夜勤前に動悸がする、休日もインシデントの場面が頭から離れない、眠れず食べられない。それでも「看護師ならつらくて当たり前」と勤務を続けている人がいます。仕事が原因かもしれないと感じて検索すると、「ICD-11で精神障害の労災が変わる」という情報に行き着くかもしれません。
厚生労働省は2026年8月20日、精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会の第2回会合を8月27日に開くと公表しました。議題は、国内でICD-11を適用することに伴う対象疾病名の整理です。この記事の公開時点では会合前であり、認定基準の変更内容は決まっていません。将来の議論と、今使える制度・相談先を分けて説明します。
いま危険がある方へ
制度を調べる前に、安全を優先してください。自分を傷つけてしまいそう、ひとりでは安全を保てない、意識が混乱しているなど切迫した危険がある場合は、119番や最寄りの救急医療機関へ連絡し、可能なら信頼できる人にそばにいてもらってください。
眠れない、食べられない、涙が止まらない、強い不安や動悸が続く場合は、心療内科・精神科、かかりつけ医、職場の産業医などに相談してください。労災に当たるかを自分で証明してから受診する必要はありません。診断や治療と、労災手続きは分けて考えられます。
8月27日に何が話し合われる予定か
厚生労働省の開催案内によると、第2回検討会は2026年8月27日18時〜20時に予定され、国内でICD-11を適用することを踏まえ、精神障害の労災認定基準で対象とする疾病名を整理します。個人情報を扱う可能性などから、会議は非公開とされています。
ICDは世界保健機関による疾病分類です。厚生労働省は、ICD-11に準拠する国内分類を2027年1月から施行し、公的統計や診療情報管理などでの利用を見込んでいます。
ここから分かるのは「疾病名の整理を検討する予定」ということまでです。次のような表現は、現時点では断定できません。
- ICD-11になれば認定されやすくなる
- 新しい病名が自動的に労災対象になる
- 8月27日から申請方法が変わる
- 看護師向けの特別基準が新設される
会議後も、議事概要、報告書、通達や認定基準の改正など、公式な決定過程を確認する必要があります。
現在の認定基準はどうなっているか
現在の「心理的負荷による精神障害の認定基準」は2023年に改正され、ICD-10の分類を基礎に対象疾病を示しています。厚生労働省の基準では、主に次の要件を確認します。
- 認定基準の対象となる精神障害を発病していること。
- 発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。
- 業務以外の心理的負荷や個体側要因だけで発病したとは認められないこと。
実際の認定は、出来事の内容、強度、継続性、発病時期、医学的資料などをもとに個別に判断されます。「夜勤が多ければ必ず認定」「ハラスメントの証拠が一つあれば認定」といった単純な仕組みではありません。反対に、本人が自分で要件を完璧に評価できないから申請できない、ということでもありません。労働基準監督署や専門家へ相談し、資料を確認してもらいます。
看護現場の出来事を4つに分けて記録する
体調が許す範囲で、業務上の出来事と変化を時系列にします。患者情報や院内機密を持ち出さず、自分の勤務と経験を中心に残してください。
1. 勤務時間と休息
勤務表、実際の始業・終業、夜勤回数、連続勤務、休憩が取れなかった日、呼び出しなどを記録します。勤怠システムと実態が違う場合は、その差もメモします。
2. 具体的な出来事
暴言・暴力、ハラスメント、重大インシデント、急変・死亡への対応、配置転換、過大な業務、支援のない新人指導などについて、いつ、誰に相談し、どんな対応だったかを残します。患者名やカルテのコピーは持ち出さないでください。
3. 心身の変化
睡眠、食事、動悸、涙、集中力、欠勤・遅刻、服薬、受診日などを記録します。「つらかった」だけでなく、勤務や生活にどう影響したかを書きます。
4. 職場の対応
師長、人事、産業医、労働組合へ相談した日と回答、業務軽減や配置変更の有無を残します。メールや勤務表など、自分が適法に保有できる資料を整理します。職場トラブルの記録方法も参考にしてください。
記録が十分でなくても、受診や相談を遅らせる必要はありません。体調が悪いときは、家族や支援者に整理を手伝ってもらう方法もあります。
相談先は目的別に分ける
一つの窓口ですべてを解決しようとすると、たらい回しに感じやすくなります。目的を分けてください。
| 目的 | 主な相談先 |
|---|
| 診断・治療・休養 | 心療内科、精神科、かかりつけ医、産業医 |
| 働き方・復職配慮 | 産業医、上司、人事・労務、労働組合 |
| 労災の相談・請求 | 労働基準監督署 |
| ハラスメントなど労働問題 | 総合労働相談コーナー、労働局、法律専門家 |
| 匿名で心の悩みを話す | 働く人の「こころの耳」電話・SNS・メール相談 |
「こころの耳」は厚生労働省の働く人向けメンタルヘルス・ポータルで、匿名・無料の電話、SNS、メール相談を案内しています。受付時間は変更されることがあるため、利用時に公式ページで確認してください。
職場には何を相談できるか
労災申請を決める前でも、健康を守るための調整を求められます。
- 夜勤・連続勤務・受け持ちの一時的な軽減
- ハラスメント相手や強いストレス源からの分離
- 産業医面談、病気休暇・休職制度の案内
- インシデント後のデブリーフィングや心理的支援
- 復職時の段階的な勤務、残業・夜勤制限
「労災かどうか決まっていないから配慮できない」と考えず、現在の健康状態をもとに相談します。主治医の診断書や意見書の内容は、本人の同意と院内手続きに従って扱ってください。
退職を先に決めなくてよい
つらさが限界に近いと、辞めるか耐えるかの二択に見えます。しかし、安全確保、受診、休養、勤務調整、労災相談、退職は別々の判断です。退職しても労災請求の可能性が直ちになくなるわけではありませんが、個別の期限や必要資料は労働基準監督署等へ確認してください。
体調が落ち着いてから、今の部署で改善できること、法人内異動で変わること、職場を変えないと変わりにくいことを分けます。病気休暇・休職を考えるガイドや辞めるか続けるかの整理を使えます。転職情報の収集は、安全と治療の代わりにはなりません。
まとめ
8月27日の検討会では、ICD-11の国内適用に伴う精神障害の労災認定基準の疾病名が議論される予定です。開催前の現時点で、基準が変わった、認定されやすくなったとは言えません。
今できることは、制度の結論を待つことではありません。切迫した危険があれば119番などで安全を確保する。症状が続けば医療機関や産業医へ相談する。勤務、出来事、心身の変化、職場対応を、無理のない範囲で記録する。そして労災は労働基準監督署へ相談する。この順番が、健康と権利の両方を守ります。
医療・労災の相談先を確保した後に、今の職場で続ける条件を言葉にしたい場合は、カンゴさんの辞めたい・つらい相談も使えます。緊急対応、診断、治療、法律判断の代わりにはなりません。
よくある質問
ICD-11になると、私の病名は自動的に労災認定されますか?
自動的には認定されません。対象疾病に加え、業務による心理的負荷、業務外要因等を個別に確認します。今後の疾病名整理も、会議後の公式決定を確認する必要があります。
会社が労災ではないと言ったら申請できませんか?
労災認定を行うのは会社ではなく労働基準監督署です。会社の見解だけで自己判断せず、管轄の労働基準監督署へ相談してください。
証拠がそろうまで受診を待つべきですか?
待たないでください。健康と安全が先です。記録が不十分でも受診・相談はできます。切迫した危険がある場合は119番などへ連絡してください。
参考資料
はたらく看護師さん 求人
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