
新人看護師の皆さん、日々の業務で「複数の処置が重なって焦ってしまう」「優先順位の判断に自信が持てない」といった不安を感じていませんか?本記事では、実務経験10年以上のベテラン看護師が、多重課題を効率的に処理するための具体的な方法をお伝えします。
優先順位の付け方から時間管理のコツ、ストレス対策まで、現場ですぐに活用できる実践的なノウハウをご紹介。新人看護師の業務効率を150%向上させる独自のメソッドを、具体例を交えながら分かりやすく解説していきます。
この記事を読めば、複数の業務が重なる状況でも、落ち着いて対応できるようになりますよ。
この記事で分かること
- 多重課題を効率的に処理するための5つの具体的メソッド
- 緊急度と重要度の判断基準とその活用法
- 先輩看護師が実践している時間管理のコツ
- 多重課題によるストレスを軽減する効果的な方法
- チーム連携を活用した業務効率化のテクニック
この記事を読んでほしい人
- 複数の業務を同時にこなすことに不安を感じている新人看護師
- タイムマネジメントの改善を目指している看護師
- 業務効率化に悩む2年目以内の看護師
- プリセプターとして新人指導を担当している先輩看護師
多重課題処理の基本フレームワーク

看護業務において、多重課題への対応は避けて通れない課題です。
このセクションでは、効率的な業務遂行のための基本的な考え方と具体的な実践方法をご紹介します。
優先順位の確立方法
医療現場における優先順位の判断は、患者の生命と安全に直結する重要なスキルです。ここでは、体系的な優先順位の決定方法について説明します。
緊急度の評価
緊急度の評価は患者の生命に関わる重要な判断基準となります。生命に直結する処置を最優先とし、その後に時間指定のある処置、ルーチン業務という順序で対応することが基本となります。
バイタルサインの変化への対応
患者のバイタルサインに変化が見られた場合は、即座に評価を行い、必要に応じて医師への報告を行います。SpO2の低下や血圧の急激な変動など、生命に関わる変化については、継続中の業務を一時中断してでも対応が必要となります。
時間指定のある医療処置
既定の時間が設定されている投薬や処置については、その時間的制約を考慮しながら対応の順序を決定します。例えば、食前薬の投与や定時の点滴交換などは、確実な時間管理が求められます。
ルーチン業務の組み立て
日常的なケアや記録業務については、患者の状態や他の優先度の高い業務との兼ね合いを見ながら、適切なタイミングで実施します。
状況判断と実行計画
患者の状態を適切に評価し、必要な看護ケアの優先順位を決定することは、効率的な業務遂行の基本となります。
患者アセスメントの重要性
各勤務の開始時には、担当患者全員の状態を把握し、予測される変化や必要なケアを明確にします。バイタルサインの傾向、検査データの推移、患者の訴えなどを総合的に評価することで、より適切な優先順位付けが可能となります。
チーム内での情報共有
業務開始時のカンファレンスや申し送りでは、重要な情報を簡潔にまとめて共有します。特に注意が必要な患者の状態変化や、時間指定のある処置については、チームメンバー全員が認識を共有できるよう心がけます。
タイムマネジメントの実践
効率的な時間管理は、多重課題を成功させる重要な要素です。ここでは具体的な時間管理の方法について説明します。
業務開始時の全体把握
勤務開始時には、担当患者の状態確認、当日の処置・検査の確認、予定されている面談や申し送りなど、その日の業務全体を把握します。この時点で、おおよその時間配分を考えておくことで、効率的な業務遂行が可能となります。
時間管理の基本テクニック
業務は2時間単位で区切って計画を立てることをおすすめします。これにより、突発的な事態が発生した際の調整が容易になります。また、予定外の対応が必要になることを想定して、ある程度の余裕時間を確保しておくことも重要です。
チーム連携の活用
多重課題の効率的な処理には、チームメンバーとの適切な連携が不可欠です。
報告・連絡・相談のタイミング
業務上の判断に迷った場合や、予定外の事態が発生した場合は、速やかにリーダーや先輩看護師に相談します。特に、患者の状態変化や処置の優先順位について判断が必要な際は、必ず報告・相談を行います。
効果的な時間管理術

看護師の業務において、時間を効率的に管理することは患者ケアの質を高める重要な要素です。
このセクションでは、実践的な時間管理の方法と、各勤務帯での効果的な業務の進め方についてご説明します。
勤務帯別の時間管理手法
それぞれの勤務帯には特有の業務と時間の使い方があります。ここでは各勤務帯における効果的な時間管理の方法をご紹介します。
日勤帯での時間管理
日勤帯は最も業務が集中する時間帯です。朝の申し送りから始まり、様々な検査や処置が組み込まれています。まず8時30分までに担当患者全員のバイタルサインを測定し、気になる点は早めに医師に報告できるよう準備します。
その後、9時までの間に処方された朝食前薬の投与を終えるよう計画を立てます。
夜勤帯での時間配分
夜勤では限られたスタッフ数で患者の安全を確保する必要があります。21時から23時の間に翌朝の準備を含めた業務計画を立て、深夜帯での緊急時対応にも備えます。2時間ごとの巡視を基本としながら、患者の状態に応じて観察頻度を調整していきます。
業務の優先順位付けとスケジューリング
限られた時間の中で最大の効果を上げるために、業務の優先順位付けは欠かせません。
重要度と緊急度のマトリクス活用
業務を「重要度が高く緊急性もある」「重要度は高いが緊急性は低い」「緊急性はあるが重要度は低い」「どちらも低い」の4つに分類します。これにより、その時点で最も注力すべき業務を明確にすることができます。
タイムブロッキングの実践
一日の業務を2時間単位のブロックに分けて管理します。例えば、9時から11時のブロックでは基本的なケアと記録を、11時から13時のブロックでは処置と昼食介助を中心に行うといった具合です。各ブロックには20%程度の余裕を持たせ、予定外の対応にも柔軟に対応できるようにします。
デジタルツールの活用
現代の医療現場では、様々なデジタルツールを活用することで業務効率を高めることができます。
電子カルテの効率的な運用
電子カルテシステムを効果的に活用することで、記録時間を短縮することができます。よく使用する定型文をテンプレート化しておくことで、記録の効率が大きく向上します。また、患者情報の確認や指示受けもスムーズに行えるようになります。
タスク管理アプリの活用
病院で承認された業務用アプリケーションがある場合は、それらを活用してタスクの管理を行います。特に、時間指定のある業務や、継続的な観察が必要な項目については、リマインダー機能を利用することで抜け漏れを防ぐことができます。
業務の振り返りと改善
日々の業務を継続的に改善していくために、定期的な振り返りは欠かせません。
日々の業務記録の活用
その日の業務終了時に5分程度、完了した業務と未完了の業務を確認します。特に、予定通りに進まなかった業務については、その原因を分析し、次回への改善点を見出します。これらの気づきは業務日誌に記録し、チーム内で共有することで、組織全体の業務効率向上につながります。
ストレスマネジメント

新人看護師にとって、多重課題によるストレスは避けられない課題です。
このセクションでは、業務上のストレスを適切にコントロールし、心身の健康を維持しながら効率的に働くための具体的な方法をご紹介します。
多重課題におけるストレス要因の理解
ストレスに適切に対処するためには、まず自分のストレス要因を正確に把握することが重要です。
時間的プレッシャーへの対応
時間に追われる状況では、焦りから判断ミスを起こしやすくなります。そのような場合は、一度深呼吸をして状況を整理することから始めましょう。
また、一つ一つの業務に対して適切な時間配分を行い、現実的な目標設定を心がけることで、不必要なプレッシャーを軽減することができます。
業務量過多への対処
担当患者の状態が急変したり、予定外の業務が重なったりすることで、業務量が一時的に増加することがあります。そのような状況では、一人で抱え込まず、チームメンバーに協力を求めることが重要です。
セルフケアの実践
心身の健康を維持することは、質の高い看護を提供するための基本となります。
休憩時間の有効活用
短い休憩時間であっても、効果的に活用することで心身のリフレッシュが可能です。休憩室でのストレッチや深呼吸、同期との短時間の会話なども、ストレス解消に役立ちます。
勤務後のデコンプレッション
業務終了後は、その日のできごとを振り返る時間を持ちます。特に感情的に影響を受けた出来事については、プリセプターや先輩看護師と共有することで、客観的な視点を得ることができます。
メンタルヘルスケアの実践
長期的な視点でのメンタルヘルスケアも重要です。
ストレスサインの早期発見
不眠や食欲不振、極度の疲労感といった身体症状は、メンタルヘルスの重要なサインとなります。これらの症状に気づいた場合は、早めに上司や産業医に相談することをおすすめします。
サポートシステムの活用
多くの医療機関では、職員のメンタルヘルスをサポートするシステムが整備されています。定期的なカウンセリングや相談窓口の利用は、予防的なメンタルヘルスケアとして効果的です。必要に応じて、これらのリソースを積極的に活用しましょう。
チーム医療でのコミュニケーション

多重課題を効率的に処理するためには、チームメンバーとの効果的なコミュニケーションが不可欠です。
このセクションでは、チーム医療における具体的なコミュニケーション方法と、情報共有の技術についてご説明します。
報告・連絡・相談の基本
医療安全と業務効率を高めるためには、適切なタイミングでの情報共有が重要です。
状況報告の具体的手法
SBAR(Situation、Background、Assessment、Recommendation)の形式を用いることで、簡潔で的確な報告が可能になります。まず現在の状況を説明し、その背景情報を共有します。
次に自身のアセスメント結果を伝え、最後に必要なサポートについて具体的に提案します。
緊急時の情報伝達
緊急性の高い状況では、特に簡潔で明確なコミュニケーションが求められます。患者の急変時には、バイタルサインの変化や観察された症状を、数値を用いて具体的に報告します。また、自身が実施した対応についても漏れなく共有することが重要です。
多職種連携の実践
効果的な患者ケアを実現するためには、様々な職種との円滑な連携が必要です。
医師とのコミュニケーション
医師への報告や相談の際は、あらかじめ必要な情報を整理しておくことが重要です。患者の状態変化や検査データの推移、実施したケアの内容など、判断に必要な情報を簡潔にまとめて伝えます。
リハビリスタッフとの情報共有
患者のADL状況や リハビリの進捗状況については、リハビリスタッフと定期的に情報交換を行います。これにより、日常のケアとリハビリテーションの一貫性を保つことができます。
記録とドキュメンテーション
正確な記録は、チーム医療における情報共有の基盤となります。
看護記録の効率的な作成
客観的な事実と自身のアセスメント、実施したケアの内容を明確に区別して記載します。また、時系列に沿って経過が分かるよう、記録の構成を工夫することも重要です。
申し送り時の情報整理
勤務交代時の申し送りでは、重要度の高い情報から順に伝達します。特に注意が必要な患者の状態変化や、継続的な観察が必要な項目については、確実に引き継ぎができるよう配慮します。
ケーススタディ
実際の現場では、様々な状況で多重課題への対応が求められます。
このセクションでは、実際の事例を基に、効果的な対処法と学びのポイントについてご紹介します。
内科病棟での多重課題対応
新人看護師Aさん(24歳)の事例から、基本的な多重課題への対応方法を学びましょう。
状況設定
入職3ヶ月目のAさんは、慢性疾患で入院中の患者3名を担当していました。朝の与薬業務中に、担当患者の一人が急な胸痛を訴え、同時に別の患者の点滴の残量が少なくなっているという状況に直面しました。
対応のプロセス
Aさんはまず、胸痛を訴える患者のもとへ向かい、バイタルサインの測定を行いました。その際、リーダー看護師に状況を報告し、点滴残量が少ない患者への対応を依頼しました。
適切な優先順位付けと、チームメンバーへの協力要請により、安全な看護ケアを提供することができました。
外科病棟での緊急対応
術後管理における多重課題の事例から、緊急時の対応方法を考えていきます。
状況設定
新人看護師Bさん(23歳)は、術後2日目の患者2名と、術前の患者1名を担当していました。術後患者の創部観察中に、もう一人の術後患者のドレーンから多量の出血がみられ、さらに術前患者の予定検査の時間が迫っているという状況でした。
実践された対応
Bさんは即座にドレーンからの出血に対応することを最優先としました。応援要請とともに、患者のバイタルサイン測定と出血量の確認を行い、医師への報告を行いました。
同時に、他のスタッフに術前患者の検査対応を依頼し、チーム全体で状況に対処することができました。
救急対応における多重課題
救急外来での予期せぬ状況における対応例をご紹介します。
状況設定
夜勤帯で働く新人看護師Cさん(25歳)は、発熱患者の対応中に救急搬送の連絡を受けました。さらに、別の患者の痛みが増強し、医師の診察が必要な状況となりました。限られたスタッフ数での対応が求められる中、適切な判断が必要とされました。
効果的な対処法
Cさんは、救急搬送される患者の情報を得た時点で、リーダー看護師に報告を行い、チーム全体での役割分担を明確にしました。発熱患者のケアを一時中断し、搬送患者の受け入れ準備を整えながら、痛みを訴える患者には他のスタッフによる対応を依頼しました。
おしえてカンゴさん!よくある質問と回答
新人看護師の皆さんから多く寄せられる質問について、経験豊富な先輩看護師がお答えします。ここでは特に多重課題に関する疑問や不安について、実践的なアドバイスをご紹介します。
優先順位に関する質問
Q1:複数の処置が重なった時の判断基準を教えてください
急変対応と定時の投薬が重なった場合は、まず患者の生命に関わる急変対応を優先します。その際、定時薬の投与が遅れることについては、リーダー看護師に報告し、投与時間の調整について指示を仰ぐことが重要です。
状況に応じて、他のスタッフに定時薬の投与を依頼することも検討しましょう。
Q2:予定外の処置が入った時の対応方法は?
予定外の処置が入った場合は、まず現在進行中の業務を中断して良いか判断します。その判断基準は、進行中の業務の緊急性と、新たに発生した処置の緊急性を比較することです。どちらを優先すべきか迷う場合は、必ずリーダー看護師に相談し、指示を仰ぎましょう。
時間管理に関する質問
Q3:記録に時間がかかりすぎて、他の業務に支障が出ています
記録時間の短縮には、よく使用する文章のテンプレート化が効果的です。また、ケアの実施直後にメモを取る習慣をつけることで、後から記録をまとめる際の時間を短縮することができます。業務の合間を見つけて、こまめに記録を入力することも重要です。
Q4:夜勤帯での時間管理のコツを教えてください
夜勤帯では、21時から23時の間に翌朝までの業務計画を立てることが重要です。特に、深夜帯での定期巡視やバイタルサイン測定のタイミングを事前に決めておくことで、効率的な業務遂行が可能になります。
また、緊急時の対応に備えて、ある程度の余裕時間を確保しておくことをおすすめします。
ストレス管理に関する質問
Q5:業務が立て込んでいる時のストレス対処法を教えてください
一時的に業務が増加した場合は、一人で抱え込まず、チームメンバーに協力を求めることが重要です。また、短い休憩時間であっても、意識的にリフレッシュの時間を作ることで、ストレスの軽減につながります。
実践的な多重課題処理のためのステップ
これまでご紹介してきた多重課題への対応方法を、日々の看護実践に活かしていただければと思います。
最後に、効果的な多重課題処理を実現するための重要なポイントを整理してお伝えします。
実践のためのキーポイント
多重課題への対応は、経験を重ねることで着実に上達していきます。日々の業務の中で、優先順位の判断基準を意識し、時間管理の技術を磨いていくことが重要です。
また、困ったときには一人で抱え込まず、チームメンバーに相談することで、より安全で効率的なケアの提供が可能になります。
継続的な成長のために
看護実践能力の向上には、日々の振り返りが欠かせません。業務終了時には、その日の判断や対応が適切であったかを見直し、改善点を見出すことをおすすめします。
また、プリセプターや先輩看護師からのフィードバックを積極的に求め、自身の成長に活かしていきましょう。
最後に
新人看護師の皆さんには、焦らず着実にステップアップしていただきたいと思います。一つひとつの経験を大切にし、日々の学びを積み重ねることで、必ず多重課題への対応力は向上していきます。皆さんの看護実践が、患者さんへのより良いケアにつながることを願っています。
まとめ:新人看護師の多重課題を乗り越えるために
多重課題への対応は、新人看護師にとって大きな課題ですが、適切な優先順位付けと時間管理、そしてチームメンバーとの連携により、確実に克服することができます。日々の経験を積み重ね、一つひとつの状況に丁寧に対応していくことで、必ず業務への自信がついていきます。
焦らず、着実にステップアップを目指していきましょう。
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