「常勤の穴をパートで埋めている」という感覚は、数字にも出ています
厚生労働省が2026年8月31日に公表した「令和7年雇用動向調査結果の概況」で、医療・福祉は2025年の離職者数が1,200.2千人と、16の産業の中で最も多くなりました。しかも、就業形態別に見ると、一般労働者(いわゆる常勤・フルタイム)は入職率13.1%に対して離職率13.6%で、離職が入職を上回る「離職超過」です。一方、パートタイム労働者は入職率17.6%、離職率15.9%で、入職が上回っています。
この記事は、「同期がまた辞めた」「常勤が減ってパートで回している」と感じている病棟・施設の看護師の方に向けて書いています。読むと、その感覚が統計上どう裏づけられ、どこまでは言えないのかを区別できます。さらに、自分の病棟で常勤・非常勤の人数推移や夜勤可能者数をどう確認するか、確認した結果をどう読むかまで整理します。
先に大事な注意を一つ。この調査は産業別の統計で、看護師という職種の離職率ではありません。看護師の離職率を知りたい方は、日本看護協会の調査を扱った看護師の離職率2025の最新値と職場で確認することを先に読んでください。両者の違いは本文の中でも一節を使って説明します。
厚生労働省が8月31日に公表した数字
雇用動向調査は、5人以上の常用労働者を雇用する事業所から、都道府県・産業・規模別に層化して無作為に抽出した約15,000事業所を対象にした調査です。令和7年調査の平均有効回答率は60.9%で、入職者調査の集計人数は57,896人、離職者調査の集計人数は73,332人でした。ここでいう常用労働者は、期間を定めずに雇われている人と、1か月以上の期間を定めて雇われている人を指します。
まず、全産業の2025年の動きです。
| 区分 | 入職率 | 離職率 | 入職超過率 | 前年(2024年)の入職率/離職率 |
|---|
| 産業計 | 14.7% | 13.7% | +1.0pt | 14.8%/14.2% |
| 一般労働者 | 12.0% | 11.4% | +0.6pt | 11.8%/11.5% |
| パートタイム労働者 | 21.7% | 19.9% | +1.8pt | 22.7%/21.4% |
全産業では入職率が前年より0.1ポイント、離職率が0.5ポイント下がり、入職超過率は0.4ポイント広がりました。人数で見ると、入職者7,526.8千人に対して離職者7,052.6千人で、入職者が474.2千人多くなっています。全体としては「離職が落ち着き、人が増える方向」に動いた年だと読めます。
次に、産業別の人数です。入職者数は「宿泊業,飲食サービス業」が1,220.6千人で最も多く、次いで「医療,福祉」1,215.2千人、「卸売業,小売業」1,178.3千人の順でした。離職者数は「医療,福祉」が1,200.2千人で最も多く、「卸売業,小売業」1,120.8千人、「宿泊業,飲食サービス業」1,042.7千人が続きます。
ここで一つ補足が必要です。離職者数が最多であることには、医療・福祉という産業自体の規模の大きさも影響しています。人数の順位だけで「医療・福祉は辞める人が特別に多い産業だ」と結論づけるのは早計です。産業の大きさの影響を除くには、次に示す「率」で見る必要があります。
医療・福祉を就業形態で分けると、常勤とパートで向きが逆です
医療・福祉の入職率・離職率を、2024年と2025年で並べます。
| 医療,福祉 | 2025年 入職率/離職率/入職超過率 | 2024年 入職率/離職率/入職超過率 |
|---|
| 計 | 14.5%/14.3%/+0.2pt | 14.1%/13.8%/+0.3pt |
| 一般労働者 | 13.1%/13.6%/−0.5pt | 13.1%/13.1%/0.0pt |
| パートタイム労働者 | 17.6%/15.9%/+1.7pt | 16.6%/15.7%/+0.9pt |
全体の数字だけを見ると、入職超過率は+0.3ポイントから+0.2ポイントへわずかに縮んだだけです。ところが、就業形態で分けると景色が変わります。一般労働者は前年、率で見ると入職と離職が並んでいた(どちらも13.1%。人数では入職がわずかに上回っていました)のに、2025年は離職率だけが13.6%へ上がり、離職超過に転じました。パートタイム労働者は入職率が16.6%から17.6%へ上がり、入職超過が+0.9ポイントから+1.7ポイントへ広がっています。
人数で見ると、この動きはさらにはっきりします。
| 医療,福祉(千人) | 2025年 入職者/離職者 | 2024年 入職者/離職者 |
|---|
| 計 | 1,215.2/1,200.2 | 1,158.6/1,135.4 |
| 一般労働者 | 772.2/798.6 | 772.4/768.4 |
| パートタイム労働者 | 443.0/401.6 | 386.2/367.0 |
一般労働者の入職者は772.4千人から772.2千人で、ほぼ横ばいです。それに対して離職者は768.4千人から798.6千人へ、30.2千人増えました。入職が増えていないところに離職だけが増えた結果、2025年の一般労働者は離職者が入職者を26.4千人上回っています。パートタイム労働者は、入職者が56.8千人、離職者が34.6千人それぞれ増え、入職者が離職者を41.4千人上回りました。
つまり、医療・福祉全体で見れば「入職がわずかに上回っている」のですが、その中身は「常勤で減った分を、パートの純増で埋めている」形です。「常勤が減ってパートで回している」という現場の感覚は、少なくとも産業全体の統計とは矛盾していません。
なお、他の産業と比べると、医療・福祉の一般労働者の離職率13.6%は、産業計の11.4%を上回ります。宿泊業・飲食サービス業(21.5%)、サービス業(他に分類されないもの)(20.3%)、生活関連サービス業・娯楽業(16.1%)に次ぐ高さです。一方、パートタイム労働者の離職率15.9%は産業計の19.9%より低く、パートに限れば医療・福祉は平均より人が定着している産業だと読めます。
この調査で言えること、言えないこと
ここが一番間違えやすいところなので、丁寧に分けます。
言えること
- 医療・福祉という産業の常用労働者について、2025年は一般労働者が離職超過、パートタイム労働者が入職超過だった。
- 一般労働者は入職がほぼ横ばいのまま離職が増えた。パートは入職・離職とも増えたが、入職の増え方が大きかった。
- 医療・福祉は離職者数が16産業の中で最多だが、それには産業規模の影響も含まれる。
言えないこと
- 看護師の離職率。この調査は職種別ではなく、「医療,福祉」は日本標準産業分類の大分類です。病院や診療所だけでなく、介護施設や保育所などで働く人がまとめて集計されています。
- 医療・福祉に限った離職理由。概況で示されている離職理由別の離職率は全産業の合計のみで、産業別の内訳はありません。
- 「常勤が辞めた穴に、同じ職場でパートが入った」という個別の因果関係。統計は産業全体の出入りを足し合わせたもので、同じ事業所での入れ替わりを追跡したものではありません。
また、この調査でいう一般労働者とパートタイム労働者の区分は、雇用契約の呼び名ではなく所定労働時間で決まります。同じ事業所の一般の労働者と比べて、1日の所定労働時間が短い人、または1日の時間は同じでも週の所定労働日数が少ない人をパートタイム労働者とし、それ以外を一般労働者としています。病院で「非常勤」と呼ばれていても、所定労働時間が常勤と同じなら統計上は一般労働者に入る可能性があります。自分の職場の呼び方と、統計の区分は必ずしも一致しません。
日本看護協会の調査との違い
日本看護協会の病院看護実態調査は、病院に勤める看護職員を対象に、正規雇用・新卒・既卒などの区分で離職率を示す職種別の調査です。今回の雇用動向調査は、産業別・就業形態別に常用労働者の出入りを示す産業統計です。対象(病院のみか、介護・保育まで含むか)、単位(職種か産業か)、区分(正規雇用か一般労働者か)がすべて違うので、数字を並べて「看護師の方が高い/低い」と比べることはできません。
使い分けとしては、「看護師という職種がどれくらい辞めているか」は日本看護協会の調査、「常勤とパートで人の出入りの向きがどう違うか」は雇用動向調査、と考えるのが実用的です。今回の記事が扱うのは後者です。
このニュースを看護師の働き方で見ると
ここからは統計の数字ではなく、常勤が減ってパートが増えた職場で「起きうること」の整理です。あなたの職場で必ず起きているという意味ではなく、確認する視点として読んでください。
夜勤を組める人が減る
パートタイム労働者は、定義上、所定労働時間または所定労働日数が一般の労働者より短い人です。日勤のみ、あるいは週の日数を限った契約で働く人が多くなれば、頭数は戻っても夜勤に入れる人数は戻らないことがあります。人員配置上の人数と、夜勤表に名前を書ける人数は別物です。常勤が減っていく職場で最初にきつくなるのは、この夜勤表の側であることが多いと考えられます。
委員会・教育・記録整備の担い手が偏る
病棟には、患者対応以外の仕事があります。委員会、新人教育、プリセプター、マニュアルや手順の整備、監査対応などです。これらは日中の限られた時間で働く人には割り振りにくく、残った常勤に集まりやすい性質があります。常勤の人数が減った分だけ、一人あたりの「患者以外の仕事」が増えることは想像に難くありません。
リーダー業務と判断の負荷が特定の人に集まる
日々のリーダー、急変時の判断、他職種との調整といった役割は、その病棟の流れを知っていて、かつ長い時間いる人に任されがちです。常勤が減ると、リーダーに入れる人の回転が早まり、同じ人が続けてリーダーになる状況が起きやすくなります。この負荷は勤務表の「人数」には現れないため、上司や看護部に伝わりにくいのが厄介なところです。
引き継ぎの回数が増える
短時間勤務の人が増えると、同じ患者を受け持つ人が1日のうちに交代する回数が増えます。引き継ぎそのものは必要な業務ですが、回数が増えれば情報の抜けが起きる機会も増えます。安全の観点からは、人数の確保だけでなく、引き継ぎの手順が今の勤務形態に合っているかも確認したいところです。
パートで働く側にも影響がある
見落とされがちですが、この構造はパートで働く看護師にも影響します。常勤の穴を埋める形で採用された場合、契約時の「日勤のみ」「週3日」が、いつの間にか「今月だけ夜勤に入れないか」「もう1日増やせないか」という相談に変わることがあります。常勤か非常勤かで迷っている方は、常勤と非常勤の働き方の違いと社会保険・収入の考え方も参考に、契約で決めた範囲を先に確認しておくと安心です。
今の職場で確認すること
「辞める人が多い気がする」を、確認できる事実に変えるためのチェックリストです。すべてを一度に調べる必要はなく、分かるところから埋めてください。
- 自分の病棟の常勤と非常勤の人数を、去年の同じ月と今で比べる。
- 夜勤に入れる人の数が、1年前と比べて増えたか減ったかを数える。
- 今年度に退職した人の人数と、退職が決まっている人の人数を把握する。
- 退職した人の補充が「いつ」「どの雇用形態で」行われたかを確認する。
- 補充が決まっていない場合、募集中なのか、募集の予定がないのかを確認する。
- 委員会・教育・プリセプターの担当が、この1年で誰に集まっているかを書き出す。
- 自分が月に何回リーダーに入っているかを、半年前と比べる。
- 直近3か月の自分の夜勤回数と時間外労働の時間を控えておく。
- 引き継ぎの手順や様式が、短時間勤務者の増加に合わせて見直されたかを確認する。
- 上記を看護師長・主任に聞いたときの回答と日付を残しておく。
このうち、常勤・非常勤の人数、夜勤可能者数、退職予定、補充の時期の4つは、感覚と事実のずれを確かめるうえで特に重要です。これらは看護師長や看護部が把握している情報で、聞き方によっては教えてもらえます。「うちの病棟、人が減ってませんか」ではなく、「常勤と夜勤に入れる人の数を、去年と比べて教えてもらえますか」と、数える対象を具体的にして聞くのがコツです。
師長にどう切り出すか迷うなら、先にカンゴさんへ今の病棟の状況を打ち込んでみる方法もあります。質問の順番や言い回しを組み立てる助けになります。
確認した結果をどう読むか
数字をそろえたら、次の3つの軸で読みます。
| 確認項目 | 心配が小さい状態 | 注意したい状態 |
|---|
| 退職者の補充 | 退職前後に同じ雇用形態で補充されている | 補充が数か月空く、または常勤の退職に非常勤で補充が続いている |
| 夜勤可能者数 | 1年前と同じかそれ以上 | 頭数は戻っているのに夜勤可能者は減っている |
| 役割の分担 | 委員会・教育・リーダーが複数人に分かれている | 特定の常勤2〜3人に集中し、その人たちの夜勤も多い |
「注意したい状態」に複数当てはまる場合でも、それだけで職場を辞める理由にはなりません。まず伝えるべきは、人数ではなく「夜勤可能者数」と「役割の集中」です。管理側は人員配置上の人数で見ていることが多く、夜勤表の窮屈さやリーダーの偏りは、現場から数字で示さないと伝わらないからです。
一方で、伝えても改善の予定が示されない、補充の目処を聞いても答えがない、という状態が続くなら、次の一手を考える段階です。心身の負担が先に来ている場合は、退職を考える前に休業・休職という選択肢もあります。心身がきついとき、辞める前に確認できることで、医療・福祉の休業に関する数字と確認手順を整理しています。
職場の何が負担になっているのかを自分で言葉にしにくい場合は、職場悩み診断で、人員・人間関係・業務量のどこに重心があるかを確かめてから、上司への相談や次の行動を決めても遅くありません。
転職で解決しやすいこと・しにくいこと
「常勤が減ってパートで回している」職場から転職を考えるとき、職場を替えれば変えられる点と、替えても残る点を先に切り分けます。
転職で解決しやすいこと
- 今の病棟の夜勤可能者数の少なさ。夜勤要員が足りている職場を選べば、夜勤回数やリーダーの偏りは変わりえます。
- 補充の見込みが示されない状態。採用計画を面接で確認できる職場なら、少なくとも「聞いても答えがない」状況は避けられます。
- 自分の契約と実態のずれ。パートで採用されたのに常勤並みの役割を求められている場合、契約内容を明確にした転職で整理できることがあります。
転職で解決しにくいこと
- 医療・福祉全体で一般労働者が離職超過になっているという産業の構造。転職先も同じ産業に属する以上、規模の差はあれ同じ圧力の中にあります。
- 「常勤が減ればパートで埋める」という人員補充の方針そのもの。これは個々の職場の経営判断であり、求人票からは読み取りにくい項目です。
- 委員会や教育の担い手不足。常勤が少ない職場ではどこでも起きうることで、転職先で自分がその担い手になる可能性もあります。
だからこそ、転職を考える場合は、面接や見学で「常勤と非常勤の比率」「夜勤に入れる人数」「直近1年の退職者と補充の実績」を聞くことが、この記事のチェックリストをそのまま活かす方法になります。答えが返ってこない職場は、今の職場と同じ状況にある可能性を考えてください。辞める・残る・異動を選ぶ判断の全体像は、看護師を辞めたい時の判断基準で整理しています。
よくある質問
医療・福祉の離職率14.3%は、看護師の離職率と同じ意味ですか?
同じではありません。14.3%は「医療,福祉」という産業に属する事業所の常用労働者全体の離職率で、病院・診療所のほか介護施設や保育所などで働く人が含まれます。職種別には集計されていないため、看護師だけの離職率はこの調査からは分かりません。看護師の離職率は日本看護協会の病院看護実態調査など、職種別の調査で確認してください。
一般労働者が離職超過というのは、常勤看護師が減っているということですか?
医療・福祉の一般労働者について、2025年は離職者が入職者を上回った、というのが統計から言えることです。一般労働者は所定労働時間で区分されるため、病院の「常勤」とおおむね重なりますが、完全に同じではありません。加えて、職種別の集計ではないため、「常勤看護師が減っている」とまでは言い切れません。自分の職場については、病棟の常勤人数の推移を直接確認するのが確実です。
離職者数が全産業で最多というのは、それだけ医療・福祉が辞めやすい職場という意味ですか?
人数の順位だけでは、そうは言い切れません。離職者数の多さには、医療・福祉という産業で働く人の数自体が多いことも影響します。産業の規模の影響を除いて比べるなら、離職率を使います。2025年の医療・福祉の離職率は計で14.3%、一般労働者で13.6%で、一般労働者に限れば産業計の11.4%より高い水準です。
病棟の人数を看護師長に聞くのは、角が立ちませんか?
聞き方次第です。「人が減っていて不安です」という伝え方だと、感想として受け取られやすくなります。「常勤と夜勤に入れる人数を、去年の同じ月と比べて教えてほしい」と、数える対象を具体的にして聞くと、業務上の確認として受け取られやすくなります。回答と日付は手元に残しておくと、後で看護部や別の相談先に話すときの材料になります。
転職すれば、常勤が減ってパートで回している状況から抜けられますか?
職場単位では変わりえますが、産業全体の構造は転職では変わりません。2025年の医療・福祉は、産業全体として一般労働者が離職超過、パートが入職超過でした。転職先でも同じ圧力はかかります。そのため、面接や見学で常勤・非常勤の比率、夜勤可能者数、直近1年の退職と補充の実績を確認し、答えが返ってくる職場を選ぶことが現実的な対策になります。
まとめ
2026年8月31日に公表された令和7年雇用動向調査では、医療・福祉の離職者数が1,200.2千人と16産業で最多でした。率で見ると計は入職14.5%・離職14.3%でわずかな入職超過ですが、一般労働者は入職13.1%・離職13.6%の離職超過、パートタイム労働者は入職17.6%・離職15.9%の入職超過と、向きが逆です。一般労働者は入職が横ばいのまま離職が30.2千人増え、パートは入職が56.8千人増えました。
この数字は看護師の離職率ではなく、産業全体の出入りです。それでも、「常勤が減ってパートで回している」という現場の感覚と矛盾しない動きが、産業全体で起きていることは確認できました。
次にやることは、自分の病棟で常勤・非常勤の人数、夜勤可能者数、退職予定、補充の時期を数えることです。数えた結果を、人数ではなく「夜勤可能者数」と「役割の集中」として伝えると、管理側にも状況が届きやすくなります。それでも見通しが示されないときは、休業・異動・転職を分けて考える段階です。その整理は一人で抱えず、この記事で紹介した相談先を使ってください。
参考資料
はたらく看護師さん 求人
希望条件で看護師求人を探す
給与、夜勤、休み、ブランクなど、この記事で整理した悩みから求人を確認できます。
求人を探す応募前に掲載元の最新情報を確認してください