病棟以外の働き方を調べ始めると、「企業で働く看護職」という言葉に何度も行き当たります。ただ、この言葉が指す仕事は一つではありません。企業に直接雇われる仕事と、外部の会社が企業に提供するサービスの担当者として働く仕事では、雇い主も、任される範囲も、条件の確認先も違います。
2026年9月15日11時、株式会社WithMidwifeが、サワイグループホールディングス株式会社への「THE CARE」導入を発表しました。求人の発表でも待遇の発表でもありませんが、看護職が病院の外で相談支援に関わる形を具体名で確認できる材料にはなります。
この記事では、①臨床にとどまる ②企業に直接雇用される ③外部の相談支援サービスで担当する、の三つを同じ軸で並べます。発表で確認できたことと確認できないことを先に分け、求人票と契約書のどこを見るかまで進みます。
9月15日の発表で分かったこと・分からないこと
リリースを出したのはサービス提供側の株式会社WithMidwifeで、導入する企業がサワイグループホールディングス株式会社です。発表主体が導入企業ではない点が、条件を調べるときの出発点になります。発表文で確認できたのは次の内容です。
- 「THE CARE」は「健康と子育ての従業員支援プログラム」である
- サワイグループホールディングスは全従業員を対象に、企業専属の医療専門家によるオンライン相談窓口を設置する。従業員本人に加え、2親等以内の家族も利用できる
- 専用アプリで24時間365日、チャットとビデオ通話で相談を受け付ける。範囲は「健康やメンタルヘルスをはじめ、妊娠・出産・育児、介護、人間関係など」
- 個人の相談だけでなく、相談傾向をもとにした施策提案や情報発信、人事部門へのアドバイザリーを行う。毎月の定例会で、個人が特定されない形で相談件数やテーマ・傾向を共有する
- 相談に応じるのは「看護師・助産師・保健師等の国家資格を持ち、キャリア支援や労務に関する知識も身につけた企業専属の医療専門家」であるウェルネスアドバイザー
同じだけ大事なのが、書かれていないことです。利用開始日の明記はありません。ウェルネスアドバイザーの募集、採用、雇用形態、勤務時間、報酬の記載もありません。サワイグループホールディングス側の導入目的やコメントもこのリリースには載っていません。編集部は公式サービスページも開きましたが本文を取得できず、詳細は未確認です。
この発表を「看護師を募集している」「夜勤なしで転職できる」と読み替える根拠はありません。事業者自身の発表であり、第三者による効果検証でもありません。読み取れるのは、看護職の資格と相談の経験が企業向けの外部支援として使われている事例を一つ確認できた、ということだけです。
「企業に直接雇用される」と「外部サービスの担当者」は別の仕事です
今回相談に応じるのは、サワイグループホールディングスの社員ではなくサービス提供会社の専門職です。「企業専属」は担当企業が決まっているという意味で、その企業に雇われているという意味ではありません。
違いは三つです。一つ目は雇い主で、給与表と就業規則がどちらのものになるかが変わります。二つ目は業務範囲の決まり方で、直接雇用は社内の職務分掌、外部サービスは企業との契約書に書かれた範囲が上限になります。三つ目は相談内容の扱いです。今回の発表では、企業へ戻す情報は個人が特定されない形の件数・テーマ・傾向とされています。誰に何をどの粒度で伝えるかが、あらかじめ設計されているということです。
なお今回の発表は「看護師・助産師・保健師等」と並べており、看護師資格だけで担えるかどうかは書かれていません。求人ごとに確認する項目です。
収入・勤務時間・追加学習を三つの道で並べる
公表されていない欄に他社の相場や一般論を入れないでください。「公表なし」はそのまま残し、代わりに確認先を書いています。
| 比べる軸 | ①臨床にとどまる | ②企業に直接雇用される | ③外部の相談支援サービスで担当する |
|---|
| 雇い主 | 医療機関 | その企業 | サービス提供会社 |
| 収入 | 基本給・夜勤手当・各種手当・賞与の内訳を給与規程で確認 | 公表なし。企業の給与表と求人票で確認 | 公表なし。提供会社の給与表と求人票で確認 |
| 勤務時間 | 交代制の有無で変わる。日勤のみへ移ると手当の前提も変わる | 公表なし。所定労働時間・時間帯を労働条件通知書で確認 | 公表なし。発表にある24時間365日はサービスの受付体制であり、担当者一人の勤務時間ではない |
| 必要な追加学習 | 配属領域に沿った院内研修・認定 | 産業保健の枠組み(安全衛生の体制、健康診断後の対応など)。求人ごとに求める知識が違う | 発表は「キャリア支援や労務に関する知識」を挙げるのみ。到達基準は公表なし |
| 相談・記録の扱い | 診療記録と院内の報告経路に沿って共有 | 企業の社内規程による | 個人が特定されない形で企業へ共有(今回の発表の記載) |
| 条件の確認先 | 給与規程・勤務表・上司 | 求人票・就業規則・面接 | 求人票・業務委託や雇用の契約書・提供会社の担当者 |
②と③のほとんどが「公表なし」で埋まります。情報が足りないのではなく、この種の発表がそもそも待遇を示す性質のものではないためです。条件は発表ではなく、求人票と契約書でしか分かりません。
相談支援に生かせる看護経験と、追加で要る知識
生かせる部分ははっきりしています。症状の聞き取り、生活背景の把握、受診勧奨の判断、家族を含めた説明、他職種への橋渡し、記録と守秘。チャットやビデオ通話でも、聞く順番と確認済みの項目を分けて残す習慣はそのまま働きます。
足りない部分も具体的です。企業の相談では診断も処方もしません。「医療判断をしない」線を引いたうえで、どこまで案内しどこから受診につなぐかを、契約と運用マニュアルの範囲で判断します。休職と復職の手続き、時短や休業の制度、安全衛生の体制といった労務の知識も要ります。発表が「キャリア支援や労務に関する知識も身につけた」とわざわざ書いているのは、資格だけでは足りない領域がある裏返しと読めます。
ただし、どこでどれだけ学べば要件を満たすのかは、この発表からは分かりません。研修制度の有無も公表なしです。学び方から固めたい場合は、公的機関や大学が実施する産業保健分野の入門研修を募集要項の側から確認するほうが確実です。
求人・契約で確認すること、不明なときの確認先
左の列は今の職場で身につく経験、真ん中は求人票と契約書で確かめる項目、右は書かれていなかったときの確認先です。
| 現職で生かせる経験 | 求人・契約で確認すること | 不明なときの確認先 |
|---|
| 症状と生活背景の聞き取り | 相談の範囲と、医療判断をしない線引きが文書にあるか | 求人元の担当者、業務委託契約書・職務記述書 |
| 受診勧奨と緊急時の判断 | 受診先の案内をどこまで行うか、急を要する相談の手順 | 事業所の運用マニュアル、面接での口頭確認 |
| 家族への説明と調整 | 家族利用の範囲(今回の発表では2親等以内) | サービス提供会社の案内、導入企業の社内規程 |
| 記録と守秘の習慣 | 相談記録の保存先と保存期間、企業へ渡す情報の粒度 | 契約書の秘密保持条項、個人情報の取扱規程 |
| 勉強会・資料作成の経験 | 施策提案や情報発信が業務に含まれるか | 職務記述書、評価基準 |
| 夜勤・時間外での対応 | 夜間休日の担当割り、待機の扱いと手当 | 労働条件通知書、直近の勤務表の実物 |
「公表なし」を埋める作業は応募先ごとにやり直してください。一社で聞けた条件を、同じ業種の別の会社に当てはめないことです。
動く前に、今の職場で確認できること
転職が唯一の道ではありません。入退院支援、外来の相談窓口、院内の健康管理部門、新人支援や勉強会の担当など、役割の一部を引き受ける形で相談・調整の経験を積める場合があります。異動希望の提出時期、院内公募の有無、研修費用の補助と勤務扱い、学んだ後に配属されうる部署。この四つは上司との面談で確認できます。
そのうえで、「収入が下がっても引き受けられる範囲」と「時間が変わると生活のどこが楽になるか」を自分の言葉にしてください。
比較の全体像は、看護師の働き方変更完全ガイドで職場・雇用形態・勤務条件の三軸から確認できます。学びの入口から考えるなら産業看護の入門研修を扱った記事もありますが、受付状況と要件は必ず実施機関の公式案内で最新の表示を確かめてください。
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この記事の確認範囲
- 確認日:2026年9月17日
- 確認主体:はたらく看護師さん編集部
- 確認できたもの:株式会社WithMidwifeのプレスリリース本文(2026年9月15日11時公表)
- 未確認:公式サービスページ the-care.withmidwife.jp の本文(取得できず)。ウェルネスアドバイザーの募集・採用・雇用形態・勤務時間・報酬、導入の開始日
本稿は公表された発表文の範囲を示すもので、採用の有無や待遇を保証しません。応募条件、契約内容、相談情報の取り扱いは募集元の書面で確認してください。
参考資料
はたらく看護師さん 求人
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