「仕事の量」が下がり、「対人関係」が上がった
厚生労働省が2026年8月7日に公表した令和7年労働安全衛生調査(実態調査)に、働く人が何にストレスを感じているかを尋ねた項目があります。有効回答は8,393人。常用労働者を10人以上雇用する民営事業所で働く人を無作為に抽出した調査で、10人未満や公営の事業所で働く人は含まれません。
現在の仕事や職業生活について、強い不安・悩み・ストレスと感じる事柄がある人は67.5%でした。前年の68.3%からわずかに下がっています。しかし中身を見ると、前年とは違う動きが出ています。
| ストレスの内容(主なもの3つ以内) | 令和6年調査 | 令和7年調査 | 差 |
|---|
| 仕事の量 | 43.2% | 39.5% | −3.7pt |
| 仕事の失敗、責任の発生等 | 36.2% | 39.5% | +3.3pt |
| 対人関係(セクハラ・パワハラを含む) | 26.1% | 32.9% | +6.8pt |
| 役割・地位の変化等 | 19.8% | 17.7% | −2.1pt |
| 会社の将来性 | 22.2% | 20.5% | −1.7pt |
| 雇用の安定性 | 11.2% | 7.6% | −3.6pt |
いちばん動いたのが対人関係です。6.8ポイントの上昇で、前年は4番目だった項目が3番目に上がりました。前年トップだった「仕事の量」は3.7ポイント下がり、「仕事の失敗、責任の発生等」と同率で並んでいます。
注意したいのは、この項目が「主なもの3つ以内」を選ぶ形式だという点です。「仕事の量」を挙げた人が減ったことは、実際の業務量が軽くなったことを意味しません。他により強く感じる事柄があれば、そちらが選ばれます。
言えるのは、強いストレスの中身として何を上位に挙げるかの構成が変わったということです。標本調査の1年分の差であり、統計的な有意性が示されているわけでもありません。それでも、対人関係が6.8ポイントという幅で動き、順位が入れ替わったことは押さえておく価値があります。
この記事で分かること
- ストレスの内容として何が上がり、何が下がったのか
- 女性・年代・就業形態によって、この傾向がどう違うのか
- この調査を看護職の数字として読んではいけない理由
- 「人間関係がしんどい」を、もう少し細かく言い分けるための枠組み
- 記録を残しておくべき状況と、そうでない状況の線引き
つらさが続いている場合の相談先を先に置きます。職場では上司以外の相談窓口と産業医、外部では都道府県労働局と労働基準監督署の総合労働相談コーナーです。職場を変えるかどうかの整理は看護師の悩み診断へ。
女性のほうが、対人関係を挙げる割合が高い
性別で分けると、差がはっきり出ます。
| 区分 | 強いストレスあり | 仕事の量 | 対人関係 | 仕事の失敗・責任 |
|---|
| 男性 | 67.9% | 35.4% | 29.1% | 33.4% |
| 女性 | 66.9% | 44.6% | 37.6% | 27.3% |
ストレスを感じている人の割合そのものは、男女でほとんど変わりません(67.9%対66.9%)。しかし内容は違います。女性は「仕事の量」44.6%と「対人関係」37.6%が高く、男性は「仕事の失敗、責任の発生等」33.4%が女性の27.3%を上回っています。
看護職は女性が多い職種です。ただし、女性全体の傾向がそのまま看護職に当てはまるとは限りません。産業も職種も混ざった集計なので、ここでは女性という区分では量と人間関係が上位に来ているという事実の確認にとどめます。
年代別も見ておきます。対人関係を挙げた割合は、30代37.1%、40代36.8%が高く、20代26.1%、60歳以上28.5%は相対的に低くなっています。
| 年代 | 強いストレスあり | 仕事の量 | 対人関係 |
|---|
| 20歳未満 | 39.7% | 5.2% | 22.5% |
| 20〜29歳 | 72.0% | 51.6% | 26.1% |
| 30〜39歳 | 69.0% | 43.0% | 37.1% |
| 40〜49歳 | 71.5% | 38.9% | 36.8% |
| 50〜59歳 | 66.0% | 34.6% | 31.5% |
| 60歳以上 | 54.5% | 27.3% | 28.5% |
20代は「仕事の量」51.6%が突出していて、対人関係は26.1%にとどまります。30代・40代では量が下がり、対人関係が上がります。ただし対人関係は30代の37.1%がピークで、50代31.5%、60歳以上28.5%と下がっていきます。年代が上がるほど一本調子で上がる、という形ではありません。
そして重要な点として、これは異なる年代の人を同じ時点で比べた横断調査です。 同じ人を追跡したものではないので、「年齢を重ねるとストレスの中身が量から関係へ移る」という個人の経年変化を示すものではありません。世代による違いや、その年代まで働き続けている人の構成の違いが反映されている可能性もあります。
就業形態でも違う
正社員・契約社員・パートタイム・派遣で分けると、また別の顔が出ます。
| 就業形態 | 強いストレスあり | 仕事の量 | 対人関係 |
|---|
| 正社員 | 69.1% | 43.7% | 32.5% |
| 契約社員 | 58.8% | 24.5% | 37.8% |
| パートタイム労働者 | 61.7% | 26.1% | 38.5% |
| 派遣労働者 | 53.5% | 35.6% | 30.1% |
ストレスを感じている人の割合は正社員が最も高い(69.1%)のですが、対人関係に限るとパートタイム38.5%、契約社員37.8%が正社員32.5%を上回ります。
ただし、非正規全体をひとくくりにはできません。派遣労働者は「仕事の量」35.6%が「対人関係」30.1%を上回っており、パートタイムや契約社員とは並びが逆です。「非正規は量より関係」という整理は、派遣には当てはまりません。
それでも、パートタイムと契約社員で対人関係が正社員より高いという事実は残ります。非常勤やパートで働く看護職にとって、この点は知っておく価値があります。勤務時間を短くすることと、人間関係の負担が軽くなることは、別々の話だということです。なお、これは異なる就業形態の人を同じ時点で比べた結果であって、勤務時間を減らせばこうなるという変化を示したものではありません。
働き方を変えることで何が減って何が減らないのかは、常勤か非常勤かで迷うときの考え方で条件面から整理しています。
この数字を看護師の数字として使わないでください
ここは慎重に扱う必要があります。この調査は全産業を対象にしたもので、看護職や医療・福祉に限定した集計は公表されていません。
前の節までに挙げた数字は、すべて全産業の労働者を集計したものです。「看護師の32.9%が人間関係にストレスを感じている」という言い換えはできません。看護職に絞れば数字はもっと高いかもしれませんし、低いかもしれません。この調査からは分かりません。
では何に使えるのか。自分の感じているものが、世の中一般でどう位置づくかの目安です。
「人間関係がしんどいと感じるのは自分の弱さではないか」と考えてしまう人は少なくありません。全国で強いストレスを感じている人のうち3人に1人が対人関係を挙げていて、しかもその割合が1年で6.8ポイント上がっている。この事実は、少なくとも「自分だけの問題」という受け取り方を弱めてくれます。
「人間関係がしんどい」を分解する
ここからが実務的な部分です。この調査の選択肢は「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」という一つのくくりですが、実際に起きていることは同じではありません。次にどう動くかは、どの種類なのかで変わります。
| 種類 | 具体的な状況 | 次の一手 |
|---|
| 相性・やりにくさ | 特定の相手と話がかみ合わない、指示の出し方が合わない | シフトや組み合わせの調整を相談する |
| 役割の不明確さ | 誰がどこまでやるかが曖昧で、そのたびに摩擦が起きる | 業務分担の明文化を提案する |
| 指導・教育の負担 | 後輩指導と自分の受け持ちが両立しない | 指導の時間と体制を管理者と確認する |
| 一方的な言動 | 人格を否定される、大声で叱責される、無視される | 記録を残し、相談窓口へ |
| 性的な言動 | 身体接触、性的な発言、関係の強要 | 記録を残し、相談窓口へ |
上の二つと下の二つでは、対応がまったく違います。相性や役割の問題は調整で動かせる余地がありますが、一方的な言動や性的な言動は、調整の対象ではありません。 後者を「相性の問題」として処理しようとすると、状況は変わらないまま消耗だけが続きます。
自分がどこにいるのかを見分ける目安として、次の三つを使ってみてください。
- 業務上の必要性で説明がつくか。 指導の内容として説明できる範囲を超えていないか、を考える軸です。ただしこれ一つで判定できるものではありません。
- いつ、どこで、誰が、何を言ったか。 事実を時系列で書き出しておきます。
- 心身や業務にどんな影響が出ているか。 眠れない、出勤前に動悸がする、といった変化も記録に含めます。
これはハラスメントかどうかを自分で判定するための基準ではありません。相手が特定の一人でも、目撃者のいない場面でも、該当し得ます。パワーハラスメントの判断は、優越的な関係を背景としているか、業務上必要かつ相当な範囲を超えているか、就業環境が害されているかを、経緯や頻度も含めて総合的に見るものとされています。目撃者の有無だけで切り分けず、相談窓口で個別に確認してください。一つ目は特に重要です。指導と叱責の境目で悩む人は多いのですが、業務上必要な範囲を超えているかどうかが、制度上の判断でも一つの軸になります。
記録が効くのは、どの段階か
一方的な言動や性的な言動に該当しそうな場合、記録を残しておくことが後の選択肢を広げます。該当するかどうか自分で判断がつかない段階でも、記録は残しておいてください。後から「あのとき書いておけば」となる場面のほうが多いからです。
記録が効くのは、第三者に説明する場面が来る可能性があるときです。相談窓口、労働局、あるいは転職先での説明。そのとき「いつ・どこで・誰が・何を言ったか」が残っているかどうかで、話の通り方が変わります。勤務の組み方を調整してもらうだけで済む場合は、詳細な経緯まで書き起こす必要はありません。ただし、それで済むかどうかは解決したあとに分かることが多いので、迷う段階では残しておくほうが安全です。
何をどう残せばよいかは、職場トラブルの記録を残すときの実務で整理しています。職場の中で解決しない段階に来ているなら、看護師の労働問題はどこに相談するかで外部の窓口をまとめています。
まだそこまでではない、日々のやりにくさをどうにかしたいという段階なら、職場の人間関係に悩む看護師さんへのほうが近いはずです。
相談先はあるのに、相談した人は減っている
同じ調査には、ストレスを誰に相談しているかという項目もあります。ここに、今年いちばん気になる動きが出ています。
| 項目 | 令和6年調査 | 令和7年調査 |
|---|
| 相談できる人がいる | 94.6% | 94.8% |
| (相談できる人がいる人のうち)実際に相談したことがある | 74.7% | 71.2% |
相談できる相手がいる人はほぼ変わらず95%前後なのに、実際に相談した人は3.5ポイント下がりました。 対人関係のストレスが6.8ポイント上がった年に、相談行動のほうは減っている。相談先の有無ではなく、相談するかどうかのところで何かが起きている可能性があります。
ただし、これも1年分の変化です。相談する必要がなかった人が増えたのか、相談しにくくなったのかは、この調査では区別できません。
相談相手の内訳も見ておきます。
| 相談できる相手(複数回答) | 令和6年 | 令和7年 |
|---|
| 家族・友人 | 68.6% | 74.8% |
| 上司 | 65.7% | 63.8% |
家族・友人が6.2ポイント上がり、上司は1.9ポイント下がっています。実際に相談した相手でも、家族・友人が62.1%から68.3%へ上がり、上司は58.9%から56.6%へ下がりました。
ただし、これは別々の標本を同じ設問で調べた結果です。同じ人の相談先が職場の外へ移ったことを示すものではなく、集計としての構成が変わったという読み方にとどめてください。
男女で相談相手の並びが違う点も押さえておく価値があります。
| 区分 | 1位 | 2位 |
|---|
| 男性(相談できる相手) | 家族・友人 71.0% | 上司 66.6% |
| 女性(相談できる相手) | 家族・友人 79.1% | 同僚 68.6% |
男性は上司が2位に来るのに対し、女性は同僚です。女性の場合、職場内の相談先が縦(上司)ではなく横(同僚)に向いている構図です。実際に相談した相手でも同じ並びで、女性は家族・友人73.7%、同僚58.9%となっています。
これは看護職の現場感覚と重なる部分があるかもしれません。同じ勤務帯を回っている同僚どうしのほうが状況を説明しなくても伝わる、という事情は想像できます。ただし、横の相談だけで完結する構造には弱点もあります。シフトの調整、業務分担の見直し、配置の変更といった、実際に環境を変える決定は、同僚どうしでは動かせません。同僚に話して楽になることと、状況が変わることは別です。
就業形態別では、契約社員が特徴的でした。相談できる人がいる割合は92.3%とそれほど低くないのに、実際に相談したことがある割合は60.6%で、正社員の71.9%を大きく下回ります。相手はいるが、相談していないという状態が最も強く出ている層です。
量が減っても、しんどさは消えないことがある
この調査で考えさせられるのは、「仕事の量」を挙げた人が3.7ポイント下がっているのに、ストレスを感じている人の割合が67.5%とほとんど変わっていない点です。
ただし前述のとおり、これは「主なもの3つ以内」を選ぶ形式の別々の標本による調査です。業務量そのものが減ったことを示すものではありませんし、量の負担が軽くなってもストレスは残る、という因果を確かめたものでもありません。 言えるのは、二つの数字が同じ年に別方向へ動いた、というところまでです。
これは職場を選ぶときにも使える視点です。求人票に書かれている残業時間や夜勤回数は、量の指標です。それが改善されている職場であっても、人間関係の負担は別の話として存在します。数字で比較できる条件と、数字にならない条件を分けて見ておく必要があります。
求人票から読み取れることと読み取れないことの線引きは、看護師の求人票、どこを見れば失敗しないかで整理しています。
求人票に書かれている残業時間や夜勤回数は、数字で比較できる条件です。一方、人間関係の負担は求人票からは読み取れません。どちらも確認したいなら、比較できる条件と、面接や見学で聞くしかない条件を分けて扱う必要があります。
相談を「効く相談」にするために
相談した人が減っているという数字を見て、「もっと相談しましょう」と結ぶのは簡単ですが、それだけでは足りないと思います。相談しても状況が変わらなかった経験があるから相談しない、という人が一定数いるはずだからです。
そこで、相談を状況の変化につなげるための整理をしておきます。相談には、聞いてもらうための相談と、動かすための相談があります。 混ぜると、どちらも中途半端になります。
聞いてもらうための相談は、相手を選びません。家族でも友人でも同僚でもよく、この調査で家族・友人が74.8%と最多なのは自然な結果です。目的は状況の変化ではなく、自分の中で整理をつけることにあります。
動かすための相談は、相手が限られます。シフトを組んでいる人、配置を決める人、業務分担を変えられる人。そして伝え方も変わります。
| 項目 | 聞いてもらう相談 | 動かす相談 |
|---|
| 相手 | 誰でもよい | 決定権のある人 |
| 内容 | 感じていること | 起きている事実 |
| 求めるもの | 明示しなくてよい | 具体的に言う |
| 準備 | 不要 | 日付・回数・影響を整理 |
動かす相談で効くのは、感情ではなく事実と、求めることの具体性です。「あの人がつらい」ではなく「この2か月で申し送りの場で3回、他のスタッフの前で強い口調の指摘があった。組み合わせを変えてほしい」という形にすると、相手が判断できる材料になります。
そして、動かす相談をする前に事実を整理しておくと、話が早く進みます。これは記録の話につながります。
よくある質問
Q. 対人関係が増えたのは、ハラスメントが増えたということですか。 A. この選択肢は「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」という一つのくくりなので、内訳は分かりません。相性のやりにくさとハラスメントが同じ選択肢に入っているため、ハラスメントだけが増えたとは言えません。また「主なもの3つ以内」を選ぶ形式なので、選ばれた割合の変化は、他の項目との相対的な位置づけの変化も含みます。
Q. 看護師に限った数字はありますか。 A. この調査では公表されていません。産業別・年代別・性別・就業形態別の集計はありますが、職種別の集計はありません。
Q. ストレスを感じている人の割合が下がったのは、良くなったということですか。 A. 68.3%から67.5%への0.8ポイントの変化です。調査対象の事業所や労働者は毎年入れ替わるため、この程度の差を改善と読むのは慎重にしたほうがよいでしょう。
Q. パートで働けば人間関係のストレスは減りますか。 A. この調査では、対人関係を挙げた割合はパートタイム労働者38.5%が正社員32.5%より高くなっています。勤務時間を短くすることで量の負担は下がりますが、対人関係の負担が下がるとは限りません。
Q. 相談したいのですが、職場に知られたくありません。 A. 都道府県労働局の総合労働相談コーナーなど、職場を経由せずに相談できる窓口があります。相談だけであれば、その事実が勤務先に伝わることはありません。
参考資料
- 厚生労働省「ハラスメントの定義」(あかるい職場応援団) https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/definition/about
- 厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r07-46-50b.html
- 厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)概況」(第17表) https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r07-46-50_gaikyo.pdf
この調査は全産業の労働者を対象としたものであり、看護職に限定した集計ではありません。心身の不調が続く場合は、産業医や医療機関にご相談ください。