そもそも、何をするシステムか
ケアプランデータ連携システムは、居宅介護支援事業所と、訪問看護をはじめとするサービス提供事業所との間で、ケアプランに関するデータをやり取りするための仕組みです。
従来は、ケアプランや提供票のやり取りをFAXや紙、あるいは持参で行うことが少なくありませんでした。それをデータで受け渡しできるようにするのが、このシステムの役割です。
訪問看護ステーションから見れば、居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)とのやり取りが対象になります。毎月の提供票の受け取りと実績の返送が、いちばん頻度の高い場面でしょう。
今回の変更は、このやり取りの仕組みそのものがなくなるという話ではありません。動く土台が、専用のクライアントソフトから、介護情報基盤の上のWEBサービスへ移るということです。
事業所の状況によって、やることが違う
事務連絡には、事業所の状況別に必要な対応が整理されています。
| 現在の状況 | 移行に向けて必要なこと |
|---|
| すでに介護WEBサービスの利用登録を終えている | 統合後はケアプランデータ連携機能が利用できる。改めての利用登録は不要 |
| ケアプランデータ連携システムは導入済みだが、介護WEBサービスの利用登録はしていない | 統合後に利用するためには利用登録が必要 |
| どちらも導入・利用登録していない | ケアプランデータ連携システムの導入と、介護WEBサービスの利用登録の両方を行う必要がある |
二つ目のケースに注意が必要です。いまケアプランデータ連携システムを使っていても、それだけでは移行後に使えるわけではありません。介護WEBサービスへの利用登録という別の手続きが要ります。
事務連絡には、統合直前はヘルプデスクが混みあうことが想定されるため、事前に登録するようお願いする旨が書かれています。あわせて、必要な準備については国民健康保険中央会の支援事業を活用することで接続サポートに関する助成を受けられるとも案内されています。所要時間は数分とされているので、早めに済ませておくのが合理的です。
なお、登録方法については「ケアプランデータ連携システムは介護WEBサービスへ"引っ越し"します」というチラシが別添として用意されています。
利用料が、かからなくなる
移行にはコスト面の変化もあります。ここは事業所にとって分かりやすい利点です。
これまでケアプランデータ連携システムを利用する事業所は、利用料として年額21,000円を負担していました。ただし現在はフリーパスキャンペーンの実施とその延長により、令和8年度中は無料とされています。
そして移行後は、介護WEBサービスの一機能としてケアプランデータの送受信が可能となることから、利用料の負担は発生しないとされています。事務連絡には、介護WEBサービスの利用にあたって各介護事業所等に利用料などの直接の費用は求めない、と明記されています。
つまり、移行後は年額21,000円の負担が発生しないということです。ただし現在はフリーパスキャンペーンにより令和8年度中は無料なので、いま利用中の事業所にとっては「固定費が消える」というより、キャンペーン終了後に負担が戻ることを避けられるという意味になります。なお事務連絡が述べているのは移行後の取扱いであり、将来にわたって料金が発生しないことを保証したものではありません。
導入や接続にあたっての支援もあります。公益社団法人国民健康保険中央会が実施している「介護情報基盤の活用のための介護事業所等への支援」を活用することで、ケアプランデータ連携システムや介護情報基盤との接続サポートに関する助成を受けることが可能とされています。詳細は介護情報基盤ポータルで確認する形です。
費用を理由に導入を見送ってきた事業所にとっては、条件が変わったということになります。
8月26日に説明会がある
移行の内容について、厚生労働省が事業所向けの説明会を予定しています。日程が具体的なので、そのまま記載します。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 開催日時 | 令和8年8月26日(水)13:30〜14:30 |
| 実施方法 | YouTubeライブ(事前申込不要) |
| 対象者 | 居宅介護支援事業所、居宅サービス事業所および地域包括支援センターの職員 |
| 視聴 | 当日、指定URLにアクセス。後日アーカイブ動画でも視聴可能 |
事前申込が不要で、アーカイブも残るという形なので、当日に予定が合わなくても後から確認できます。訪問看護ステーションは居宅サービス事業所にあたるため、対象に含まれます。
管理者や事務担当が見るのが基本でしょうが、移行の全体像を把握しておきたい方であれば、看護職が視聴しても差し支えありません。1時間の枠なので、内容も要点に絞られるはずです。
現場の看護職には、直接どう関係するか
正直に言えば、この手続きは事業所の管理者や事務担当が行うものです。訪問に出ている看護職が自分で登録するわけではありません。
それでも知っておく意味は三つあります。
第一に、移行時期に業務が滞る可能性があることです。 システムの切り替えは、どんなに準備しても当日に混乱が起きうるものです。令和9年1月というのは、年末年始の直後にあたります。提供票のやり取りが集中する月初と重なれば、影響は大きくなります。
事業所が準備を進めているかどうかを、現場として把握しておく価値はあります。「登録は済んでいますか」と一言確認するだけで、直前に慌てる事態は避けやすくなります。
第二に、小規模な事業所ほど準備が後回しになりやすいことです。 訪問看護ステーションには、事務専任の職員がいない事業所が少なくありません。看護職が請求業務や書類作成を兼ねている場合、システム移行の情報が届きにくく、対応も後手に回りがちです。
第三に、これが介護情報基盤という大きな枠組みの一部だということです。 事務連絡によれば、移行後のWEBサービスは、介護情報基盤に格納された利用者に関する介護情報等(介護保険被保険者証等情報、要介護認定情報等)を閲覧する際に利用するものです。ケアプランのやり取りだけでなく、利用者の情報を確認する場面でも使うことになります。
つまり、訪問先で必要な情報を確認する経路が、中長期的には変わっていく方向にあるということです。今回の移行はその一歩と位置づけられます。
訪問看護の事務作業という文脈
この話を、もう少し広い文脈に置いてみます。
訪問看護の現場では、記録・請求・連絡調整といった事務作業が一定の時間を占めます。どれくらいの割合になるかを示す全国的なデータは見当たりませんが、訪問件数が多くても、その前後の作業に時間がかかれば拘束時間が長くなるという関係は変わりません。
だからこそ、応募先を見るときに「事務作業を誰が担っているか」を確認する意味があります。看護職が請求業務まで抱えている事業所と、事務職員がいる事業所では、同じ訪問件数でも一日の組み立てが違います。
システムのデータ連携が進むこと自体は、この負担を減らす方向に働きます。FAXの送受信や転記が減れば、その分の時間は戻ってきます。ただし、それは仕組みが正しく運用されている場合の話です。移行の過渡期には、むしろ手間が増える局面もありえます。
訪問看護への転職を考えている方は、病棟から訪問看護へ移るときの確認事項もあわせてご覧ください。事務作業の分担についても、確認項目として挙げています。
訪問看護を取り巻く経営環境については、「看護業」が資金繰り支援の指定業種に入ったで別の角度から扱っています。
ICT化の議論とも、つながっている
国の検討会でも、ICTによる業務効率化は論点として置かれています。厚生労働省の「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」では、勤務環境改善の柱の一つに「ICT機器の活用による業務効率化の促進」が挙げられています。
ただし、検討会での意見は慎重です。DX・ICTによる業務効率化は、導入・効果に地域差・施設差があるため、まず実態把握と効果検証を進めるべきであり、看護の安全性や職員負担への影響も踏まえた慎重な検討が必要、とされています。
今回のシステム移行は、まさにその「導入」の一例です。 効果が出るかどうかは、事業所ごとの使いこなし方によります。
検討会の論点全体についてはカスハラ対策も夜勤の在り方も、国の検討課題に入っているで整理しています。
移行の時期が、なぜ気になるのか
令和9年1月という時期について、もう少し具体的に考えておきます。
訪問看護の事務作業には、月ごとのリズムがあります。月末に実績をまとめ、月初に提供票のやり取りと請求を行う。この時期に集中するため、切り替えのタイミングがここに重なると影響が出やすくなります。
加えて、1月は年末年始の休みを挟みます。事業所によっては、12月中に翌月分の準備を前倒しで進めていることもあるでしょう。システムが切り替わるとすれば、その準備の前提が変わることになります。
もっとも、事務連絡は「令和9年1月を予定」としたうえで、具体的な期日については今後改めて周知するとしています。月初なのか月中なのかで、現場への影響はかなり変わります。ここは続報を待つ部分です。
現場としてできる備えは、多くありません。ただ、移行の前後は、いつもより余裕をもって事務作業に取りかかるという程度の心づもりはしておいてよいと思います。切り替え直後に何か起きたとき、時間の余裕があるかないかで対応のしやすさが違います。
そして、事務作業が特定の一人に集中している事業所ほど、この種の変化には弱くなります。移行を機に、誰が何を分かっているかを共有しておくのは、システムの話を越えて意味があります。
いま確認しておくとよいこと
事業所側で対応する事柄ですが、現場から確認できる項目を挙げておきます。
| 確認すること | 意図 |
|---|
| 介護WEBサービスの利用登録は済んでいるか | 移行後に使えるかどうかの前提 |
| 誰が移行の担当になっているか | 責任の所在がはっきりしているか |
| 8月26日の説明会を見る予定があるか | 情報の入手経路(事前申込不要・アーカイブあり) |
| 移行時期(令和9年1月頃)の業務体制 | 混乱に備えた人員の余裕 |
このうち最初の項目だけでも確認しておくと、後で困る可能性が下がります。 「そういえば登録しましたか」と一度聞いておくだけです。
管理者の立場にある方は、事務連絡の原文にあたっておくことをおすすめします。参考資料に挙げたPDFに、スケジュール、必要な準備、利用料の取扱い等が記載されています。
FAXが減ることの、現場にとっての意味
最後に、この話がなぜ看護の質に関わりうるのかを書いておきます。
ケアプランや提供票を紙やFAXでやり取りしていると、いくつかの手間が発生します。受信した紙を確認して、システムに手で入力する。送信したかどうかを電話で確かめる。届いていない分を追いかける。内容に変更があれば、また同じ工程をたどる。
これらはいずれも、看護そのものではない作業です。しかも、転記が入る分だけ誤りが生まれる余地があります。利用者名や単位数の写し間違いは、請求の誤りにつながります。
データでやり取りできれば、この工程が減ります。減った時間がそのまま訪問に回るとは限りませんが、少なくとも夕方の事務作業が短くなる可能性はあります。
ただし、条件があります。 相手方の居宅介護支援事業所も同じ仕組みを使っていなければ、データ連携は成立しません。片方だけが導入しても、結局FAXが残ります。今回の移行で利用料の負担がなくなることは、この「相手も使っているか」という条件を満たしやすくする方向に働きます。
そう考えると、利用料が無料になることの意味は、自事業所のコストが下がることより、連携先が増える可能性のほうにあるのかもしれません。ここは公表資料が述べている点ではなく、仕組みから考えた見立てです。
よくある質問
Q. いつまでに登録すればよいですか。 A. 事務連絡では、移行までに利用登録を進めるようお願いするとされ、7月から進めるよう求められています。統合直前はヘルプデスクが混みあうことが想定されると記載されています。
Q. 現行のケアプランデータ連携システムは使えなくなりますか。 A. 移行後、一定期間が経過した後に稼働を終了する予定とされています。終了の具体的な時期は事務連絡に明記されていません。
Q. 移行の日付は確定していますか。 A. 令和9年1月を予定とされており、具体的な期日については今後改めて周知するとされています。
Q. 病院で働いていますが関係ありますか。 A. この仕組みは介護事業所、地域包括支援センター、医療機関を対象としています。ケアプランデータ連携を行う場合には関係します。
Q. 利用料はどうなりますか。 A. 現行のケアプランデータ連携システムは年額21,000円の利用料がありました(フリーパスキャンペーンにより令和8年度中は無料)。移行後は介護WEBサービスの一機能となるため、利用料の負担は発生しないとされています。
転職先を見るときの、小さな確認項目に
訪問看護ステーションへの転職を検討している方にとって、この話は面接での質問を一つ増やす材料になります。
「ケアプランのやり取りはデータでされていますか、それとも紙やFAXが中心ですか」
この質問は、経営を詮索するものではなく、日々の業務の進め方を尋ねるものです。そして答えから読み取れることがあります。データ連携を導入している事業所は、事務の効率化に関心を持ち、実際に手を動かしているということです。逆に、紙が中心であれば、その分の作業時間がどこかに発生しています。
どちらが良いという単純な話ではありません。小規模で連携先が限られていれば、紙のほうが早い場面もあるでしょう。ただ、訪問件数に対して事務がどれくらい積み上がるかを見積もるうえで、判断材料になります。
あわせて聞いておくとよいのは、記録をどこで書いているかです。訪問先で入力できるのか、事業所に戻ってからか、直帰後に自宅でか。この違いは拘束時間に直結します。
条件面の確認項目全般は看護師の求人票、どこを見れば失敗しないかにまとめています。
参考資料
- 厚生労働省老健局「ケアプランデータ連携システムの介護保険資格確認等WEBサービスへの移行について(お知らせ)」(介護保険最新情報 Vol.1529、令和8年7月29日) https://www.mhlw.go.jp/content/001730882.pdf
- 日本看護協会「訪問看護」(ケアプランデータ連携システムの移行スケジュール掲載) https://www.nurse.or.jp/nursing/zaitaku/houmonkango/index.html
移行の具体的な期日や利用料の取扱いは、今後の周知により変更される可能性があります。事業所としての対応については、事務連絡の原文および関係機関にご確認ください。