D to P with Nは「看護師が一人でオンライン診療する制度」ではありません
D to P with Nは、患者(Patient)と離れた場所にいる医師(Doctor)が情報通信機器を使って診療し、患者のそばにいる看護師等(Nurse)が診療を補助する形です。
厚生労働省の通知では、医師と同じ医療機関、または訪問看護指示書等の交付を受けた訪問看護ステーション等に勤務する看護師等が、診療計画や訪問看護指示書等に基づき、予測された範囲内で診療の補助を行い、療養上の世話も行えると整理されています。
2026年9月2日公表の診療報酬の疑義解釈資料(その12)は、訪問看護遠隔診療補助料でいう連携先を、所定の様式で連携する訪問看護ステーションとして届け出たステーションと明確にしました。記事では、制度名だけでなく、訪問前・実施中・実施後に何を確認するかを整理します。
役割を4つに分ける
| 局面 | 看護師が確認する実務 | 境界線 |
|---|
| 訪問前 | 計画・指示、患者同意、必要物品、通信、急変時対応 | 対象・手順が曖昧なまま開始しない |
| 診療中 | 状態観察、医師への情報提供、指示された診療補助 | 独立した診断・治療判断に置き換えない |
| 療養支援 | 生活状況の確認、説明の補足、セルフケア支援 | 医師説明との不一致を作らない |
| 診療後 | 記録、物品・廃棄物、次回、緊急時連絡 | 誰が結果を確認するか曖昧にしない |
看護師の専門的な観察と判断は重要ですが、医師の診療責任と看護師の業務範囲を混同しません。想定外の状態や指示の範囲を超える可能性があるときは、医師と所属管理者へエスカレーションします。
訪問前に確認する7項目
- 対象患者と実施目的が診療計画・訪問看護指示書等に記載されている
- 看護師が行う診療補助の内容と、実施しない条件が決まっている
- 医師、医療機関、訪問看護ステーションの連絡先と責任者が決まっている
- 患者・家族へ方法、情報の取扱い、対面診療へ切り替える条件が説明されている
- 機器、通信、電源、感染対策、物品の準備責任が決まっている
- 急変・通信切断・医師不在時の手順がある
- 記録の保存先と、診療録・訪問看護記録の対応が決まっている
「前回も同じ処置だった」ことは、今回の計画・指示の代わりになりません。対象と予測範囲を毎回確認できる運用が必要です。
実施中に迷いやすい3つの場面
状態が計画と違う
観察結果が想定外、症状が悪化、本人の同意が揺らいでいる場合は、予定どおり進めることを優先しません。医師へ報告し、対面診療や救急対応を含む次の指示を確認します。
通信が切れる
音声・映像が不十分なまま診療補助を続けず、中止・再接続・電話への切替・対面対応の基準を事前に決めます。機器担当へ連絡する間、患者の安全を誰が確認するかも必要です。
家族から追加相談を受ける
予定外の症状や家族相談を、その場の医師が十分把握していない場合があります。診療対象へ追加するのか、別の受診・連絡へ分けるのかを医師へ確認し、看護師だけで結論を出しません。
記録は「実施したこと」と「判断を戻したこと」を残す
記録には、日時、参加者、通信方法、患者の場所、医師の所属、計画・指示の確認、観察結果、医師へ伝えた情報、受けた指示、実施内容、患者・家族の理解、終了後の方針を残します。
実施しなかった場合も、状態変化、通信不良、同意の撤回など理由と、医師・管理者へ連絡した内容を記録します。診療録と訪問看護記録のどちらへ何を残すかは、連携先と事前に決めてください。
機器・医療廃棄物・費用の責任を決める
端末、測定機器、処置物品、医療廃棄物が複数組織をまたぐと、故障、在庫、消毒、回収の責任が曖昧になります。
- 機器を所有・保守・更新する組織
- 訪問前点検と故障時の代替機
- 消毒と感染対策の基準
- 消耗品の補充、費用請求
- 使用後物品・廃棄物の回収方法
- 端末の認証、画面覗き見、録画・保存の禁止や同意
看護師個人の端末や私物アカウントを当然の前提にしないことも重要です。
訪問看護師が職場へ聞く質問5問
- D to P with Nの対象患者と実施内容は、どの会議・文書で決まりますか
- 予測範囲を超えたとき、24時間誰へ連絡できますか
- 初回前の同行・演習・機器研修は勤務時間内ですか
- 診療後の記録、物品、廃棄物は誰の責任ですか
- 業務量、移動時間、対応件数は評価・勤務計画に反映されますか
技術研修だけでなく、責任、連絡、時間、処遇まで確認します。「できる人に任せる」運用では、特定の看護師に負担が集中します。
管理者が開始前に行う小規模なリハーサル
実患者で始める前に、通信接続、本人確認、医師への報告、指示の復唱、通信切断、急変、終了後記録までを模擬事例で確認します。成功した手順だけでなく、「医師につながらない」「端末が更新を求める」「物品が足りない」といった失敗条件も試します。
リハーサルでは、看護師個人の操作速度を評価するより、手順書、連絡先、端末設定、応援体制の欠陥を探します。所要時間を測り、通常の訪問枠と記録時間で実施できるかを確認してください。追加時間が必要なら、訪問件数と勤務計画を調整してから開始します。
本音箱・カンゴさん・求人へのつなぎ方
実施経験や困りごとを匿名で共有するなら本音箱の訪問看護を使えます。患者名、訪問先、映像、施設名、未公表の事案は書かないでください。
今の悩みが研修不足、指示系統、端末、記録時間、オンコールのどこにあるかはカンゴさんで整理できます。同行研修、医師との連絡、機器支援を希望条件にできた後、看護師求人で訪問看護の体制を比較します。
よくある質問
看護師が患者のそばにいれば、どの医師とも実施できますか
所属・連携、計画・指示、患者同意、運用体制等の確認が必要です。診療報酬上の訪問看護遠隔診療補助料では、所定様式で連携先として届け出たステーションという条件も確認します。
看護師が診断して医師へ結果だけ伝える仕組みですか
いいえ。看護師は専門的に観察し診療を補助しますが、独立して医師の診断・治療を代替する仕組みではありません。
通信が切れても、医師の指示を覚えていれば続けてよいですか
一律には言えません。事前の計画・指示と中断基準、患者状態に従い、想定外なら医師・管理者へ連絡します。
参考資料
最終確認日:2026年9月7日。具体的な診療・算定・業務判断は、最新通知、地方厚生局、所属施設の責任者へ確認してください。
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