産科の現場に、これから1通の郵便物が届きます。回答期限は9月中旬。中身は、あなたたちが日々提供しているケアの内容を尋ねるものです。
日本看護協会が2026年8月26日、厚生労働省の「分娩取扱施設における医療やサービスの実態調査」について案内を掲載しました。
何の調査か
案内によれば、この調査の概要は次のとおりです。
- 実施主体は厚生労働省保険局で、あずさ監査法人に委託して実施されます。
- 対象は分娩取扱施設、すなわち病院・診療所・助産所です。
- 各施設へ郵送で依頼文書が発送され、9月中旬までの期限で行われる予定です。
- 位置づけは、健康保険法などの改正により分娩費が新設されたことに伴い、その具体的検討の基礎資料となる重要な調査、とされています。
- 日本看護協会は「調査票が届いた施設の皆さまにおかれましては、本調査へのご理解とご協力のほど、よろしくお願いします」と呼びかけています。
「調査票が届いた施設の皆さま」という書き方なので、すべての施設に一律で届くとは限りません。まず自施設に届いているかどうかの確認からになります。
この調査が、いつ、どこで使われるか
調査単体では意味が見えにくいので、時間軸に置いてみます。
中央社会保険医療協議会の総会(第655回、2026年8月26日)で、「妊娠・出産・産後における診療やケアの内容等に関する検討会」の開催要綱が示されました。その要綱には、議論の材料として令和8年度分娩取扱施設における医療やサービスの実態調査(厚生労働省保険局医療課)が挙げられています。
検討会のスケジュール案は、10月初旬にキックオフ、10月から11月に出産に係る診療・ケアの体制や内容等および施設基準等の検討に必要な着眼点を議論し、12月頃にとりまとめという流れです。実態調査の結果は順次報告されるとされています。
並べると、こうなります。9月中旬までの回答が基礎資料となり、結果が10月以降の検討会へ順次報告され、12月頃のとりまとめにつながる予定です。 回答からとりまとめまでの期間は短く設定されています。
書かなかったケアは、評価資料で見えにくくなります
ここが本記事でいちばん伝えたい点です。
検討会が扱うのは、出産に係る診療・ケアを新たな給付体系でどのように評価するかの論点整理です。評価の設計は、実際に何が行われているかという情報を土台にします。その情報は、この調査で集められます。
すると、調査票で把握されなかったケアは、少なくともこの調査からは議論へ届きにくくなります。
産科で行われているケアには、記録に残りにくいものが多くあります。陣痛期の付き添い、不安への声かけ、家族への説明、授乳がうまくいかない母親への繰り返しの支援、退院後の電話対応。これらは時間も労力もかかりますが、電子カルテの定型項目に収まらないことがあります。
調査票の設問がどうなっているかは、本記事では確認していません。ただ、記録に残っているものと残っていないものを事前に分けておくことは、届く前からできます。回答する人が一人で思い出しながら書くのと、チームで洗い出してから書くのとでは、内容が変わります。
回答の前に整理しておく7項目
- 自施設に調査票が届いているか。 誰が受け取り、どこに置かれているか。
- 回答の担当は誰か。 事務か、看護管理者か、助産師か。実務を知っている人が関わっているか。
- 回答期限。 9月中旬までの期限とされています。実際の日付は届いた文書で確認してください。
- 提供しているケアの棚卸し。 分娩期、産褥期、退院後のフォローで、誰が何をどれだけ行っているか。
- 記録に残っているもの・残っていないもの。 前章のとおりです。
- 自費と保険の切り分け。 開催要綱は「自費と保険診療が併用されている中での出産に関連する保険診療の現状」を踏まえる必要があるとしています。自施設で何が自費で何が保険か、説明できますか。
- 夜間・休日の体制。 何人で、どう回しているか。検討会の検討事項には施設基準の着眼点が含まれているため、体制をどう書き表すかが結果に影響します。
4番と5番を、回答担当者だけに任せないでください。分娩に立ち会っている人しか知らない業務が、いちばん記録から漏れます。
「保険適用が決まった」ではありません
説明するときに気をつけたい線引きがあります。
健康保険法等の改正により分娩費が新設されたことは事実です。その施行に向けて給付体系を新たに構築する必要があるとされ、そのための検討がこれから行われます。中身、つまり何をどう評価するかは決まっていません。
「出産費用が保険適用になりました」と一言で説明すると、患者さんやご家族に誤った期待を持たせます。いま出産を控えている方から費用について聞かれた場合は、加入している医療保険者と分娩を扱う医療機関に直接確認するよう案内してください。
調査に答えることが、遠回りに見えても
現場からすると、この種の調査は「また書類が増えた」と受け止められがちです。9月は業務が立て込む時期でもあります。
それでも、この調査が他と違うのは、回答結果が検討会へ順次報告され、制度設計の基礎資料になるという点です。産科は分娩件数の減少と施設の集約が同時に進んでいる領域で、評価の枠組みがどう決まるかは、働く場所の存続にも関わります。
とはいえ、制度の議論と自分のキャリアの不安が混ざると、どちらも整理できなくなります。混ざりそうだと感じたら、いったん分けてください。分ける相手が必要なときは、カンゴさんに匿名で相談する場所があります。
よくある質問
Q. すべての分娩取扱施設に調査票が届きますか。 日本看護協会の案内は「調査票が届いた施設の皆さま」という書き方です。全施設への一律発送とは書かれていません。
Q. 回答期限はいつですか。 「9月中旬までの期限で行われる予定」とされています。実際の期限は届いた依頼文書で確認してください。
Q. 誰が実施しているのですか。 厚生労働省保険局が主催し、あずさ監査法人に委託して実施されています。
Q. 回答内容はどう使われますか。 健康保険法等の改正による分娩費の新設に伴う、具体的検討の基礎資料と位置づけられています。妊娠・出産・産後における診療やケアの内容等に関する検討会の議論に、順次報告されるとされています。
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この記事の確認範囲
- 確認日:2026年8月30日
- 確認主体:はたらく看護師さん編集部
- 個別専門家監修:実施していません
本稿は日本看護協会の案内と厚生労働省の検討会開催要綱に基づく整理です。調査票の設問・発送対象・提出期限の詳細は、各施設に届いた依頼文書を優先してください。
参考資料
調査の設問内容、記入方法、提出先については本記事では扱っていません。それらは届いた依頼文書に記載されています。不明な点は、文書に記載された問い合わせ先に確認してください。
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