結論:助産師全体は566万7,000円。勤務形態別は求人条件で比べる
公的統計で助産師の実数を確認できます。令和7年賃金構造基本統計調査(職種)第1表によると、助産師(男女計・企業規模10人以上)は次のとおりです。
| 項目 | 助産師 | 看護師 |
|---|
| きまって支給する現金給与額 | 389,900円 | 365,900円 |
| 所定内給与額 | 343,900円 | 333,200円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 988,200円 | 856,400円 |
| 年齢 | 41.2歳 | 42.1歳 |
| 年収換算 | 566万7,000円 | 524万7,200円 |
助産師は看護師より年収換算で約42万円高いという結果です。差の内訳を見ると、月額の差が24,000円(年間288,000円)、賞与の差が131,800円です。
ただし、企業規模別に見ると単純ではありません。1,000人以上564万100円、100〜999人577万5,100円、10〜99人565万2,500円で、規模が大きいほど高いという関係にはなっていません。
勤務形態を選び直すために、次を押さえておきます。
- 勤務形態(病院・クリニック・開業など)ごとの年収傾向
- オンコール負担と年収のバランス
- 助産師が転職で年収を上げる方法
- 今の職場で確認すること、転職で解決しやすいこと・しにくいこと
「助産師は年収1000万」という言葉が独り歩きしがちですが、公的統計の平均は566万7,000円です。1000万円という水準を裏づける公的な集計は確認できていません。さらに、勤務形態別の平均年収も公表されていないため、この記事では順位や「高め・低め」という傾向を作りません。固定給、賞与、夜勤、分娩手当、オンコールを同じ条件で比べます。
ここから先の勤務形態別の傾向は、編集部が整理したものです。助産師を勤務形態別に集計した公的統計は確認できていません。実額は施設の規模、分娩件数、オンコールの有無で変わります。上に示した実数(第1表)と混同しないでください。
1. 勤務形態別の比較
助産師を勤務形態別に集計した公的統計は存在しません。 そのため、この表に年収の順位は載せません。載せれば根拠のない序列を作ることになるからです。代わりに、勤務形態ごとに何を確認すべきかを整理します。
| 勤務形態 | 夜勤・オンコールの形 | 収入を決める要素(求人票で確認する項目) |
|---|
| 総合病院 | 夜勤あり・分娩オンコール | 基本給、夜勤手当の額と回数、分娩手当の有無、賞与月数 |
| 大学病院 | 夜勤あり | 基本給、等級表の有無、研究・教育業務の扱い |
| 産科クリニック | オンコールが重い施設もある | 待機手当の額、先月の呼出実数、待機人数、分娩手当 |
| 院内助産 | 当直・オンコール | 当直手当、責任範囲、バックアップ医師の体制 |
| 開業助産院 | 常時拘束になり得る | 分娩件数、嘱託医療機関の確保、経営リスク |
| フリーランス | 案件次第 | 単価と稼働量、社会保険の扱い、収入の安定性 |
右の列が、この記事で一番使ってほしい部分です。 「どの勤務形態が高いか」を統計で示せない以上、判断は個別の求人票と面接に委ねるしかありません。何を聞けばいいかを知っておくことが、順位表より役に立ちます。
2. 各勤務形態を詳しく見る
総合病院・大学病院
確認するのは、賃金表の等級、賞与の算定基準、夜勤・分娩手当の単価と実績回数、教育・研究業務が勤務時間に含まれるかです。ハイリスク症例の受け入れや役職手当も施設差があるため、病院という区分だけで収入や経験機会を決めません。
産科クリニック
固定給、賞与、分娩手当、待機手当、呼出時の時間外手当を分けて確認します。分娩件数が月によって変わるなら、直近12か月の件数と、最も待機・呼出が多かった月を聞きます。病院より高い・低いという全国比較はできません。
院内助産・助産師外来
助産師が担う範囲、対象となる妊産婦の条件、当直・オンコールの体制、医師へ切り替える基準を確認します。責任範囲と手当の対応関係が求人票に出ているかを見ます。
開業助産院・フリーランス
開業・業務委託は、売上と個人所得を分け、家賃・人件費・保険・設備・嘱託医療機関との連携費用などの経費を差し引いて考えます。分娩、母乳外来、両親学級、出張ケアで必要な待機時間と責任も異なります。勤務助産師の年収と売上をそのまま比べないでください。
3. 「年収1000万」の現実
開業やフリーランスで1,000万円という事例があっても、売上・所得・役員報酬のどれを指すのかで意味が変わります。助産師を勤務形態別・役職別に集計した公的統計は確認できていません。 「病院勤務なら管理職クラスで届く」といった条件も全国調査で裏づけられていません。一般的な勤務助産師の平均(前掲566万7,000円)とは分けて考えてください。
「年収1000万」という数字だけを追うと、常時拘束や経営リスクという代償を見落とします。自分が許容できるオンコール負担と収入のバランスで選ぶのが、長く続けるコツです。助産師と看護師のどちらの水準で自分を見るべきかを整理したいときは、給料コンパスの適正年収診断が使えます。比較の相手になる看護師の公表値は看護師の適正年収・相場 完全ガイドにまとめてあります。
4. オンコール負担と年収のトレードオフ
助産師の年収を考えるうえで外せないのが、オンコール(分娩の呼び出し)です。
- 待機手当だけか、電話対応・呼出・時間外手当が別に付くかを分ける。
- 待機回数を減らした場合、どの手当がいくら減るかを給与規程で確認する。
- 夜勤・オンコールなしの求人は、固定給・賞与・勤務時間を個別に確認し、低いと決めつけない。
夜勤・オンコールを減らしたときの年収の考え方は、看護師全般の夜勤を減らすと年収はいくら下がる?で計算方法を確認できます。
4-2. 経験を積むと、助産師の賃金はどう伸びるか
勤務形態の話の前に、経験年数階級ごとの実数を見ておきましょう。賃金構造基本統計調査(職種)第14表に、助産師の数字があります(労働者数は原表の「十人」単位を人数へ換算しています)。
| 経験年数 | 所定内給与額(月) | 年間賞与 | 労働者数 |
|---|
| 0年 | 313,300円 | 183,800円 | 1,830人 |
| 1〜4年 | 342,500円 | 809,600円 | 4,700人 |
| 5〜9年 | 308,800円 | 960,000円 | 3,040人 |
| 10〜14年 | 341,400円 | 941,300円 | 2,220人 |
| 15年以上 | 364,200円 | 1,278,500円 | 8,620人 |
| 計 | 343,900円 | 988,200円 | 20,410人 |
この表を「勤続とともに上がっていくカーブ」として読まないでください。 所定内給与額は1〜4年で342,500円まで上がったあと、5〜9年で308,800円に下がり、10〜14年で341,400円に戻ります。単調に増えていません。
これは横断調査——つまり調査時点で各経験年数にいた別々の人たちを平均した数字であり、同じ人を追いかけたものではないからです。各区分の勤務先構成や勤務形態の違いが、そのまま数字の凹凸として出ています。5〜9年の区分だけ低いことに、賃金制度上の理由があるとは限りません。
賞与のほうは経験年数とともに増える傾向がはっきりしています。 0年の183,800円から15年以上の1,278,500円まで約7倍。ただし0年区分がなぜ低いのかは、この表からは分かりません(在籍期間に応じた按分、支給対象期間の関係などが考えられますが、統計は理由を示していません)。
年収換算にすると、経験0年の区分は313,300×12+183,800=394万3,400円、15年以上の区分は364,200×12+1,278,500=564万8,900円。差は170万5,500円です。
同じ第14表の看護師と並べると、経験0年の区分で助産師313,300円・看護師278,200円と、35,100円の差がついています。一方、15年以上の区分では助産師364,200円・看護師358,600円で差は5,600円まで縮まります。
ただしこれを「資格の効果」として読むことはできません。 両者は年齢構成も勤務先も夜勤条件も違い、この表だけでは資格そのものの寄与を切り出せないからです。言えるのは「経験0年の区分では助産師の所定内給与額のほうが高かった」という事実までです。
新卒の入口にも数字があります。日本看護協会が2024年度に行った病院調査によると、新卒助産師の平均初任給は、助産師学校・養成所卒で基本給月額222,502円(税込給与総額283,950円)、看護系大学卒で227,148円(289,188円)、大学院卒で229,917円(293,803円)。同じ調査の新卒看護師(3年課程卒)は212,077円(274,840円)です。
教育区分が違う者どうしの初任基本給を並べると、その差は1万425円(税込給与総額では9,110円)。ただしこれは進学の損得を判定できる数字ではありません。修業年限、学費、その間の収入、その後の賞与や昇給までそろえて比べる必要があり、そこまでの公表データはありません。「助産師のほうが初任の基本給は高かった」という事実として受け取ってください。
4-3. オンコールは「あり/なし」ではなく、6項目で聞く
助産師の働き方を最も左右するのがオンコールですが、助産師のオンコール手当を全国規模で集計した公表データは確認できていません。 訪問看護ステーションについては実額の調査がありますが、分娩待機とは拘束の質も緊急性も手当の設計も異なるため、そのまま当てはめることはできません。
だからこそ、求人票の「オンコールあり」という3文字で判断しないでください。 面接で次の6つを数字として聞けば、拘束の重さと手当が見合っているかを自分で判断できます。
- 1回あたりの待機手当はいくらか(金額を明示してもらう)
- 呼び出されて出勤した場合、手当は別途つくか。時間外手当は支払われるか
- 先月、待機は何回あり、そのうち何回呼び出されたか(平均ではなく直近の実数)
- 呼び出された場合の平均的な拘束時間はどのくらいか
- 呼び出し後の勤務免除・代休の運用はあるか
- 待機に入る人数は何人体制か(1人待機か、複数か)
3番を「平均では」ではなく先月の実数で聞くのがコツです。平均値は繁忙月をならしてしまいます。そして6番の待機人数は、実質的な拘束の重さを決めます。1人待機なら、その日は自宅から離れられません。
5. 助産師が転職前に比べる給与条件
- 基本給の水準そのものを上げる:賞与も割増単価も退職金も、基本給を算定基礎にすることが多いためです。提示された総支給額ではなく、基本給がいくらかで比べてください。
- オンコール手当の設計を比べる:前節の6項目を数字で聞き、手当額だけでなく待機回数と拘束時間とセットで判断します。
- 役職要件を確認する:役職手当がある場合も、昇任条件・職責・残業の扱いまで確認します。助産師の役職別賃金を集計した公表データは確認できていません。
- アドバンス助産師(CLoCMiP®レベルⅢ認証。日本助産評価機構が実施する助産実践能力の認証制度)を取得する:評価や処遇に反映する施設もありますが、手当額の相場を示した全国調査はありません。 取得を検討するなら、勤務先の給与規程で加算の有無と金額を先に確認してください。
企業規模を上げれば高くなる、という関係は成り立ちません。 前掲のとおり、助産師では100〜999人が577万5,100円で最も高く、1,000人以上の564万100円を上回っています。
転職を進めるときの手順は看護師転職の完全ガイドにあります。
6. 今の職場で確認すること・転職で解決しやすいこと
今の職場で確認すること
- オンコール手当・分娩手当の単価と回数
- 管理職・認証取得による昇給の道筋
- 夜勤・オンコールを減らした場合の年収
転職で条件を選び直せること
- 勤務形態(病院/クリニック/開業)の変更による収入構造の変化
- オンコール体制(重い/軽い/なし)の選択
転職だけでは保証できないこと
- オンコールを減らしながら年収を保てるかどうか
- 開業・フリーランスの収入の安定性(実績が立つまで不安定)
よくある質問
助産師の年収が一番高い勤務形態はどこですか?
勤務形態別に助産師の年収を集計した公的統計は存在しないため、順位は示せません。 公表されているのは、助産師全体の平均(566万7,000円)と経験年数階級別の数字までです。求人票の固定給・賞与月数・夜勤/オンコール手当を、応募先ごとに比べてください。
助産師は本当に年収1000万円になれますか?
「1000万円に届く条件」を示した全国調査は確認できていません。 公的統計における助産師の平均は566万7,000円です。開業や管理職での高収入例は存在しますが、それが何割なのか、どの条件で到達するのかを示すデータはありません。一般的な勤務助産師の水準とは分けて考えてください。
助産師がクリニックに転職すると年収は下がりますか?
勤務形態別の全国統計がないため、下がるとも上がるとも一般化できません。固定給、賞与、分娩手当、待機・呼出手当、夜勤回数を求人ごとに確認してください。
オンコールなしで働く助産師の年収はどのくらいですか?
オンコールなし助産師だけを集計した全国統計は確認できません。固定給、賞与、他の手当、勤務時間を応募先ごとに確認してください。
助産師から看護師の他分野に転職して年収は変わりますか?
年収は配属先の基本給、夜勤、施設、地域、賞与で変わります。助産師資格手当の有無と金額を給与規程で確認し、資格を使わない配属との差を個別に比べてください。
まとめ
- 勤務形態別に助産師の年収を集計した公的統計はない。 順位表を掲げる記事を見たら、出所を確かめること。
- 公的統計の助産師の平均は566万7,000円。「年収1000万」を裏づける全国調査は確認できていない。
- 経験年数別の数字は単調に増えていない(5〜9年で下がる)。横断調査なので、個人の昇給カーブとして読まないこと。
- 企業規模と年収は単調な関係にない(100〜999人が最も高い)。規模ではなく基本給と賞与月数で比べる。
- オンコールは「あり/なし」ではなく、待機手当額・先月の呼出実数・拘束時間・代休・待機人数まで聞く。
- オンコールを減らした場合の年収は、待機・電話・呼出・時間外手当を分けて試算する。
- 働き方を決める前に適正年収診断で自分の立ち位置を整理し、適正年収ガイドの実数と突き合わせてください。
参考資料
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」結果の概況 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/index.html
- 政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 第1表」 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tstat=000001011429
- 政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和7年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)第14表・第17表」 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?cycle=0&tclass=000001229512
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
- 公益社団法人日本看護協会「2024年度『看護職員の賃金に関する実態調査』結果」(2025年6月24日 News Release、図表6・9) https://www.nurse.or.jp/home/assets/20250624_nl02.pdf
助産師を勤務形態別・役職別に集計した公的統計は確認できませんでした。 勤務形態ごとの説明は編集部の整理であり、統計値ではありません。金額として示した数字の出どころは次のとおりです。助産師・看護師の平均、企業規模別、経験年数階級別は、令和7年賃金構造基本統計調査(職種)の第1表と第14表から引用しました。新卒助産師・新卒看護師の初任給は、日本看護協会が2024年度に実施した賃金実態調査の図表9・図表6によります。第14表の経験年数階級は横断的な集計であり、同一人物の賃金の推移を示すものではありません。