
手術室看護は、高度な専門性と緊張感が求められる分野です。
この記事では、手術室看護の基本原則から実践的な技術、安全管理、感染対策、チーム連携まで、現場で即活用できる知識を体系的に解説します。新人看護師からベテランまで、手術室看護に携わるすべての方の実践力向上とキャリアアップをサポートする完全ガイドです。
この記事を読んでわかること
- 手術室看護における役割と責任の明確な理解と実践
- 安全で効果的な器械出し・外回り看護の具体的な実施
- 手術部位感染予防のための具体的な感染管理
- チーム医療における効果的なコミュニケーションと連携の実践
- 質の高い手術看護を実現するための評価と改善
この記事を読んでほしい人
- 手術室看護師として働き始めた新人看護師
- 手術室でのスキルアップを目指す中堅看護師
- 手術看護認定看護師を目指している方
- 手術室の管理職として質の向上に取り組む看護師
- 手術室への配置転換を予定している看護師
- 手術室看護の教育担当者
- 手術室での感染管理や安全管理に携わる医療従事者
手術室看護の基本原則

手術室看護は、患者の生命と安全を守る重要な役割を担っています。
このセクションでは、手術室看護師に求められる基本的な役割と責任、そして安全確認の具体的な方法について解説します。手術室という特殊な環境において、高度な専門性と緊張感を持って業務を遂行するための基本的な考え方と実践方法を学んでいきましょう。
看護師の役割と責任
手術室看護師には、手術の安全な遂行と患者の生命維持に直接関わる重要な責務があります。それぞれの役割において求められる知識と技術、そして責任範囲を理解することが必要です。
器械出し看護師の専門性
器械出し看護師は手術における直接介助者として、清潔野の確保と術者への的確な器械提供を担当します。手術の流れを理解し、先を読んだ準備と迅速な対応が求められます。
清潔野における無菌操作の遵守は最も重要な責務となります。滅菌物品の取り扱いにおいては、パッケージの確認から使用期限、滅菌指標の確認まで、細心の注意を払う必要があります。
術中は常に術者の手元を注視し、必要な器械を適切なタイミングで提供できるよう、手術の進行状況を把握することが重要です。また、使用する器械のカウントと記録も確実に行う必要があります。
外回り看護師の業務展開
外回り看護師は、患者の全身管理から使用物品の準備、記録作成まで、広範な業務を担当します。
特に麻酔導入時の援助は重要な役割となり、気道確保補助や循環動態の観察など、麻酔科医との緊密な連携が必要です。手術中は患者の体位固定による褥瘡予防や、保温対策などの安全管理を行います。また、手術記録の作成や、使用物品の管理も重要な業務となります。
緊急時の対応準備として、必要な薬剤や機器の配置場所を把握し、迅速な対応ができる体制を整えます。
看護チームリーダーの管理実務
手術室の運営管理とスタッフの教育指導を担当するチームリーダーには、高度なマネジメント能力が求められます。手術スケジュールの調整や人員配置の最適化、緊急手術への対応など、複雑な運営管理を行います。
また、新人教育プログラムの立案や、継続教育の実施など、スタッフの育成も重要な役割です。安全管理体制の構築と維持も責務となり、インシデント・アクシデントの防止対策や、改善活動の推進を行います。
基本的な安全確認事項
手術室における安全管理は、患者の生命に直結する重要な要素です。確実な安全確認手順と、標準化された確認方法の実施が必要となります。
術前確認の実施手順
患者入室時の確認から手術開始までの安全確認は、特に重要性が高い業務です。患者確認では、フルネームでの呼称確認、リストバンドの確認、診療録との照合を確実に実施します。
手術部位のマーキングは、執刀医による実施を確認し、左右の間違いや部位の誤認を防止します。タイムアウトでは、患者確認、手術部位、手術内容について、手術チーム全員で声に出して確認を行います。
手術機器の安全管理
手術で使用する機器の点検と動作確認は、手術の安全な遂行に不可欠です。始業点検として、電気メスやサクション、手術台など、すべての機器の動作確認を行います。また、非常用電源への切り替えや、停電時の対応手順についても、定期的な確認が必要です。使用中の機器トラブルに備え、代替機器の準備や緊急時の対応手順を整備します。
緊急時対応の準備
手術中の緊急事態に備えた準備と訓練が重要です。心肺停止時の対応手順や、大量出血時の対応マニュアルを整備し、定期的な訓練を実施します。緊急薬品や救急カートの配置場所、使用方法について、スタッフ全員が把握しておく必要があります。
また、災害時の対応手順や避難経路の確認も、定期的に行う必要があります。
チーム医療の基盤構築
手術室での医療は、多職種によるチーム医療として実施されます。効果的なチーム医療の実現には、確実なコミュニケーションと相互理解が不可欠です。
効果的な器械出し看護

器械出し看護は、手術の安全で円滑な進行を支える重要な役割です。
このセクションでは、術前準備から術中の器械出し技術まで、実践的な手順と注意点について詳しく解説します。確実な無菌操作と迅速な対応により、手術チームの一員として専門性の高い看護を実践する方法を学んでいきましょう。
術前準備の実際
術前準備は手術の成功を左右する重要な要素です。手術の特性を理解し、必要な器材を過不足なく準備することが求められます。
手術手順の把握
手術の術式や手順を事前に確認し、必要な機器や器材を準備します。手術予定表から術者の特性や好みを確認し、器械の配置や受け渡し方法を計画します。解剖学的な知識に基づいて手術の進行を予測し、必要な器械を効率的に準備することが重要です。術中に起こりうる状況の変化も想定し、代替の器械や緊急時の器材も準備します。
器械の準備と確認
手術に使用する器械は、滅菌期限や包装の完全性を確認します。特殊な器械については、組み立て方や使用方法を事前に確認し、トラブル時の対応も把握しておきます。
器械の数量確認は複数回行い、術前カウントの基準値として記録します。鋭利な器械の取り扱いには特に注意を払い、安全な受け渡し方法を確認します。
滅菌物品の管理
滅菌物品の取り扱いには厳重な注意が必要です。滅菌パックの開封時には滅菌インジケータを確認し、開封方法を遵守します。大きな器械セットの準備では、効率的な配置と使用順序を考慮した展開を行います。滅菌物品の落下や汚染に備え、予備の器材も適切に準備します。
術中の器械出し技術
術中の器械出し看護には、高度な専門性と迅速な判断力が求められます。手術の進行に合わせた適切な対応が、手術の安全性と効率性を高めます。
基本的な器械出し手順
手術の開始時には、定位置での器械準備を完了させます。術者の利き手に合わせた器械の向きや、受け渡しの方法を統一します。器械の受け渡しは声に出して確認し、術者の手元での受け渡しを確実に行います。使用済みの器械は直ちに整理し、再使用の準備や廃棄の判断を的確に行います。
手術進行への対応
手術の進行状況を常に把握し、次に必要となる器械を予測して準備します。術者の声かけや術野の状況から、必要な器械を判断し、適切なタイミングで提供します。
予定外の状況が発生した場合も、冷静に対応し、必要な器械を迅速に準備します。縫合材料や特殊な器械の準備は、使用時期を予測して効率的に行います。
器械カウントの実施
器械カウントは手術安全管理の重要な要素です。術前、主要な処置の前後、閉創前、手術終了時など、定められたタイミングで確実にカウントを実施します。カウントの結果は外回り看護師と声に出して確認し、記録します。
不一致が生じた場合は、直ちに術者に報告し、原因究明と対応を行います。
特殊状況への対応
予定外の事態や緊急時には、迅速かつ適切な対応が求められます。平常時から準備と訓練を行い、確実な対応ができるようにします。
緊急時の器械準備
出血時や術式の変更時には、必要な器械を迅速に準備します。緊急セットの配置場所や内容を把握し、すぐに使用できる状態を維持します。予期せぬ事態に備え、代替の器械や器材についても日頃から確認しておきます。
汚染時の対応
機器や器材が汚染された場合は、速やかに認識し対応します。汚染機器の区別と隔離を確実に行い、必要な報告と記録を実施します。清潔野の維持と安全な手術進行のため、代替の器械を迅速に準備します。
外回り看護の実践

外回り看護は、手術室における患者管理と安全確保の要となる重要な役割です。
このセクションでは、患者の入室から退室までの一連の流れにおける外回り看護の実践方法と、適切な記録管理について解説します。患者の全身状態の管理から、他職種との連携まで、包括的な看護実践能力が求められる外回り看護の具体的な方法を学んでいきましょう。
患者管理の実際
手術患者の安全と安楽を確保するため、入室時から退室まで継続的な観察と適切な管理が必要です。全身状態の把握と迅速な対応が求められます。
入室時の患者対応
患者入室時には、不安の軽減に配慮しながら確実な患者確認を行います。手術同意書や術前チェックリストの確認、アレルギー歴の再確認など、安全確認項目を順序立てて実施します。患者の精神状態にも配慮し、説明と声かけを丁寧に行いながら、安心感を提供します。
麻酔導入時の援助
麻酔導入は特に重要な場面です。麻酔科医との連携のもと、必要な薬剤や物品を準備し、スムーズな導入をサポートします。
気道確保補助の準備や、循環動態の観察、体温管理の開始など、複数の業務を適切に実施します。急変時の対応準備も怠りなく行います。
術中の患者管理
手術中は患者の全身状態を継続的にモニタリングします。バイタルサインの観察、出血量の確認、体温管理、輸液・輸血管理など、多岐にわたる管理項目を確実に実施します。体位固定による褥瘡予防や神経損傷予防にも細心の注意を払います。
記録と情報管理
手術室での記録は、医療の質と安全を保証する重要な要素です。正確で詳細な記録が、継続的な医療の提供を支えます。
手術記録の作成
手術経過を時系列で正確に記録します。手術開始時刻、主要な処置、使用薬剤、出血量、検体、インプラントなど、必要な情報を漏れなく記載します。
特殊な状況や予定外の出来事についても、経緯と対応を明確に記録します。
関連書類の管理
手術に関連する各種書類を適切に管理します。同意書類、チェックリスト、使用物品の記録、医療材料の記録など、必要書類の確認と保管を確実に行います。デジタル記録システムの運用にも習熟し、確実なデータ入力を行います。
物品管理と環境整備
手術室の運営を支える重要な業務として、適切な物品管理と環境整備があります。効率的な物品管理と清潔な環境の維持が必要です。
手術物品の管理
手術に必要な物品の準備と補充を行います。定数管理の確認、期限切れ物品のチェック、特殊物品の発注など、計画的な物品管理を実施します。緊急時に必要な物品についても、常に使用可能な状態を維持します。
環境整備の実施
手術室の環境を清潔に保つため、定期的な清掃と点検を行います。空調管理、温度・湿度の管理、清掃範囲の確認など、手術室特有の環境管理を実施します。感染対策の視点からも、適切な環境整備を心がけます。
多職種との連携
外回り看護師は、様々な職種との連携の中心的役割を担います。効果的なコミュニケーションと情報共有が重要です。
術中の連携実践
手術チーム内での情報共有を確実に行います。術者、麻酔科医、器械出し看護師との連携を密にし、手術の進行状況や患者の状態変化について適切に情報を共有します。必要な物品の準備や、緊急時の対応も、チームワークのもとで実施します。
部門間の連携
病棟や材料部など、関連部門との連携も重要です。患者情報の引き継ぎ、必要物品の請求、検体の提出など、部門間の業務をスムーズに進めます。緊急手術の受け入れ時など、特殊な状況での連携体制も整備します。
感染管理の実践

手術室における感染管理は、手術部位感染の予防と医療関連感染の防止において極めて重要な役割を果たします。
このセクションでは、標準予防策の実践から手術部位感染予防まで、具体的な感染管理の方法について解説します。すべての手術室スタッフが理解し実践すべき感染管理の基本と応用を学んでいきましょう。
標準予防策の徹底
標準予防策は、すべての患者に対して実施する基本的な感染対策です。手術室という特殊な環境において、より厳密な実践が求められます。
手指衛生の実施
手術室での手指衛生は感染予防の基本となります。WHOが推奨する手指衛生の5つのタイミングを確実に実施し、手術時手洗いについては特に入念な手順で行います。手指消毒剤の選択と使用方法、擦式手指消毒と手術時手洗いの使い分けなど、状況に応じた適切な方法を選択します。
個人防護具の使用
手術室内での個人防護具の使用は、術者、患者双方の安全を守る重要な要素です。マスク、ゴーグル、手袋、ガウンなどの適切な着用方法と、場面に応じた防護具の選択を行います。特に清潔操作時の防護具交換のタイミングと手順を理解し、確実に実施します。
環境管理の実際
手術室の環境清浄度を維持するための管理を実施します。空調管理、清掃方法、器材の消毒・滅菌など、手術室特有の環境管理について理解し実践します。感染リスクの高い領域と一般領域の区分けを明確にし、適切な管理を行います。
手術部位感染予防
手術部位感染の予防は、周術期管理における重要課題です。予防的措置の確実な実施と、リスク因子の管理が必要となります。
術前の感染予防
手術前の感染予防措置を適切に実施します。術前の皮膚処置、除毛方法の選択、術前シャワーの実施など、エビデンスに基づいた予防策を実践します。
また、患者の既往歴や感染リスク因子を適切に評価し、必要な予防措置を講じます。
術中の感染管理
手術中の感染管理は特に重要です。無菌操作の徹底、適切な手術時手洗い、手術野の消毒方法など、基本的な感染予防策を確実に実施します。
また、手術室の温度・湿度管理、換気回数の維持など、環境面での管理も重要です。
特殊な状況における感染対策
感染症患者の手術や、免疫不全患者の手術など、特殊な状況における感染対策も重要です。状況に応じた適切な対応が求められます。
感染症患者の手術対応
感染症を有する患者の手術では、標準予防策に加えて必要な感染対策を実施します。
空気感染、飛沫感染、接触感染それぞれの感染経路に応じた予防策を講じ、他の患者や医療従事者への感染拡大を防止します。手術室の選定や動線の確保など、施設全体での対応も重要となります。
免疫不全患者への対応
免疫不全患者の手術では、患者を感染から守るための特別な配慮が必要です。清潔環境の維持、医療従事者の健康管理、使用器材の厳密な滅菌など、より厳重な感染予防策を実施します。手術室入室から退室まで、継続的な感染予防措置を講じます。
チーム医療の実践
手術室におけるチーム医療は、患者安全と手術の成功を支える重要な基盤です。
このセクションでは、効果的なコミュニケーション方法と多職種連携の具体的な実践方法について解説します。手術チームの一員として、それぞれの専門性を活かしながら協働する方法を学んでいきましょう。
効果的なコミュニケーション
手術室での円滑なチーム医療の実現には、正確で効率的なコミュニケーションが不可欠です。状況に応じた適切なコミュニケーション方法の選択と実践が求められます。
基本的なコミュニケーション技術
手術室内でのコミュニケーションには、明確さと簡潔さが求められます。指示の受け手は復唱することで内容を確認し、伝達ミスを防止します。緊急時や重要な場面では、特に声の大きさやスピードに配慮し、確実な情報伝達を心がけます。
非言語的コミュニケーションの重要性も理解し、ジェスチャーやアイコンタクトを効果的に活用します。
情報共有の実践
手術の進行状況や患者の状態変化について、チーム全体で情報を共有します。定期的な状況報告、予定変更時の連絡、問題発生時の報告など、必要な情報を適切なタイミングで共有します。申し送りの際は、標準化されたフォーマットを使用し、重要情報の漏れを防止します。
多職種連携の展開
手術室では、様々な職種が専門性を活かしながら協働します。それぞれの役割を理解し、効果的な連携を実現することが重要です。
職種間の役割理解
手術チームを構成する各職種の専門性と役割を理解します。術者、麻酔科医、看護師、臨床工学技士など、それぞれの専門性を尊重し、適切な連携を図ります。特に緊急時の役割分担を明確にし、迅速な対応ができる体制を整えます。
連携体制の構築
定期的なカンファレンスや症例検討会を通じて、チーム内の連携を強化します。手術計画の共有、問題点の検討、改善策の立案など、チーム全体で取り組む課題に対して建設的な話し合いを行います。
また、新しい手術手技や機器の導入時には、チーム全体で学習会を実施し、安全な医療の提供を確保します。
チーム力の向上
チーム医療の質を高めるためには、継続的な改善活動と相互理解の促進が必要です。チームとしての成長を目指した取り組みを実践します。
チームビルディング
チームの一体感を高め、協力関係を強化するための活動を行います。定期的なミーティングでの意見交換、相互理解を深めるための交流機会の設定、チーム目標の共有など、様々な取り組みを通じてチーム力を向上させます。
新しいメンバーの受け入れ時には、チーム全体でサポートする体制を整えます。
チーム評価と改善
チーム医療の質を評価し、継続的な改善を図ります。手術時間、合併症発生率、チーム内のコミュニケーション状況など、様々な側面から評価を行い、改善点を明確にします。
評価結果に基づいて具体的な改善策を立案し、チーム全体で実践します。
質の評価と改善

手術室看護の質を維持・向上させるためには、適切な評価指標の設定と継続的な改善活動が不可欠です。
このセクションでは、手術室看護の質を評価するための具体的な指標と、効果的な改善活動の展開方法について解説します。データに基づく客観的な評価と、実践に即した改善活動の方法を学んでいきましょう。
評価指標の設定と活用
手術室看護の質を評価するためには、適切な指標の設定と定期的な測定が重要です。客観的なデータに基づく評価を通じて、改善すべき課題を明確にします。
基本的な評価指標
手術部位感染率、手術時間の遵守率、インシデント・アクシデントの発生状況など、基本的な指標について定期的なモニタリングを実施します。データの収集方法を標準化し、継続的な評価が可能な体制を整備します。評価結果は、統計的手法を用いて分析し、経時的な変化や傾向を把握します。
患者満足度の評価
患者視点での医療の質評価として、満足度調査を実施します。術前説明の理解度、不安への対応、術後の痛み管理など、患者の体験に基づく評価を行います。調査結果は、具体的な改善活動につなげるため、詳細な分析を行います。
継続的改善活動の展開
評価結果に基づき、効果的な改善活動を展開します。組織全体で取り組む改善活動を通じて、手術室看護の質の向上を図ります。
改善活動の計画立案
問題点の分析結果に基づき、具体的な改善計画を立案します。目標設定、実施方法、評価指標など、改善活動の枠組みを明確にします。実現可能性と効果を考慮しながら、優先順位を付けて取り組みます。
組織的な改善の実践
立案した改善計画を、組織全体で実践します。定期的なカンファレンスでの進捗確認、改善効果の評価、必要に応じた計画の修正など、PDCAサイクルに基づく改善活動を展開します。スタッフ全員が改善活動に参画できる環境を整備します。
質向上のための体制整備
手術室看護の質を継続的に向上させるためには、組織的な支援体制の整備が重要です。効果的な改善活動を支える基盤づくりを進めます。
教育・研修体制の充実
質の向上に必要な知識と技術を習得するための教育・研修体制を整備します。最新のエビデンスや技術に関する学習機会を提供し、スタッフの能力向上を支援します。外部研修への参加機会も積極的に設けます。
安全管理体制の強化
医療安全の視点から、組織的な管理体制を強化します。インシデント・アクシデントの分析と対策立案、安全教育の実施、マニュアルの整備など、包括的な安全管理体制を構築します。リスクマネジメント活動を通じて、予防的な改善にも取り組みます。
教育・研修体制

手術室看護師の専門性を高め、安全で質の高い看護を提供するためには、体系的な教育・研修体制の確立が不可欠です。
このセクションでは、新人教育から専門的スキル向上まで、効果的な教育・研修プログラムの展開方法について解説します。継続的な学習と成長を支援する体制づくりについて学んでいきましょう。
新人教育プログラム
手術室看護の基礎を学び、実践力を養うための新人教育プログラムは特に重要です。段階的な学習と経験の蓄積を通じて、確実な技術習得を目指します。
基礎教育の展開
手術室看護の基本原則から学習を開始します。感染管理、安全確認、基本的な器械の取り扱いなど、基礎的な知識と技術の習得を進めます。シミュレーション教育を活用し、実践的な技術トレーニングを実施します。
理論と実践を結びつけながら、確実な学習を進めていきます。
実践能力の段階的向上
経験する手術の難易度を段階的に上げていき、実践能力の向上を図ります。指導者のもとでの経験を重ねながら、徐々に自立した実践ができるよう支援します。定期的な評価とフィードバックを通じて、習得状況を確認し、個別の課題に対応します。
継続教育の実践
専門性の向上と最新知識の習得のため、継続的な教育機会を提供します。個々の看護師のキャリア発達を支援する体制を整備します。
専門的スキルの向上
手術看護認定看護師の指導のもと、専門的なスキルの向上を図ります。新しい手術手技や医療機器への対応、高度な感染管理技術など、専門性の高い内容について学習します。事例検討会や技術研修を通じて、実践的な能力の向上を目指します。
自己研鑽の支援
学会参加や研究活動など、自己研鑽の機会を積極的に提供します。最新の知見や技術を学ぶ機会を確保し、専門職としての成長を支援します。研究発表や論文作成のサポート体制も整備し、看護の質向上に向けた取り組みを推進します。
教育支援体制の整備
効果的な教育・研修を実現するため、組織的な支援体制を確立します。教育担当者の育成と、教育環境の整備を進めます。
指導者の育成
教育担当者や実地指導者の育成を計画的に行います。指導技術の向上や評価方法の標準化など、指導者としての能力開発を支援します。定期的な指導者会議を通じて、教育上の課題や改善点を共有します。
教育環境の整備
シミュレーション設備や学習教材など、効果的な教育に必要な環境を整備します。オンライン学習システムの活用や、医療機器メーカーとの連携による技術研修など、多様な学習機会を提供します。教育効果の評価と改善を継続的に行い、より良い教育環境の実現を目指します。
評価チェックリスト
手術室看護の質を維持・向上させるため、日々の実践を適切に評価することが重要です。
このセクションでは、実践的な評価のためのチェックリストと、その活用方法について解説します。客観的な評価基準に基づいて、看護実践の質を確保するための方法を学んでいきましょう。
A. 日常業務評価の基準
日々の看護実践を評価するための基準を示します。各項目について、具体的な評価方法と判断基準を理解し、実践に活用します。
A.1 安全確認の評価
患者確認、手術部位確認、タイムアウトの実施など、安全確認項目の実施状況を評価します。確認内容の正確性、実施タイミング、チーム内での情報共有について、具体的な基準に基づいて評価を行います。実施者と確認者の双方による評価を行い、確実な実施を確保します。
A.2 感染対策の評価
手指衛生、個人防護具の使用、清潔操作の遵守など、感染対策の実施状況を評価します。手順の遵守状況、タイミングの適切性、技術の確実性について、具体的な基準に基づいて評価を実施します。
B. 継続的評価の方法
定期的な評価を通じて、看護実践の質を継続的に改善します。評価結果を活用した改善活動の展開方法を示します。
B.1 定期評価の実施
月次評価、四半期評価など、定められた期間ごとの評価を実施します。数値指標による定量的評価と、質的な評価を組み合わせて、総合的な評価を行います。評価結果は記録として保管し、改善活動に活用します。
B.2 評価結果の活用
評価結果に基づいて、具体的な改善計画を立案します。課題の優先順位付け、改善策の検討、実施計画の作成など、系統的な改善活動を展開します。評価と改善のサイクルを継続的に運用し、看護の質向上を図ります。
C. 評価シートの運用
具体的な評価シートの使用方法と、記録の管理方法について示します。正確な評価と記録の継続的な実施を支援します。
C.1 評価項目の確認
評価シートに記載された各項目の意味と、評価基準を正確に理解します。評価者による判断のばらつきを最小限に抑えるため、評価基準の解釈を統一します。定期的な評価者研修を通じて、評価の質を確保します。
C.2 記録の管理方法
評価結果の記録を適切に管理し、継続的な改善活動に活用します。デジタルデータとしての保存、必要な情報の抽出方法、データの分析方法など、効果的な記録管理の方法を実践します。
おしえてカンゴさん!手術室看護のギモンQ&A

手術室看護に関する皆さんからよくいただく質問に、経験豊富な手術室看護師の「カンゴさん」がお答えします。実践的なアドバイスと、現場での具体的な対応方法をご紹介します。
Q1:手術室看護師として働き始めて3ヶ月です。器械出し看護師になるために、最初に習得すべき技術は何でしょうか?
はい、大切な質問ですね。器械出し看護師の基本として、まずは清潔操作の完全な習得が不可欠です。特に手術時手洗いの確実な実施と、清潔野の維持管理を重点的に学びましょう。基本的な手術器械の名称と使用目的を理解し、受け渡し方法を習得することも重要です。
また、解剖学の基礎知識を深めることで、手術の流れを予測できるようになります。焦らず、一つひとつ確実に習得していくことをお勧めします。
Q2:手術中の患者の体温管理で気をつけるべきポイントを教えてください。
手術中の体温管理は術後回復に大きく影響する重要な要素です。一般的に手術室は低温環境のため、入室時からの保温対策が必要です。
具体的には、温風式加温装置の使用、輸液の加温、手術部位以外の保温など、複数の方法を組み合わせて実施します。体温は30分ごとにモニタリングし、35.5度以上を維持することが推奨されます。特に高齢者や長時間手術では、より慎重な管理が必要となります。
Q3:緊急手術の準備で特に注意すべきことはありますか?
緊急手術では、迅速な対応と安全確保の両立が求められます。最優先すべきは患者の状態確認と必要物品の準備です。事前に緊急手術用のセットを整備し、すぐに使用できる状態にしておくことが重要です。
また、チーム内での情報共有を密に行い、役割分担を明確にします。緊急時こそ基本的な安全確認を確実に実施することを忘れないでください。
Q4:手術中の予期せぬ出血への対応方法を教えてください。
予期せぬ出血時の対応は、チーム全体での迅速な連携が鍵となります。まず、術者への速やかな報告と、必要な器械・器材の準備を行います。輸血セットの確認、緊急用の器械展開、バイタルサインの継続的なモニタリングを実施します。また、出血量の正確な測定と記録も重要です。
日頃からの緊急時対応訓練と、チームでの役割確認が重要となります。
Q5:手術室でのコミュニケーションエラーを防ぐコツを教えてください。
手術室でのコミュニケーションエラー防止には、「復唱」と「確認」が基本となります。特に重要な指示や情報は、必ず声に出して復唱し、相手からの確認を得ます。また、懸念事項がある場合は躊躇せずに声に出すことが重要です。
定期的なタイムアウトの実施や、標準化された申し送り方法の活用も効果的です。チーム内での意思疎通を円滑にするため、日頃からのコミュニケーションも大切にしましょう。
Q6:手術看護認定看護師を目指すために、今からできる準備はありますか?
手術看護認定看護師を目指すための準備として、まずは手術室での実践経験を着実に積むことが重要です。特に感染管理、安全管理、急変時の対応など、基本的な実践能力を高めていきましょう。同時に、最新の手術看護に関する文献を読み、エビデンスに基づく看護実践についての理解を深めることをお勧めします。
また、院内外の研修や学会に積極的に参加し、専門的な知識を広げていくことも効果的です。
まとめ
手術室看護は、高度な専門性と緊張感を守る重要な役割です。
本ガイドで解説した基本原則、実践技術、チーム医療、感染管理、そして継続的な質の向上への取り組みは、安全でこれらの知識と技術を確実に習得し、日々の実践に相談していくことで、患者さんに安全で質の高い手術看護を提供することができます。
手術室看護の専門性を高めたい方は、【はたらく看護師さん】をご活用ください。当サイトでは、手術看護認定看護師への道や、スキルアップのための研修情報、経験者による実践的なアドバイスなど、キャリアアップに役立つ情報が注目です。