親の介護が始まり、「もう仕事を辞めるしかない」と感じている看護師さんへ。介護離職は、いったん辞めると収入が途絶え、再就職や年金にも影響します。そして実は、辞める前に使える制度や相談先がいくつもあります。この記事では、介護離職を決める前に確認したいことを、厚生労働省・総務省の一次情報をもとに整理します。
要点まとめ
- 介護・看護を理由に過去1年間で前職を離職した人は約11万人(2022年・総務省)。介護離職は珍しいことではないが、辞める前に確認できることは多い(HR1)。
- 介護休業(通算93日・3回分割)は、介護を自分で担う期間ではなく両立の体制を整える準備期間として使える(HR2)。雇用保険から給付金(賃金日額の67%)が出る場合がある(HR3)。
- 所定外労働の制限(残業免除)・時間外労働の制限・深夜業の制限は対象要件を満たせば請求できる。勤務先には短時間勤務等の措置(短時間勤務・時差出勤などのいずれか1つ以上)の制度整備が義務づけられており、辞めずに勤務を軽くできる可能性がある(HR2)。
- 最初の相談先は地域包括支援センター(市区町村の介護総合相談窓口)。要介護認定の申請やケアマネジャー手配を案内してくれる(HR4)。
- 介護を理由に退職する前提で介護休業を取ると給付金の対象外になる場合がある。まず「続けられないか」を確認することが先(HR3)。
こんな悩みを持つ看護師さんへ
- 親が要介護になり、「夜勤もあるしもう辞めるしかない」と思っている
- 介護にどのくらい時間がかかるのか見通しが立たない
- 辞めた後の生活費・再就職が不安だが、今のままも続けられない
- 職場に介護のことを相談していいのか分からない
- きょうだいや家族と介護の分担が決まっていない
「辞める」という判断は、収入・キャリア・将来に大きく影響します。感情的に決める前に、制度と相談先を一通り確認することが、後悔を防ぐ第一歩です。
介護離職を急ぐ前に確認したい5つのこと
1. 介護の見通しを「地域包括支援センター」で整理する
介護がどのくらい続き、どの時間帯に手がかかるのかが分からないまま辞めると、「実は介護サービスで対応できた」というケースもあります。まず地域包括支援センター(市区町村ごとに設置された介護の総合相談窓口)に相談してください。要介護認定の申請先はお住まいの市区町村で、申請から認定通知までは原則30日以内とされています(介護保険法第27条、HR4・HR7)。要介護度が決まれば、ケアマネジャーがケアプランを作成し、訪問介護やデイサービスなどで負担を分散できます。
2. 介護休業で「体制づくりの時間」を確保する
介護休業は対象家族1人につき通算93日・3回まで分割して取得できます(HR2)。これは介護のすべてを自分で担う期間ではなく、介護保険サービスの手配・施設の検討・家族の分担を決めるための準備期間です。93日を一度に使い切る必要はなく、状況の節目ごとに分けて使えます。
3. 介護休業給付金で収入の一部を補う
雇用保険の被保険者で要件(休業開始前2年間に被保険者期間12か月以上など)を満たせば、介護休業給付金として休業開始時賃金日額の67%が、同じ対象家族につき93日を限度に支給されます(HR3)。ただし、当初から退職する予定で取得する場合は対象外となることがあるため、「まず続けられないかを検討する」という前提が大切です。
4. 夜勤・残業・勤務時間を軽くする制度を使う
辞めずに勤務を軽くする手段があります(HR2)。
| 制度 | 内容 |
|---|
| 深夜業の制限 | 対象要件を満たす労働者が請求した場合、午後10時〜午前5時の勤務を制限できる(継続雇用1年未満などの対象外や、事業の正常な運営を妨げる場合の例外あり) |
| 所定外労働の制限 | 請求により残業が免除される(事業の正常な運営を妨げる場合の例外あり) |
| 時間外労働の制限 | 1か月24時間・1年150時間を超える残業をさせてはならない |
| 短時間勤務等の措置 | 事業主が短時間勤務・時差出勤・フレックスタイム・介護費用助成のいずれか1つ以上を制度化する義務(連続3年以上で2回以上利用可) |
夜勤のある看護師にとって、深夜業の制限で夜勤の負担を減らせる可能性は、離職を避ける大きな選択肢になりえます。自分が対象になるか、就業規則と人事への確認から始めてください。
5. 家族・きょうだいと分担を相談する
介護を一人で抱えると離職に傾きやすくなります。きょうだいや家族と、誰がどの役割を担うか、費用をどう分担するかを早めに話し合っておくことが、両立を続ける土台になります。
今の職場で確認したいこと
- 介護休業・介護休暇・深夜業の制限の申請方法と期限(就業規則・人事に確認)
- 介護の相談窓口や研修などの雇用環境整備が講じられているか(2025年4月改正で、相談体制・研修・事例提供・方針周知のいずれかの措置が義務化、HR5)
- 深夜業の制限(夜勤の制限)や短時間勤務を申請した場合のシフト・配置の調整方針
- 介護休業給付金の申請手続き(多くは勤務先経由でハローワーク)
- 復帰後の働き方を相談できるか
これらを確認したうえで、「制度はあっても自分は対象外だった」「相談しても勤務調整が難しい」という場合に、はじめて働き方の変更・転職が現実的な選択肢になります。
それでも働き方を変える場合(転職で解決しやすいこと・しにくいこと)
「介護のために転職すれば解決する」とは限りません。整理して判断してください。
転職で変えやすいこと
- 夜勤の有無・回数:日勤中心のクリニック・外来・訪問看護・介護施設・健診など、夜勤を減らせる職場は多い。
- 勤務時間・通勤:時短や時間帯の相談がしやすい職場、介護先に近い職場を選べる。
転職で変えにくいこと・注意が必要なこと
- 介護そのものの負担:職場を変えても介護の必要量は変わらない。
- 転職直後の制度の使いにくさ:介護休業は、労使協定により入職1年未満などの労働者が対象外となる場合がある(介護休暇は2025年4月から勤続6か月未満を対象外とする仕組みが廃止された、HR5)。介護が始まったばかりの時期は、今の職場の制度を使うほうが安定することが多い。
- 収入の変化:夜勤を減らすと夜勤手当が下がる。生活設計とあわせて確認する。
働き方の選択肢を具体的に知りたい場合は、親の介護と仕事の両立で使える介護休業・ダブルケアの制度整理や病棟から訪問看護に移るか迷ったときの確認ポイントもあわせて読んでみてください。
相談先
- 地域包括支援センター:介護の最初の相談窓口。要介護認定の申請・ケアマネジャー手配を案内(HR4)。
- ケアマネジャー(介護支援専門員):ケアプラン作成・サービス調整。
- 厚生労働省「仕事と介護の両立支援 〜介護離職を防ぐために〜」:制度の全体像を確認できる(HR6)。
- 職場の人事・介護相談窓口:介護休業・介護休暇・深夜業の制限などの手続き先。
よくある質問
Q1. 介護のために、とりあえず辞めてから考えるのは良くないですか?
いったん離職すると収入が途絶え、再就職やキャリア・年金にも影響します。介護・看護を理由に過去1年で離職した人は約11万人いますが(HR1)、辞める前に介護休業・深夜業の制限・介護保険サービスを組み合わせれば続けられるケースもあります。まず地域包括支援センターと職場に相談し、「続けられないか」を確認してから判断することをおすすめします。
Q2. 介護がいつまで続くか分からず、93日では足りない気がします。
介護休業の93日は「介護をすべて担う期間」ではなく、介護保険サービスやケアマネジャーと連携して両立の体制を整える準備期間です(HR2)。体制が整えば、その後は深夜業の制限・短時間勤務・介護休暇を使いながら働き続けやすくなります。3回まで分割できるため、状況の節目ごとに使うこともできます。
Q3. 退職するつもりで介護休業を取ってもいいですか?
介護休業給付金は職場復帰を前提とした給付のため、当初から退職予定で取得する場合は対象外になることがあります(HR3)。まずは「続けられないか」を検討したうえで取得するのが基本です。
Q4. 夜勤があるので両立は無理だと思っています。
要介護状態の家族を介護する労働者は、対象要件を満たせば、午後10時〜午前5時の労働を制限する「深夜業の制限」を請求できます(HR2)。ただし、継続雇用1年未満などの対象外や、事業の正常な運営を妨げる場合の例外もあります。「夜勤があるから無理」と決める前に、自分が対象になるかを職場に確認してみてください。
Q5. 職場に介護のことを言い出しにくいです。
2025年4月の改正で、事業主には介護に直面した労働者への個別の周知・意向確認が義務づけられ、相談窓口の設置や研修などの雇用環境整備(いずれかの措置)も義務になりました(HR5)。制度の確認として人事や相談窓口に伝えることから始めて構いません。
参考資料
- 総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」(介護・看護のための離職者数)
https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/pdf/kgaiyou.pdf
- 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」(介護休業・介護休暇・深夜業の制限・短時間勤務等)
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355354.pdf
- 厚生労働省「Q&A〜介護休業給付〜」(給付率67%・支給要件)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158665.html
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム 介護サービスの利用までの流れ」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/flow.html
- 厚生労働省「育児・介護休業法の改正について(令和7年4月1日施行)」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/
- 厚生労働省「仕事と介護の両立支援」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/index.html
- 介護保険法(e-Gov法令検索・第27条 要介護認定)
https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
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