「20〜30万に1つ」が指しているのは、拠点機能です
厚生労働省が2026年7月23日の検討会に提出した資料に、新たな地域医療構想の骨子の概要が載っています。もとになっているのは、令和8年3月19日の「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」のとりまとめです。
この構想が目指す方向として、資料には次のように書かれています。85歳以上の高齢者の増加や人口減少が更に進む2040年とその先を見据え、すべての地域・世代の患者が適切に医療・介護を受けながら生活し、必要に応じて入院し、日常生活に戻ることができ、同時に、医療従事者も持続可能な働き方を確保できるよう、住民を含め地域の関係者の理解を得ながら医療提供体制を構築する、と。
医療従事者の持続可能な働き方が、構想の目的の中に明記されています。ここは看護職として押さえておいてよい部分です。
そのうえで、具体的に何が変わるのか。いちばん大きいのは、医療機関の機能が種類ごとに分かれ、それぞれが地域の中で位置づけられるという点です。
この記事で分かること
- 新しく設けられる医療機関機能の種類と、それぞれの役割
- 急性期拠点機能が「人口20万〜30万に1つ」とされている意味
- 都道府県と地域が、いつ何を決めるのかの時系列
- 自分の病棟の位置づけが変わったときに、看護の中身がどう変わりうるか
- 転職や異動を考えるときに、この動きをどう織り込むか
自分の病院の位置づけが気になったときに聞ける相手は、看護部長か事務部門です。都道府県の医療審議会の資料も公開されています。異動や転職まで視野に入れるなら病棟以外で働く選択肢を先に見ておくと考えやすくなります。
医療機関機能という考え方
資料では、医療機関機能として次のものが挙げられています。
| 機能 | 内容 |
|---|
| 急性期拠点機能 | 構想区域ごとに人口20万〜30万に1つを目安に確保。手術等の急性期医療を集約して提供。新興感染症等への対応 |
| 高齢者救急・地域急性期機能 | 誤嚥性肺炎等の高齢者救急を受入。高齢者を中心に入院早期からのリハビリテーションを提供。大都市等においては頻度の多い手術を提供 |
| 在宅医療等連携機能 | 地域での在宅医療の提供。他の医療機関や介護施設、訪問看護、訪問介護等と連携した24時間の対応や入院対応を実施 |
| 専門等機能 | 集中的なリハビリ、中長期にわたる入院医療、有床診療所の担う地域に根ざした診療、一部の診療科に特化し地域ニーズに応じた診療を提供 |
| 医育及び広域診療機能(大学病院本院) | 都道府県と連携した人的協力。症例数が少ない医療などの広域な観点での診療。地域で多様な症例に対応する人材の育成 |
これまでの地域医療構想は、病床を「高度急性期・急性期・回復期・慢性期」に分ける考え方が中心でした。新しい構想では、それに加えて医療機関そのものの機能を確保していく形になります。なお病床機能については、回復期を包括期とするとされています。
ここでいちばん誤読されやすいのが、「人口20万〜30万に1つ」という数字です。 これは急性期拠点機能について、構想区域ごとに確保する目安として示されたものです。手術等の急性期医療を集約して提供する、という説明とセットになっています。
急性期の医療全体を、その1か所に集めるという意味ではありません。 資料には別に「高齢者救急・地域急性期機能」が置かれており、そこには誤嚥性肺炎等の高齢者救急の受入や、大都市等においては頻度の多い手術を提供することが挙げられています。つまり、急性期にあたる医療は複数の機能に分かれて担われる設計です。
あわせて、地域の人口や医療需要等を踏まえた病床のダウンサイジングも挙げられています。資料には、医療機関の連携・再編・集約化という言葉が入っています。 拠点機能を担わない医療機関がすべて別の機能に移って存続する、という保証が書かれているわけではありません。規模の縮小や再編がどう進むかは、地域ごとの協議によります。
「回復期」が「包括期」になる
病床機能の側にも変更があります。資料には、病床機能について回復期を包括期とするとともに、必要病床数について新たな地域医療構想の取組を踏まえた推計を実施し、病床機能の分化・連携を推進すると書かれています。
名前が変わるだけの話に見えるかもしれませんが、呼び方が変わるということは、その病床が担う想定が整理し直されるということでもあります。回復期という言葉は、急性期を脱した後の回復過程という時間軸を含んでいます。包括期という言葉は、時間軸よりも、複数の状態を幅広く受け止めるという性格を示しています。
高齢者救急・地域急性期機能に「誤嚥性肺炎等の高齢者救急を受入」「入院早期からのリハビリテーションを提供」が挙げられていることと合わせて読むと、急性期とその後をきれいに分けるのではなく、入院の早い段階からリハビリや退院支援を並行させる形が想定されていると読めます。
これは病棟で働く看護師にとって、実務の順序が変わりうる話です。急性期の処置が落ち着いてから退院調整に入る、という組み立てではなく、入院した時点から並行して進める。すでにそうしている病棟も多いと思いますが、機能区分の考え方としてその流れが重視される方向だと読めます。名称や役割の案が示された段階であり、看護の提供体制や患者の経路が制度として確定したわけではありません。
なお、医療機関機能の確保の協議を通じて将来の提供体制の確保の取組を推進するとも書かれています。病床の数だけでなく、医療機関が担う機能の側から体制を確保していく、という組み立てです。
いつ、何が決まるのか
とりまとめには、策定のプロセスが年度で整理されています。ここが働く側にとっていちばん実用的な部分だと思います。
| 時期 | 何が行われるか |
|---|
| 2026年度〜2027年度上半期 | 構想区域ごとに現状の把握、必要病床数の設定、医療機関機能の確保その他の課題設定。必要に応じて区域の見直し |
| 2028年度中まで | 課題設定を受けて、取組の方向性を決定 |
| 2028年度まで | 地域医療構想の策定。協議のなかで、各医療機関が2040年に向けて担う機能を決定 |
| その後 | 具体的な取組は第9次医療計画の検討過程等で検討し、2035年を目途に一定の成果 |
つまり、いまは現状把握と課題設定の段階で、取組の方向性が決まるのは2028年度中までという時間軸です。
これは覚えておく価値があります。いま職場で「うちの病棟がどうなるか分からない」という話が出ていたとしても、国が示している工程では、まだ課題を洗い出している段階です。ただし、この工程はあくまで新しい地域医療構想の手順であって、個々の病院が経営判断で進める再編がこの時期まで止まる、という意味ではありません。
構想区域についても記載があります。医療機関の連携・再編・集約化など医療提供体制構築のための議論の単位や、必要病床数の運用が可能となる単位等を踏まえ、人口20万人以上を基本としつつ、地域の実情を踏まえ柔軟に設定するとされています。
なお、精神医療における地域医療構想のガイドラインの策定については、2026年度中を目途に結論を得るべく検討を進めるとされています。精神科領域はこれからという段階です。
病棟の位置づけが変われば、看護の中身が変わる
ここからは、資料に書かれていることをもとにした読み方です。
医療機関の機能が変わるということは、そこで求められる看護も変わるということです。たとえば急性期病棟が高齢者救急・地域急性期機能を担う病棟になった場合、資料に挙げられているのは「誤嚥性肺炎等の高齢者救急を受入」「高齢者を中心に入院早期からのリハビリテーションを提供」です。
同じ入院患者でも、術後管理が中心の病棟と、高齢者の急性増悪とリハビリが中心の病棟では、日々の業務の組み立てが違います。転棟や退院の調整、家族との連絡、多職種との連携の比重が変わることは想像がつきます。
在宅医療等連携機能では、「他の医療機関や介護施設、訪問看護、訪問介護等と連携した24時間の対応や入院対応を実施」とされています。院内で完結しない仕事の比重が上がる方向です。
これは良い悪いの話ではありません。ただ、自分が身につけてきた技術が、そのまま同じ形で必要とされ続けるとは限らないということではあります。急性期の手技に習熟した人が、リハビリと退院支援が中心の病棟に配置されることもあり得ます。
病棟の性格が変わるときに何を確認するかは、病棟の機能が変わるときに看護師が確認することで整理しています。
外来と在宅についても記載がある
入院医療だけの話ではありません。資料には外来と在宅についても方向が示されています。
外来医療提供体制の維持については、診療所の減少が進む中、地域の病院を中心に提供体制を構築するとされています。また、へき地や診療所の数が限られている地域等において、D to P with N を含むオンライン診療の活用を推進するとも書かれています。
D to P with N は、患者側に看護師が付き添った形でのオンライン診療を指す枠組みです。ここが推進されるということは、看護師が診療の場に立ち会う形の役割が、制度として位置づけられていく方向だと読めます。
在宅については、在宅医療の受け皿の整備として、在宅医療、介護施設、療養に関する記載があります。持続可能な急性期医療の確保としては、医療機関機能を踏まえ、急性期の医療需要や、手術や救急搬送における医療機関ごとの役割分担等について地域ごとに協議するとされています。
訪問看護への関心がある方は、病棟から訪問看護へ移るときの確認事項もあわせて確認しておくと、制度の方向と自分の選択を重ねて考えやすくなります。
「人材確保」の項目に、看護師が名指しで入っている
この骨子には、入院医療・外来在宅医療・介護との連携と並んで「人材確保」の項目が置かれています。そこに書かれている内容が、看護職にとっては見逃せません。
地域における医療人材の確保として、次の二つが挙げられています。
- 都道府県単位で、大学病院本院から急性期拠点機能を中心とした、地域医療構想全体を踏まえた人的協力のあり方について協議
- 看護師等の将来の人材確保の方向性を反映
医療提供体制の再編を議論する枠組みの中に、看護師の人材確保が構成要素として明示的に入っているということです。病床や機能の話とは別枠の付け足しではなく、構想の一部として位置づけられています。
これが実務上どう効くかは、まだ分かりません。「反映する」と書かれていることと、人員の裏づけがないまま集約が進むのを制度として止められることは、別の話です。 資料はそこまで述べていません。ここで言えるのは、医療提供体制の議論の枠組みに看護職の確保が項目として含まれている、というところまでです。
同じ項目には、高齢者救急の受入体制の整備として「救急の実施基準において、高齢者救急の考え方を位置付け」「入院早期からのリハビリテーション等の提供の推進」も挙げられています。
介護との連携も、構想の一部に入っている
もう一つ、資料には介護との連携が独立した柱として置かれています。
医療と介護のニーズを有する者への対応の推進として、地域医療構想における市町村と介護関係者の役割を明確化すること、慢性期の医療需要について在宅医療等とあわせた体制整備を行うこと、医療と介護の相互理解を推進することが挙げられています。
在宅医療の受け皿の整備については、在宅医療、介護施設、療養病床を一体的に捉えて受け皿を整備するとされています。医歯薬連携の推進、D to P with N を含むオンライン診療等による効率化や病院による実施体制の強化、介護施設などの在宅医療以外の資源による受け皿整備も並んでいます。
病院・在宅・介護施設を一体で見る設計になっているということは、看護職の働く場の境界も、いまより連続的になっていく可能性があるということです。病棟か訪問看護か施設か、という区切りで考えてきた選択が、もう少しつながったものとして扱われる方向ではあります。
ただしこれも、制度の設計思想の話です。実際に人が動きやすくなるかどうかは、待遇や研修の仕組みが伴うかどうかによります。
転職や異動を考えるときに、どう織り込むか
この構想を理由に転職を急ぐ必要はありません。とりまとめの工程では、2026年度から現状把握と課題設定が進み、各医療機関が担う機能は遅くとも2028年度までに協議で決定されます。そこから実際に体制が変わるまでには、さらに時間がかかります。
ただ、これから応募先を選ぶ場面があるなら、聞いておいて損のないことはあります。
| 確認すること | 意図 |
|---|
| 地域の構想区域でどの位置づけにあるか | 集約する側か、別の機能に移る側か |
| 手術件数や救急搬送の受入状況 | 急性期機能を続ける前提かどうかの材料 |
| 在宅や介護施設との連携部門があるか | 連携機能を強める方向にあるか |
| 病床の再編や病棟再編の予定 | 配置が変わる可能性 |
これらは経営を詮索する質問ではなく、施設が地域の中でどう位置づいているかを尋ねるものです。「地域の中でどんな役割を担っていく方針ですか」という聞き方であれば、面接の場でも自然です。
そして、答えが返ってくるかどうか自体が情報になります。地域医療構想の協議は、施設の側にとっても重要な経営判断です。方針が語られる施設と、そうでない施設では、準備の度合いが違う可能性があります。
一方で、この構想を理由に「大きい病院のほうが安全」と考えるのは早計です。集約される側になるか、別の機能を担う側になるかは、規模だけで決まるものではありません。地域ごとの協議によって決まると資料に明記されています。
病棟以外の働き方も含めて選択肢を広げたい方は、病棟以外で働く選択肢も参考になります。
「持続可能な働き方」がどこまで実現するか
冒頭に書いたとおり、この構想の目的には医療従事者の持続可能な働き方の確保が含まれています。ここをどう受け止めるかは、正直なところ、まだ判断材料が足りません。
対象地域の総症例数と集約の範囲が変わらなければ、集約先の一施設あたりの症例は増える計算になります。地域の人口や総需要そのものが減れば、集約が進んでも増えるとは限りません。それが人員の集約を伴うなら負担は分散しますが、伴わなければ一人あたりの負担は増えます。集約と人員配置がセットで動くかどうかが分かれ目になります。
同じ検討会では看護職員の需給推計を作り直す方針も示されており、そこでは新たな地域医療構想の取組による効率化効果等を反映するとされています。つまり、地域医療構想と看護職員の必要数の推計は、連動して議論されています。
需給推計の側の動きについては、看護師不足の推計が作り直されるで整理しています。二つは別々の話ではなく、同じ検討会で並行して扱われているものです。
現時点で言えるのは、方向が示された段階であって、結果はまだ出ていないということです。地域ごとの協議で決まる部分が大きいので、全国一律に「こうなる」と言える話でもありません。
医療計画の側でも、同じ時期に動きがある
地域医療構想と並行して、医療計画の見直しも進みます。資料の進め方の図には、両者の関係が整理されています。
新たな地域医療構想の内容は、基本的に第9次医療計画に適切に反映されるようにするとされ、地域医療構想の策定状況や医療計画の取組等に係る課題を国と都道府県で共有する形が示されています。国と都道府県の実務者協議という枠組みも図に入っています。
医療計画のうち5疾病・6事業については、個別の事業の課題を第9次医療計画に向けて継続的に検討し、必要に応じて見直しを行うとされています。救命救急センターのあり方や周産期医療等が、その例として挙げられています。外来医療計画等の3か年の計画については、令和9年度からの後期計画に向けて必要な検討を行うとされています。
かかりつけ医機能についても、国がガイドラインを検討し、都道府県がかかりつけ医機能の確保に関する地域の協議を行う流れが図に示されています。
つまり、地域医療構想・医療計画・かかりつけ医機能の三つが、令和8年度から令和10年度にかけて同時並行で動くということです。現場から見ると別々の制度に見えるものが、同じ時期に同じ方向へ整理されていきます。
このことは、情報の追い方にも関係します。自分の勤務先の位置づけを知りたいとき、地域医療構想の資料だけを見るより、都道府県が公表する医療計画や協議の状況もあわせて見るほうが、実像に近づきます。都道府県のウェブサイトには、地域医療構想調整会議の資料が公開されていることがあります。
よくある質問
Q. 自分の病院がなくなるということですか。 A. この資料は、個別の医療機関がどうなるかを示すものではありません。医療機関機能を地域ごとに確保する考え方が示される一方、病床のダウンサイジングや医療機関の連携・再編・集約化も方針に含まれています。存続が保証されているとも、なくなるとも読めません。実際の姿は地域ごとの協議で決まります。
Q. 急性期の病院が地域に1つになるのですか。 A. いいえ。人口20万〜30万に1つという目安は「急性期拠点機能」についてのものです。資料には高齢者救急・地域急性期機能も別に置かれており、大都市等ではそちらで頻度の多い手術を提供するとされています。
Q. 人口20万〜30万に1つというのは、確定した基準ですか。 A. 資料には「構想区域毎に、人口20万〜30万に1つを目安に確保」と記載されています。目安であり、実際の配置は地域ごとの協議によります。
Q. いつ自分の職場に影響が出ますか。 A. とりまとめでは、2026年度から2027年度上半期を目途に現状把握と課題設定を行い、取組の方向性は2028年度中までに決定するとされています。各医療機関が2040年に向けて担う機能は、遅くとも2028年度までに協議で決定されます。ただしこれは新しい地域医療構想の手順であって、個別の病院の再編や機能変更がそれまで起きないという意味ではありません。現行の計画や各法人の判断で動いているものは、それとは別に進みます。
Q. 精神科病棟はどうなりますか。 A. 精神医療における地域医療構想のガイドラインの策定については、2026年度中を目途に結論を得るべく検討を進めるとされています。現時点では方針が示されていません。
Q. 看護配置は変わりますか。 A. この資料は医療機関機能と病床の考え方を示したもので、看護配置基準について述べたものではありません。病棟の看護配置は診療報酬上の基準によります。
参考資料
- 厚生労働省「新たな地域医療構想等に関する検討会 とりまとめ」(令和8年3月19日) https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001676424.pdf
- 厚生労働省「第4回 2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」(令和8年7月23日) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74359.html
- 厚生労働省「看護職員の需要推計について」同検討会 資料4 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001719357.pdf
本記事は検討段階の資料および令和8年3月19日のとりまとめにもとづくものです。個別の医療機関の位置づけは地域ごとの協議によって決まります。