結論:ボーナスは「施設・経営母体・地域」で差。ただし年収全体で比べる
「同期より夏のボーナスが少ない」「うちの病院は賞与が薄い」——SNSで他院の金額を見て落ち込む看護師は少なくありません。ですが、ボーナスの額だけで職場の良し悪しや転職の判断をするのは危険です。
賞与の少なさをどう受け止めるか、次の順で考えます。
- なぜ看護師のボーナスに差が出るのか
- 賞与の仕組みと、年収全体で比べることの大切さ
- ボーナス(と年収)を上げる方法
- 求人票でのボーナス確認ポイント、転職で解決しやすいこと・しにくいこと
数字から入ります。2024年に賞与があった正規雇用フルタイム勤務者に限った平均は、病院118万2,440円、訪問看護ステーション94万9,091円、診療所93万9,910円(日本看護協会の調査)。賞与がなかった人は分母に入っていませんので、そこは差し引いて読んでください。そのうえで、ボーナス単体ではなく年収全体(基本給×12+手当+賞与)で比べるのが判断の正解です。賞与が薄くても月給が高い職場があるからです。
1. なぜボーナスに差が出るのか
まず、就業先による実額の差です。日本看護協会が2024年度に実施した調査から、正規雇用フルタイム勤務者の2024年1〜12月の賞与総額を並べます。いずれも「賞与があった」と回答した人だけの平均です。
| 就業先 | 2024年の賞与総額 | 回答者数 |
|---|
| 官公庁 | 159万7,130円 | 61人 |
| 看護系教育研究機関(養成所・大学等) | 145万1,286円 | 55人 |
| 病院 | 118万2,440円 | 2,490人 |
| その他 | 106万3,426円 | 118人 |
| 介護系サービス | 100万2,262円 | 136人 |
| 訪問看護ステーション | 94万9,091円 | 565人 |
| 診療所 | 93万9,910円 | 70人 |
病院と診療所の回答者平均差は24万2,530円。 官公庁と診療所では65万7,220円です。ただし官公庁61人、診療所70人と少なく、回答者の年齢・役職構成も異なります。病院は2,490人と回答数が多いものの、看護職全体を代表する基準線とは限りません。
次に、そもそも賞与が出るかどうか。2024年度に看護職員へ賞与を支給した(する予定の)施設は、病院で88.0%、訪問看護ステーションで75.3%。個人に聞いた調査でも「2024年の賞与があった」のは病院87.1%、訪問看護ステーション83.2%、介護系サービス90.0%、診療所80.0%でした。訪問看護ステーションの約4分の1は、「支給した/支給予定」と回答していないということです。制度そのものがないのか、その年度に支給しなかったのか、無回答なのかまでは調査からは分かりません。
前年(2023年)との増減も出ています。病院勤務者は「増えた」30.6%・「変わらない」31.8%・「減った」29.0%。約3割が減っています。 「去年より少ない」のはあなたの職場だけの話ではない可能性がある、という程度には広く起きている現象です。
役職による差も大きい。病院勤務者の役職別では次のとおりです。
| 役職 | 2024年の賞与総額 |
|---|
| 管理職(副看護部長相当) | 185万2,529円 |
| 管理職(看護部長・副院長相当/管理者) | 168万3,663円 |
| 中間管理職(看護師長相当) | 147万5,115円 |
| 中間管理職(主任相当) | 137万6,075円 |
| スタッフ(非管理職) | 103万6,975円 |
スタッフ群と主任相当群の平均の差は33万9,100円。 ただしこれは同じ人の昇進前後ではなく、別々の人たちの平均差です。また上位役職ほど回答者数が少なく(副看護部長相当53人、看護部長・副院長相当36人)、数字はぶれやすい。
目を引くのは、介護系サービスの平均100万2,262円が、病院のスタッフ層103万6,975円とほぼ同水準だという点です。病院全体の平均118万2,440円は全役職を含むため、役職構成の違いが「病院のほうが賞与が厚い」という印象に影響している可能性があります。
2. 賞与の仕組みを知る
看護師の賞与は、多くの職場で「基本給 × ◯ヶ月分」で計算されます。ここに落とし穴があります。
- 算定基礎は基本給:夜勤手当や残業代は賞与計算に入らないことが多い。基本給が低いと、賞与も少なくなる。
- 「◯ヶ月分」の数字に惑わされない:「4.5ヶ月」でも基本給が低ければ額は小さい。逆に「3ヶ月」でも基本給が高ければ額は大きい。
- 初年度は満額でないことが多い:転職初年度は在籍月数に応じた按分になりがち。
つまり「ボーナス◯ヶ月」という表示だけでは、実際の金額は分かりません。
3. 年収全体で比べる:賞与込みの自分の位置
求人票では「賞与◯ヶ月」だけでなく、基本給×12+手当+賞与の年収合計で比べてください。
具体例で考える
ここで必ず基本給どうしで揃えて計算してください。 求人票の「月給35万円」は手当込みの総支給額であることが多く、賞与の「◯ヶ月分」はその月給ではなく基本給に掛けます。ここを取り違えると賞与額を大きく見積もってしまいます。
- A病院:基本給25万円・諸手当5万円・賞与4.0ヶ月
- 月給部分=(25万+5万)×12=360万円
- 賞与=基本給25万×4.0=100万円
- 年収合計=460万円
- Bクリニック:基本給22万円・諸手当13万円(総支給35万円)・賞与1.0ヶ月
- 月給部分=35万×12=420万円
- 賞与=基本給22万×1.0=22万円(月給35万×1ヶ月の35万円ではありません)
- 年収合計=442万円
「賞与の月数」だけ見るとA病院が良く見え、「月給の額面」だけ見るとBクリニックが良く見える。年収合計で並べて初めて、A病院が18万円上だと分かります。
ただし「基本給が高いほど残業代の単価も高い」とは限りません。 割増賃金の算定基礎になるのは基本給だけではなく、原則として所定労働時間の労働に対して支払われる賃金全体です。算定基礎から外せるのは法令が挙げた7項目(家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時の賃金、1か月を超える期間ごとの賃金)だけで、これ以外の手当は含めなければなりません。上の例なら、Bクリニックの諸手当13万円の中身しだいでは、Bのほうが残業単価が高い可能性もあります。
退職金や翌年以降の賞与についても、算定式は事業者ごとの規程で決まります。基本給連動が多いのは事実ですが、必ずそうなるとは限りません。 求人票ではなく、退職金規程と賞与の算定方法を確認してください。
逆に、Bクリニックのほうが良い場合もあります。夜勤がない、通勤時間が短い、残業が少ない——時間あたりで比べたら勝つなら、それは合理的な選択です。年収合計と実質時給の両方を並べてください。
賞与を足した年収が同条件の中でどのあたりに来るかは、給料コンパスの適正年収診断で整理できます。設置主体別・病床規模別・都道府県別の実数は看護師の適正年収・相場 完全ガイドに一覧しました。
4. ボーナス(と年収)を上げる方法
- 基本給の高い職場へ移る:賞与の算定基礎そのものを上げる方法です。勤続10年・31〜32歳・非管理職のモデル賃金では、基本給月額が公立288,641円、医療法人238,558円で5万83円の差。仮に双方が4ヶ月分を支給するなら、賞与だけで年20万332円の差になります(この調査に賞与の支給月数は含まれていないので、あくまで仮定の計算です)。実際の支給月数は求人票と就業規則で確認してください。
- 昇進する:スタッフ群103万6,975円と主任相当群137万6,075円で、平均の差は33万9,100円。この記事で扱ったどの要素より大きい差です(ただし集団の平均差であって、昇進した個人の増加額ではありません)。
- 病床規模を上げる:同じモデル賃金で、500床以上の基本給284,410円と99床以下245,294円の差は月3万9,116円。仮に4ヶ月分なら年15万6,464円の差です。なお設置主体と病床規模は別々の集計なので、この2つの差額を足すことはできません。
- 地域水準の高いエリアへ:都道府県別の実数(賃金構造基本統計調査)では、年間賞与が滋賀112万4,200円、高知52万8,700円で59万5,500円の差。ただしこれは別々の集団の平均差で、年齢構成も勤務先構成も違います。
賞与月数と算定基礎の両方を確認してください。基本給が高くても賞与の算定対象や支給率は規程で異なり、どちらが確実とは一般化できません。
「今の職場で待つ」か「転職で動く」かの判断は年収を上げる「待つvs転職」の判断、具体的な進め方は看護師転職の完全ガイドにまとめました。
4-2. 都道府県別の賞与平均は月給と同じ順ではない
賃金構造基本統計調査(一般労働者)都道府県別第3表の看護師の行から、年間賞与その他特別給与額を抜き出します。都道府県ごとに年齢・勤務先構成が異なるため、地域を変えた個人の増減には置き換えません。
| 都道府県 | 年間賞与 | きまって支給する現金給与額(月) |
|---|
| 栃木 | 1,154,600円 | 365,300円 |
| 滋賀 | 1,124,200円 | 394,100円 |
| 愛知 | 1,004,000円 | 371,400円 |
| 千葉 | 956,500円 | 376,700円 |
| 山梨 | 915,300円 | 386,600円 |
| 東京 | 891,500円 | 407,800円 |
| 福島 | 598,700円 | 328,700円 |
| 高知 | 528,700円 | 318,300円 |
栃木と高知の差は62万5,900円。 月給の差(365,300円と318,300円で4万7,000円、年に直して56万4,000円)を上回ります。なお、これらは各都道府県で集計された別々の集団の平均であり、同じ看護師が勤務地を変えた前後の変化ではありません。
栃木と東京では、月給は東京が4万2,500円高く、賞与は栃木が26万3,100円高い結果でした。年収換算は栃木553万8,200円、東京578万5,100円です。可処分所得の優劣は家賃、通勤費、住宅手当、税・社会保険をそろえないと判断できません。
福島の回答者平均は月給328,700円、賞与598,700円で、年収換算454万3,100円でした。ただし、この統計は家計の貯蓄額を調べたものではなく、「お金が貯まらない地域」とは言えません。
賞与が少ないと悩んでいるなら、自分の都道府県の回答者平均を参考にしつつ、同じ地域の候補先で賞与の算定基準と直近実績を確認してください。地域平均を下回ることだけで職場の問題とは断定できず、同じ地域でも施設ごとに変わります。
5. 求人票でのボーナス確認ポイント
- 賞与の「実績」(「◯ヶ月(前年度実績)」かどうか。「予定」は変動の可能性)
- 算定基礎(基本給ベースか、手当込みか)
- 初年度の扱い(按分になるか)
- 年収例の内訳(モデル年収が手当・残業込みの上限例でないか)
6. 今の職場で確認すること・転職で解決しやすいこと
今の職場で確認すること
転職で解決しやすいこと
- 賞与水準の高い経営母体・施設形態へ移ること
- 年収全体の底上げ
転職で解決しにくいこと
- 入職初年度から満額の賞与を得ること
- 業績連動の変動リスクをゼロにすること
よくある質問
看護師のボーナスは平均で何ヶ月分ですか?
月数を集計した全国調査は確認できていません。 金額なら実数があり、日本看護協会の2024年度調査では、賞与があった病院勤務者の平均が年118万2,440円(役職なしのスタッフ層は103万6,975円)です。月数は基本給の水準しだいで意味が変わるため、金額と年収全体で比べるのが正確です。
ボーナスが少ない職場は転職したほうがいいですか?
賞与だけで判断するのは危険です。まず自分の額を比べる相手を決めてください。病院勤務で賞与があったスタッフ層(非管理職)の平均は年103万6,975円です。これを大きく下回るなら、賞与の月数だけでなく算定基礎になっている基本給も低い可能性があります。基本給・手当・賞与を合わせた年収全体と、働きやすさの両方で比べましょう。
転職するとボーナスは上がりますか?
基本給の水準が高い職場(公立・国・公的医療機関・社会保険関係団体、あるいは病床規模の大きい病院)へ移れば上がる可能性があります。ただし入職初年度は算定期間の在籍が足りず、按分または不支給になることがあります。 いつからが算定期間で、支給にはどれだけの在籍が必要か——この2つを、内定前に人事へ確認してください。転職初年度は年収が一時的に下がる前提で資金計画を立てるのが安全です。
「賞与4ヶ月」と「月給が高い」職場、どちらが得ですか?
年収合計で比べてください。賞与の月数が多くても基本給が低ければ額は小さく、賞与が少なくても月給が高ければ年収は上回ることがあります。基本給が高いほど退職金や時間外単価でも有利です。
クリニックは賞与が少ないと聞きますが本当ですか?
賞与額の平均は診療所93万9,910円、病院118万2,440円で、24万2,530円の差があります(診療所は回答70人と少なく、ぶれやすい数字です)。
ただし「差は賞与だけに出ている」わけではありません。 月額の税込給与総額も、診療所350,857円に対し病院382,093円で3万1,236円の差があります。
この2つを足して年収差を出すことはできません。 月額(図表1)の回答は診療所35人の非管理職看護師、賞与(図表21)の回答は診療所70人の正規雇用フルタイム看護職員で、母集団が違うからです。どちらの差がどれだけ効いているか、構成比も計算できません。言えるのは「月額にも賞与にも差が観測されている」ということまでです。賞与の有無だけで判断せず、月給と賞与の両方を見てください。
まとめ
- 比べる相手は賞与があった人に限った平均:病院118万2,440円・訪問看護94万9,091円・診療所93万9,910円(病院のスタッフ層なら103万6,975円)。賞与ゼロの人を含まない数字である点に注意。
- 賞与が出るとは限らない。支給した施設は病院88.0%・訪問看護ステーション75.3%で、前年より「減った」人も病院で29.0%。
- 賞与は基本給ベースで計算されることが多く、「◯ヶ月」の数字だけでは額は分からない。
- 賞与が薄くても月給が高い職場もある。基本給が高いほど退職金・時間外でも有利。
- 賞与を含めた立ち位置は適正年収診断で整理でき、設置主体別・病床規模別の根拠は適正年収ガイドにあります。
参考資料
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」結果の概況 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/index.html
- 政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 第1表」 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tstat=000001011429
- 政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和7年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)第14表・第17表」 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?cycle=0&tclass=000001229512
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
- 厚生労働省「割増賃金の基礎となる賃金とは?」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyunhou_24.html
- 公益社団法人日本看護協会「2024年度『看護職員の賃金に関する実態調査』結果」(2025年6月24日 News Release、図表1・4・5・18・19・20・21・22) https://www.nurse.or.jp/home/assets/20250624_nl02.pdf
- 公益社団法人日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」報告書(調査研究報告No.102、2026年3月31日公表) https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/102.pdf
A病院・Bクリニックとして示した計算は、賞与の算定基礎を取り違えると年収の順位が逆転して見えることを説明するための仮の例です。実在の施設の数字ではありません。就業先別・役職別の賞与額と支給状況は日本看護協会の2024年度調査、都道府県別の年間賞与は令和7年賃金構造基本統計調査(一般労働者)都道府県別第3表、設置主体別・病床規模別の基本給は同調査ではなく日本看護協会の2025年調査によるモデル賃金(勤続10年・31〜32歳・非管理職)によります。
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