上司や先輩の強い言葉に萎縮する。患者さんやご家族から暴言を受ける。理不尽な要求を断れず、勤務後も気持ちが戻らない。看護師のハラスメント・暴言の悩みは、「自分が弱いから」ではなく、職場の安全衛生と相談体制の問題として整理する必要があります。
この記事は、看護師さんがハラスメントや暴言でつらい時に、何を記録し、どこに相談し、今の職場で改善できるか、次の職場を選ぶ時に何を見るかを整理する完全ガイドです。個別の行為がパワハラやカスハラに該当するかは断定せず、判断の材料と相談先を示します。
要点まとめ
- ハラスメントの悩みは「職場内」「患者・家族」「カスハラ・暴言」「守ってくれる職場選び」に分けて整理する。
- 職場のパワーハラスメントは、優越的な関係、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動、就業環境が害されることの3要素で考える。
- 適正な業務指導はパワハラに該当しないため、個別判断は断定せず、記録と相談で確認する。
- 看護現場の暴力・暴言・ハラスメントは、個人の我慢ではなく、職場の労働安全衛生と組織対応の問題として扱う。
- 2026年10月1日からカスタマーハラスメント対策の雇用管理上の措置が事業主に義務づけられる。
- つらさが強い時は、総合労働相談コーナーやこころの耳など、職場外の相談先も使う。
まず4つに分けて考える
ハラスメントや暴言の悩みは、相手と場面によって対応が変わります。
同じ「つらい言動」でも、職場内の上下関係で起きるものと、患者・家族からのものでは、相談先や組織の対応手順が違います。まず、誰から、いつ、どんな場面で、どのくらい続いているかを分けてください。
パワハラかもしれない時の見方
厚生労働省の「あかるい職場応援団」では、職場のパワーハラスメントを、次の3要素をすべて満たすものとして説明しています。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害されるもの
代表的な類型には、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害があります。ただし、客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワーハラスメントには該当しません。
そのため、「これは絶対にパワハラです」と自己判断だけで決めるより、記録を残して相談することが重要です。言われた内容、日時、場所、同席者、業務への影響、体調への影響を残してください。
患者・家族からの暴言を一人で抱えない
患者さんやご家族の不安、怒り、混乱が、看護師への暴言や威圧的な態度として向くことがあります。看護師だから何でも受け止めなければならない、ということではありません。
日本看護協会は、看護職の健康と安全に配慮した労働安全衛生の考え方を示しており、暴力・ハラスメントを職場の危険要因として扱っています。患者・家族対応も、個人の接遇スキルだけでなく、複数名対応、上司への報告、記録、院内ルール、警備や相談体制を含めた組織対応として考える必要があります。
暴言があった時は、次のように整理します。
- いつ、どこで、誰から、どんな言葉や行為があったか
- こちらがどのように対応したか
- 同席者や目撃者がいたか
- その後、勤務や体調にどんな影響が出たか
- 上司や管理者がどう対応したか
「患者さんだから仕方ない」で終わらせず、職場の対応履歴として残すことが大切です。
カスタマーハラスメント対策は強化される
カスタマーハラスメントは、患者・利用者・家族などからの著しい迷惑行為として看護現場でも問題になります。厚生労働省はカスタマーハラスメント対策企業マニュアルを公表し、企業・事業者が取るべき体制整備の考え方を示しています。
さらに、2026年10月1日から、カスタマーハラスメント防止のための雇用管理上の措置が事業主に義務づけられます。方針の明確化と周知、相談体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応が重要になります。
執筆時点では施行前ですが、看護師が職場を選ぶ時には、患者・家族からの暴言や理不尽な要求に対して、組織としてどう対応するかを確認する価値があります。
今の職場で確認すること
ハラスメントや暴言が続く時は、次の項目を確認してください。
- 相談窓口があり、周知されているか
- 相談しても不利益な扱いを受けない仕組みがあるか
- 患者・家族からの暴言を報告するルールがあるか
- 複数名対応や管理者同席の基準があるか
- 暴言・威圧・無視・過大要求の記録を残せるか
- 相談後に、配置調整や業務分担など具体的な対応があるか
相談しても「気にしすぎ」「患者さんだから仕方ない」「新人だから耐えて」と流される場合は、個人を守る仕組みが弱い職場かもしれません。
転職で確認すべきこと
次の職場では、ハラスメントを「起きない職場」としてではなく、「起きた時に守ってくれる職場」かを見ます。
| 確認したいこと | 質問例 |
|---|
| 相談体制 | ハラスメントや暴言の相談窓口はありますか |
| 患者・家族対応 | 暴言や威圧的な言動があった時の院内ルールはありますか |
| 管理者対応 | 看護師が一人で対応しない仕組みはありますか |
| 記録 | 暴言・迷惑行為の記録や報告書式はありますか |
| 職場文化 | 相談した人が不利益を受けない運用ですか |
求人票だけでは分かりにくいため、面接や見学で「困った時に誰が入るか」「過去にどう対応したか」を確認してください。人間関係全体のつらさもある場合は、人間関係完全ガイドも参考になります。
相談先
職場内で相談しても改善しない、または相談すること自体が怖い場合は、外部の窓口も使えます。
- 総合労働相談コーナー:各都道府県労働局や労働基準監督署内などに設置。無料・予約不要で、労働問題を相談できます。
- こころの耳:働く人のメンタルヘルス相談窓口です。電話相談は0120-565-455、平日17:00〜22:00、土日10:00〜16:00です。
身の危険を感じる、暴力がある、出勤が難しいほど心身に影響が出ている場合は、職場の管理者、産業保健、医療機関、外部相談先を早めに使ってください。
まとめ
看護師のハラスメント・暴言の悩みは、個人の我慢や気の持ちようで解決するものではありません。職場内のパワハラ、患者・家族対応、カスハラ、守ってくれる職場選びを分けて、記録と相談を進めてください。
今の職場に相談体制と対応力があるなら、記録をもとに改善を求めます。相談しても動かない、被害を個人に背負わせる職場なら、次は「起きた時に守ってくれるか」を基準に職場を選ぶことが大切です。
よくある質問
これはパワハラですか?
個別の行為がパワハラに当たるかは、3要素や状況によって判断されます。ここでは断定できません。言動の内容、日時、場所、同席者、業務や体調への影響を記録し、職場の相談窓口や総合労働相談コーナーに相談してください。
指導がきついだけなのか、ハラスメントなのか分かりません。
適正な業務指導はパワハラには該当しません。ただし、人格否定、侮辱、無視、過大な要求、業務と関係ない私的な干渉などが続き、就業環境が害されている場合は相談する価値があります。
患者さんや家族からの暴言は我慢するしかありませんか?
我慢するだけではありません。患者・家族対応も、複数名対応、上司への報告、記録、院内ルールなど組織で対応すべき問題です。一人で抱えず、具体的な言動を記録して報告してください。
カスハラ対策は病院にも関係しますか?
患者・利用者・家族からの著しい迷惑行為は、医療・介護現場でも問題になります。2026年10月1日からカスタマーハラスメント対策の雇用管理上の措置が事業主に義務づけられます。
相談したら不利益を受けそうで怖いです。
まずは記録を残し、信頼できる上司、院内窓口、労働組合、総合労働相談コーナーなど、相談しやすい順に使ってください。心身がつらい時は、こころの耳など外部窓口も利用できます。
参考資料


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