熱が出たら、まずアセトアミノフェン。発熱時指示のいちばん上に書かれていて、深く考えずに実施している薬かもしれません。その電子添文が、2026年8月25日に変わりました。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公表した使用上の注意の改訂で、アセトアミノフェン含有製剤の「特定の背景を有する患者に関する注意」に、新しい記載が加わっています。対象は経口剤も坐剤も注射剤も含みます。
この改訂で変わること
追記されたのは「9. 特定の背景を有する患者に関する注意」の「9.1 合併症・既往歴等のある患者」です。次の患者が新しく挙げられました。
重篤な腎障害・肝障害(重篤な肝障害を除く)・敗血症・栄養障害等によるピログルタミン酸蓄積の素因のある患者
理由として書かれているのは、「ピログルタミン酸の排泄阻害又はグルタチオン欠乏が生じているため、本剤投与によりピログルタミン酸の蓄積が促進された結果、アニオンギャップ開大性代謝性アシドーシスが発現するおそれがある」というものです。
ここで押さえるべき点が3つあります。
ひとつめ。禁忌への追加ではありません。 追記先は9.1であって、2. 禁忌ではありません。この背景を持つ患者に投与できなくなったわけではありません。
ふたつめ。「重篤な肝障害を除く」というかっこ書きを落とさないでください。 重篤な肝障害はもともと別の枠組みで扱われています。今回追記されたのは、それを除いた肝障害と、重篤な腎障害、敗血症、栄養障害などです。ここを略して「肝障害の患者に注意が加わった」と伝えると、意味が変わります。
みっつめ。根拠は症例の集積ではありません。 PMDAは改訂の理由を「本剤の代謝経路及び副作用発現機序より」としています。国内で事故が続いたから注意が増えた、という経緯ではなく、薬の代謝の仕組みから導かれる注意です。この経緯を知らずに説明すると、実際より切迫した話に聞こえてしまいます。
対象になる製品の幅を見てください
「カロナールの話でしょう」で終わらせられない理由は、対象製品の広さにあります。
経口剤は、カロナール原末、同錠200・300・500、同細粒20%・50%、同シロップ2%など(あゆみ製薬株式会社ほか)。錠200は1996年7月、錠500は2015年2月の発売で、剤形ごとに発売時期が異なります。
坐剤は、アルピニー坐剤50・100・200(久光製薬株式会社ほか)、アンヒバ坐剤小児用50mg・100mg・200mg(ヴィアトリス製薬合同会社ほか)、カロナール坐剤小児用50・100・200・400(あゆみ製薬株式会社ほか)。小児科領域の解熱・鎮痛が適応です。
注射剤は、アセリオ静注液1000mgバッグ(テルモ株式会社、2017年2月発売)。適応は「経口製剤及び坐剤の投与が困難な場合における疼痛及び発熱」です。
さらに配合剤があります。SG配合顆粒(シオノギファーマ株式会社、2003年7月発売、感冒の解熱、耳痛、咽喉痛、月経痛、頭痛、歯痛、症候性神経痛、外傷痛)、トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合剤、そして総合感冒剤や鎮咳剤に含まれる各種の配合剤です。薬効分類でいうと、114(解熱鎮痛消炎剤)、118(総合感冒剤)、222(鎮咳剤)にまたがります。
この幅が意味するのは、同じ患者に複数の経路でアセトアミノフェンが入りうるということです。定時の内服に配合剤が入っていて、発熱時指示でカロナールが追加され、食事が摂れない日はアセリオに切り替わる。総量を意識していないと、どこかで重なります。
背景条件を、正確に押さえる
追記された背景を、もう一度そのまま並べます。重篤な腎障害。重篤なものを除く肝障害。敗血症。栄養障害。そして、これらの「等によるピログルタミン酸蓄積の素因のある患者」という限定です。
ここで言葉を広げないでください。「腎機能が低下している患者全般」でも「敗血症を疑っている患者全般」でもありません。原典が置いているのは「重篤な」という限定と、ピログルタミン酸蓄積の素因という条件です。急性期でも療養でも在宅でも見かける背景ではありますが、該当するかどうかを判断するのは医師です。
看護職の側でできるのは、これらの背景を持つ患者に該当しうるかどうかを、カルテの情報で拾って共有することまでです。「腎機能が悪めだから危ない薬」という粗い伝え方をすると、必要な鎮痛・解熱まで止まりかねません。
公式資料から共有できる範囲
今回の改訂資料が示しているのは、注意の対象となる背景、ピログルタミン酸蓄積に関する機序、対象製品です。特定の症状だけでアシドーシスを判断する手順や、検査を行う基準は示していません。
看護職が確認する場合も、投与の可否や検査の要否をこの記事から決めるのではなく、製品の最新電子添文、処方指示、自施設の手順を照合し、患者の変化は定められた経路で医師・薬剤師へ共有します。
投与前に確認する項目
- 製剤と経路。 経口剤、坐剤、注射剤、配合剤のどれかを確認します。
- 重複の有無。 定時、頓用、持参薬、配合剤を含め、アセトアミノフェンが重なっていないかを処方・実施記録で確認します。
- 改訂で挙げられた背景。 重篤な腎障害、重篤な肝障害を除く肝障害、敗血症、栄養障害等について、診療録に記載された情報を共有します。
- 指示の内容。 1回量、間隔、上限などが明記されているかを確認し、記事独自の基準は使いません。
- 医師・薬剤師への確認経路。 不明点と患者の変化を、誰へどう伝えるかを自施設の手順で確認します。
発熱時指示の書式そのものを見る
毎回ひとりずつが気をつける、という対策は長続きしません。指示の書式そのものが拾ってくれる形になっているかを見ます。
見るべきは3か所です。発熱時指示に上限回数と間隔が書かれているか。他剤に含まれるアセトアミノフェンの重複を処方監査が検知できるか。電子添文の改訂が施設の指示ひな形に反映される経路があるか。ここが埋まっていれば、改訂への対応は誰かの記憶ではなく運用が担ってくれます。
決まっていないのであれば、そこは看護師が覚えておけば済む話ではありません。医師と薬剤師を交えて指示の作り方から決める領域です。毎回だれかの記憶頼みで確認が回っている、という自覚があるでしょうか。その状態を言葉にする場所として、インシデントの不安を匿名で相談する窓口があります。医療安全の体制は、職場を比べるときの立派な物差しにもなります。
よくある質問
Q. 腎障害や敗血症の患者にはアセトアミノフェンを使えなくなったのですか。 いいえ。追記されたのは9.1「合併症・既往歴等のある患者」であり、禁忌ではありません。投与しないことを求める改訂ではありません。また対象は「重篤な腎障害」であって、腎機能が低下している患者すべてではありません。
Q. 症状からアシドーシスを見分けられますか。 看護師が症状だけで判断することはできません。アニオンギャップの評価は血液ガスと電解質の値に基づく医師の判断です。観察して報告するところまでが持ち場です。
Q. 新しい副作用が見つかったのですか。 今回の理由は代謝経路と副作用発現機序に基づく判断であり、新たな症例集積を根拠とした注意喚起ではありません。
Q. 市販の風邪薬も対象ですか。 一般用医薬品の扱いは今回の改訂指示とは別に整理されます。ただし患者が市販薬を併用していれば総量は増えます。持参薬と市販薬の確認は、対象かどうかとは別に必要です。
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この記事の確認範囲
- 確認日:2026年8月27日
- 確認主体:はたらく看護師さん編集部
- 医療監修:医師・薬剤師による個別監修は実施していません
本稿はPMDA・厚生労働省の改訂資料に記載された内容の紹介と、記載範囲の読み分けに限定しています。個別患者の投与、検査、観察、対応の判断には使用せず、最新の電子添文、医師・薬剤師、自施設の手順を優先してください。
参考資料
扱ったのは公表された改訂文の読み方です。1回量や総量の設定、検査のオーダーについては触れていません。現場では各製品の最新の電子添文が最優先で、それに自施設の取り決めが重なります。
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