採血後の針、血液が付着したガーゼ、点滴ボトル、薬剤の残り。忙しい勤務中は、先輩から教わった分け方を「いつもの手順」として続けがちです。しかし、容器の表示が分かりにくい、満杯なのに交換されない、処置場所から廃棄容器が遠い、といった小さな不備は、誤分別や針刺し、曝露のリスクにつながります。
世界保健機関(WHO)は2026年8月20日、医療廃棄物を安全かつ持続可能に管理するための無料オンライン講座を公開しました。講座は世界の医療施設を対象にした学習資源です。日本の病院や診療所の具体的な廃棄方法は、国内法令、自治体の取扱い、施設の手順書で確認する必要があります。その線引きを守りながら、看護師が現場で使える点検項目に落とします。
この記事で分かること
- WHO講座で扱う範囲と、講座だけでは判断できないこと
- 感染性廃棄物を「名称」ではなく、発生場所・付着物・形状で確認する考え方
- 処置前、廃棄時、保管・運搬時に見る安全チェック
- 誤分別や針刺しが起きたとき、個人を責めずに報告する順番
- 今の職場で改善できる点と、働く環境を比較するときの確認軸
WHOの無料講座は何を扱うのか
WHOの公表によると、講座はWHOとUNICEFが開発した、無料・自習型のオンラインコースです。全6モジュールで、受講時間は2時間以内、英語で提供され、前提資格は不要とされています。廃棄物の分類・分別、保管、運搬、処理、最終処分に加え、水銀や医薬品廃棄物なども学び、最終評価を終えると修了証を得られます。
WHOは、医療廃棄物の約85%が一般的な非有害廃棄物で、残りが感染性、化学性、放射性などの有害廃棄物だと説明しています。ただし、これは世界全体を説明する数字です。「日本の医療機関も同じ比率」「自院の廃棄物も85%」とは言えません。国内の現場判断には、環境省の感染性廃棄物処理マニュアル、自治体の案内、院内手順を使います。
日本では何を基準にするのか
環境省は、医療関係機関などから生じ、人が感染し、または感染するおそれのある病原体が含まれたり付着したりする廃棄物、またはそのおそれがある廃棄物を感染性廃棄物として説明しています。判断では、発生場所、廃棄物の形状、感染症の種類などを確認します。
現場で大切なのは、ネット記事の一般論だけで容器を選ばないことです。同じように見える物品でも、血液の付着、鋭利性、薬剤の性質、院内での処理契約によって手順が変わることがあります。迷ったら次の順で確認します。
- 廃棄物容器に表示された区分と投入禁止物を読む。
- 院内の感染性廃棄物・医療廃棄物マニュアルを確認する。
- 感染管理担当、医療安全担当、総務・施設管理など、院内で指定された責任者に聞く。
- 施設側は自治体や処理業者との契約・運用が国内ルールに合っているか確認する。
処置前に確認する5項目
安全な廃棄は、処置が終わってから始まるのではありません。処置前の環境づくりで、多くの迷いを減らせます。
- [ ] 使用する物品に合う廃棄容器が、手を伸ばせる範囲にある
- [ ] 容器の表示を読めて、別区分の容器と取り違えにくい
- [ ] 鋭利物容器が固定され、投入口が見える
- [ ] 満杯ラインを超えておらず、交換手順と担当者が分かる
- [ ] PPEの着脱場所と、汚染物を一時的に置かない動線が決まっている
「あとでまとめて捨てる」「手に持ったまま部屋を移動する」という運用が常態化しているなら、個人の注意力だけに頼らない配置の見直しが必要です。
廃棄するときの確認ポイント
鋭利物はその場で処理する
注射針などの鋭利物は、施設の手順に従い、使用した場所で速やかに専用容器へ入れます。リキャップの扱いを含め、自己流にせず院内手順を確認してください。容器が遠い、投入口が狭い、交換が遅いなら、ヒヤリ・ハットが起きる前に設備上の課題として報告します。
外観だけで区分を決めない
「赤いものは全部」「点滴関連は全部」といった覚え方は、物品や施設が変わると誤りになります。血液等の付着、鋭利性、薬剤・化学物質の有無、発生した場所を確認し、施設の分類表で判断します。
押し込まない・詰め替えない
満杯の容器へ手で押し込む行為は、針刺しや内容物への接触につながります。満杯ラインを超える前に封をし、指定された交換・運搬手順に回します。袋や容器を別の容器へ手作業で詰め替えることも、施設の正式手順にない限り行わないでください。
保管・運搬は「看護部以外の仕事」で終わらせない
病棟から集積場所へ移った後も安全管理は続きます。看護師が処理契約の全体を担う必要はありませんが、次の異常を見たときの報告先は知っておく必要があります。
- 密閉されていない、液漏れしている、破損している
- 一般のごみと混在している
- 患者や来訪者が触れられる場所に置かれている
- 長時間放置され、回収時刻や責任者が分からない
- 運搬する職員のPPEや運搬容器が定まっていない
こうした状態は「自分の担当ではない」と放置せず、部署責任者、感染管理、医療安全、施設管理など、院内ルールの報告先へ伝えます。写真を残す場合は、患者情報や職員の個人情報を撮影せず、院内規定に従ってください。
針刺し・曝露が起きたとき
針刺し、切創、粘膜曝露が起きたら、本人の注意不足を議論する前に、施設の曝露後対応へつなぎます。一般的には、直ちに必要な洗浄等を行い、上司・感染管理担当へ報告し、定められた診療・検査・フォローを受けます。病原体や曝露状況によって対応が異なるため、この記事だけで判断せず、勤務先の手順と医療職の指示に従ってください。
「忙しいから後で」「怒られそうだから黙る」は、必要な評価や予防的対応を遅らせます。報告後に不安や自責が強い場合は、インシデント後の不安を整理する記事も使えます。ただし、記事を読むことより、曝露後の正式な連絡と医療評価が先です。
職場で改善を提案するときの伝え方
「みんな分別を間違えている」と人を主語にすると、注意喚起だけで終わりがちです。仕組みを主語にして、次のように伝えます。
- 「処置場所から鋭利物容器まで移動が必要で、使用後に手持ちになります」
- 「容器の表示が物品で隠れ、新人が区分を確認できません」
- 「夜勤帯に満杯になったとき、交換する人と保管場所が分かりません」
- 「新しい物品を採用しましたが、廃棄区分が手順書に追加されていません」
発生場所、時刻、頻度、想定される危険、すぐできる改善案をセットにすると、医療安全会議や業務改善につなげやすくなります。匿名で同業者の運用例を尋ねたいときは看護師掲示板も使えますが、患者情報や施設を特定できる情報は投稿しないでください。
働く環境を比べるときの質問
廃棄物の管理だけを理由に転職を急ぐ必要はありません。配置や表示の見直しで改善できる場合があります。一方、針刺し報告を妨げる、曝露後対応がない、危険を繰り返し伝えても放置されるなど、安全文化そのものに不安がある場合は、職場選びの判断材料になります。
- 感染管理認定看護師や感染対策担当へ相談できるか
- 針刺し・曝露後対応が24時間使えるか
- 新人・復職者・派遣職員にも分別教育があるか
- 容器や動線の改善提案に回答が返るか
- インシデントを個人処罰ではなく再発防止に使っているか
まとめ
WHOの無料講座は、医療廃棄物管理を分類から最終処分まで学び直す入口になります。ただし、世界の数字や教材を、そのまま日本の施設の分別ルールに置き換えることはできません。国内ルール、自治体、処理契約、院内手順を優先してください。
今日できる行動は、処置場所の容器を一つ確認することです。表示、満杯ライン、固定、交換先、曝露時の連絡先を見て、分からない点を一つだけ質問する。それが「慣れ」に埋もれた危険を見つける具体的な一歩です。
針刺しや誤分別の不安が頭から離れず、職場にどう話すか整理したい場合は、正式な院内報告を済ませたうえでカンゴさんのインシデント不安相談も使えます。曝露後の医療評価や院内手順が最優先です。
よくある質問
WHO講座を受ければ、日本の感染性廃棄物を判断できますか?
講座は基本原則の学習に役立ちますが、国内での具体的な分別・処理は日本の法令、自治体の案内、施設の手順書で判断します。修了証が院内資格になるわけでもありません。
血液が少し付いただけなら一般ごみですか?
量だけで自己判断しないでください。発生場所、形状、付着状況などを、環境省の考え方と院内手順に照らして確認します。迷う場合は感染管理担当などへ相談します。
分別ミスを見つけたら自分で詰め替えますか?
鋭利物や汚染物への接触リスクがあります。素手で取り出したり詰め替えたりせず、周囲の安全を確保し、院内の責任者へ連絡して正式な手順に従ってください。
参考資料
はたらく看護師さん 求人
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