の「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」によると、病院に勤務する看護師(正規・フルタイムの非管理職)の基本給月額は、2012年から2024年までの12年間で5,868円(約2.3%)の増加にとどまっています(Source: 公益社団法人日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査 報告書」)。一方で税込給与総額は約8.5%増えており、協会は基本給の引き上げ(ベースアップ)ではなく手当などによる引き上げが中心だと分析しています。
賃上げのニュースがあるのに、なぜ自分の基本給は変わらないのですか?
賃上げ施策の原資をどう配分するかは、職場ごとの判断だからです。基本給に乗せる職場もあれば、賞与(一時金)や手当で吸収する職場もあります。看護職は賞与や夜勤手当の割合が比較的大きく、土台の基本給が伸びにくい構造もあります。ニュースの数字と自分の基本給のギャップは、こうした配分と職場差から生まれています。
基本給が上がりやすい職場は、どう見分けますか?
昇給の仕組みが賃金規程で明文化され、毎年の昇給額が見えること、賃上げを賞与だけでなく基本給に反映していること、役割・資格に応じた手当や等級制度があることが目安です。逆に、昇給ルールが不透明、賃上げを一時金だけで吸収する、中堅以降で昇給が止まる職場は、長期的に基本給が伸びにくい傾向があります。
基本給と年収、どちらで職場を比べるべきですか?
両方を見るのが大切です。基本給は賞与や手当の計算の土台になるため、基本給が低いと総額にも影響します。一方で、実際の手取りは賞与・夜勤手当・残業手当を含めた総額で決まります。求人票の年収例だけでなく、基本給の水準と昇給の伸び、総額の両方で比べることをおすすめします。
転職すれば、基本給は上がりますか?
賃金制度の整った職場に移ることで、土台を上げられる余地はあります。ただし、「どこかに行けば一気に上がる」ものではありません。看護職全体の賃金水準という構造もあり、基本給・賞与・手当を含めた総額と、昇給の伸びまで含めて比べる必要があります。年収例だけで判断せず、昇給の仕組みまで確認することが、後悔しない選び方です。
参考資料


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