2026年8月31日更新:第33週の低下を「流行終息」とは断定しない
国立健康危機管理研究機構(JIHS)が8月25日に公表した2026年第33週(8月10〜16日)の速報データでは、新型コロナウイルス感染症は3,896例、定点当たり1.12でした。第32週の6,578例、1.79から低下しています。
急性呼吸器感染症(ARI)は103,658例、定点当たり29.80で、第32週の161,935例、44.08から低下しました。ただし第33週はお盆の時期を含み、医療機関の診療日や受診行動、報告定点の稼働が通常週と異なる可能性があります。全国速報の1週の低下だけで「流行が終わった」と判断しません。
| 疾患 | 第33週の報告数 | 定点当たり | 第32週からの変化 |
|---|
| COVID-19 | 3,896 | 1.12 | 1.79から低下 |
| ARI | 103,658 | 29.80 | 44.08から低下 |
| インフルエンザ | 2,417 | 0.69 | 0.52から上昇 |
| RSウイルス感染症 | 1,067 | 0.51 | 0.64から低下 |
| 手足口病 | 5,047 | 2.40 | 4.69から低下 |
| ヘルパンギーナ | 1,456 | 0.69 | 1.31から低下 |
| マイコプラズマ肺炎 | 215 | 0.45 | 0.40から上昇 |
第33週の数値は速報値で、後から修正されることがあります。ARIは症候群全体の報告で、COVID-19など個別疾患の報告数を単純に足し合わせた値ではありません。全国値、自院の受診者数・検査陽性、職員欠勤、地域情報を分けて見てください。
次の第34週速報は2026年9月1日公表予定です。公開後、休日要因が弱まった週でも同じ方向かを再確認します。
週次更新は「数字を見る」だけで終わらせない
この記事を初めて公開した2026年6月6日時点の第21週(5月18〜24日)は、COVID-19が1,348例、定点当たり0.36でした。その後の推移を更新し続ける必要があります。また、2025年第15週以降は急性呼吸器感染症サーベイランス開始に伴い定点数が変更されているため、制度変更をまたぐ単純比較には注意が必要です。
2025年4月からは急性呼吸器感染症サーベイランスも開始され、COVID-19だけでなく、発熱、咳、咽頭痛などを伴う呼吸器感染症全体の動向を確認する重要性が高まっています。
看護師が見るべきなのは、全国の定点報告数だけではありません。自分の職場で、発熱・咳患者の動線、面会者対応、職員の体調不良時ルール、マスク・換気・防護具の運用が今の流行状況に合っているかを確認することです。
判断材料になる一次情報
この記事は診断や治療方針を示すものではありません。施設の感染対策マニュアル、医師の指示、地域の保健所・自治体情報に従ってください。
既存の新型コロナ6月レポートを看護師向けに読む記事では、6月時点の感染対策全体を整理しています。この記事では、週次更新を見た後に「外来・病棟の運用をどう動かすか」に絞ります。
外来で確認したいこと
| 場面 | 確認項目 |
|---|
| 予約・電話 | 発熱、咳、咽頭痛、呼吸苦、周囲の流行を聞く |
| 受付 | マスク着用、待機場所、同伴者の症状を確認する |
| 待合 | 高齢者、妊婦、免疫不全患者と動線が重ならないようにする |
| 診察前 | SpO2、呼吸数、脱水、食事摂取、基礎疾患を確認する |
| 会計・薬局 | 滞在時間を短くし、説明の重複を減らす |
外来で起きやすい問題は、発熱患者の診察そのものより、受付から診察までの滞在です。待合での滞留、同伴者の症状見落とし、説明不足による再来院を減らすことが、看護師の負担軽減にもつながります。
病棟・施設で確認したいこと
- 入院時に発熱・咳・咽頭痛・周囲の感染状況を確認しているか
- 面会者の体調確認ルールが曖昧になっていないか
- 食堂、デイルーム、リハビリ室の換気と座席運用が決まっているか
- 発熱患者が出た時の個室移動、同室者観察、検査依頼の流れがあるか
- 職員の体調不良時に「休みにくい」空気で出勤していないか
- 夜勤帯でも感染対策物品の場所が分かるか
高齢者施設や療養病棟では、症状が典型的でない患者もいます。発熱だけでなく、食欲低下、活気低下、せん妄、酸素化の変化も、早めにチームで共有します。
職員体調管理は人員不足とセットで考える
感染対策の弱点は、マニュアルよりも人員配置に出ます。体調不良でも休めない職場では、院内感染だけでなく、看護師自身の消耗も大きくなります。
流行状況の前に、自部署でそろっているか見ておきたいのは次の5点です。
- 発熱・咳がある職員の出勤基準が明文化されているか
- 休んだ場合の代替要員、応援体制、業務削減ルールがあるか
- 夜勤者が体調不良になった時の連絡先が決まっているか
- 病棟内で「休む人が悪い」空気になっていないか
- 感染症流行時に委員会・研修・書類業務を減らせるか
感染対策が整っていても、休めない職場では持続しません。職場選びでは、感染対策と同時に、欠勤時のフォロー体制、夜勤回数、残業の実態も確認しましょう。夜勤後の体調不良と働き方の見直しも参考になります。
面接・見学で聞く質問
- 発熱・咳患者の外来動線は、現在どのように運用していますか?
- 面会者の体調確認は、誰がどのタイミングで行いますか?
- 病棟で発熱患者が出た場合、個室移動や同室者対応の手順はありますか?
- 職員が発熱した時、休みやすい代替体制はありますか?
- 感染症流行時に、記録・委員会・研修などを一時的に調整しますか?
感染症対応は、看護師の安全と働きやすさの両方を映します。給与・夜勤・残業も含めて比較する場合は、給与診断で今の条件を整理してから職場を見ましょう。
そもそも、この数字はどう集められているか
読み方の前に、集計の仕組みを一度だけ確認しておきます。ここを知らないまま数字だけ追うと、毎週同じところでつまずきます。
COVID-19やインフルエンザなどの五類感染症の一部は、全数把握ではなく定点把握です。あらかじめ指定された医療機関(定点医療機関)が、1週間分の報告数をまとめて届け出ます。JIHSはそれを集計し、報告数と定点当たり報告数として公開します。
ここから導かれることが3つあります。
- 受診しなかった人は入りません。自宅で市販薬を飲んで治した人、検査を受けなかった人は数に現れません。
- 定点以外の医療機関を受診した人も入りません。同じ地域でも、受診先によって数字に反映されたりされなかったりします。
- 報告は週単位です。週の途中で急に増えても、その週が終わるまで数字にはなりません。速報の公開はさらに数日後です。
つまり、全国値は現在地ではなく、少し前の景色です。第33週(8月10〜16日)のデータが公開されたのは8月25日でした。9日前後の時差があります。
この時差は欠点ではなく仕様です。ただし現場で使うときは、「今どうなっているか」を全国値で判断しないという前提が要ります。今を知りたければ、自院の受診者数と職員の体調のほうが早いということです。
週報の数字を誤読しないための3つの約束
毎週の速報は、見方を決めておかないと「増えた・減った」だけで終わります。次の3つを前提にすると、現場の判断へつながります。
1. 「定点当たり」は患者数ではありません
定点当たり報告数は、報告数を定点医療機関の数で割った値です。全国で実際に何人が感染したかを示す数字ではありませんし、医療機関を受診しなかった人、検査を受けなかった人は入りません。
そのため、定点当たりの数字は「今週は先週と比べてどうか」を見るための指標であって、地域の実患者数を推計するためのものではありません。院内の会議で「全国で1.12だから当院でも」と使うと、話が噛み合わなくなります。
2. 速報値は後から変わります
JIHSは、公開しているデータについて報告数集計の速報値であり、後日の感染症発生動向調査週報、さらには確定データとしての年報において修正される場合がある、と明記しています。
週明けに見た数字と、あとから引用した数字が違うことがあります。院内資料に載せるときは、いつ時点の速報値かを必ず添えてください。数字だけを転記すると、翌月には出どころの分からない数字になります。
3. ARIは症候群、COVID-19は疾患です
急性呼吸器感染症(ARI)は症候群単位の報告で、原因を問いません。COVID-19やインフルエンザの報告数を足し合わせた値でもありません。ARIが減ってCOVID-19が増える、あるいはその逆も起こり得ます。
片方だけを見て「呼吸器感染症は落ち着いた」と結論づけないでください。2つの線は別々に動きます。
休日を含む週の読み方
第33週はお盆の期間を含みます。休日が入る週は、次の両方が同時に動きます。
| 動くもの | 向き | 理由 |
|---|
| 報告数(分子) | 減りやすい | 受診しない、休日診療のみ、検査が翌週へずれる |
| 報告する定点(分母) | 変わりうる | 休診の医療機関がある |
| 実際の感染 | 増えることもある | 帰省、旅行、集まりで接触が増える |
つまり、休日週の低下は「感染が減った」と「報告が減った」の区別がつかないのです。年末年始も同じ構造になります。
現場では、この週の全国値をもって院内の対策を緩める判断をしないでください。判断材料になるのは、自院の受診者数、検査陽性数、職員の欠勤状況、地域の医療機関からの情報など、報告のずれを受けにくい手元の指標です。
週ごとに同じ形で残す
毎週の速報を活かすには、記録の形を固定するのが早道です。数字を眺めた記憶は翌週には残りません。
| 記録する項目 | 出どころ | 注意 |
|---|
| 週番号と対象期間 | JIHS速報 | 第33週なら8月10〜16日 |
| COVID-19の定点当たり | JIHS速報 | 速報値である旨を併記 |
| ARIの定点当たり | JIHS速報 | COVID-19と別に記録する |
| 自院の発熱受診者数 | 院内 | 全国値と混ぜない |
| 自院の検査陽性数 | 院内 | 検査件数も併記しないと率が出ない |
| 職員の欠勤(体調不良) | 院内 | 部署の偏りを見る |
| その週に変更した運用 | 院内 | 変えた日と伝えた範囲 |
最後の行が効きます。「いつ、何を、誰に伝えて変えたか」が残っていれば、次に流行が動いたとき、同じ判断をゼロから議論せずに済みます。逆にこれがないと、毎回「前はどうしていたか」から始まります。
自施設で使っている様式があればそれに合わせてください。無い場合も、表計算1枚で足ります。凝った集計は続きません。
数字を見たあと、部署で何を確認するか
週報を見て終わりにせず、次の順で自部署へ落とします。
- 自院・自施設の直近1週間の発熱受診者数と検査陽性数(全国値ではなく手元の数字)
- 職員の欠勤・体調不良の件数と、同じ部署に偏っていないか
- 発熱・咳のある人の動線(受付、待合、検査、病棟)が今の状況に合っているか
- 面会・付き添いの運用を変える必要があるか、変えるなら誰が決めるか
- 個人防護具と検査キットの在庫が、増加局面に耐えられるか
- 変更したときに、夜勤帯・非常勤・委託職員まで伝わる経路があるか
このうち1と2が、全国値より先に動くことがあります。全国の速報が上がってから対策を始めると、自院ではすでに広がっているという順序になりがちです。手元の指標を毎週同じ形で見ておくと、その遅れを埋められます。
まとめ
新型コロナや急性呼吸器感染症の週次更新は、数字を眺めるだけでは現場改善につながりません。看護師が確認したいのは、電話・受付・待合・面会・病棟内動線・職員体調管理が、今の流行状況に合っているかです。
8月は気温上昇で体調不良の原因が感染症だけではありません。発熱を「暑さのせい」とも「COVIDに違いない」とも決めつけず、呼吸器症状、周囲の流行、基礎疾患、脱水、酸素化の変化をセットで確認しましょう。
地域や職場ごとの運用例を匿名で共有したい場合は、看護師掲示板を使えます。患者情報、施設名、未公表の院内発生状況は投稿せず、診断・感染対策の個別判断は医師、感染管理部門、勤務先手順を優先してください。
よくある質問
急性呼吸器感染症サーベイランスは看護師の業務に関係ありますか?
関係します。サーベイランスは地域の流行を把握するための仕組みですが、現場では発熱・咳患者の動線、面会ルール、職員体調管理を見直す材料になります。
定点当たりの数字が下がったら、対策を緩めてよいですか?
全国の速報だけでは判断できません。特に休日を含む週は、受診行動と報告の両方がずれます。緩和の判断は、自院の受診者数・陽性数・職員欠勤と、感染管理部門の評価に基づいて行ってください。
週報の数字は、あとから変わることがありますか?
あります。JIHSは公開データが速報値であり、週報や年報で修正される場合があると明記しています。院内資料へ引用するときは、いつ時点の速報値かを併記してください。
ARIの報告数は、COVID-19やインフルエンザの合計ですか?
違います。ARIは症候群単位の報告で、原因を問わず集計されます。個別疾患の報告数を足し合わせた値ではないため、両者を足したり引いたりして解釈しないでください。
次の更新はいつですか?
JIHSは第34週の更新を2026年9月1日(火)と案内しています。公開後は、休日要因が弱まった週でも同じ方向かを確認してください。
発熱患者対応は外来だけが気をつければよいですか?
外来だけでは不十分です。病棟、透析室、リハビリ室、検査室、施設、訪問看護でも、発熱・咳・咽頭痛の確認と動線整理が必要です。
この記事の確認範囲
- 確認日:2026年8月31日
- 確認主体:はたらく看護師さん編集部
- 数値の性質:第33週速報。後日修正される場合があります
- 残余確認:2026年9月1日公表予定の第34週で休日週後の動きを確認します
全国速報だけで患者の診断、検査、隔離、出勤停止を決めることはできません。地域情報、自施設の感染対策手順、医師・感染管理部門の判断を優先してください。
参考資料
はたらく看護師さん 求人
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