日勤のあとに深夜入りがある、準夜の翌朝が日勤になる、連勤の途中に夜勤が挟まる。そうした勤務表で働いている看護師さんに向けた記事です。2026年9月16日、厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会(第211回)で、労働時間のルールをめぐる議論が再開されました。資料には勤務間インターバル制度、連続勤務規制、変形労働時間制といった、交代制勤務に関わりの深い言葉が並んでいます。
最初に線を引いておきます。今回示されたのは「今後この論点を中心に議論してはどうか」という進め方の案と、その日に議論する論点の提示です。何かが決まったわけではなく、法律が変わったわけでもありません。いつから何が変わるのかという時期も、公表資料には記載がありません。
ですから、この記事では「こう変わります」という話はしません。代わりに、国で論点になっている項目を自分の職場に置き換えて、勤務表・就業規則・36協定・労使協定・年休管理簿のどこを見れば今の扱いが分かるかを確認表にしました。読み終えると、議論の結論を待たなくても、今の職場のルールを自分の言葉でメモできるようになります。
9月16日に示されたのは「議論の進め方の案」です
第211回労働条件分科会は、2026年(令和8年)9月16日の10時から12時に開かれました。厚生労働省の資料ページには、資料No.2-1「労働条件分科会における今後の議論の進め方(案)について」、資料No.2-2「労働時間法制の具体的課題に関する検討の論点について」、資料No.2-3(同じテーマの参考データ集)が掲載されています。
資料No.2-1のPDF4枚目(資料下部の頁番号は3)は、令和8年7月21日に閣議決定された日本成長戦略と骨太の方針2026、そして昨年1月からの分科会での議論を踏まえ、次の論点を中心に議論を行うこととしてはどうか、と問いかけています。並びは資料のとおりです。
- 勤務間インターバル制度
- 連続勤務規制
- 「つながらない権利」
- 裁量労働制
- 変形労働時間制
- 副業・兼業
- テレワーク・フレックスタイム制
- その他、昨年1月から本分科会で議論してきた論点
- 過半数代表者等
- 法定休日
- 年次有給休暇 等
同じ頁には「今後、月2〜3回程度の頻度で議論を行うこととしてはどうか」とも書かれています。どちらの文も語尾は「してはどうか」です。分科会に諮られた案であって、確定した日程や結論ではありません。
閣議決定には何と書いてあるのか
資料No.2-1のPDF2枚目(頁番号は1)は、日本成長戦略の該当部分を抜粋しています。交代制勤務に関わるのは次の二つの文です。
変形労働時間制については、他律的な要因に十分対応できていない現場の実態や、労働者の生活時間や予見可能性の確保にも留意しつつ検討を進める。
連続勤務規制や勤務間インターバル制度の法的位置付け、「つながらない権利」の在り方、副業・兼業に当たっての健康確保、テレワークの活用促進などについて、現場の実態や労使双方の立場を十分に踏まえて、検討を進める。
書かれているのは「検討を進める」までです。勤務間インターバルを何時間にするのか、連続勤務を何日までにするのかといった中身は、この抜粋のどこにもありません。
大臣は時期をどう説明したか
9月18日の厚生労働大臣会見では、労働時間法制のスケジュール感を問われた大臣が、総理からの指示に触れたうえで次のように答えています(上野大臣会見概要より)。
いつまでに、という具体的なお話があったわけではありませんが、労働政策審議会において、一昨日から議論を再開しました。今後検討のペースを上げていくこととしているので、その際には労使の皆様のご意見を十分にお聴きしながら、鋭意議論を進めていきたいと考えています。
読み取れるのは二点です。期限は示されていないこと、そして検討のペースは上げる方針であること。それ以上のことは、この会見からは分かりません。
読み違えやすい3つの点
一つ目は、論点に名前が挙がることと、規制が設けられることは別だという点です。「勤務間インターバル制度」が論点の先頭にあっても、それは議論の対象になるという意味にとどまります。資料No.2-3のPDF66枚目(頁番号は65)には、時間単位の年次有給休暇について、労働者側の「1日単位で休暇を確保することが重要」という意見と、使用者側の「上限日数を延長し、各企業の労使の判断に委ねることも選択肢の1つ」という意見が並んで整理されています。同じ論点でも立場によって方向が違い、どちらに落ち着くかは公表資料からは分かりません。
二つ目は、論点の一覧が看護師向けに作られたものではないという点です。裁量労働制やテレワーク・フレックスタイム制も同じ一覧に入っていますが、下の確認表には入れていません。病棟や外来の勤務表で自分の目で数えられる項目に絞ったためです。副業・兼業をしている方は、就業規則の副業に関する定めを別に確認してください。
三つ目は、現行のルールがすでにあるという点です。議論の行方とは関係なく、今の職場は今の法律と就業規則、労使協定で動いています。自分の職場がどの制度を使っているかを知らないままでは、将来何かが変わっても、自分にとって何が変わったのかを比べられません。
いまのルールはどうなっているか
編集部がe-Gov法令検索の条文で確かめた範囲を、論点と対応させて整理します(2026年9月19日確認)。条文の細かな解釈や例外には踏み込みません。
| 国の論点 | 現行の条文で確かめられたこと |
|---|
| 勤務間インターバル制度 | 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法2条1項は、事業主が「健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定」などの措置を講ずるように「努めなければならない」と定めています。努力義務で、時間数は条文にありません |
| 法定休日・連続勤務 | 労働基準法35条1項は毎週少なくとも1回の休日を求め、2項は4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者には1項を適用しないとしています |
| 変形労働時間制 | 労働基準法32条は1週40時間・1日8時間を原則とし、32条の2(1か月以内の期間)と32条の4(1か月を超え1年以内の期間)が、期間を平均して週の労働時間が枠に収まる定めをした場合の例外を置いています。32条の2は労使協定または就業規則その他これに準ずるもの、32条の4は労使協定が必要です |
| 時間外・休日労働 | 労働基準法36条1項は、過半数労働組合または過半数代表者との書面による協定(いわゆる36協定)を結び、届け出た場合に、その協定の定めによって労働時間を延長し、休日に労働させることができるとしています |
| 過半数代表者 | 労働基準法施行規則6条の2は、管理監督者でないこと、協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票・挙手等の手続で選ばれ、使用者の意向に基づき選出されたものでないことを要件としています。不利益な取扱いをしないようにすることも同条にあります |
| 年次有給休暇 | 労働基準法39条7項は、年休が10労働日以上付与される労働者について、うち5日を基準日から1年以内に時季を定めて与えることを使用者に求めています。39条4項は、労使協定がある場合に5日以内で時間単位の年休を認めています |
もう一つ、確認の土台になる条文があります。労働基準法106条1項は、就業規則と、32条の2・32条の4・36条・39条4項などの労使協定を、掲示・備え付け・書面の交付などの方法で労働者に周知させることを使用者に求めています。「36協定を見たい」「変形労働時間制の協定を見たい」と伝えることは、特別なお願いではありません。
確認表:国の論点を自分の職場に置き換える
表は上から順に進めると楽です。上の2行は手元の勤務表だけで始められ、下に行くほど人に聞く必要が出てきます。
| 論点(国の議論) | 自分の職場で見るもの | 誰に聞くか | メモすること |
|---|
| 勤務間インターバル制度 | 直近3か月の勤務表と、実際に退勤した時刻。日勤から深夜、準夜から日勤の並びを探し、前の勤務を終えた時刻から次の始業時刻までの時間を数える。就業規則に勤務間隔の定めがあるかも見る | 勤務表を組む師長・主任。規定の有無は総務・人事 | 最も短かった間隔(時間)、その並びが月に何回あったか、規定の有無 |
| 連続勤務規制 | 直近3か月の勤務表で、休みを挟まずに続いた最長の日数。夜勤明けの日を勤務日に入れる数え方と入れない数え方の両方で数える | 師長・主任。休日の定め方は総務・人事 | 最長連勤の日数(2通り)、その期間に夜勤が何回入っていたか |
| 法定休日 | 就業規則の休日の条文。休日が週単位で決められているか、4週単位か。勤務表のどの休みが法定休日にあたるか | 総務・人事 | 休日の決め方、法定休日の特定があるかどうか |
| 変形労働時間制 | 就業規則の労働時間の条文と、変形労働時間制の労使協定。1か月単位か、1年単位か、使っていないか。勤務表がいつ確定し、確定後の変更はどう扱われるか | 総務・人事。勤務表の確定日は師長 | 制度の種類、起算日、勤務表の確定日、確定後に変更があった回数 |
| 「つながらない権利」 | 休日や勤務時間外の電話・チャット・メールに関する院内ルール。緊急連絡網、勤務交代の依頼、業務連絡用グループの扱い | 師長、看護部 | ルールが文書であるか、直近1か月に休日の連絡が何回あり、応答を求められたか |
| 過半数代表者等 | 36協定の書面にある労働者側の署名者。過半数労働組合があるのか、過半数代表者なのか。代表者なら、いつ、どんな手続で選ばれたか | 総務・人事、労働組合、代表者本人 | 代表者の氏名と職位、選出の方法(投票・挙手・その他)、自分はその手続に参加したか |
| 年次有給休暇 | 就業規則の年休の条文と年休管理簿。時間単位年休の定めがあるか、年何日分か。自分の基準日、付与日数、残日数。取得時の賃金の計算方法 | 総務・人事 | 時間単位年休の有無と日数、基準日、この1年で使った日数、賃金の計算方法 |
勤務間隔は「勤務表の上」と「実際」の2本で数える
勤務表の終業時刻で数えた間隔と、実際に退勤した時刻で数えた間隔は一致しないことがあります。日本看護協会の「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」(2013年2月)は、勤務間隔を「一つの勤務の終了時(時間外勤務が発生する場合は、それを含めた終了時刻)から、次の勤務の開始時までの間の時間」と説明しています。残業があった日は、その分だけ間隔が短くなるという考え方です。
同ガイドラインは「勤務編成の基準」11項目の一つとして「勤務と勤務の間隔は11時間以上あける」を、別の項目として「連続勤務日数は5日以内とする」を挙げています。ただし、これは職能団体による提案で、法律上の義務ではありません。ガイドライン自身も、すべての項目を一度に満たさなければならないということではなく、各施設で優先順位を決めて可能な範囲で進めるよう求めています。11時間や5日という数字は、自分の数えた結果を眺めるときの物差しの一つとして使ってください。国の議論がこの数字を採用すると示した資料はありません。
勤務の並びと休息の関係は、夜勤後48時間の休息と連続日勤を自分の勤務表で確かめる記事で別の角度から整理しています。退勤時刻の記録が手元にない場合は、前残業や研修の時間を一週間書き出す手順が先になります。
変形労働時間制は「種類」と「勤務表の確定日」をセットで聞く
16時間の夜勤や長日勤のように、1日8時間を超える勤務が勤務表に組まれている職場があります。それがどの制度に基づいているのかは、就業規則か労使協定を見れば分かります。閣議決定の文言が「労働者の生活時間や予見可能性の確保」に触れていることを踏まえると、制度の種類に加えて、翌月の勤務表が何日前に確定するのか、確定後の変更がどのくらいあるのかも記録しておく意味があります。家族の予定や通院の予約を立てられるかどうかは、この二つに左右されるからです。
過半数代表者は「知っているかどうか」から始める
資料No.2-2は、過半数代表者について「不適切な選出の事例も見られる」としたうえで、選出手続などの要件が現在は労働基準法施行規則に定められているのみであることを示し、法律に規定することをどう考えるかを論点にしています。資料No.2-3のPDF17枚目(頁番号は16)には、信任で過半数代表者を選んだ事業所のうち、候補者を「使用者(事業主や会社)が候補者を決める」とした割合が60.6%だったという調査の速報値が載っています(全体n=747、調査時点は令和7年5月1日)。病院や看護師に限った数字ではありません。
自分の職場について最初に確かめたいのは、選び方の良し悪しよりも手前のことです。36協定に署名している労働者側の代表が誰なのかを、自分が知っているかどうか。残業や休日労働の枠を決める協定は、その人の署名で成り立っています。
時間単位年休は、まず就業規則にあるかを見る
資料No.2-2のPDF4枚目(頁番号は3)は、年次有給休暇について三つの論点を挙げています。育児休業からの復帰者や退職予定者など、年休を与えられる期間が短い労働者でも時季指定義務が5日となっている点、時間単位年休の上限日数(5日)、そして年休取得時に支払われる賃金を原則として「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」とすることです。いずれも「どのように考えるか」という問いの形で、方向は示されていません。
時間単位年休は労使協定があって初めて使える制度です。資料No.2-3のPDF72枚目と73枚目(頁番号は71と72)によると、厚生労働省「就労条件総合調査」での導入率は令和7年(2025年)に30.4%、業種別の「医療、福祉」では48.4%でした。調査対象は常用労働者30人以上の民営法人で、割合は企業単位です。上限日数の議論より先に、自分の職場に制度があるかどうかを確かめる必要があることが分かります。通院や子どもの行事に使いたい方は、就業規則の年休の章を開いてみてください。年休そのものが取りにくい場合の確認の順番は、有給が取れないときに我慢する前に確認したいことにまとめています。
聞く順番と、聞き方
確認は、角が立ちにくい順に進めます。
- 自分の手元で数える。勤務表、退勤時刻の記録、給与明細、配布済みの就業規則
- 師長・主任に、事実だけを聞く。「来月の勤務表は毎月何日に確定しますか」「日勤のあと深夜に入る並びは、病棟として避ける方針がありますか」
- 総務・人事に、文書の場所を聞く。「就業規則と36協定はどこで見られますか」「うちの変形労働時間制は1か月単位ですか」「時間単位の年休は使えますか」
- 労働組合や過半数代表者に聞く。「36協定の更新はいつですか」「意見を伝えるにはどうすればいいですか」
聞くときは、改善の要求と事実の確認を分けるのがこつです。最初の面談で「おかしいと思います」から入ると、相手は身構えがちです。「自分の勤務を整理していて、制度の名前を知りたい」という入り方なら、答える側の負担は小さくて済みます。数えた結果に気になる点があれば、そのあとで、数字を添えて相談すれば足ります。
メモには、患者さんの氏名や病状など個人が特定できる情報を書かないでください。必要なのは日付、勤務の種類、時刻、回数だけです。
議論の追い方
労働条件分科会の開催状況は、厚生労働省の「労働政策審議会(労働条件分科会)」のページに回ごとに掲載され、資料へのリンクが付きます。月2〜3回程度という頻度は案の段階ですが、そのとおりに進むなら、資料が出る間隔は短くなります。追うときに見るものを三つに絞ります。
- 議題の欄に、勤務間インターバル、連続勤務、法定休日、変形労働時間制、年次有給休暇のどれが載っているか
- 資料の語尾が「どのように考えるか」から「〜としてはどうか」「〜することが適当」へ変わっているか。変わっていれば、議論が具体化している合図になります
- 報告書や建議、法律案要綱といった名前の文書が出たか。これらが出るまでは、結論が出たとは言えません
資料No.2-1のPDF3枚目(頁番号は2)によると、分科会は令和7年1月21日のキックオフ以降、同年6月6日と10月27日に休日・連続勤務規制、勤務間インターバル、つながらない権利を、12月24日に上限規制、年次有給休暇、裁量労働制等を取り上げています。今回はその続きの再開であり、ゼロから始まった議論ではありません。
よくある質問
勤務間インターバルや連続勤務の上限は、いつから義務になるのですか?
決まっていません。9月16日の資料は論点の案を示したもので、義務とするかどうか、時間数や日数、時期のいずれも記載がありません。9月18日の大臣会見でも、いつまでにという具体的な話があったわけではないと説明されています。
日本看護協会の「11時間以上」は、守られていないと法律違反になりますか?
なりません。職能団体が提案する勤務編成の基準であり、法律上の義務ではありません。現行の法律で確かめられたのは、終業から始業までの時間の設定などに努めるという事業主の努力義務までです。
36協定や就業規則を見せてほしいと言うのは、おかしなことですか?
おかしなことではありません。労働基準法106条1項は、就業規則と36協定などの労使協定を労働者に周知させることを使用者に求めています。院内の掲示、共有フォルダ、冊子など、置き場所は職場ごとに違うので、総務・人事に場所を尋ねるのが早道です。
数えたあとで迷ったら
数えてみた結果、間隔の短い並びが続いていた、連勤が思ったより長かった、という方もいるはずです。そのときに最初にすることは、職場を変える決断ではなく、数えた事実を持って勤務表を組む人に相談することです。並びの入れ替えや夜勤回数の調整は、今の職場の中でできることがあります。
夜勤のこと、休みのこと、体調や家庭のことが絡まって、どこから相談すればよいか見えにくいときは、お悩み診断で気がかりを一つずつ切り分けてから、この確認表の該当する行に戻ってきてください。
参考資料
未確認の事項:第211回分科会の議事録は最終確認日の時点で確認できておらず、当日の委員の発言や、進め方の案が了承されたかどうかは書いていません。勤務間インターバルの時間数、連続勤務の上限日数、時間単位年休の上限の見直し幅、法改正の時期は、公表資料に記載がないため書いていません。夜勤明けの日を休日として扱えるかどうか、小規模な診療所の労働時間の特例など、条文だけでは判断できない取扱いにも触れていません。看護師に限った連勤日数や勤務間隔の統計は、今回の資料にはありません。
最終確認日:2026年9月19日。この記事は議論の入口を伝えるもので、制度の変更を予告するものではありません。自分の勤務が法律に沿っているかの判断は、就業規則と労使協定の実物を確かめたうえで、職場の担当部署や労働基準監督署などの公的な窓口に相談してください。
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