避難所の炊き出しの列に並べない人がいます。配られたパンの原材料が分からず、子どもに食べさせられない親がいます。災害支援に入った看護職が、最初に直面する具体的な困りごとのひとつです。
この領域の資料が、2026年8月27日に公表されました。第21回アレルギー疾患対策推進協議会の資料1「災害時におけるアレルギーを有する避難者等への対応について」です。参考資料には、令和8年熊本地震での日本栄養士会の支援チームの活動記録も含まれています。
根拠になっているのは、内閣府の取組指針です
資料が引用しているのは、内閣府(防災担当)の「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」(平成25年8月、令和6年12月改定)です。
この指針の背景には、平成25年6月の災害対策基本法の改正があります。市町村(特別区を含む)には避難所における良好な生活環境を確保等に努めることが求められており、その取組にあたっての参考として生活環境の確保に関する事項が示されました。
令和6年12月の改定には、2つの流れが反映されています。ひとつは、避難生活の環境変化に対応した支援の実施に関する検討会が令和6年6月にとりまとめた「場所(避難所)の支援」から「人(避難者等)の支援」への考え方の転換。もうひとつは、令和6年能登半島地震を踏まえた災害対応検討ワーキンググループが同年11月にとりまとめた、各種取組の実施や避難所の在り方の見直しです。
「場所から人へ」という転換は、支援に入る看護職の感覚に近いはずです。避難所という箱を整えることと、そこにいる一人ひとりの状態に合わせることは、別の作業です。
アレルギーのある人は「要配慮者」に含まれます
指針の第1「平時における対応」では、平常時から市町村の防災関係部局、福祉関係部局、保健衛生関係部局が中心となり、男女共同参画部局等の関係部局が協力して会議を開催することとされています。
そこで視野に入れる対象として挙げられているのが、要介護高齢者、障害児者、医療的ケアを必要とする者、妊産婦、乳幼児、アレルギー等の慢性疾患を有する者、外国人等です。これらをまとめて「要配慮者」と呼びます。在宅者への支援も視野に入れることとされています。
つまりアレルギーは、災害時に配慮が必要な状態として、制度上すでに位置づけられています。「わがまま」でも「贅沢」でもありません。この一点を支援者側が理解しているかどうかで、避難者が声を上げられるかが変わります。
備蓄の段階で決まっていること
指針の第1・4「避難所における備蓄等」には、具体的な記述があります。
指定避難所として指定した施設には、あらかじめ応急的に必要と考えられる食料・飲料水の備蓄に努めること。備蓄しない場合は、開設に備えて供給計画を作成すること。
そのうえで、食物アレルギーを有する避難者にも配慮し、アルファー米等の白米と牛乳アレルギー対応ミルク等を備蓄することとされています。備蓄食料については、近年の食生活の向上と保存食の多様化を踏まえ、乾パン等の画一的なものだけにならないよう検討すること、食物アレルギー対応食品等についても必要な方に確実に届けられるなど、要配慮者の利用にも配慮することとされています。
「確実に届けられる」という部分が重要です。備蓄があっても、必要な人に渡らなければ意味がありません。支援に入った側が確認すべきは、在庫の有無だけでなく、誰がどう配るのかです。
発災後にやることは、4つ書かれています
指針の第2「発災後における対応」のうち、第9「食物アレルギーを有する者等への食料や食事に関する配慮」に4点が挙げられています。
(1)食事の原材料表示。 食物アレルギーを有する避難者が食料や食事を安心して食べることができるよう、避難所で提供する食事の原材料表示を示した包装や食材料を示した献立表を掲示し、避難者が確認できるようにすること。
(2)避難者自身によるアレルギーを起こす原因食品の情報提供。 誤食事故の防止に向けた工夫として、配慮願いたい旨を周囲に伝えるために、周りから目視で確認できるよう食物アレルギーの対象食料が示されたビブス、アレルギーサインプレート等を活用すること。
(3)各避難所における管理栄養士等への相談。 個別の対応が必要な要配慮者に食料や食事の提供を行う場合、要配慮者の食事ニーズの把握やアセスメントの実施のため、保健衛生関係部局が管理栄養士等の専門職種に相談できるように努めること。
(4)文化・宗教上の理由による食事への配慮。 文化・宗教上の理由から外国人等の避難者が食べることができない食料がある場合、可能な限り配慮することが望ましいこと。
このほか第8「食事の質の確保」では、管理栄養士の活用等によるメニューの多様化、適温食の提供、栄養バランスの確保、要配慮者(咀嚼機能低下者、疾病上の食事制限者、食物アレルギーを有する者等)への配慮、複数メニューの提供等が挙げられています。提供メニューについては、農林水産省や学会、大学等の推奨メニュー、スフィア基準、厚生労働省のエネルギー摂取目安を参考にしながら、食材の入手状況や避難者の状況を踏まえて検討することとされています。
通知も2本出ています
資料には、アレルギー疾患を有する避難者への対応に関する通知が2本挙げられています。
令和4年4月5日の事務連絡「避難所等における食物アレルギー疾患を有する被災者への対応について(依頼)」 は、アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針の改正を踏まえ、避難所における食物アレルギー対策に一層取り組むために、各市区町村と十分連携し必要な支援を行うよう依頼するものです。
令和7年10月27日の事務連絡「災害時の避難所等におけるアレルギー疾患を有する方への対応について」(厚生労働省・内閣府の連名通知)は、「行政機関・支援者の方向けQ&A集」「患者さん・家族の方向けQ&A集」などのパンフレット等を活用した積極的な情報提供や事前準備、アレルギー疾患担当部局・防災部局等の連携体制の構築に、平時から努めるよう依頼しています。あわせて、地方自治体の防災部局等に対して、厚生労働省の取組についてアレルギー疾患担当部局と連携を行うよう依頼するものです。
支援者向けと患者・家族向けのQ&A集が既に存在する、という点は覚えておく価値があります。支援に入る前に目を通せます。
支援に入る前に確認する8項目
- その避難所にアレルギーのある避難者がいるか。 把握の方法は決まっていますか。
- 備蓄にアレルギー対応食品があるか。 アルファー米、アレルギー対応ミルクなど。
- 配布の方法。 必要な人に確実に届く形になっていますか。
- 原材料表示の掲示。 包装や献立表が、避難者が見える場所にありますか。
- ビブスやアレルギーサインプレートの有無。 誤食防止の工夫が用意されていますか。
- 管理栄養士等への相談経路。 保健衛生関係部局を通じて相談できますか。
- 文化・宗教上の理由による制限。 外国人避難者を含めて把握していますか。
- 常用薬とアドレナリンの携行状況。 避難時に持ち出せているか。持ち出せていない場合の相談先。
8番は指針の食事に関する記述には含まれませんが、実務上は同時に確認する項目になります。
「聞いてもらえない」を作らないために
食物アレルギーの困りごとは、避難所という場では言い出しにくくなります。全員が我慢している空気の中で、自分だけ別のものを求めることになるからです。子どもの分を親が言い出せないまま、食べさせずに耐えることもあります。
ビブスやアレルギーサインプレートが指針に書かれているのは、この「言い出しにくさ」を目視で肩代わりするためです。仕組みが用意されていれば、本人が毎回説明しなくて済みます。
災害支援に入って、こうした準備が何もない避難所に当たることもあります。その場で全部を整えることはできませんが、何が足りないかを言語化して、次の交代者や本部へ渡すことはできます。支援から戻ったあとに整理がつかないときは、カンゴさんに匿名で相談する相手を使ってもかまいません。
よくある質問
Q. アレルギーのある人は要配慮者に含まれますか。 内閣府の取組指針では、要介護高齢者、障害児者、医療的ケアを必要とする者、妊産婦、乳幼児、アレルギー等の慢性疾患を有する者、外国人等が「要配慮者」とされています。
Q. 避難所にアレルギー対応食品は必ずありますか。 指針は備蓄に努めることや、備蓄しない場合の供給計画の作成を求めていますが、すべての避難所に必ずあるとは限りません。現地で確認が必要です。
Q. アレルギーサインプレートは誰が用意するのですか。 指針は避難所での活用を挙げていますが、本記事では調達の主体までは確認していません。自治体や避難所運営者に確認してください。
Q. 支援者向けの資料はありますか。 令和7年10月27日の事務連絡で、「行政機関・支援者の方向けQ&A集」「患者さん・家族の方向けQ&A集」などのパンフレット等の活用が挙げられています。
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この記事の確認範囲
- 確認日:2026年8月30日
- 確認主体:はたらく看護師さん編集部
- 医療監修:医師・管理栄養士による個別監修は実施していません
本稿は厚生労働省の協議会資料と内閣府の避難所取組指針に基づく運用確認です。個別患者の摂取可否、症状評価、薬剤使用は扱わず、本人・家族からの情報、現地の医療・栄養職、避難所運営者の指示を優先してください。
参考資料
避難所の運営主体や備蓄の状況は自治体によって異なります。本記事は指針と通知の内容を整理したもので、個別の避難所の対応を保証するものではありません。実際の支援では、現地の運営者と保健衛生関係部局の指示に従ってください。
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