あなたが転職サイト経由で入職すると、病院は年収の約2割を払っている
転職を考え始めた看護師さんがまず迷うのが、「転職サイト(紹介会社)に登録すべきか」です。判断の前に、知っておくべき事実が1つあります。紹介会社経由で入職が決まると、病院・施設は紹介会社に手数料を払います。その平均は、看護分野で就職者の年収の21.4%——年収500万円なら約107万円です(Source: 厚生労働省「職業紹介事業における職種別手数料、離職状況について」令和6年度実績)。
規模も大きく、2026年3月31日に公表された厚労省の最新集計では、看護師・准看護師の紹介に支払われた手数料は2024年度で約598億円に達しています(Source: 厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」)。この構造を知らないまま登録すると、紹介会社のペースで転職活動が進んでしまうことがあります。逆に、仕組みと最近の規制強化を知っていれば、紹介会社を「自分のための道具」として安全に使えます。この記事ではその知識を一通り渡します。
この記事でわかること
この記事の対象:転職サイト・紹介会社に登録するか迷っている看護師さん、すでに登録していて営業対応に違和感がある看護師さんです。
読むと判断できること:紹介会社のお金の流れ、ここ2年で強化された規制の中身、信頼できる会社・担当者の見分け方、紹介経由と直接応募の使い分けです。
今できること:登録前に「人材サービス総合サイト」で各社の手数料率と離職率を見る方法を案内します。
次にできること:登録前に自分の市場価値を把握し、紹介された求人を自分の基準で比較する準備を整えます。
判断材料になる一次情報
紹介会社のお金の流れを30秒で理解する
仕組みはシンプルです。
- あなた(求職者)は無料で登録し、求人紹介・面接調整・条件交渉の支援を受ける
- 入職が決まると、病院・施設が紹介会社に手数料(看護分野の平均は年収の21.4%)を払う
- つまり紹介会社の売上は「あなたを入職させること」で発生する
ここから2つのことが導けます。第一に、良い面:あなたは1円も払わずプロの支援を受けられ、紹介会社には「あなたが早期離職しない職場に入職させる」動機もあります(後述の返戻金の仕組みのため)。第二に、注意すべき面:担当者には「早く・手数料の高い求人で決めたい」という構造的な動機もあるため、急かされたときに立ち止まる基準を自分で持つ必要があります。
なお、「紹介手数料が病院の人件費を圧迫し、看護師の給与原資を削っている」という指摘が病院団体などから出ているのも事実で、日経の報道では医療・介護分野の手数料総額は10年で2.4倍の1,000億円超とされています。働く側にできるのは、この構造を理解したうえで、手数料に見合う支援をする事業者を選ぶことです。
ここ2年で変わったルール:お祝い金禁止・手数料開示・許可取消
紹介ビジネスへの規制はこの数年で段階的に強化されています。看護師さんに関係する変更を時系列で整理します。
| 時期 | 変わったこと | あなたへの意味 |
|---|
| 2021年4月 | 医療・介護・保育分野で、「お祝い金その他これに類する名目」で社会通念上相当な程度を超える金銭等を提供して求職を勧奨することが指針で禁止。就職者(無期雇用)への入職後2年間の転職勧奨も禁止 | 「お祝い金◯万円」をうたう紹介サービスは、この指針に反している可能性が高い |
| 2025年1月〜 | 上記ルールが職業紹介事業の許可条件に順次追加。違反を継続・反復する事業者は許可取消の対象 | 悪質事業者は市場から退場させる枠組みができた |
| 2025年4月 | 有料職業紹介事業者に、職種ごとの平均手数料率の実績を「人材サービス総合サイト」に掲載する義務。返戻金・違約金の定めの明示義務も強化。求人サイト等のお祝い金も原則禁止に | あなたが各社の手数料率・離職率を見比べられるようになった |
(Source: 厚生労働省 職業安定法施行規則等改正・需給調整事業課資料)
特に実用的なのが2025年4月の開示義務です。厚労省の「人材サービス総合サイト」では、事業者ごとの手数料率実績や、紹介した人の6か月以内離職率(看護分野の平均は10.2%)を確認できます。登録を検討している会社の名前で検索し、離職率が平均より大きく高い会社は避ける——これだけで失敗の確率を下げられます。
信頼できる会社・担当者を見分けるチェックリスト
ルールを踏まえると、見分けるポイントは具体的になります。
会社を見る
- 「お祝い金」「転職するだけで◯万円」をうたっていないか(うたっていれば指針違反の可能性が高い)
- 厚労省の「医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者」認定を受けているか。認定の必須基準には、就職後6か月以内に離職した場合の返戻金制度を設けて明示することが含まれています(返戻金は法律上の一律義務ではなく、認定基準である点は正確に理解してください)
- 人材サービス総合サイトでの手数料率・離職率の開示内容
担当者を見る
- 「今決めないと埋まります」と急かすだけで、求人票の根拠(離職率・夜勤体制・残業実態)を答えられない
- あなたの希望(夜勤回数・通勤・科目)より、特定の求人への誘導が先に来る
- 入職後2年以内なのに「もっと良いところがある」と転職を勧めてくる(指針で禁止された転職勧奨の可能性)
- 逆に、条件の悪い情報(残業実態・離職理由)も率直に伝えてくれる担当者は、長く付き合う価値があります
紹介経由と直接応募の使い分け
紹介会社は万能ではありません。次のように使い分けるのが現実的です。
- 紹介会社が向く場面:在職中で時間がない、条件交渉が苦手、複数の求人を効率よく比較したい、非公開求人を見たい
- 直接応募が向く場面:行きたい病院が明確に決まっている場合。病院側の手数料負担がないため、採用のハードルが下がる可能性があります
- どちらでも必須の準備:自分の希望条件の優先順位と、現在の年収の妥当性の把握です。紹介された求人の「年収◯万円」が高いのか普通なのかを判断する物差しとして、先に給料コンパスの適正年収診断で自分の適正年収を確かめておくと、担当者との会話を自分のペースで進められます
転職活動全体の手順は看護師転職の完全ガイドで、転職市場の現状は2026年の転職市場の見方の記事で整理しています。退職の切り出し方やタイミングは転職・退職実務の完全ガイドを参照してください。
まとめ
紹介会社経由の入職では、病院が年収の約2割(看護分野平均21.4%)の手数料を払っており、その総額は看護師・准看護師だけで年約598億円に上ります。2021年からのお祝い金規制、2025年からの許可条件化と手数料開示義務で、悪質な事業者を見分ける材料は公開されるようになりました。登録前に人材サービス総合サイトで手数料率と離職率を確認し、お祝い金をうたう事業者を避け、自分の適正年収を給料コンパスで把握してから使う——この3つで、紹介会社はあなたの味方になります。
なお、当サイトにも紹介サービスの広告・アフィリエイトリンクが含まれます(各ページにPR表記があります)。その立場も含めて、上記のルールと見分け方は読者のみなさんがどのサービスを使う場合にも当てはまる公的な基準として書いています。
よくある質問
紹介手数料は、自分の給料から引かれているのですか?
直接引かれることはありません。手数料は求人側(病院・施設)が払います。求職者からの手数料徴収は職業安定法で原則禁止されています。ただし、病院の採用コストが増えること自体は事実なので、「紹介経由だと採用を渋られる場合がある」「直接応募を歓迎する病院がある」という形で間接的に影響することはあります。
「お祝い金がもらえる」というサービスを見つけました。使ってもいいですか?
2021年4月以降、医療・介護・保育分野では、お祝い金などの名目で社会通念上相当な程度を超える金銭等を提供して求職申込みを勧奨することは指針で禁止されており、2025年からは求人サイト等にも原則禁止が広がっています(Source: 厚生労働省 指針改正)。お祝い金を前面に出す事業者は、規制に正面から反している可能性が高く、紹介の質の面でもおすすめできません。
担当者に「今すぐ決めて」と急かされています。断ると不利になりますか?
不利になりません。応募・内定承諾の判断はあなたの権利です。「就業規則と労働条件通知書を確認してから返事します」と伝えて問題ありません。それで対応が悪くなる担当者なら、担当変更や他社への切り替えを検討してください。
6か月以内に辞めたら、病院に手数料が返ってくるというのは本当ですか?
返戻金制度を設けている紹介会社の場合は、在籍期間に応じた一定割合が病院に返金されます。これは全事業者の法的義務ではなく、設けている場合の明示義務と、厚労省の適正事業者認定の必須基準(6か月以内離職時の返戻金制度とその明示)として広がっている仕組みです。あなたに返金義務が生じるものではありません。
---
※本記事は2026年6月12日時点の公表資料に基づいています。制度の詳細は厚生労働省の最新資料でご確認ください。当ページには広告(PR)が含まれます。


※ 当サイトはアフィリエイトプログラムに参加しています