「離職率が下がった」と聞いて違和感を持った方へ
「看護師の離職率が下がった」「新卒の早期離職も微減した」というニュースを見て、「自分の周りでは辞める人が多いのに、本当に下がってる?」と感じた看護師さんは多いのではないでしょうか。発表される数字と現場の体感の差は、長く看護師として働いている人ほど気になるものです。
日本看護協会は2026年3月31日、「2025年病院看護実態調査」の結果を公表しました。2024年度の離職率は、正規雇用看護職員11.0%(前年度比0.3ポイント減)、新卒採用者8.4%(同0.4ポイント減)、既卒採用者16.1%で、全体としては2023年度とほぼ同様の結果と示されています(Source: 公益社団法人日本看護協会「2025年病院看護実態調査 結果報告」2026年3月31日)。
数字は「全体としての」傾向を見るには有用です。一方で、自分の病棟・自分の地域・自分のキャリア段階での感覚は、必ずしも全国平均と一致しません。この記事は、調査結果の中身を読み解き、自分の働く場の「辞めやすさ/続けやすさ」を確認するためのものです。
この記事でわかること
この記事は、辞めるか続けるかを考えている看護師さん、同僚の退職が続いて職場の空気に不安を感じている看護師さんに向けて書いています。
この記事の価値:2025年実態調査の数字の中身、前年比微減の意味、数字に表れにくい現場のリアルが分かります。
読むと判断できること:「辞めたいのは自分だけ?」を、感覚ではなく、自分の職場で確認できる軸で見られるようになります。
次にできること:自分の働く場で「辞めやすさ/続けやすさ」を判断する材料を整理する準備が整います。
読むポイントは次のとおりです。
- 2025年病院看護実態調査の数字の中身
- 前年比微減は「現場が楽になった」という意味か
- 看護師が辞める理由として挙げられている事柄
- 数字に表れにくい現場のリアル
- 自分の職場で確認したいサイン
判断材料になる一次情報
この記事は、以下の一次情報をもとに整理しています。
この記事で確認したいポイントは、次のとおりです。
全国平均が下がっても、自分の病棟が楽になったとは限らない。数字は「他の職場と比べた相対位置」を見るものであって、自分の働きやすさを直接表すものではない。
2025年病院看護実態調査の数字の中身
日本看護協会の2025年病院看護実態調査では、2024年度の離職率について次のように示されています。
| 区分 | 2024年度 | 前年比 |
|---|
| 正規雇用看護職員 | 11.0% | -0.3pt |
| 新卒採用者 | 8.4% | -0.4pt |
| 既卒採用者 | 16.1% | (前年と同水準) |
正規雇用の離職率は2年連続でわずかに下がっており、新卒の早期離職も微減しました。一方、既卒採用者の離職率は16.1%と相対的に高く、転職して間もない時期の離職は依然として大きいことが示唆されます(Source: 公益社団法人日本看護協会「2025年病院看護実態調査 結果報告」)。
数字の感覚をつかむと、正規雇用看護師100人のうち年間11人前後が離職し、新卒入職者100人のうち8〜9人が1年以内に辞めている、というスケールです。「下がった」と言っても、低い水準ではありません。
前年比微減は「現場が楽になった」という意味か
「離職率が下がった=働きやすくなった」と読みたくなりますが、必ずしもそうとは限りません。考えられる背景は複数あります。
- 賃上げ・処遇改善・働き方改革の効果が一定程度出ている可能性
- 採用市場の動向で、転職を見送る看護師が増えた可能性
- コロナ禍の混乱が落ち着き、「いったん残ろう」と判断する人が増えた可能性
- 病院の数や勤務看護師数の構成変化(分母側の影響)
逆に、現場の体感では次のような声もよく聞きます。
- 「辞めたくても、人手不足で辞めにくい」
- 「辞めた人の代わりに、他の人の負担が増えた」
- 「数字は下がっても、自分の病棟は厳しい」
つまり、全国平均としての離職率が下がることと、個別の病棟で看護師が辞めにくくなったり、楽になったりすることは同じではありません。
看護師が辞める理由として挙げられている事柄
厚生労働省の看護職員就業状況等実態調査では、看護師の退職理由として次のような事柄が上位に挙げられています(Source: 厚生労働省「看護職員就業状況等実態調査結果」)。
- 結婚・出産・育児(約40%)
- 他施設への興味(約15%)
- 人間関係がよくない(約12%)
- 超過勤務が多い(約10%)
- 休暇がとれない(約10%)
- 通勤が困難(約10%)
ライフイベントを除くと、「人間関係」「超過勤務」「休暇」といった、職場の構造的要因が多くを占めます。賃金より、働き続けられる環境かどうかが、辞めるかどうかの分岐になっていることが分かります。
数字に表れにくい現場のリアル
調査の数字には、次のような現場のリアルが反映されにくい部分があります。
- 退職届を出していないが、「辞めたい」と考えている看護師の数
- 異動・部署移動で「離職カウント」されない継続疲弊
- パート・派遣・短時間勤務への切り替えで「正規離職」にカウントされる例
- 中堅・ベテランが先に抜けることで、現場全体の経験値が落ちる影響
- 退職後の「ブランク復帰」が困難な看護師の存在
つまり、離職率という単一指標は「辞めた人」しか映しません。職場の働きやすさを評価するには、別の角度の確認が必要です。
自分の職場で確認したいサイン
数字を「自分の話」に翻訳するために、自分の病棟・部署で確認できることがあります。
- 過去1年、自部署で何人が辞めたか/異動希望を出したか
- 看護必要度・夜勤回数・残業時間が、どう推移しているか
- 中堅・主任クラスがどの程度残っているか(経験年数バランス)
- 産休・育休からの復帰実績、復帰後の働き方の選択肢
- 上司・同僚に「辞めたい」と相談できる雰囲気か、退職届だけが残るか
- 退職した同僚の理由が、職場で共有・改善されているか
「辞めた人の数」より、「辞めたい人が言葉にできているか」「辞めた理由が職場の改善に反映されているか」のほうが、長く働けるかを示すサインになることが多いです。
「辞めたい」と感じたときに、まず確認できること
辞めるか続けるかを考える前に、いまの職場でできる確認・相談があります。
- 看護部長・主任・先輩看護師にキャリアの相談ができる仕組み
- 異動・配置転換・夜勤回数の調整など、辞める以外の選択肢
- 産休・育休・時短勤務など、ライフイベントに合わせた制度
- ハラスメント・労務トラブルの相談窓口(社外含む)
- メンタル不調の早期相談ルート(産業医・健康管理室)
ハラスメント、医療事故、メンタル不調、労務・法務に関わるテーマでは、個人責任だけで抱え込まず、相談体制・記録・組織対応・専門窓口を含めて整理することが大切です。一人で判断する前に、相談ルートを使い切ってください。
「働き方を変える」で解決しやすいこと・しにくいこと
辞める・続けるを考えるなら、何が変わって何が変わらないかを分けて考えると、後悔の少ない判断につながります。
場所を変えると解決しやすいこと
- 慢性的人手不足や過重残業など、職場固有の構造
- 人間関係・ハラスメントなど、職場固有の対人ストレス
- 病棟・診療科に偏った働き方を、外来・訪問・施設へ広げること
- 育児・介護と両立しやすい勤務形態がある職場への移動
場所を変えても解決しにくいこと
- 看護師全体の業務量・夜勤の重さなど、業界全体の構造
- 自分自身の働き方の癖(断れない、抱え込みやすいなど)
- 「いまがつらいから」という理由だけで決めると、移った先で別の不満が出やすいこと
- ブランクが長くなったときの復帰のしにくさ
まずは、カンゴさんに気持ちを整理してみる
「辞めたいけど、いま辞めると残った人に迷惑がかかる」「数字では離職率が下がってるけど、自分の周りでは辞めてる人が多い」「自分の気持ちが大げさなのか分からない」。こうした気持ちは、職場では「みんなそうだよ」で流れ、家族には「考えすぎ」と言われがちです。
はたらく看護師さんのカンゴさんには、匿名で気持ちを話せます。辞めたい理由は何か——人間関係か、業務量か、ライフイベントか——を、まずは一緒に言葉にしてみてください。すぐに何かを決める必要はありません。
「続けやすい職場か」を知る材料に
離職率という一つの数字より、「自分の病棟で何人辞めたか」「中堅が残っているか」のほうが、続けやすさを示すサインになります。慢性的に人が抜ける職場で長く働き続けるかは、別途考える価値のある問いです。
いますぐ転職を決めなくても、ほかの職場の体制を知っておくことには意味があります。レバウェル看護のような看護師専門の転職紹介サービスでは、求人票だけでは分からない次のような点を、職場に確認して教えてもらえます。
- 看護師の人数配置・夜勤回数・残業時間の実態
- 産休・育休からの復帰実績、復帰後の働き方
- 中堅・主任クラスの定着状況
- ハラスメント・労務トラブルの相談体制
「いまの職場が嫌だから」ではなく、「自分が長く続けられる場所はどこか」を考える材料として、選択肢を知っておくのがおすすめです。
なお、看護職以外への転職を考える看護師の声をまとめたエス・エム・エス「看護師の働き方に関する意識調査2026」を読み解いた整理記事もあわせて読むと、「辞める/続ける」の判断軸を、別ソースの調査からも比較できます。
まとめ
日本看護協会の2025年病院看護実態調査では、2024年度の離職率は正規雇用看護職員11.0%(前年度比0.3ポイント減)、新卒採用者8.4%(同0.4ポイント減)、既卒採用者16.1%で、全体としては2023年度とほぼ同様の結果と示されています(Source: 公益社団法人日本看護協会「2025年病院看護実態調査 結果報告」)。一方、看護師100人のうち約11人が年間に離職する水準は、依然として低くありません。
確認の3ステップは次のとおりです。
- 自部署の離職・異動希望・残業時間の推移を確認する
- 「辞めたい」と言える雰囲気と相談ルートが職場にあるかを確認する
- 必要なら、職場の構造と自分の働き方の癖を分けて、辞める/続けるを判断する
「辞める看護師が減った」というニュースを、自分の働き続けやすさの話に翻訳できるかが大事です。数字に流されず、自分の職場で確認していきましょう。
よくある質問
2025年実態調査で、本当に離職率は下がったのですか?
日本看護協会の2025年病院看護実態調査では、2024年度の正規雇用看護職員の離職率が11.0%(前年比-0.3pt)、新卒採用者が8.4%(前年比-0.4pt)と微減したと示されています(Source: 公益社団法人日本看護協会「2025年病院看護実態調査 結果報告」)。ただし、既卒採用者は16.1%と相対的に高く、全体として「下がった」と言える水準ではありません。
看護師が辞める理由で一番多いのは何ですか?
厚生労働省の調査では、結婚・出産・育児が約40%と最も多く、次いで他施設への興味、人間関係、超過勤務、休暇がとれない、通勤困難がそれぞれ10〜15%前後を占めています(Source: 厚生労働省「看護職員就業状況等実態調査結果」)。ライフイベントを除くと、職場の構造的要因が多くを占めます。
自分の周りでは辞める人が多いのに、なぜ数字は下がるのですか?
全国平均と、自分の病棟・部署の状況は一致しないことが多いです。離職率は「辞めた人の割合」を表す指標で、「辞めたいが辞められない人」や「異動でカウントされない人」は反映されません。職場の働きやすさは、自部署の数字や中堅の定着状況など、別の角度から見る必要があります。
「辞めたい」と感じたら、まず何をすればいいですか?
一人で抱え込まず、相談ルートを使い切ることが先です。看護部長・主任への相談、産業医・健康管理室、ハラスメントや労務の相談窓口、組合などが選択肢になります。辞める・続けるの判断は、相談で状況を整理してからでも遅くありません。
数字より大事な、続けやすさのサインは何ですか?
自部署で過去1年に何人辞めたか、中堅・主任クラスが残っているか、産休・育休からの復帰実績があるか、退職理由が職場の改善に反映されるか、などが目安になります。離職率という一つの数字より、これらの方が現場の実態を映します。
参考資料


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