「特定行為研修、気になっているけど踏み切れない」という方へ
「特定行為研修」という言葉を聞いたことはあっても、自分が受けるかどうかとなると、「働きながら受けられるのか」「修了したらどう活かせるのか」と迷う看護師さんは多いのではないでしょうか。研修期間や費用、職場の理解、修了後の役割など、考えるべきことが多いのも事実です。
日本看護協会は2026年5月13日、特定行為研修修了者の増加に向けた仕組みの構築を厚生労働省医政局へ要望しました(同協会のニュースリリースは5月18日公表)(Source: 公益社団法人日本看護協会ニュースリリース「特定行為研修の受講促進に向けた仕組みの構築を要望」2026年5月18日、要望書提出は5月13日)。要望は、指定研修機関が共通科目全7科目の受講機会を提供し、受講科目を履修免除できる仕組みづくりと、その予算拡充・周知を求めるものです。研修制度そのものの見直しも進んでおり、効率化と質の維持・向上の両立が議論されています。
この記事は、特定行為研修に関心はあるけれど踏み切れない看護師さんに向けて、要望の中身と研修制度の現状、受講のハードル、自分のキャリアにどう関係するかを実務目線で整理するためのものです。
この記事でわかること
この記事は、特定行為研修に関心がある看護師さん、キャリアの選択肢を広げたいと考えている看護師さんに向けて書いています。
この記事の価値:2026年5月13日の要望の中身、特定行為研修の制度の現状、受講のハードルがこれからどう変わりそうかが分かります。
読むと判断できること:「特定行為研修を受けるかどうか」を、漠然とした関心ではなく、具体的な比較軸で考えられるようになります。
次にできること:自分の職場の支援体制と、研修機関の選択肢を、実情を踏まえて確認する準備が整います。
読むポイントは次のとおりです。
- 特定行為研修とは何か
- 日本看護協会が厚労省に要望した受講促進の中身
- 受講のハードルとして現場で挙がる事柄
- 修了後の役割と、キャリアへの影響
- 自分の職場で確認できること
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判断材料になる一次情報
この記事は、以下の一次情報をもとに整理しています。研修要件や認定・修了の具体的な手続きは、各研修機関の募集要項と所定の通知を確認してください。
この記事で確認したいポイントは、次のとおりです。
特定行為研修は、医師または歯科医師があらかじめ作成した手順書に基づき、研修を修了した区分の特定行為(診療の補助)を行う看護師を養成する制度。受講するかは、自分のキャリアと職場の支援体制を、両方の角度から見て判断する話。
特定行為研修とは何か
特定行為研修は、医師または歯科医師があらかじめ作成した手順書に基づき、研修を修了した区分の特定行為(診療の補助)を行う看護師を養成するための研修制度です(Source: 厚生労働省「特定行為に係る看護師の研修制度」)。2015年(平成27年)10月に制度が始まりました。手順書とは、医師・歯科医師が、対象となる患者の範囲や病状の範囲、特定行為を行うときの判断の基準などをあらかじめ定めた指示文書を指します。研修修了者は、この手順書の範囲内で、自らアセスメントを行ったうえで特定行為を実施します。
対象になる特定行為は、呼吸器関連、循環器関連、創傷管理、栄養・水分管理、ろう孔管理、薬剤投与関連など、複数の区分に分かれており、すべての区分を受講する必要はありません。実務で関わる区分を選んで受講する形が一般的です。
研修は共通科目(座学・演習)と区分別科目で構成され、e ラーニングを活用するプログラムも増えています。修了すれば指定研修機関が修了証を発行します。ただし、修了は前提の一つであり、実際に特定行為を担うには、勤務先で医師・歯科医師による患者の特定と手順書による指示、組織の運用体制が整っていることが前提になります。
日本看護協会が厚労省に要望した受講促進の中身
2026年5月13日、日本看護協会は特定行為研修の受講促進に向けた仕組みの構築を、厚生労働省医政局に要望しました(Source: 公益社団法人日本看護協会「ニュースリリース」)。要望の背景には、次のような現場の課題があるとされます。
- 働きながら受講する看護師の負担が大きい
- 研修機関の地理的偏在(受講可能な機関が都市部に集中)
- 受講費用・代替人員確保の経済的負担
- 修了後の活用ポジションが職場で整っていないケース
要望書では、これらを踏まえ、組織的・継続的に受講者を増やす仕組みづくりを求める方向で議論が進んでいます。あわせて、看護師特定行為研修ワーキンググループでは制度そのものの見直しが進んでおり、効率化と研修の質の維持・向上の両立が論点として挙げられています(Source: 公益社団法人日本看護協会「本会の特定行為研修受講について」)。
つまり現時点では、「受講のハードル」と「修了後の活かしやすさ」の両方について、日本看護協会が共通科目の受講機会の確保や履修免除の仕組み、予算の拡充などを要望し、看護師特定行為研修ワーキンググループで制度の見直しが議論されている段階です。これらの要望や議論が制度・予算に反映されれば受講環境が整っていく可能性があり、整備が求められている領域ですが、現時点で具体的な改善が確定しているわけではありません。
受講のハードルとして現場で挙がる事柄
特定行為研修に関心はあっても踏み切れない、という看護師さんからは、次のような声がよく挙がります。
- 共通科目だけで250時間程度、区分別もあわせると相当な学習時間が必要
- 働きながらの両立が体力的・精神的に厳しい
- 研修費用が自己負担になる場合の経済的負担
- 修了後にどう実務に活かせるか、職場の構想が見えない
- 修了したものの、組織内で活用ポジションが整っていない
- 学習の遅れ・脱落への不安
これらは個人の頑張りだけで乗り越える話ではなく、職場の支援と制度面のサポートが必要な領域です。日本看護協会の要望は、この「受講のハードル」を組織的に下げる方向の動きです。
修了後の役割と、キャリアへの影響
特定行為研修を修了した看護師は、手順書と組織体制が整った職場では、医師・歯科医師があらかじめ作成した手順書に基づき、修了区分に応じた特定行為を担う場合があります。これは、現場でいくつかの変化につながる場合があります。
- 急性期病棟・救急・ICU で、手順書の範囲内で対応・実施できる場面が増える可能性がある
- 在宅・訪問看護の場面で、手順書に基づいて対応できる範囲が広がる場合がある
- 多職種チームの中で、看護師が担える役割が広がる場合がある
- 看取り・緩和ケアなど、患者さん・家族の生活に密着した場で、判断・実施に関わる場面が増える可能性がある
- キャリアとしての専門性が、形として認められやすくなる
ただし、「修了したら自動的に役割が増える」わけではなく、職場が手順書を整え、組織として活用する体制を持っていることが前提です。修了後の活用は、受講前から職場と話し合っておく方が安全です。
自分の職場で確認できること
特定行為研修を考えるなら、自分の職場で確認・相談できることがあります。
- 特定行為研修の受講者が既にいるか、いる場合の活躍状況
- 受講費用・研修期間の勤務調整について、職場の支援制度があるか
- 受講中・修了後の役割について、看護部長・医師と話し合えるか
- 自分が関心のある区分(呼吸器、栄養・水分、創傷管理など)の実務ニーズが現場にあるか
- 修了後のキャリアパス・配置についての構想
「自分の職場で活かせるか」「学んだことが組織で使われる体制があるか」を、受講前に確認することが大切です。費用と時間をかけて修了しても、活用の場がないと結びつかないケースもあります。
「働き方を変える」で解決しやすいこと・しにくいこと
特定行為研修をキャリアの選択肢として考えるなら、何が変わって何が変わらないかを分けて考えると、後悔の少ない判断につながります。
場所を変えると解決しやすいこと
- 特定行為研修修了者の活用ポジションが整っている職場への移動
- 受講費用・期間の支援制度がある法人で働く安心感
- 急性期・在宅・緩和ケアなど、修了行為が活かしやすい分野への移動
- 医師・多職種との連携体制が整っている職場の選択
場所を変えても解決しにくいこと
- 研修そのものの学習負担(どの職場で受講しても時間は必要)
- 修了後に「すぐに使える」状態になるまでの実践積み上げの期間
- 看護師全体のキャリア構造の変化(業界全体の動き)
- 「いまがつらいから研修で逃げたい」だけだと、修了後に別の不満が出やすいこと
まずは、カンゴさんに気持ちを整理してみる
「特定行為研修に興味はあるけど、自分にできるか不安」「働きながらの両立が現実的か分からない」「修了しても職場で活かせるイメージが湧かない」。こうした気持ちは、職場で先輩に相談しても「向き不向きだよ」と流されがちで、家族には伝わりにくいものです。
はたらく看護師さんのカンゴさんには、匿名で気持ちを話せます。研修への関心が、漠然とした「専門性を高めたい」なのか、特定の場面で「自分で判断したい」なのか——まずは言葉にしてみてください。
「学びを支援する職場か」を知る材料に
特定行為研修を含む専門教育を活かせるかは、職場が学びを組織的に支援するかで大きく変わります。受講者の活用ポジションがない、費用・期間の支援がない、という職場では、修了しても結びつきにくくなります。
いますぐ転職を決めなくても、ほかの職場の体制を知っておくことには意味があります。レバウェル看護のような看護師専門の転職紹介サービスでは、求人票だけでは分からない次のような点を、職場に確認して教えてもらえます。
- 特定行為研修・専門看護師など、専門教育への支援制度
- 修了者の配置と、組織での活用方法
- 急性期・在宅・緩和ケアなど、修了行為が活かせる分野の体制
- 医師・多職種との連携の実態
長期キャリアでの位置づけは、2040年に向けた看護職員確保の検討会の整理記事もあわせて読むと、専門教育の流れの中で特定行為研修がどこに位置するかが見えやすくなります。
まとめ
日本看護協会は2026年5月13日、特定行為研修の受講促進に向けた仕組みの構築を厚生労働省医政局へ要望しました(Source: 公益社団法人日本看護協会「ニュースリリース」)。あわせて研修制度そのものの見直しも進み、効率化と質の維持・向上の両立が議論されています(Source: 公益社団法人日本看護協会「本会の特定行為研修受講について」)。
確認の3ステップは次のとおりです。
- 自分が関心のある区分と、現場での実務ニーズを言葉にする
- いまの職場で、受講支援・修了後の活用ポジションについて確認する
- 必要なら、専門教育に前向きな職場を、選択肢として知っておく
「特定行為研修を受けるかどうか」は、学びへの関心と、職場の支援の両方を見て決める話です。要望書の動きを、自分のキャリアの話に翻訳していきましょう。
よくある質問
特定行為研修とは何ですか?
医師または歯科医師があらかじめ作成した手順書に基づき、研修を修了した区分の特定行為(診療の補助)を行う看護師を養成するための研修制度です(Source: 厚生労働省「特定行為に係る看護師の研修制度」)。2015年(平成27年)10月に制度が始まり、共通科目と区分別科目を修了すると、指定研修機関が修了証を発行します。
2026年5月13日の要望の中身は何ですか?
日本看護協会が厚生労働省医政局へ提出した、特定行為研修の受講促進に向けた仕組みの構築を求める要望です(Source: 公益社団法人日本看護協会「ニュースリリース」)。働きながらの受講負担、研修機関の偏在、費用負担、修了後の活用ポジションの整備など、現場の課題を踏まえた取り組みを求める内容です。
受講のハードルにはどんなものがありますか?
共通科目だけで250時間程度の学習時間、働きながらの両立、研修費用、修了後の活用ポジションの不足などが挙げられます。職場の支援制度と、自分の関心区分が実務ニーズと合うかが、受講判断のポイントです。
修了したら、どんなことができるようになりますか?
医師・歯科医師があらかじめ作成した手順書に基づき、修了区分に応じた特定行為を担う場合があります。急性期・在宅・緩和ケアなどの場面で、手順書の範囲内で担える役割が広がる場合があります。ただし、職場が手順書を整え、組織として活用する体制を持っていることが前提です。
どこで受講できますか?
指定研修機関で受講できます。日本看護協会の看護研修学校(東京都清瀬市)をはじめ、大学・病院・関連団体が指定機関として研修を提供しています(Source: 公益社団法人日本看護協会「本会の特定行為研修受講について」)。e ラーニングを活用するプログラムも増えており、地理的偏在の影響は徐々に緩和されつつあります。具体的な募集要項は各機関のページで確認してください。
参考資料
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