この記事は、「認定看護師でも専門看護師でもない自分には、面談で話せる強みがない」と感じている中堅の看護師に向けて書いています。転職の準備をしている人だけでなく、現職の目標面談や、次に何を学ぶかの相談を控えている人を想定しています。
日本看護協会は2026年9月18日、新着情報で「インフォグラフィック『看護師としての専門性の発信』を掲載しました」と知らせました。掲載ページは、そこで言う「看護師の専門性」を、認定看護師や専門看護師などではなく、現場で働く一人ひとりの看護師が日々行っていることだと説明しています。
先に結論を書きます。このページは、資格の有無で看護師を分ける話ではなく、日々の看護そのものを言葉にして外へ伝えようという呼びかけです。ただし、評価や処遇を約束する内容ではありません。読み終えると、公式ページで何が確認できて何が確認できないか、自分の経験をどの順番で言葉にするか、どこまで書いてよいかを判断できます。
9月18日の発信で示された、日々の看護の専門性
公式ページで確認できたこと
編集部が2026年9月19日に確認できた範囲は、次のとおりです。
| 確認した項目 | 公式ページの記載 | 確認した場所 |
|---|
| 掲載日 | 2026/09/18「掲載のお知らせ」 | 日本看護協会 新着情報 |
| 作成の理由 | 看護師の専門性やそれによるアウトカムの可視化に取り組んでおり、その一環として作成した | 「看護師としての専門性の発信」ページ |
| 対象にしている専門性 | 認定看護師や専門看護師などではなく、現場の一人ひとりが日々行っていること | 同上 |
| 掲載されているもの | 動画1本(「※2026年9月公開」と注記) | 同上 |
| 使い方の注記 | 本会ホームページ、YouTubeのリンクから自由に活用できる。記事・写真・イラストなどの無断での複写、複製、翻訳、転載は禁じられている | 同上 |
ページは、対象にしている専門性を「看護師にしかできないこと、看護師だからできること」という言葉で表しています(出典:日本看護協会「看護師としての専門性の発信」)。
このページは、協会サイトの「看護師の専門性のさらなる発揮」という取り組みの下に置かれています。親ページには、看護師一人ひとりが自らの専門的な判断の価値やアウトカムを改めて認識できるよう、専門性や貢献の具体化・可視化を進めるという方針が書かれています。同じ階層には、タスク・シフト/シェアのガイドラインや、看護補助者との協働のページが並んでいます。今回の発信は単独の広報ではなく、この一連の取り組みの一つとして位置づけられている、と読めます。
図と動画の中身は、この記事では紹介しません
9月19日時点のページ本文には、埋め込みのYouTube動画が1本あり、静止画やPDFへのリンクは見当たりませんでした。YouTube上の動画名には「インフォグラフィック」の語が入っており、投稿者は公益社団法人日本看護協会と表示されています。
編集部は動画の内容を確認していません。そのため、図と動画の中身はこの記事では紹介しません。公式ページで直接ご覧ください。何が描かれているかを推測で書くことも、画面を転載・再現することもしていません。
読み違えやすい3つの点
- 認定看護師や専門看護師の価値を下げる内容ではありません。ページが述べているのは「このインフォグラフィックで扱う専門性の範囲」であり、資格の意義についての記載はありません
- 評価基準や処遇の話ではありません。ページの説明文に、人事評価、昇給、手当についての記載はありません
- 「アウトカム」の具体的な指標は、ページの説明文には示されていません。数字で成果を出すことを求めている、と読むのは行きすぎです
認定資格の有無と、自分が発揮してきた力を分ける
「自分には何もない」と感じるとき、「証明書で示せるもの」だけを数えているのかもしれません。編集部は、自分の持ち物を次の3つの層に分けて考えることを提案します。
| 層 | 中身 | 示し方 | 「何もない」と感じやすい理由 |
|---|
| 持っているもの | 免許、認定資格、研修の修了歴 | 証明書、受講履歴 | 有無がはっきり分かれるため、無いと空欄に見える |
| 任されていること | 係、委員、プリセプター、リーダー業務など | 辞令、分担表、面談記録 | 順番で回ってきた役割は、自分の力として数えにくい |
| 日々していること | 気付き、判断、行動、振り返り | 自分の言葉で説明するしかない | 毎日のことなので、書き留めなければ残らない |
今回の日本看護協会のページが対象にしているのは、3つ目の層に当たる部分です。ここは資格の有無で決まる部分ではありません。一方で、証明書が無いので、自分で言葉にしない限り面談の場には出てきません。
注意したいのは、3つ目の層を言葉にできたからといって、1つ目の層が不要になるわけではない点です。役割や手当に資格要件があるかどうか、あるならどんな要件かは、職場ごとに確認が必要です。資格を取るかどうかは別の判断として残しておき、まず手元にあるものを棚卸しする、という順番で考えてください。
気付き・判断・行動・振り返りを手元で言葉にする
4つの問いの確認表
ここから紹介する確認表は、はたらく看護師さん編集部の整理案です。日本看護協会が定めた評価基準ではなく、公式ページの図や動画の構成をなぞったものでもありません。この表を埋めれば評価が上がる、昇給する、といった効果を保証するものでもありません。
| 問い | 書くこと | 書かないこと |
|---|
| 1. 気付き:何に目が留まったか | 普段との違い、引っかかった点、きっかけになった観察 | 患者を特定できる情報、あとから付け足した立派な理由 |
| 2. 判断:どう考えたか | 迷った選択肢、優先順位を決めた根拠、誰に相談したか | 他の職員への批判、医師の指示内容の詳しい記載 |
| 3. 行動:実際に何をしたか | 自分がしたこと、報告や依頼の相手と順番 | チーム全体の成果を自分一人の手柄として書くこと |
| 4. 振り返り:次にどうするか | うまくいかなかった点、次に変えること、学びたいこと | 裏付けのない数字、「必ず防げた」のような言い切り |
1つの場面につき、4つの問いを1〜2文ずつで十分です。詳しく書こうとするほど患者の情報を入れたくなるので、短く保つことを優先してください。
「確認できたこと」と「自分の解釈」を分ける欄
4つの問いを書いたら、内容を次の2つの欄に振り分けます。
| 欄 | 入れるもの | 面談での話し方 |
|---|
| 確認できたこと | 自分が実際にした行動、相手から実際に言われた言葉、手順書や分担表に残っている事実 | 「〜しました」「〜と言われました」と事実として話す |
| 自分の解釈 | それが何に役立ったと思うか、なぜうまくいったと考えるか | 「〜だったのではないかと考えています」と前置きして話す |
成果の数字は、無理に作らないでください。職場が正式に共有していて、口外してよいと確認できた数字が無ければ、数字なしで構いません。「確認できたこと」の欄が行動の記述だけでも、判断の根拠が言葉になっていれば、面談で話す材料としては成り立ちます。
記入例(架空の場面)
以下は書き方を示すために編集部が作った架空の場面です。実在の看護師の経験ではなく、患者の情報は含めていません。
| 問い | 記入例 |
|---|
| 気付き | 申し送りで、ある物品の準備手順の伝え方が人によって違うことに気付いた |
| 判断 | 新しく配属された人が迷う原因になると考えた。自分で直すか、手順の担当者に伝えるかで迷い、先に担当者へ相談することにした |
| 行動 | 違いが出ていた箇所を2点メモにして、担当者とリーダーに口頭で伝えた |
| 振り返り | 手順が見直されたかどうかは、まだ確認していない。次の部署会で確認する |
| 確認できたこと | 2点を伝えたこと、担当者から「確認する」と返事があったこと |
| 自分の解釈 | 伝え方がそろえば新しい人が迷いにくくなると考えているが、裏付けはまだ無い |
派手な場面である必要はありません。この例のように、結果がまだ出ていない経験でも、どこに気付き、どう判断したかは話せます。
患者情報を持ち出さず、確認できた経験だけを伝える
保健師助産師看護師法第42条の2は、看護師が正当な理由なく、業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならないと定めており、看護師でなくなった後も同様としています。自分の振り返りのためのメモであっても、この前提は変わりません。
メモに書かないもの
- 患者の氏名、イニシャル、ID、部屋番号、年齢と性別の組み合わせ
- 病名と日時と病棟の組み合わせ。1つずつは一般的な情報でも、そろうと個人を特定できることがあります
- 家族構成、職業、住んでいる地域など、本人に結びつく背景
- 電子カルテの画面、看護記録、院内の手順書や会議資料の写しや写真
- 同僚や医師の実名、特定できる形での批判
書いてよい範囲を決める3つの手順
- 場面を一般的な言葉に置き換えます。「誰に何が起きたか」ではなく、「どんな種類の場面で、自分が何に気付いたか」を書きます
- 院内の資料は持ち出しません。手順や様式を参照したいときは、院内で閲覧し、メモには自分の行動だけを残します
- 迷ったら、職場の個人情報の取り扱い規程を確認するか、上司や担当部署に「振り返りのメモにどこまで書いてよいか」を尋ねます
確認できていないことを、確認できたように話さないことも同じくらい大切です。「自分の対応で悪化を防げた」といった因果関係は、本人が一人で確かめるのは難しいものです。解釈の欄に入れ、解釈として話してください。
現職の面談・学習・役割相談につなげ、転職を急がない
書きためたメモの使い道を、編集部は3つに分けて考えています。上から順に使うことをおすすめします。
| 使い道 | 持っていくもの | 相手に聞くこと |
|---|
| 現職の目標面談 | 4つの問いで書いた場面を2〜3件、確認できたことと解釈を分けた形で | 自分の等級や経験年数に期待されている役割のうち、この行動はどれに当たるか。次の期に伸ばしてほしい点は何か |
| 役割・学習の相談 | 振り返りの欄に繰り返し出てくる「次に学びたいこと」 | その学びに使える院内研修や外部研修はあるか。勤務扱いや費用の補助はどうなるか。関連する係や委員を経験できるか |
| 自己PR(必要になったとき) | 現職で話して手応えのあった場面を、院外で話せる形に直したもの | 応募先で、日々の実践をどんな場や基準で評価しているか |
現職の目標面談で使う
面談では、メモをそのまま読み上げるより、職場の評価項目や等級ごとの役割と照らして話すほうが伝わりやすくなります。評価面談で給与や役割をどう話題にするかは、看護師の給料・お金の悩み完全ガイドの給与交渉・評価面談の節で、準備する項目を整理しています。
ただし、言葉にできたことと、評価や処遇が変わることは別です。評価制度に日々の実践を拾う項目があるかどうかは職場によって違うので、まず制度そのものを上司や人事に確認してください。
役割や学習の相談に使う
振り返りの欄には、自分が次に学びたいことが自然に集まります。同じテーマが何度も出てくるなら、それが研修や役割を選ぶときの手がかりになります。受講した研修を面談でどう説明するかは、NuPSの研修受講履歴証明書の使い方もあわせて参考にしてください。
自己PRは、必要になったときに
3つ目の使い道は、急ぐ必要がありません。現職の面談や学習の相談で一度口に出した経験は、必要になったときに自己PRへ書き直す土台になります。逆に、転職を前提にして書き始めると、見栄えのよい成果を作りたくなり、確認できたことと解釈の区別が崩れやすくなります。今の職場で話してみて、それでも役割や学びの機会が得られないと分かった時点で、外に目を向けても遅くはありません。
よくある質問
日本看護協会の動画を、院内の勉強会で使ってもよいですか?
公式ページには、本会ホームページとYouTubeのリンクから自由に活用できると書かれています。一方で、リンク以外の方法での利用を検討する場合は、手続きが必要となる場合があるため日本看護協会へ問い合わせるよう案内されています。資料への貼り付けや印刷配布を考えているなら、先に協会へ確認してください。
資格がなくても、日々の看護は評価されますか?
この記事では約束できません。日本看護協会のページにも、評価や処遇についての記載はありません。評価されるかどうかは、勤務先の評価制度と、面談で何が伝わったかによります。確認表は、伝える材料を整えるためのものです。
確認表は、どのくらいの頻度で書けばよいですか?
決まりはありません。編集部の整理案なので、自分が続けられる頻度で構いません。面談の時期が決まっているなら、その前の数週間に、印象に残った場面を2〜3件書くだけでも材料になります。
まずは公式ページを、自分の目で
図と動画の中身は、日本看護協会「看護師としての専門性の発信」で直接確認してください。見たあとに、自分の最近の勤務の中から1つだけ場面を選び、4つの問いを1文ずつ書いてみるところから始められます。
気付きや判断の部分がどうしても言葉にならないときは、カンゴさんに場面のあらましを話して、問いを1つずつ整理していく方法もあります。その際も、患者や同僚を特定できる情報は入力しないでください。
参考資料
未確認の事項:動画の内容と長さ、インフォグラフィックの具体的な項目、静止画やPDF版が別に用意されているかどうか、リンク以外の方法で利用する場合の具体的な手続き、「アウトカム」として想定されている指標。いずれも、編集部が確認したページの説明文には記載がなく、本文では扱っていません。認定看護師・専門看護師の処遇や収入についても、根拠となる資料を確認していないため触れていません。
最終確認日:2026年9月19日。確認表と3つの層の分け方は編集部の整理案で、日本看護協会の見解ではありません。公式ページは更新されることがあるため、利用条件は必ず掲載元で確かめてください。
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