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令和8年熊本地震で災害支援ナースはどう動いたか|登録の要件と職場調整

2026年8月14日2026年10月2日 更新5分で読める
令和8年熊本地震で災害支援ナースはどう動いたか|登録の要件と職場調整

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AI引用向け要約最終確認: 2026年10月2日

この記事の結論

被災地の応援に「行きたい」と思っても、申込は原則として施設単位です。

  • 令和8年熊本地震で災害支援ナースが実際にどの規模で動いたか
  • 2024年度に変わった登録の仕組みと、今の要件
  • 養成研修の時間数と、申し込みが施設単位である意味
  • 勤務先とどの順番で話すと調整が進みやすいか
  • 登録しない選択をした場合に、勤務先でできる備え

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「行きたい」と思った時点では、まだ登録できない

令和8年熊本地震の報道を見て、自分も現地に行けないかと考えた看護師さんへ。先に結論をお伝えすると、災害支援ナースは災害が起きてから手を挙げて登録する仕組みではなく、平時に養成研修を修了して登録を済ませた人が派遣される仕組みです。そして2024年度から、その登録は日本看護協会の独自事業ではなく、改正医療法にもとづく国の制度に位置づけが変わりました。

つまり今回の熊本での活動に参加している看護職は、地震の前に研修を終えていた人たちです。逆にいえば、今から手順を踏めば次の災害には間に合う可能性があります。この記事では、実際に何人がどう動いたのかという事実と、登録までに必要な手順、そして多くの人がつまずく「職場の許可」の取りつけ方を整理します。

なお、被災地への個人的な支援活動や物資の持ち込みは、受け入れ側の負担になることがあります。派遣は都道府県や医療機関の調整のもとで行われるものだと理解したうえで読み進めてください。

この記事で分かること

  • 令和8年熊本地震で災害支援ナースが実際にどの規模で動いたか
  • 2024年度に変わった登録の仕組みと、今の要件
  • 養成研修の時間数と、申し込みが施設単位である意味
  • 勤務先とどの順番で話すと調整が進みやすいか
  • 登録しない選択をした場合に、勤務先でできる備え

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何が起きたのか:地震の事実関係

気象庁によると、令和8年熊本地震の本震は2026年7月28日16時27分ごろ、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1の地震で、最大震度7を観測しました。気象庁が公表している「最大震度5弱以上を観測した地震の発生状況」(2026年9月2日確認)には、この本震を含めて6回が記載されています。

9月1日の気象庁発表では、地震の発生数は平常時より多い状態が続いているものの、大局的には緩やかに減少しているとされています。一方、M7.1の地震で揺れが強かった地域では、今後3〜4週間程度、最大震度5弱程度以上の地震に注意が必要です。想定される発生頻度は1か月に1〜2回程度で、最大震度5強程度以上の地震も平常時より発生しやすい状況と説明されています。復旧・支援活動では、余震と気象の状況を最新情報で確認してください。

熊本県は、この地震により10市10町1村に災害救助法を適用しました。断水や停電といった生活基盤の被害が広範囲におよび、しかも発災が真夏だったことが、この災害の看護面での難しさを決めました。

派遣の規模:県内は7月30日、県外は8月3日から

日本看護協会が公表している派遣状況を見ると、動き出しの早さと規模が具体的な数字で確認できます。以下は同会のページに掲載された公表値です。ページ上に予定・調整分を含むかどうかの注記はないため、この記事では「公表値」と書きます。

区分開始日日本看護協会が掲載する公表値(2026年9月14日まで)
県内派遣7月30日延べ485人
県外派遣8月3日延べ1,912人

日程ごとの人数は延べ人数です。同じ登録者が複数日に活動すれば日数分が計上されるため、1,912人の別々の看護職が活動したという意味ではありません。本記事では、公式ページに現在掲載されている数字を「公表値」と表現します。

前回書いた数字は、あとから上振れした

この記事を8月に更新した時点で当サイトが確認した公表値では、8月22〜24日の県外派遣は「21か所へ延べ126人」でした。現在の同ページでは、同じ8月22〜24日が22か所・延べ168人と記載されています。

ただし、日本看護協会のページは過去の公表値や修正履歴を残していないため、この差が実際に更新によるものかどうかを、現在の公式ページだけで独立に確認することはできません。当サイトが8月時点に確認した数字と、現在掲載されている数字が違う、というところまでが事実です。

その後も同じことが起きています。本記事が9月11日までとして保存していた県外派遣の「9月9〜11日・延べ72人」は、現在の公式ページでは延べ96人です。県内派遣も「9月6〜8日・延べ22人」が32人、「9月9〜11日・延べ14人」が26人に変わっています。公式ページに変更履歴や理由は掲載されていないため、訂正、追加集計、入力時点の差のどれかを本記事から判断することはできません。

いずれにせよ、災害時の派遣人数は調整が進むにつれて確定していく性質のものです。この種の数字を引用するときは、いつまでを対象にし、いつ確認した公表値かを必ず添える必要があります。「延べ1,912人」「延べ485人」は9月14日までとして2026年9月22日に確認した現在の掲載値であって、最終値とは限りません。

この数字の読み方で大切なのは、発災から2日後に県内派遣が始まり、6日後に県外派遣が始まっているという時間軸です。全国から人を集めて調整するには、事前に「誰が行けるか」の名簿が存在していなければ間に合いません。災害支援ナースの登録制度が平時の仕組みである理由が、この時間軸に表れています。

なお、これらの人数を派遣先の数で割って「1か所あたり何人」と比較することはできません。公表されているのは期間ごとの延べ人数で、期間の長さも異なります。同時に何人が配置されていたのか、交代の単位がどうなっているのかは、この数字からは分かりません。支援のフェーズが変わったかどうかを、人数の増減だけで判断することも避けるべきです。

8月末から、派遣の規模と行き先が変わっている

日本看護協会が掲載する9月14日までの公表値を日程順に並べます。県外と県内では日程の区切り方が違うため、表を分けています。

県外からの派遣

期間活動場所延べ人数
8月3〜5日10か所の避難所など66人
8月6〜9日20か所の病院、避難所など214人
8月10〜12日20か所の病院、避難所など162人
8月13〜15日22か所の病院、避難所など168人
8月16〜18日21か所の病院、避難所など168人
8月19〜21日21か所の病院、避難所など168人
8月22〜24日22か所の病院、避難所など168人
8月25〜27日21か所の病院、避難所など166人
8月28〜30日22か所の病院、避難所など148人
8月31日〜9月2日13か所の避難所など110人
9月3〜5日12か所の避難所など104人
9月6〜8日12か所の避難所など102人
9月9〜11日11か所の避難所など96人
9月12〜14日11か所の避難所など72人

県内からの派遣

期間派遣先延べ人数
7月30日〜8月2日宇城総合病院20人
8月3〜6日宇城総合病院、避難所など54人
8月7〜9日宇城総合病院、避難所など54人
8月10〜12日宇城総合病院、避難所など44人
8月13〜15日宇城総合病院、避難所など45人
8月16〜18日宇城総合病院、避難所など40人
8月19〜21日病院、避難所など32人
8月22〜24日病院、避難所など36人
8月25〜27日病院、避難所など24人
8月28〜30日病院、避難所など23人
8月31日〜9月2日病院、避難所など20人
9月3〜5日病院、避難所など22人
9月6〜8日病院、避難所など32人
9月9〜11日病院、避難所など26人
9月12〜14日病院、避難所など13人

日程ごとの人数を足すと、県外は1,912人、県内は485人となり、ページ上部に示された延べ人数と一致します。数字の内訳としては整合しています。

県外派遣は8月中旬に168人前後で推移したあと、8月28〜30日に148人、8月31日〜9月2日に110人、9月3〜5日に104人、9月6〜8日に102人、9月9〜11日に96人、9月12〜14日に72人となっています。掲載された直近3日間の公表値は8月中旬の半分以下で、活動場所も22か所から11か所へ変わっています。

県内派遣は8月3〜6日と8月7〜9日の54人が最も多く、その後は44人、45人、40人、32人と推移しました。8月28〜30日は23人、8月31日〜9月2日は20人、9月3〜5日は22人、9月6〜8日は32人、9月9〜11日は26人、9月12〜14日は13人と掲載されています。

派遣先の記載にも変化があります。県外は8月6日から8月30日までが「病院、避難所など」だったのに対し、8月31日〜9月14日は「避難所など」だけです。県内も、8月16〜18日までは「宇城総合病院」と病院名が明記されていましたが、8月19日以降は「病院」という書き方に変わっています。県外の派遣元は、8月28〜30日の11府県から、9月12〜14日は8府県へ変わっています。

ここから被災地の医療需要が減ったと結論づけることはできません。公表されているのは派遣した人数と場所であって、必要量ではないからです。避難所の統廃合、病院機能の復旧、地元での対応体制の回復など、複数の要因が同じ数字の動きを生みます。読み取れるのは、支援の量と行き先が変わったという事実までです。

それでも、送り出す側の職場にとっては意味のある情報です。応援の規模が縮小する局面では、派遣に出ていた職員が戻ってきます。戻った職員の休養や振り返りをどう確保するかは、派遣を決めるときと同じくらい、事前に決めておく価値があります。

病院側が派遣前の選定、残る職員の勤務、派遣中の連絡、帰任後の休養と経験共有をどう設計するかは、災害支援ナースを送り出す病院の実務チェックで管理者向けに整理しています。

派遣先が「病院」か「避難所」かで、求められるものは変わる

熊本の県内派遣の派遣先として挙がっているのは、宇城総合病院と避難所です。ここから先は、日本看護協会の派遣状況ページに個別の業務内容までは示されていないため、一般に想定される活動の違いとして書きます。実際に何を担うかは派遣先の状況と指示によります。

被災した病院への応援では、通常の入院患者さんのケアを継続しながら、設備の制限のなかで業務を回すことが中心になると考えられます。病棟経験が活きる場面が多い一方、勝手の違う電子カルテや物品配置に短時間で慣れる必要が出てきます。

避難所での活動は、一般に健康観察や環境整備、生活の相談が中心になるとされ、病棟の延長ではありません。避難している方のなかには治療中の方も当然おられますが、病棟のように医療が整った環境にいるわけではない、という違いがあります。慢性疾患の内服が途切れていないか、水分がとれているか、動けているかといった観点で、こちらから声をかけて拾いにいく姿勢が求められる場面が想定されます。急性期の技術よりも、生活を見て気づく力が問われるという性質の違いです。

どちらに派遣されるかは希望どおりにならないこともあります。研修を受ける段階で、自分は病棟型と避難所型のどちらの方が力を発揮できそうかを考えておくと、現地での戸惑いが減るでしょう。なお、具体的な活動内容は災害支援ナース養成研修で扱われるため、正確な内容は研修資料と派遣元の案内で確認してください。

2024年度に変わったこと:協会事業から法律にもとづく制度へ

災害支援ナースという言葉自体は以前からありましたが、2024年4月から位置づけが変わりました。改正医療法にもとづく「災害・感染症医療業務従事者」として整理され、養成も国の枠組みで行われるようになっています。

変更点のうち、現場の看護師さんにとって意味が大きいのは次の2点です。

第一に、派遣の対象が自然災害だけではなくなりました。新興感染症の発生やまん延時にも派遣される想定に広がっています。第二に、研修修了者は厚生労働省医政局に登録される仕組みになりました。病院や診療所に所属している看護職は、医療法にもとづく災害・感染症医療業務従事者としても登録されます。あわせて、広域災害・救急医療情報システム(EMIS)への登録も必須とされています。

この「新興感染症も対象になった」という一文は、さらりと読み流されがちですが、登録を検討する人にとっては意味を持ちます。研修の各論に感染症が組み込まれているのも、この想定の広がりに対応したものです。登録するかどうかを考えるときは、地震のような突発的な災害だけを思い浮かべるのではなく、対象が広がっていることを前提に検討してください。

なお、派遣の期間がどれくらいになるかは、災害や感染症の状況、そして都道府県・医療機関間の協定の内容によって決まります。「自然災害なら短期、感染症なら長期」といった一般則があるわけではありません。自分がどの程度の期間なら対応できるのかは、勤務先および都道府県看護協会に確認したうえで判断してください。

もう一点、EMISへの登録が必須とされていることも押さえておきたい点です。EMISは医療機関の被災状況や支援要請を共有する仕組みで、災害時にどこへ人を送るかを判断する土台になります。

注意したいのは、以前の枠組みで登録していた人の扱いです。日本看護協会は、災害支援ナースが2024年4月より法令等に基づく仕組みになったと説明していますが、旧制度の登録者が新制度へどう引き継がれるか、あらためて研修の受講が必要かについて、本記事で確認した範囲の公開資料には明記がありませんでした。数年前に登録した記憶があるという方は、自分の登録が現在も有効か、追加で必要な手続きがあるかを、必ず都道府県看護協会に確認してください。ここは推測で判断しないほうがよい部分です。

登録までの手順:研修は合計30時間以上

災害支援ナース養成研修は、オンデマンド研修と集合研修の組み合わせです。日本看護協会の案内によると、オンデマンド研修は総論・災害各論・感染症各論で20時間以上、集合研修は講義と演習で10時間以上とされています。合計すると30時間以上の学習量です。

ここで多くの人が驚くのが、申し込みの単位です。原則として施設単位の申し込みで、各医療機関の看護管理者、医療機関以外であれば部門長等が代表者となります。所属施設がない場合に限って個人単位での申し込みが可能です。窓口は各都道府県看護協会になります。

つまり、病院に勤めている看護師さんが「自分で申し込んで、修了してから上司に報告する」という順番は取れません。最初の一歩が、看護部長や師長に相談することになります。この構造を知らないまま情報を探すと、申し込みフォームが見つからずに行き詰まります。

職場と話すときに、順番を間違えないために

施設単位の申し込みだということは、災害支援ナースになるかどうかは個人の熱意だけでは決まらないという意味でもあります。勤務先にとっては、災害時に自分の施設の人員が数日から数週間抜けることを事前に受け入れるかどうかの判断になるからです。

相談を持ちかけるときは、「行きたい」という気持ちだけを伝えるよりも、次の3点を整理して持っていくほうが話が進みやすくなります。

1点目は、研修の時間と時期です。オンデマンド分は業務外で進められるのか、集合研修の日程は勤務調整が必要なのかを、都道府県看護協会の募集要項で確認してから相談します。

2点目は、派遣時の勤務の扱いです。ここは原則がはっきりしているので、まずそれを押さえてください。日本看護協会の制度案内では、派遣形態は「原則として派遣元の医療機関の職員として看護業務に従事する(業務扱い)」とされています。有給休暇を使って行くことが前提の仕組みではありません。費用についても「協定に基づく災害・感染症医療業務従事者又は医療隊の派遣に要する費用は都道府県が支弁する」と公的負担が明記されており、事故補償は都道府県が傷害保険に加入する形が示されています。

そのうえで、協定で費用の対象となる範囲や、施設内での勤務の割り振り方は、勤務先の規程と協定の内容によって変わります。原則(業務扱い・公費負担)と、施設ごとに詰める部分を分けて、勤務先の事務部門と都道府県看護協会の双方に確認してください。もし「休暇を取って行ってほしい」という説明を受けたなら、それが正式な協定に基づく派遣の話なのか、協定外の自主的な活動の話なのかを、その場で確かめる必要があります。

3点目は、自分が抜けたときの代替です。夜勤の組み方や受け持ちの引き継ぎまで含めて話せると、看護管理者の側も検討しやすくなります。逆にここが空白のままだと、意欲は伝わっても具体化しません。

相談の前に自分で埋めておくと話が早い項目を、表にしておきます。

確認したいことどこで確認するか
次回の養成研修の募集時期都道府県看護協会の募集要項
オンデマンド研修を業務時間内に受講できるか勤務先の看護部・教育担当
集合研修の日程と勤務調整の要否募集要項+自部署の勤務表
勤務先が都道府県と協定を結んでいるか勤務先の事務部門
派遣中の勤務の扱いと費用負担の考え方勤務先の規程+都道府県看護協会
EMISの入力担当が誰か勤務先の防災担当・看護管理者

この表のうち、多くの人が事前に調べずに相談してしまうのが「勤務先が協定を結んでいるか」です。制度が改正医療法にもとづく枠組みになったということは、派遣の実務が都道府県と医療機関の間の取り決めの上で動くということでもあります。勤務先がその枠組みにどう関わっているかを知らないまま「災害支援ナースになりたい」と伝えても、答える側も判断材料を持ちません。逆に、そこを調べたうえで相談に行けば、看護管理者にとっては施設としての備えを点検する機会にもなります。

「登録しない」という選択も、備えの一つになる

家庭の事情や体調、勤務先の状況から、今は登録が難しいという方も当然います。それは支援に関心がないということではありません。派遣される人がいるということは、その間、送り出す側の職場を回す人も必要だということです。

登録しない立場でできる備えとしては、勤務先の災害対応マニュアルの保管場所と、発災時の参集基準を確認しておくことが挙げられます。参集基準は「震度いくつで、誰が、どこへ」という形で定められていることが多く、自分が該当するかどうかを平時に把握しているかどうかで動きが変わります。あわせて、勤務先がEMISに情報を入力する担当をどう決めているかを知っておくと、災害時に自分の役割が見えやすくなります。

そのうえで、看護職として見落とされがちなのが「自分の家庭側の段取り」です。参集基準に該当する立場であれば、発災時には自分の家族の安全確認と職場への移動が同時に発生します。子どもの引き取りを誰が担うか、家族との連絡が取れないときにどこで落ち合うかを事前に決めていないと、参集できるかどうかの判断そのものに時間を取られます。今回の熊本の地震が平日の夕方に発生していることを思い出してください。勤務中の人、通勤中の人、休みの人がそれぞれ別の場所にいる時間帯です。

さらに、自宅と勤務先の双方のハザード情報を確認しておくと、想定できる範囲が広がります。断水が起きたとき、自宅の備蓄で何日もつのか。停電したときに医療的ケアが必要な家族がいないか。こうした条件は人によって大きく異なり、それによって「派遣に行ける人」か「地元を守る人」かが変わります。どちらが上ということではなく、自分がどちらの側に立てるのかを自覚しておくことが備えになります。

また今回の熊本のように真夏の災害では、暑さへの対応が課題になると考えられます。今回の派遣で実際にどんな活動が行われたかは公表されていませんが、断水と停電が重なれば、空調も水分の確保も平時と同じようにはいきません。夏の体調管理や環境調整の視点は、災害支援に限らず日々の看護と地続きです。訪問看護や夜勤帯での暑さ対策の考え方は、夏の訪問と夜勤で確認したい暑さ対策でも整理しています。

「支援に行かない側」の負荷を、事前に言葉にしておく

災害支援の話題では、派遣される側の準備ばかりが語られます。しかし職場では、同僚が抜けた状態で通常業務を回すことになります。その負荷を引き受けるのは、残る側のスタッフです。派遣の期間は災害の状況と協定によって決まるため、どれくらいの期間になるかは事前に勤務先へ確認してください。

ここを曖昧にしたまま送り出すと、帰ってきた本人が居づらくなることがあります。派遣を検討する段階で、「その期間の夜勤をどう埋めるか」「委員会や係の仕事を誰が引き取るか」を明文化しておくと、送り出す側と行く側の双方が納得しやすくなります。災害支援は個人の善意で完結する活動ではなく、職場の体制で成立する活動だという前提を、平時のうちに共有しておく価値があります。

制度を知ったうえで、自分のキャリアに置き直す

災害支援ナースの登録は、キャリアの選択肢としても意味を持ちます。急性期の経験を活かせる場面がある一方で、避難所での生活支援や慢性疾患の管理など、病棟とは異なる視点も求められます。研修そのものが、日常業務では触れない知識に触れる機会になります。

一方で、災害支援に関心があることと、今の職場に無理をして残ることは切り分けて考えてください。研修の日程調整すら相談できない職場環境が続いているなら、それは災害支援の問題ではなく、平時の勤務環境の問題です。自分の働き方の条件そのものを見直したい場合は、看護師の転職・退職の進め方や年代別のキャリアの考え方もあわせて読んでみてください。

転職先を選ぶときの観点としても、災害対応は使えます。面接や見学の場で「災害時の参集基準はどう決まっていますか」「災害支援ナースの登録者は施設にいますか」と聞くと、その施設が地域の中でどんな役割を引き受けているか、教育にどれだけ資源を割いているかが見えてきます。求人票の待遇欄には出てこない情報です。答えに詰まる施設が悪いとは限りませんし、二つの質問だけで施設の姿勢が分かるわけでもありません。ただ、聞けばその分だけ判断材料は増えます。

逆に、今の職場で災害対応の役割を任されているのに、平時の人員が慢性的に足りていないという状態なら、その負荷は災害時にさらに強く出ます。備えの議論は、平時の人員配置の議論と切り離せません。

2026年8月31日更新:保険診療の特例は9月以降も継続

厚生労働省は8月26日、令和8年熊本地震に伴う保険診療関係等の特例措置について、8月31日までとしていた取扱いを9月1日以降も当面の間継続すると通知しました。

これは「熊本地震に関係する全ての特例が無期限になった」という意味ではありません。通知ごとに対象者、対象地域、確認方法、期間が異なります。患者から費用や資格確認を尋ねられた看護師が、その場で免除・適用を確約しないでください。

受け入れ現場では次を確認します。

  1. どの通知の対象になる患者・受診か
  2. マイナ保険証や資格確認書を提示できない事情があるか
  3. 氏名、生年月日、住所、連絡先、加入保険など、確認する情報は何か
  4. 一部負担金・保険料の免除や猶予は、別の通知・証明が必要か
  5. 看護記録と医事記録のどこへ被災状況を残すか
  6. 判断できない場合に医事課・保険者へつなぐ経路はどこか

看護師の役割は、患者が被災により通常の書類を提示できない事情を拾い、医事担当へ確実につなぐことです。制度適用の最終判断や請求処理は、医事部門・保険者へ確認します。

通知は「当面の間」としているため、終了日が決まったときは再更新が必要です。災害支援の受け入れ手順には、通知番号、確認日、担当部署を記録する欄を置くと、古い期限のまま運用する事故を減らせます。

勤務先そのものが休業・縮小した場合の給与、休業手当、雇用調整助成金は別の論点です。被災した病院の休業と看護師の給与・雇用で、施設向け制度と個人の賃金を分けて確認できます。

よくある質問

Q. 経験年数が浅くても登録できますか。 A. 研修の対象者は、災害および新興感染症の発生時に他の医療機関等に派遣されて業務に従事することを目指す者とされています。具体的な経験年数の運用は都道府県看護協会の募集要項によって案内されるため、直接確認してください。

Q. 訪問看護ステーションや施設に勤めていても登録できますか。 A. 申し込みは原則として施設単位で、医療機関以外であれば部門長等が代表者となります。所属施設がない場合に限り個人単位での申し込みが可能とされています。

Q. 以前に災害支援ナースとして登録していましたが、そのまま活動できますか。 A. 2024年度から制度の位置づけは変わりましたが、本記事で確認した日本看護協会の公開資料では、旧制度登録者の資格が自動的に引き継がれるのか、あらためて研修が必要なのかを一律に判断できませんでした。以前の登録歴だけで活動可否を自己判断せず、現在の登録状況と必要な手続きを都道府県看護協会へ確認してください。

Q. 熊本の被災地に、個人で応援に行くことはできますか。 A. 派遣は都道府県や関係機関の調整のもとで行われます。受け入れ体制のない個人での訪問は、現地の負担になる場合があります。

Q. 今から研修を受けると、いつから活動できますか。 A. 募集時期と研修日程は都道府県看護協会ごとに設定されます。次年度の募集要項の公表時期を含めて、窓口に問い合わせるのが確実です。

Q. 研修はオンラインだけで完結しますか。 A. 日本看護協会の案内では、オンデマンド研修が総論・災害各論・感染症各論で20時間以上、集合研修が講義と演習で10時間以上とされています。集合研修があるため、オンラインのみでは完結しません。

Q. 登録すると、必ず派遣に応じなければいけませんか。 A. まず個人についてお答えします。日本看護協会は登録者向けの説明で、「災害支援ナースに登録すると派遣要請に必ず応じなければいけないというわけではなく、ご自身のタイミングや状況に合わせて無理をせず判断をしていただけます」としています。登録しただけで、あなた個人に応諾義務が生じるわけではありません。

そのうえで、施設側の話はこれとは別だと知っておいてください。この仕組みは、改正医療法にもとづき都道府県知事と医療機関が締結する協定の上で動いています。日本看護協会の看護管理者向けページは、協定を締結した医療機関等について「正当な理由がある場合を除き、この要請に応じなければなりません」と記載しています。あわせて、災害等の状況や医療機関の実情に即し、協定に沿った対応が困難であることがやむを得ないと都道府県が判断する場合の例外にも触れています。

したがって「個人は無理をせず判断できる」「協定を締結した施設にとっては純粋な任意ではない」の二つが同時に成り立っています。その枠組みの中で実際に誰が行くかは施設内の調整で決まるため、自分の勤務状況や家庭の事情がどう扱われるかは、勤務先および都道府県看護協会に確認してください。

この記事の確認範囲

  • 確認日:2026年9月22日(気象庁の9月1日発表、日本看護協会が掲載する9月14日までの公表値を含む)
  • 確認主体:はたらく看護師さん編集部
  • 残余確認:「当面の間」の終了通知、派遣実績、被災状況の更新時に再確認します

本稿は災害支援ナース制度と、厚生労働省が公表した保険診療特例の期間を整理したものです。個別患者への制度適用、免除、請求は、医事部門、保険者、自治体の最新案内を優先してください。

参考資料

協定に基づく派遣は原則として業務扱いで、費用は都道府県が支弁するとされていますが、施設内での具体的な運用は勤務先の規程と都道府県ごとの協定によって異なります。個別の条件は、勤務先の看護管理者および都道府県看護協会にご確認ください。

災害看護への関心と、今の勤務・家庭事情をどう両立するか迷う場合は、カンゴさんの匿名相談で考えを整理できます。研修申込や派遣可否の正式確認は、勤務先と都道府県看護協会へ行ってください。

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令和8年熊本地震で災害支援ナースはどう動いたか|登録の要件と職場調整 日本看護協会が掲載する令和8年熊本地震の災害支援ナース派遣は、9月14日までの公表値で県外延べ1,912人・県内延べ485人。過去期間の掲載値修正にも注意し、登録要件、職場調整、送り出す側の備えを整理します。

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9月24日9時申込開始|乳がんチーム医療看護師アドバンスト研修の対象・費用
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9月24日9時申込開始|乳がんチーム医療看護師アドバンスト研修の対象・費用

対象は2025年度スタンダードレベルeラーニング修了証を持つ看護師。研修は無料ですが、関東地方会への別途参加申込が必要です。

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日赤のネパール派遣から知る|看護師が担う保健医療コーディネーターの仕事と準備
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海外派遣の看護師は直接ケアだけでなく、ニーズを把握し、赤十字・行政・WHOなどをつなぎ、支援方針を組み立てる役割も担います。

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STSSはA群溶連菌だけではない|5,724例の新集計から、急速な悪化を外来・救急・病棟でつなぐ確認表
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STSSはA群溶連菌だけではない|5,724例の新集計から、急速な悪化を外来・救急・病棟でつなぐ確認表

劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、よく知られるA群だけでなくB群やG群でも届け出られています。病名を当てるためではなく、急速な変化を途切れさせない観察と報告に使う記事です。

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SFTSが第36週に5例、全例60代以上|発熱患者で屋外・マダニ・動物接触歴を聞く順番
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SFTSが第36週に5例、全例60代以上|発熱患者で屋外・マダニ・動物接触歴を聞く順番

宮城・兵庫・和歌山・広島・長崎から各1例、全例60代以上でした。一週分を流行拡大と断定せず、刺し口が見つからない患者でも曝露歴を切らさない問診へつなげます。

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腸管出血性大腸菌感染症が第36週137例|血便・強い腹痛・乏尿を、誰へどう申し送る?
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第36週は137例、有症者92例、HUS 1例でした。週の数字を患者個人の重症化率にせず、症状の開始日、便・腹痛、尿量、顔色、意識を時系列で伝える材料に変えます。

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9月17日開始のオンラインST|デイサービス看護師が確認する観察・説明・連携の役割
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9月17日開始のオンラインST|デイサービス看護師が確認する観察・説明・連携の役割

オンラインで専門職へ相談できても、現場の責任が自動で移るわけではありません。評価前の情報、当日の支援、レポート確認、計画・同意・記録の担当を導入前に決めるための記事です。

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