14.4日という全国値だけでは、あなたの忙しさは決まらない
厚生労働省が2026年9月8日に公表した「病院報告(令和8(2026)年6月分概数)」では、一般病床の平均在院日数は6月14.4日でした。4月は15.0日、5月は15.9日です。
ただし、この数字だけから「在院日数が短くなったから看護師が忙しくなった」「病床回転が良くなった」とは判断できません。病院報告は全国の月次概数であり、個別病院の患者構成、入退院時刻、重症度、職員数、退院支援体制を示すものではないからです。
看護師が確かめたいのは、全国値との単純比較ではなく、入院、退院、家族説明、服薬、栄養、リハ、在宅調整が同じ勤務・同じ時間帯へ集中していないかです。この記事では、公式統計を入口に、今の職場や次の職場で確認する方法へ置き換えます。
2026年4〜6月の一般病床を同じ定義で見る
| 指標 | 4月 | 5月 | 6月 | 読むときの注意 |
|---|
| 1日平均在院患者数 | 649,850人 | 633,649人 | 647,960人 | 全国の一般病床の概数。自院の適正人数ではない |
| 月末病床利用率 | 72.7% | 70.8% | 73.9% | 各月末1日時点。月間平均の利用率ではない |
| 平均在院日数 | 15.0日 | 15.9日 | 14.4日 | 患者延数と入退院数等から算出した全国概数 |
病院全体の1日平均外来患者数は、4月1,204,515人、5月1,075,079人、6月1,236,374人です。これは一般病床だけの数字ではありません。外来からの緊急入院や病棟支援の影響を考える入口にはなりますが、「外来が増えたため病棟が忙しくなった」と全国値から因果を決めることはできません。
5月から6月に一般病床の平均在院日数が1.5日短くなり、月末病床利用率が3.1ポイント上がったことも、季節性、病院の施策、患者安全との因果を示すものではありません。3か月を並べる目的は、単月の上下を結論にせず、職場で測る項目を決めることです。
在院日数より先に「一日の負荷の山」を確認する
退院支援の負担は、一か月の平均より、業務が重なる時間で大きく変わります。特に次の組み合わせが同じ日勤へ集まると、患者数が同じでも記録や休憩へ影響します。
- 午前の退院説明、退院薬、家族到着、会計待ち
- 午後の予定入院、緊急入院、手術・検査からの帰室
- MSW、薬剤師、管理栄養士、リハ職、訪問看護、ケアマネとの連絡
- 退院後の処置、医療機器、生活上の注意点の説明
- 退院サマリー、看護情報提供書、各職種の記録確認
- 夜勤への引継ぎと、勤務後に残る記録
「退院支援に力を入れている」「平均在院日数が短い」という説明だけでは、誰が、いつ、どこまで担うかは分かりません。実際の時間と分担まで確認します。
まず2週間だけ記録する
退職や異動を急ぐ前に、直近2週間の勤務で次を記録すると、相談内容を具体化できます。患者が特定できる情報は私物端末や個人メモへ残さず、施設のルールに従ってください。
| 記録項目 | 残す内容 | 分かること |
|---|
| 入退院・転棟 | 件数と集中した時間帯 | 人数ではなく負荷の山 |
| 家族説明 | 実施者、待ち時間、再説明 | 説明の丸抱えや手戻り |
| 多職種調整 | 連絡先、返答待ち、再連絡 | 連携経路の詰まり |
| 退院当日業務 | 薬、物品、書類、送迎確認 | 前日までに移せる業務 |
| 未完了・残業 | 残った業務と所要時間 | 負担が記録へ押し出されていないか |
| 応援・中断 | 依頼時刻、到着、中断回数 | 支援が実際に機能したか |
個人の能力評価のためではなく、業務改善の相談材料として使います。「私は段取りが悪い」ではなく、「11時までに退院4件、13時から入院3件が重なり、家族説明2件と薬剤確認が勤務後へ残った」のように、工程で示せる状態を目指します。
職場で確認する6つの質問
1. 退院支援は入院時から始まるか
退院直前に初めて家族構成、生活環境、サービス利用を確認すると、連絡と説明が集中します。入院時スクリーニングの対象、実施者、MSW等へつなぐ条件を確認します。
2. 主担当と最終確認者は誰か
「みんなで対応」だけでは、誰も最終確認をしないか、病棟看護師へ集中します。医師、退院支援看護師、MSW、薬剤師、栄養、リハ、病棟看護師の役割を分けます。
3. カンファレンスは勤務時間内か
会議があるだけでなく、勤務内に参加できるか、欠席時の共有先があるかを確認します。開催回数より、決定事項と担当・期限が記録されることが大切です。
4. 午前退院と午後入院の間に余白があるか
退院直後の空床へ入院を入れる場合、清掃、物品、記録、申し送りの時間が必要です。病床管理の決定と、病棟が受入可能と判断する経路を確認します。
5. 延期・中止を言える条件があるか
家族説明、薬、医療機器、在宅サービス等の準備がそろわないとき、誰が退院予定を再評価できるかを確認します。看護師だけで医学的・制度的な最終判断を抱えないことが重要です。
6. 残業と未完了ケアを一緒に見ているか
残業が減っても、説明の短縮、休憩未取得、他部署への負荷移転、未完了業務が増えていれば改善とは言えません。患者側と職員側の指標を同じ期間で見ます。
面接・見学で使える質問表
| 質問 | 良い答えの目安 | 追加確認が必要な答え |
|---|
| 退院支援のスクリーニングはいつ、誰が行いますか | 対象・時期・担当・連携条件が具体的 | 「早めに行う」「全員で対応」だけ |
| MSW・退院支援看護師へどう依頼しますか | 依頼基準と連絡手段、代替者が分かる | 個人の知り合いに頼る |
| 退院前カンファレンスは勤務内ですか | 時間枠と欠席時の共有方法がある | 忙しい日は中止し記録も残らない |
| 午前退院と午後入院が重なる日はどうしますか | 病床管理と病棟の合意、応援条件がある | 現場で何とかする |
| 退院支援による残業を測っていますか | 工程別時間、未完了、休憩も確認する | 月の残業合計だけを見る |
| 入職後に体制が合わない場合の相談先は | 師長以外の相談線と対応例がある | 「まず慣れてください」で終わる |
見学で個人情報を聞く必要はありません。体制、判断基準、記録、代替経路を尋ねます。
「在院日数が短い=危ない職場」ではない
在院日数が短くても、入院時から支援を始め、各職種の担当と期限が見え、勤務内でカンファレンスを行い、退院後の連絡先まで整っている職場はあります。反対に、在院日数が長くても、調整が最後に集中し、病棟看護師が抱えている職場もあります。
比較するのは日数そのものではなく、次の条件です。
- 退院支援の開始時期
- 多職種へつなぐ基準と返答時間
- 家族説明と意思決定支援の分担
- 退院当日の薬・物品・書類の標準化
- 入退院が重なる時間帯の配置と応援
- 残業、休憩、未完了業務を改善する会議
相談するときの伝え方
師長や教育担当へは、全国の14.4日を自部署の根拠にするのではなく、自分の2週間の記録を使います。
直近2週間で、午前退院と午後入院が重なった4勤務では、家族説明と薬剤確認が15時以降へ集中し、記録が平均45分残りました。退院支援看護師へ依頼する基準と、入院受入れ時刻の調整方法を確認したいです。
相談後は、担当者、次に試す方法、再確認日を残します。改善がない場合は、勤務調整、担当変更、部署異動、職場比較の順に選択肢を広げます。心身の不調や患者安全上の懸念があるときは、2週間を待たずに相談してください。
よくある質問
6月の平均在院日数14.4日は、3月より短くなったという意味ですか
3月の一般病床は15.4日でしたが、月ごとの違いだけで傾向や原因を断定できません。本稿では、同じ6月分資料に掲載された4〜6月の3か月を確認し、個別職場では入退院の時間と業務分担を測る材料にしています。
月末病床利用率73.9%は、6月平均の利用率ですか
違います。厚生労働省資料の定義では月末時点の在院患者数を月末病床数で割った値です。一日の値を月全体の平均として扱わないでください。
退院支援がつらければ転職した方がよいですか
まず、負荷が集中する時間、分担、相談後の対応を確認します。改善相談をしても体制が変わらない、患者安全上の懸念が続く、心身の不調がある場合は、異動や職場比較を含めて相談してかまいません。
次の一手
悩み整理診断で、残業、入退院、家族対応、多職種連携など負担の中心を整理できます。具体的な出来事と次に確認する条件を一緒に言葉にしたい場合は、カンゴに相談するをご利用ください。転職を決めていない段階でも使えます。
あわせて、看護師の残業・業務負荷ガイドと急性期から地域包括医療病棟への移行で確認することもご覧ください。病院側の配置・運用の見方は、月末病床利用率だけで配置を決めない看護配置監査で整理しています。
参考資料
最終確認日:2026年9月23日。病院報告は全国の概数です。自院・自部署の適正配置や退院判断は、院内基準と患者ごとの判断を優先してください。
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