外来、退院支援、地域連携の仕事をしていて、「患者さんの生活を支える調整役」を自分の専門にできないか、と思い始めた方のための記事です。HIV看護の経験が無くても読めるように書いています。
厚生労働省の感染症対策課長は、令和8年(2026年)9月16日付で「HIVコーディネーターナースの意義及び役割について」という通知を出しました。国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センターのエイズ治療・研究開発センター(ACC)は、9月18日更新のお知らせでこの通知を紹介し、写しのPDFを掲載しています。
要点はこうです。この通知は、HIVコーディネーターナース(HIV-CN)という役割の意義と、期待される仕事の中身を、国が文書で示したものです。通知の本文(全3頁)には、新しい資格をつくること、配置を義務づけること、診療報酬で評価することは書かれていません。読み終えると、通知が挙げる5分野21項目のうち自分の経験と重なる部分はどこか、学会の認定資格やACCの研修とは何が違うのか、今の職場で何から確かめればよいかを判断できます。
なお、この記事は役割とキャリアだけを扱います。治療や検査など臨床の内容は、ACCの医療従事者向けページなど公式の資料で確認してください。
9月16日の通知と9月18日のACC掲載で示されたこと
まず、2つの日付を分けて押さえます。通知そのものの日付は令和8年9月16日で、文書番号は「感感発0916第1号」です。ACCのお知らせページの更新日は2026年9月18日です。この記事が読んだ通知は、ACCのサイトに掲載された写しです。
通知のあて先は、国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センターと、エイズ治療のブロック拠点病院、中核拠点病院、拠点病院の病院長です。看護師個人に向けた案内ではなく、病院の管理者に向けた文書だという点は、読み違えやすいところです。
通知の前文には、次のことが書かれています。
- HIVコーディネーターナースは「患者に開かれた医療を提供する」ことを目的に、エイズ治療・研究開発センターと地方ブロック拠点病院に配置されている
- 医療機関内のさまざまな職種や、ほかの医療機関などとの横断的な連携、支援の調整を担っている
- 療養の長期化に伴い、福祉分野との連携も含めた包括的な支援が必要になるため、ますます重要な役割を果たすと考えている
- 「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」(令和7年11月10日厚生労働省告示第294号)でも、知見を有する看護師や医療ソーシャルワーカーなどを配置し、保健医療サービスと介護・福祉サービスとの連携を確保する機能(コーディネーション)を拡充する重要性が示されている
そのうえで通知は、病院長に対して、院内と、必要に応じて院外の関係機関へ周知すること、必要な医療などを適切に提供できる体制の確保に努めることを求めています。「努めるようお願いいたします」という書き方で、配置の人数や期限を定めた文ではありません。
もう1つ、キャリアを考える人が見落としたくない記述があります。通知は、意義・役割について「厚生労働科学研究の成果やその他の知見の蓄積を踏まえ、必要に応じて見直しを行います」と書き、さらに「現在検討を進めているHIVコーディネーターナースの人材育成及びキャリア形成の観点も踏まえ、今後、本通知の内容の充実を図っていく予定」と添えています。つまり、人材育成とキャリア形成は検討の途中であり、その中身や時期は今回の通知には書かれていません。
外来・入院・在宅をまたぐ支援と多職種協働
通知の本体は「1. 意義」と「2. 期待される役割」の2つです。
意義の項では、HIVコーディネーターナースを、患者に最も近い立場で継続的に寄り添いながら患者中心の医療の実現を支え、院内外の多職種・関係機関をつなぐことで、包括的かつ継続的な支援体制を構築する要となる存在、と位置づけています。
ACCのお知らせは、これを療養の場に引きつけて説明しています。HIV-CNは患者さんに最も近い立場の看護職として、外来・入院・在宅などさまざまな療養の場を通じて継続的な支援を行う、という説明です。医療ソーシャルワーカー(MSW)との分担にも触れていて、HIV-CNが他職種と連携して診療ケアに関する情報の収集や共有・提供を行い、MSWがそれに必要な制度や暮らしの調整を行い、協働で支援を進めている、と書かれています。
期待される役割は5分野に分かれ、項目を数えると合計21あります。
- 患者支援・相談支援(5項目): 継続的な支援、身体的・精神的・社会的課題の把握とアセスメント、病名告知後における精神的ケア、患者・家族・パートナーからの相談対応と情報提供、価値観や意向に応じた支援
- セルフマネジメント・意思決定支援(4項目): 主体的に治療と生活を続けるための支援、受診と服薬の継続に向けた支援、インフォームド・コンセントの内容の理解促進、価値観や意向を尊重した意思決定支援
- 多職種連携・コーディネート機能(4項目): ニーズに応じて適切な支援につなぐ、医師・薬剤師・MSW・カウンセラーなどとの情報共有とチームの編成・役割分担・連携調整、必要に応じた支援計画の立案、ケースカンファレンスなどでの検討と調整
- 地域連携・療養移行支援(4項目): 院内外の関係機関をつなぐ切れ目のない支援体制、地域を含めた支援体制の整備、地域医療機関・福祉機関・介護関係機関との連携、状態や意向に応じた転院や在宅療養への移行支援
- 教育・支援体制構築(4項目): 医療従事者と地域の関係者の知識向上、院内スタッフへの教育と研修、地域医療機関や福祉関係者への教育と情報提供、啓発活動を通じた正しい知識の普及
4つ目の分野の最後の項目と5つ目の分野は、PDFの3頁目にあります。2頁目までで読み終えると、療養移行支援と教育の役割が抜け落ちます。
21項目を、自分の経験と照らす表
項目を眺めると、領域の名前を外しても成り立つ仕事が多いことに気づきます。相談を受ける、説明を補う、受診と服薬が続くように支える、職種の間をつなぐ、退院・転院・在宅への移行を整える、スタッフに教える。どれも、病棟や外来、退院支援部門、訪問看護で日々行われている仕事と同じ型です。
そこで、通知の5分野を左に置き、右の2列を自分で埋める表を用意しました。括弧の中は書き出すときのヒントで、正解ではありません。
| 通知の項目 | 自分の経験で近いもの(書き込む) | 次に学ぶこと(書き込む) |
|---|
| 患者支援・相談支援 | (ヒント: 外来での療養相談、家族からの電話相談、入院時の生活背景の聞き取り) | (ヒント: 相談記録の残し方、アセスメントの枠組み) |
| セルフマネジメント・意思決定支援 | (ヒント: 医師の説明後の補足、受診が途切れがちな人への声かけ、退院後の服薬の確認) | (ヒント: 意思決定支援の院内研修、説明の補足で使う資料) |
| 多職種連携・コーディネート機能 | (ヒント: カンファレンスの準備と進行、MSWや薬剤師への相談のつなぎ) | (ヒント: 支援計画の書き方、各職種の役割の範囲) |
| 地域連携・療養移行支援 | (ヒント: 退院前カンファレンス、転院調整、訪問看護やケアマネジャーへの情報提供) | (ヒント: 地域の福祉・介護の窓口、連携先との連絡の流れ) |
| 教育・支援体制構築 | (ヒント: 後輩指導、病棟勉強会の講師、院外向けの説明の経験) | (ヒント: 研修の組み立て方、正確な情報源の選び方) |
埋めてみて空欄が多い分野が、次の学習の候補です。反対に、右の列がすらすら書ける分野は、領域が変わっても持ち運べる経験です。退院調整が業務として詰まりやすい背景は、在院日数の短縮と退院支援の負担を扱った記事でも整理しています。
HIV-CNという役割と、学会の認定資格を分ける
HIV看護の分野には、名前が似ていて混同しやすいものが3つあります。通知が扱う役割、日本エイズ学会の認定資格、ACCの研修です。定めている主体も、文書も別々です。
| HIVコーディネーターナース(HIV-CN) | 日本エイズ学会の認定制度 | ACC研修 |
|---|
| 何であるか | 病院に配置される役割 | 学会が認定する資格(認定HIV感染症看護師、HIV感染症指導看護師) | 医療従事者向けの研修 |
| 誰が定めているか | 意義と役割の考え方を厚生労働省の課長通知が示した | 日本エイズ学会(平成24年度から) | エイズ治療・研究開発センター(平成9年から) |
| 原典 | 通知の写し(ACC掲載PDF) | 学会認定看護師・指導看護師制度 | ACC研修 |
| 確認できたこと | 配置先としてACCと地方ブロック拠点病院が挙げられている。役割は5分野21項目 | 申請資格、必要な点数、申請料、受付期間 | コースの種類、対象、定員、申込受付期間 |
| 確認できなかったこと | HIV-CNになるための要件、人数、任命の手続き。通知に記載がありません | HIV-CNの役割に就くことと認定資格の関係。学会のページに記載がありません | 研修の修了とHIV-CNへの配置の関係。研修ページに記載がありません |
学会のページによると、認定HIV感染症看護師の申請資格は、学会の会員であること、看護師歴が3年以上でHIV/AIDS看護について研鑚を積もうとする者であること、学会が指定したセミナーなどに参加して所定の単位(50点)を取得していることです。申請料は10,000円で、認定時に初回のみ認定料10,000円、5年ごとの更新時に更新料10,000円が別にかかります。受付は毎年9月末日必着で、本年度の受付期間は2025年10月1日から2026年9月末日までと書かれています。
HIV感染症指導看護師は、認定HIV感染症看護師歴5年以上、申請時までの5年間に10例以上の看護経験を事例記録として提出できること、所属施設長の推薦、論文または学会発表の筆頭著者・演者であること、所定の点数(70点)などが要件です。
2つの制度に接点が無いわけではありません。学会のページは、指定研修会の点数として「コーディネーターナース研修の受講:各20点」を挙げ、指導看護師の点数要件ではこの研修の受講を必須としています。ただし、その「コーディネーターナース研修」がどの研修を指すのかは、このページからは特定できませんでした。接点があることと、同じものであることは別です。通知は学会の認定資格に触れておらず、学会のページもHIV-CNという役割への就任には触れていません。
研修の段階と対象を公式ページで確かめる
ACCは、診療・看護などの実務を担う医療従事者の育成と全国的ネットワークの構築を目的に、平成9年からACC研修を行っています。現在は、オンラインの「ACC e-learning」、看護師向けの「実地研修」、医師向けの短期実地研修の3本立てです。e-learningの受講は無料で、視聴や参加にかかる通信費は受講者の負担と書かれています。
看護師が確かめておきたいのは、段階があることです。
| 段階 | ページに書かれている対象 | 修了認定 | 令和8年度の定員 |
|---|
| 一般視聴 | 対象の限定は書かれていない | なし | なし |
| 基礎コース | 初めてHIV診療にかかわる医療従事者 | あり | 前期50名、後期80名(各日程40名) |
| 基礎コース看護Plus | 令和3年度から令和8年度に基礎コースを修了した人 | あり | なし |
| 応用コース(看護師) | 基礎コースを修了した看護師 | あり | 前期6名、後期12名(各日程6名) |
| 実地研修(HIV看護 専門コース) | ACCと地方ブロック拠点病院が開催するHIV看護の応用コースの研修修了者 | ページに明記なし | 前期2名、後期2名 |
経験の無い人が最初に選べるのは、一般視聴か基礎コースです。一般視聴は修了認定が無く、ページには、学会申請に必要な単位の認定はできないと明記されています。
実地研修は、初心者がすぐ申し込める研修ではありません。応用コースの修了が前提で、対象は「現在勤務する医療機関等で、主としてHIV感染症患者さんの外来看護に携わる実務担当者」であり、研修後も継続して実務担当者・指導者として携わる人とされています。内容は、講義の視聴、HIVコーディネーターナースの面談やカンファレンスへの参加、多職種連携の見学、患者教育の演習、ケースレポートの作成と発表です。目標には、チーム医療の要として機能するHIV-CNの役割・活動が理解できること、が掲げられています。ページ(更新日2026年6月9日)に記載された申込受付期間は7月1日から7月23日正午までで、申込には推薦状を兼ねた申込書が必要です。
申込期間は、ページの表記をそのまま信じすぎないほうがよい箇所があります。基礎コース後期の申込受付は「10月1日(水)10時から10月10日(金)16時まで」と書かれていますが、2026年の10月1日は木曜日、10月10日は土曜日です。応用コース後期は「10月1日(木)10時から10月9日(金)16時まで」で、こちらは曜日と日付が合っています。基礎コースの締切が9日なのか10日なのかは、公表資料からは判断できません。申し込むなら、受付開始後の早い時期に、募集要項とシラバスで確かめてください。
秋に受けられるオンライン研修を領域を問わず比べたい場合は、日本看護協会のオンライン研修7つを目的別に比べた記事が参考になります。
今の職場の相談支援・地域連携から学び始める
通知が描いている仕事は、職場を変えなくても近くで見られます。次の順で確かめると、無駄がありません。
1. 院内で、同じ型の仕事をしている人に話を聞く
患者相談窓口、退院支援部門、地域連携室、外来の療養相談を担当する看護師やMSWに、15分ほど時間をもらいます。聞くことは3つに絞ります。
- 相談を受けてから、どの職種にどの順でつないでいるか
- 転院や在宅への移行で、調整が止まりやすいのはどの段階か
- その役割に就く前に、どんな研修や経験が役に立ったか
先ほどの表の右2列は、この話を聞いたあとに書き直すと具体的になります。
2. 院内の研修と、外部研修の扱いを確かめる
意思決定支援、退院支援、多職種カンファレンスに関する院内研修があるかを、教育担当に確かめます。外部研修を受ける場合は、勤務扱いになるか、修了認定のあるコースをラダーや面談でどう扱うかを、申し込む前に聞いておきます。ACCの実地研修のように推薦状を兼ねた申込書が要る研修は、誰の推薦が必要かを募集要項で確かめ、早めに上司へ相談します。
3. 公式の学習入口を見る
通知の写しを3頁目まで読み、ACCのお知らせで役割の説明を確かめ、研修ページでコースの対象と時期を見ます。どれも無料で読める公式の資料です。
研修を修了しても、それだけで資格の取得、HIV-CNとしての配置、昇給、採用が決まるわけではありません。そうした関係は、通知にも研修ページにも学会のページにも書かれていません。学ぶ目的を「今の仕事の調整力を上げる」に置いておくと、受講後に使い道が見つからないという事態を避けられます。
よくある質問
HIVコーディネーターナースは、今回の通知でできた新しい資格ですか?
いいえ。通知は、すでにACCと地方ブロック拠点病院に配置されている役割について、意義と期待される役割の考え方を示したものです。資格の創設や試験についての記載はありません。
拠点病院に勤めていない看護師にも関係がありますか?
通知のあて先は国立国際医療センターとエイズ治療の各拠点病院の病院長です。ただし、役割の中身には地域医療機関、福祉機関、介護関係機関との連携や、在宅療養への移行支援が含まれています。連携を受ける側の職場で働く人にとっても、相手の役割を知る資料になります。
日本エイズ学会の認定を取れば、HIV-CNになれますか?
公表資料からは分かりません。通知は学会の認定資格に触れておらず、学会のページもHIV-CNへの就任について書いていません。誰をHIV-CNとして配置するかの基準も、今回読んだ原典には記載がありません。
まず見る公式ページと、次の一歩
最初に開くページは、ACC研修の案内です。コースの対象、修了認定の有無、申込受付期間が1ページにまとまっていて、研修開催に関する最新情報もこのページで案内するとACCは書いています。
そのうえで、5分野の表を埋めても学ぶ順番が決まらない場合は、これまでの相談対応や退院調整の経験をカンゴさんとの対話で書き出し、次の学習テーマを1つに絞ってみてください。決めるのは転職先ではなく、来月までに話を聞く相手と、読む資料です。
参考資料
未確認の事項:HIVコーディネーターナースの人数、配置されている病院の一覧、任命の要件と手続き。通知が「検討を進めている」とする人材育成・キャリア形成の具体的な内容と公表時期。「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」(令和7年厚生労働省告示第294号)の本文(この記事は通知による引用の範囲だけを確認しました)。日本エイズ学会のページにある「コーディネーターナース研修」がどの研修を指すか、ACC e-learningの各コースが学会のどの点数区分に当たるか。実地研修の費用と来年度の開催。e-learningのどのコースに推薦状が必要か。基礎コース後期の正しい申込締切日。
最終確認日:2026年9月19日。研修の対象、定員、申込受付期間、学会認定制度の要件と料金は年度ごとに変わる可能性があります。申込や申請の前に、各主催者の募集要項と規則・細則を必ず確認してください。
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