医療的ケアが必要な子どもが18歳を迎えても、吸引、経管栄養、人工呼吸器管理などの日常は終わりません。一方で、相談窓口、通所先、学校との連携、家族を支える制度は「子ども」と「成人」で区切られます。
厚生労働省は2026年8月26日、障害福祉サービス等の提供体制に関する基本指針の改正案について意見募集を始めました。改正案には、医療的ケア児と家族への支援を、成人後も継続して医療的ケアを必要とする人へ広げる方向が示されています。
ただし、これは個別サービスの利用要件や報酬が今日から変わる通知ではありません。市町村・都道府県が2027〜2029年度の計画を作るときの基本指針を改める案です。
何の計画が変わるのか
現在の第7期障害福祉計画・第3期障害児福祉計画は、2024〜2026年度を対象としています。次の第8期障害福祉計画・第4期障害児福祉計画は、2027〜2029年度が対象です。
国の基本指針は、自治体が地域のサービス量、相談支援、人材、連携体制などを計画するときの土台になります。2026年3月31日に次期計画向けの基本指針が告示され、今回の案は、その後成立した2つの法律を反映して指針を改めるものです。
意見募集は2026年9月24日23時59分まで。概要では2026年10月下旬の告示、2027年4月1日の適用が予定されています。2026年8月30日時点では改正案です。
改正案の柱は2つです
1. 人材確保・生産性向上・経営基盤を計画に入れる
2026年成立の社会福祉法等改正を踏まえ、障害福祉計画・障害児福祉計画で、人材確保、生産性向上、事業者の経営基盤の強化に関する事項を扱う方向です。
看護職に近い言葉に置き換えると、必要なサービス量だけでなく、誰が働き続けられるか、業務をどう持続可能にするか、事業所が地域に残れるかまで、自治体計画の対象にするということです。
ただし「生産性向上」を、看護配置を減らすことや、医療的ケアを効率だけで進めることと読み替えてはいけません。具体策はこれから自治体計画へ落とされます。業務負担、安全、家族支援、研修、定着を同時に見ているかを確認する必要があります。
2. 医療的ケア児から成人後まで、継続支援の対象を広げる
医療的ケア児支援法の改正を踏まえ、対象を医療的ケア児とその家族だけでなく、医療的ケア児であった人など、成人後も日常生活・社会生活で恒常的に医療的ケアを受けることが不可欠な人とその家族へ広げる方向です。
また、関係機関・団体で構成する協議の場について、成人移行後も含めた地域連携を扱う考え方が反映されます。
ここで重要なのは、「18歳を超えたら新しい給付が自動的に受けられる」と書かれているわけではないことです。今回の改正案は、自治体が地域支援体制を計画する対象を広げるものです。個別サービスの利用可否は、現行制度、自治体、相談支援、医療保険・障害福祉制度の手続きで確認します。
病院の退院支援で見落としやすい境目
小児科から成人診療科へ移る時期には、主治医だけでなく、訪問看護、通所、相談支援、学校、自治体窓口、家族の介護力が同時に変わることがあります。
病院側が「成人診療科へ紹介した」で終わると、生活を支えるサービスの空白が残ります。反対に地域側が「医療情報がそろっていない」状態で受けると、緊急時対応や機器管理を一から組み直すことになります。
退院支援・移行支援では、少なくとも次の情報を分けて渡す必要があります。
- 日常的に必要な医療的ケアと、実施する人
- 平時の観察項目と、悪化時の連絡先
- 医療機器・物品の供給、停電や故障時の対応
- 本人の意思決定支援と、家族の希望
- 訪問看護、相談支援、通所先などの現在の契約
- 年齢到達で窓口・制度・担当が変わる時期
この一覧は個別の医療指示を代替するものではありません。何を誰へ渡すかを、多職種で確認するための枠です。
看護職が地域で確認する7項目
- 自治体の次期計画づくりの窓口。 障害福祉計画・障害児福祉計画の担当課と意見募集時期を確認する。
- 成人移行の担当。 小児科、成人診療科、地域連携室、相談支援の誰が全体をつなぐか。
- 協議の場への参加者。 当事者・家族、訪問看護、医療機関、福祉事業所、教育、行政が含まれているか。
- 医療的ケアを担える人材。 看護職の人数だけでなく、研修、夜間、緊急時、代替要員まで確認する。
- 家族の負担。 連絡調整や24時間対応を家族一人に戻していないか。
- 生産性向上の評価軸。 時間短縮だけでなく、安全、離職、継続性、本人・家族の負担を測るか。
- 計画と現場の差。 計画上のサービス量ではなく、実際の待機、休止、受入条件を把握する。
自治体の計画は遠い話に見えますが、訪問看護や相談支援が足りない状態を「現場の工夫」で隠していると、不足が計画に載りません。件数、断った理由、待機期間、夜間対応の負担など、個人情報を除いた形で記録し、管理者や地域の協議の場へ渡すことが改善の材料になります。
「人材確保」を採用数だけで見ない
医療的ケアに関わる人材の不足は、採用人数だけでは測れません。研修を終えて単独で対応できるまでの期間、相談できる相手、急な欠勤時の代替、移動時間、記録負担まで含めて初めて、実働できる体制が見えます。
生産性向上も、機器やICTを入れた件数だけでは不十分です。記録時間が減ったか、引継ぎの抜けが減ったか、家族への重複確認が減ったか、看護職が辞めずに働けるかを見ます。
訪問看護で人員や担当範囲に不安がある場合は、訪問看護の求人動向と職場確認や在院日数短縮と退院支援の負担も、現状を分けて考える材料になります。整理しても一人では言い出しにくいときは、カンゴさんに匿名で相談することもできます。
よくある質問
Q. 成人になった人の新しいサービスが始まったのですか。 いいえ。今回公示されたのは、2027〜2029年度の自治体計画の土台となる基本指針の改正案です。個別サービスの開始や利用決定を知らせるものではありません。
Q. 18歳になれば支援が切れなくなりますか。 改正案は成人後も継続して医療的ケアを必要とする人を地域支援の対象として扱う方向を示しますが、個別の制度・事業所・契約が自動継続するとは書かれていません。移行前から窓口と利用条件を確認してください。
Q. 看護師は何を意見として出せますか。 サービス不足を抽象的に訴えるだけでなく、待機件数、受入を断った理由、夜間対応、研修期間、移動・記録負担など、個人を特定しない実務データにすると計画へ反映しやすくなります。
Q. いつから適用されますか。 概要では2026年10月下旬の告示、2027年4月1日の適用予定です。意見募集後の確定文書を確認してください。
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この記事の確認範囲
- 確認日:2026年8月30日
- 確認主体:はたらく看護師さん編集部
- 個別専門家監修:障害福祉・相談支援・行政実務の専門家による個別監修は実施していません
本稿は国の基本指針改正案を、看護職の退院支援・地域連携の観点から整理したものです。個別の給付、利用要件、医療・福祉サービスの継続を保証するものではありません。本人の住所地の自治体、相談支援専門員、医療保険者、事業所の最新情報を確認してください。
参考資料
はたらく看護師さん 求人
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