医療機器の規格が変わると聞くと、「明日の検査や操作が変わるのか」と身構えます。しかし、今回公示されたのは4件の日本産業規格(JIS)の改正案です。個別製品の操作手順や、医療機関の運用変更を一律に命じる通知ではありません。
厚生労働省は2026年8月26日、粒子線治療装置、視野計、細隙灯顕微鏡、診断用X線管装置に関する4規格の改正案について意見募集を開始しました。受付締切は2026年10月25日23時59分です。
看護現場に必要なのは、規格本文を暗記することではありません。採用機器にどの版が適用され、メーカーや院内の責任部署から何が変更されたと通知され、教育と手順書へどう反映されたかを追えることです。
改正案の対象は4規格です
| 規格 | 対象 | 改正案の主な方向 |
|---|
| JIS T 0601-2-64 | 粒子線治療装置 | IEC 2025年版との整合、患者位置決め用語、試験条件、二次中性子線の評価、MEシステム文書など |
| JIS T 1206 | 視野計 | 規格名称を「自動視野計」から「視野計」へ見直し、ISO 12866との整合、用語・性能、正常眼データベースに関する附属書など |
| JIS T 7316 | 細隙灯顕微鏡 | スリット像の寸法の訂正、参照する一般規格、附属文書・表示要求など |
| JIS Z 4120 | 診断用X線管装置 | 適用範囲の上限を200kVから150kVへ変更、デジタル検出、焦点のひずみに関する扱いなど |
ここに挙げたのは、e-Govで公開された改正概要の要約です。JIS本文は著作権で保護されており、本記事は規格の要求事項や試験方法を再掲するものではありません。
いま決まったこと、まだ決まっていないこと
2026年8月30日時点で決まっているのは、厚生労働省が改正案を公示し、意見を募集していることです。改正後のJISが確定・公示されたわけではありません。
また、JISが改正されても、院内にあるすべての機器が同じ日に入れ替わるとは限りません。個別製品については、承認・認証上の扱い、メーカーの対応、保守契約、ソフトウェア更新、施設の採用判断などが関係します。
したがって、次の読み替えは避けてください。
- 「JIS改正案が出た」=「現在の機器は危険」ではない
- 「規格の数値が変わる」=「看護師が設定値を変更する」ではない
- 「国際規格に合わせる」=「院内手順を今日から書き換える」ではない
- 「意見募集」=「改正内容が確定した」ではない
4分野で看護師が関わる場面
粒子線治療装置
粒子線治療では、患者確認、体位、固定、照射前後の観察、不安への支援などで看護職が関わります。改正案には患者位置決めに関する用語などが含まれますが、位置決めや照射条件を看護師が規格案だけで変更するものではありません。医師、診療放射線技師、医学物理士、メーカー、自施設の手順を優先します。
視野計と細隙灯顕微鏡
眼科では、検査前説明、移動介助、患者の姿勢保持、検査後の観察などで看護職が関わります。視野計では規格の対象と用語、正常眼データベースの扱いが整理される方向です。細隙灯顕微鏡ではスリット像寸法の訂正などが示されています。
ここから個別患者の検査結果が変わると断定はできません。機器やソフトウェアが更新された場合に、検査担当者が版の違いと結果の連続性を確認できるかが実務上の論点です。
診断用X線管装置
改正案では適用範囲やデジタル検出、焦点に関する扱いが見直されます。看護職は撮影条件を独自に決める立場ではありませんが、ポータブル撮影の患者確認、周囲への声かけ、妊娠可能性に関する施設手順、撮影後の移乗などに関わります。規格変更から放射線防護の手順を推測せず、放射線部門の正式な通知を確認してください。
機器更新時に確認する8項目
- 対象機器か。 製品名、型式、製造番号、設置部署を確認する。
- 適用規格の版。 附属文書、仕様書、メーカー通知で確認できるか。
- 変更の種類。 ハードウェア、ソフトウェア、表示、文書だけの変更を分ける。
- 患者への説明。 検査・治療の流れに変更がある場合、誰が何を説明するか。
- 操作権限。 設定変更や点検を行える職種・担当者が決まっているか。
- 教育記録。 常勤だけでなく、非常勤・夜勤・応援者へ変更が届くか。
- 旧版との混在。 同じ部署に旧機器と新機器がある場合、見分け方があるか。
- 異常時の連絡先。 使用中止、代替機、メーカー連絡、インシデント報告の順番が決まっているか。
この8項目で空欄が多い場合、規格の知識不足より、機器変更を現場へ渡す仕組みの不足が問題です。医療機器安全管理責任者、診療放射線技師、臨床工学技士、眼科検査担当、医療安全管理部門などへ確認してください。
規格番号より「変更が誰まで届いたか」
規格の改正は専門部署やメーカーが追っていても、患者のそばにいる人まで変更理由が届かないことがあります。新しい画面になった、表示名が変わった、旧機器と操作が違う。それを「使えば分かる」で済ませると、応援勤務や夜勤で差が出ます。
看護師が担うべきなのは、規格適合の技術評価ではありません。変更点が患者確認、説明、観察、連絡手順に影響するかを問い、必要な教育を受けることです。説明のない機器変更に不安があるなら、インシデントの不安を匿名で相談する前に、型式・変更日・困っている操作・確認した相手を記録しておくと、院内で話しやすくなります。
よくある質問
Q. 4規格はもう改正されましたか。 いいえ。2026年8月30日時点では意見募集段階です。受付締切は10月25日23時59分です。
Q. いま使っている機器は危険ですか。 改正案の公示だけから、個別機器が危険とは判断できません。点検や使用継続は、メーカーの正式情報、医療機器安全管理責任者、自施設の手順で判断してください。
Q. 看護師がJIS本文を読む必要がありますか。 通常は院内の責任部署やメーカーが適用関係を確認します。看護職は、自分の業務に影響する変更内容、教育、手順、異常時対応を確認してください。
Q. 機器の設定を変える必要がありますか。 本記事を根拠に設定を変更しないでください。操作・設定は、資格、権限、添付文書、取扱説明書、院内手順に従います。
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この記事の確認範囲
- 確認日:2026年8月30日
- 確認主体:はたらく看護師さん編集部
- 個別専門家監修:診療放射線技師・臨床工学技士・眼科専門職による個別監修は実施していません
本稿はe-Govに掲載された改正概要を看護職向けに整理したものです。規格適合性の判定、機器の設定・点検、患者ごとの検査・治療判断には使用できません。確定したJIS、メーカー文書、医療機器安全管理責任者、自施設の手順を優先してください。
参考資料
はたらく看護師さん 求人
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