
医療関連感染の予防は、患者の安全と医療の質を確保する上で最も重要な要素の一つです。
本ガイドでは、標準予防策の基本から具体的な実践方法、さらにはサーベイランスによる評価と改善まで、現場で即活用できる情報を網羅的にまとめています。
この記事を読んでほしい人
- 感染対策の基本を確実に実践したい病棟看護師
- 配備の感染対策担当として活動している看護師
- 感染管理認定看護師を目指している看護師
- 医療安全管理体制の構築に関わる看護管理者
この記事で分かること
- 最新の医療関連感染対策の現状と具体的な予防
- 部門別の実践的な感染対策の実施
- 医療機器や環境の正しい管理
- サーベイランスによる評価と改善の進め方
- 職業感染対策と職員の健康管理
感染対策の基本と最新の取り組み

医療関連感染対策は、患者の安全の確保と医療の質向上に関して最も重要な要素の一つとなります。
本章では、その基本的な考え方から具体的な実践方法まで、体系的に解説します。
医療関連感染症の現状と課題
医療関連は現代医療における重要な課題となっています。医療技術の高度化や、新たな感染症の出現により、その予防と管理の重要性は年々発展しています。まずは具体的な課題について詳しく解説します。
医療関連感染の定義と範囲
医療感染症とは、医療機関において患者が医療を受ける過程で新たに発生した感染症のことを指します。現代の医療現場では、医療処置の高度化に伴い、様々な感染リスクが存在しています。
現状の分析と問題点
2024年の全国調査によると、入院患者の約5〜7パーセントが医療関連感染を経験しているとされています。この数値は医療の質指標として重要な意味を持っています。入院長期化や医療費の増加につながるだけでなく、患者の投与後にも大きな影響を与える可能性があります。
特に、手術部位の感染や人工呼吸器関連、肺炎などのデバイス関連の感染は、特に対策が必要とされる領域となっております。
感染対策における組織的な取り組み
医療関連感染対策には、組織全体での含めたアプローチが課題です。感染対策チーム(ICT)を中心とした活動の展開、各部門との連携強化、そして現場スタッフの教育と意識の向上が重要です。継続的な監視活動を行い、感染発生状況を把握し、適切な対策を講じることが求められます。
標準予防策の重要性
標準予防策は、すべての患者ケアの基本となる感染対策の考え方です。
本セクションでは、その具体的な実践方法と重要性について詳しく解説していきます。
手指衛生の基本と実践
手指衛生は感染対策の重要となる重要な要素です。
世界保健機関(WHO)が提唱する5つのタイミングを基本として、正しいタイミングと正しい方法での実施が求められます。 流水と石鹸による手洗い、アルコールベースの手指消毒があり、状況に応じて適切な方法を選択する必要があります。
手洗いの実施においては、十分な時間をかけること、正しい手技を置くことが重要です。特に、指先や爪周囲、指の間などは洗い残しが最も起こりやすい部位となっているため、注意が必要です。また、アルコール手指消毒剤を使用する際は、十分な量を使用し、乾燥するまでしっかりと掻き込むことが大切です。
個人防護具の正しい選択と使用方法
個人防護具( PPE)は、医療従事者自身の安全確保と感染拡大防止の両面で重要な役割を担っています。
手袋、マスク、ガウン、ゴーグルなど、状況に応じて適切な防護具を選択し、正しい取り外し方法で使用することが求められます。手袋の使用に関しては、処置の内容や予想される汚染の程度に応じて適切な素材と厚さのものを選択します。滅菌手袋が必要な措置と未滅菌手袋で対応可能な措置を明確にし、また、同じ患者であっても処置が変わる際には手袋を交換し、手指の衛生を実施する必要があります。
マスクについては、一般的な診療場面で使用するサージカルマスクと、感染空気対策として使用するN95マスクの使い分けが重要です。N95マスクを使用する際は、必ずフィットテストを実施し、適切な装着が確保されていることを確認します。
環境整備と医療機器の管理
医療環境の清潔維持は標準予防の重要な要素です。
高頻度の接触面の消毒、医療機器の適切な洗浄・消毒・滅菌、そして廃棄物の適切な処理が含まれます。
環境清掃においては、一日の業務の中で計画的に実施することが重要です。 特に患者周囲環境の清掃は、接触感染予防の見通しから確実に行う必要があります。物の材質や汚染状況に応じて適切なものを選択します。
医療機器の管理については、使用後の適切な洗浄・消毒・滅菌が必要です。 特に複数の患者で使用する機器については、交差感染を防ぐため、使用ごとの適切な処理が求められます。
医療廃棄物の適切な取り扱い
医療廃棄物の適切な分別と処理は、職業感染予防の観点から重要です。感染性廃棄物と非感染性廃棄物を正しく分別し、指定された容器に廃棄することが求められます。また鋭利な器材の処理には専用の耐衝撃性容器を使用し、廃棄時の事故防止に努める必要があります。
感染経路別予防策
感染経路別予防策は、標準予防策に加えて実施する追加の予防策です。
本セクションでは、それぞれの感染経路に応じた具体的な予防方法について解説していきます。
接触感染予防策の実際
接触感染は医療関連感染の中で最も頻度の高い感染経路です。
耐性菌や感染性胃腸炎の病原体など、接触で伝播する微生物に対する予防策については覚悟が必要です。MRSA、VRE、多剤耐性緑膿菌などや、クロストリディオイデス・ディフィシル、ノロウイルスなどの病原体に対しては、適切な予防策の実施が求められます。
個室管理や、専用の医療機器の使用、環境整備の強化など、状況に応じた対策を講じる必要があります。 特に手指衛生と個人防護具の使用は確実に実施することが重要です。
飛沫感染予防策の実際
飛沫感染予防策は、咳やくしゃみ、会話などで飛沫によって伝播する病原体に対する予防策です。 インフルエンザウイルス、マイコプラズマ、百日咳菌などを代表する病原体となります。
患者との距離を1メートル以上確保することが基本になりますが、それが難しい場合はサージカルマスクの着用が必要です。また、患者にも適切なマスク着用を念頭に、咳エチケットの指導を行うことが重要です。
空気感染予防策の実際
空気感染する病原体は、空気中に浮遊し、長時間にわたって感染性を維持することが特徴です。
結核菌、麻疹ウイルス、水痘ウイルスなどを代表する病原体です。これらの感染症患者のマスクの管理には、圧個室の使用が必要となります。医療従事者はN95を着用し、患者の移動は必要最小限に制限します。また、換気システムの適切な管理と定期的なメンテナンスも重要です。
実践的な感染対策の展開

本章では、実際の医療現場における感染対策の具体的な展開方法について解説します。各部門の特性に応じた対策の実施方法や、デバイス感染の予防、職業対策など、実践的な感染関連内容を中心に解説していきます。
部門別の感染対策
医療機関の各部門には、それぞれ特有の感染リスクが存在します。
ここでは、外来部門、病棟部門、手術部門など、各部門における具体的な感染対策について解説します。
外来部門における感染対策
外来部門では、多数の患者が短時間で入れ替わることが特徴です。
感染症患者の早期発見とトリアージ、適切な予防策の実施が重要となります。 受付での問診や観察により、感染症が疑われる患者を早期に特定し、他の患者との接触を早急に考慮する必要があります。院内では適切な換気管理を行い、患者の間の十分な距離を確保することが重要です。
また、手指消毒剤を設置し、患者への手指衛生の励行を入れることも必要です。症状のある患者には、必要に応じてマスクの着用を依頼します。
病棟部門における感染対策
病棟部門では、入院患者の特性に応じた対策が必要となります。
一般病棟、ICU/CCU、小児病棟、精神科病棟など、それぞれの特徴をしっかりと、適切な対策を講じることが重要です。一般病棟では、標準予防策の確実な実施を基本としつつ、必要に応じて感染経路別予防策を追加します。 特に、耐性菌保菌者や感染症患者の管理においては、病室の選択や必要な予防策について、病棟スタッフ間で情報を共有することが重要です。
ICU/CCUでは、より厳しい重篤な感染対策が求められます。重症患者が集中するため、手指衛生の遵守率を高め、デバイス感染の予防関連に特に注意を払う必要があります。また、環境整備の強化と定期的なモニタリングも重要です。
手術部門における感染対策
手術部門では、手術部位感染(SSI)の予防が最も重要な課題となっております。
手術室の清浄度管理、術前準備、術中の無菌操作、術後管理など、一連のプロセスにおいて適切な感染対策を実施する必要があります。
手術室の環境管理では、適切な空調管理と清掃が必要です。手術の清潔度分類に応じて、必要な換気回数を確保し、清掃方法を決めることが重要です。手術時の手指消毒の確実な実施も重要な要素となります。
デバイス関連の感染対策
医療デバイスの使用に伴う感染症は、医療関連感染の中でも特に注意が必要な領域です。
本セクションでは、主要なデバイス関連感染の予防策について詳しく解説します。
中心静脈カテーテル関連血流感染対策
中心静脈カテーテル関連血流感染(CLABSI)は、重篤な転帰をもたらす可能性がある感染症です。
その予防には、挿入時の最大バリアプレコーションの実施、適切な皮膚消毒、挿入部位の選択などが重要となります。カテーテルの管理においては、毎日の必要性評価を行い、不要となったカテーテルは一旦抜去します。また、刺入部の観察と消毒、輸液ラインの管理など、日常的なケアも確実に実施する必要があります。
刺入部のドレッシング交換は、透明ドレッシングの場合は7日毎、ガーゼドレッシングの場合は2日毎を基本としますが、汚染や発生が生じた場合はとりあえず交換します。
衛生管理を実施し、接続部の消毒を確実に行うことが重要です。
尿道カテーテル関連尿路感染対策
尿道カテーテル尿路感染関連(CAUTI)は、最も頻度の高いデバイス感染関連の一つです。
その予防には、カテーテル挿入の適応を十分に検討し、必要な期間での使用を心がけることが重要です。カテーテル挿入時には無菌操作を徹底し、正しいサイズのカテーテルを選択します。また、固定方法を正しく行い、尿の逆流を防ぐことが重要です。
日常的なケアでは、閉鎖式システムの維持、正しい固定位置の確認、尿量や性状の観察を確実に実施します。
人工呼吸器関連 肺炎対策
人工呼吸器関連肺炎(VAP)は、重症患者の投与後に大きな影響を与える感染症です。
その予防には、このようなケアバンドルの実施が効果的です。口腔ケアの確実な実施、気管チューブのカフ圧管理なども重要な要素となります。口腔ケアは、適切な用具と方法を用いて、計画的に実施することが重要です。
また、気管内吸引は無菌操作で実施し、必要に応じて閉鎖式吸引システムを使用します。呼吸器回路の管理は重要で、不必要な回路の開放を避け、計画的な回路交換を行います。
職業感染対策
医療従事者の安全を確保するための職業感染対策は、医療機関として最も重要な責務の一つです。
本セクションでは、職業感染予防の具体的な方策について解説します。
針刺し・切創予防対策
針刺しや切創による血液媒介病原体への暴露は、医療従事者にとって重大なリスクとなります。
その予防には、安全機能付き器具の使用、適切な廃棄容器の設置、作業手順の標準化などが重要です。安全機能付き器材は、確実に安全機能を作動させることが重要です。使用後の針のリキャップは原則として禁止されており、必要な場合は片手法などの安全な手技を設置する必要があります。容器は適切な場所に設置し、定期的に交換することで、安全な作業環境を維持します。
針刺し・切創が発生した場合の対応手順が重要です。発生時には当面流水で十分に流し、早急に報告することが求められます。これらの対応を協議するために、施設内での報告体制を整備し、定期的な訓練を実施することも重要です。
職員健康管理システム
医療従事者の健康管理は、職業感染対策の基盤となります。定期的な健康診断やワクチン接種、また感染症発生時の対応など、健康管理体制の整備が必要です。
職員に対するワクチン接種プログラムでは、B型肝炎、インフルエンザ、麻疹、風疹、水痘、流行性耳下腺炎などの予防接種を計画的に実施します。また、結核検査や抗体価検査なども定期的に行い、必要に応じて追加接種や検査を実施します。
環境管理と洗浄・消毒・滅菌

医療環境の適切な管理と医療機器の洗浄・消毒・滅菌は、感染対策の重要な要素です。
本章では、それぞれの具体的な方法と注意点について解説します。
環境整備の基本
医療環境の清潔度管理は、患者の安全と感染予防の観点から重要です。適切な環境整備方法の選択と実施が求められます。
領域分類と清掃方法
医療施設内のエリアは、一般エリア、準清潔エリア、清潔エリアに分類されます。それぞれのエリアの特性に応じた適切な清掃方法を選択し、計画的に実施することが重要です。
一般領域では、日常的な清掃により清潔な環境を維持します。床や壁の清掃は、低水準消毒薬を用いて実施し、特に患者の動線となる場所は重点的に清掃します。接触面の拭き取りは重要で、手すりやドアノブ、照明のスイッチなどは、1日1回以上の拭き取り消毒が推奨されます。
準清潔区域では、より厳重な環境整備が必要となります。処置室や検査室などに該当し、環境表面の拭き取り消毒は中々消毒薬を用いて実施します。適切な頻度での清掃計画を立てることが重要です。
清潔区域の管理
手術室や中央材料室などの清潔領域では、最も厳重な環境管理が求められます。
空調管理による清潔度の維持、適切な清掃方法の選択、作業者の入室制限など、複合的な管理が必要となります。手術室の清掃では、手術の安全度分類に応じた清掃方法を選択します。 高水準消毒薬を用いた清掃を基本とし、特に手術台周辺や無影灯、機器類の表面は入念にし、終業後の清掃では、天井から床に向かって系統的に清掃を進めることが重要です。
医療機器の洗浄・消毒・滅菌
医療機器の適切な洗浄・消毒・滅菌は、安全な医療を提供する上で決められた要素です。それぞれの機器の特性や用途に応じた適切な処理方法を選択し、確実に実施することが求められます。
洗浄工程の重要性
洗浄は、消毒・滅菌の前提となる重要な工程です。適切な洗浄が行われなければ、その後の消毒や滅菌の効果が十分に得られません。それぞれの特性を理解した上で正しい方法を選択します。
手洗浄を行う際は、洗浄剤の適切な選択と緩み、浸漬時間の遵守、機器の分解と洗浄、すすぎの確実な実施など、標準化された手順に従って作業を進めます。ある器具は、適切なブラシを用いて入念な洗浄を行うことが重要です。
消毒レベルの選択
消毒は、その必要性に応じて高水準、中桁、低水準に分類されます。消毒レベルの選択は、器材の用途や患者との接触度に基づいて判断します。
高段消毒、健常皮膚に接触する器材は中段消毒、環境表面には低段消毒を選択することが基本となります。消毒薬の使用に際しては、その特性と注意点を十分に理解することが重要です。
特に、消臭濃度、接触時間、温度管理、有効期限などの条件を確実に守ることで、期待される消毒効果を得ることができます。
滅菌工程の管理
滅菌は最も高度な微生物の不活化方法であり、安心な品質管理のもとで実施する必要があります。
滅菌方法の選択は、医療器具の材質や形状、耐熱性などを慎重に行います。高圧蒸気滅菌は最も一般的な滅菌方法です。滅菌条件の設定、梱包材の選択、積載方法など、すべての工程において標準化された手順を遵守することが重要です。また、各サイクルでの物理的、化学的、生物学的指示による確認を行い、滅菌の確実性を確保します。
低温滅菌法として、過酸化水素ガスプラズマ滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌があります。 これらの方法は、熱に弱い器具や電子機器などの滅菌に適していますが、それぞれの方法に特有の注意点があります。
適切な前処理、適合性の確認、エアレーションなど、必要な工程を確実に実施することが求められます。
サーベイランスと感染対策の評価

感染対策の効果を評価し、継続的な改善を行うためには、適切なサーベイランスの実施が必要です。
本章では、医療感染サーベイランスの実施方法と、その結果に基づく改善活動について解説します。
サーベイランスの基本
医療関連感染サーベイランスは、感染対策の成果を評価し、改善するために重要なツールです。目的に応じた適切なサーベイランス方法を選択し、継続的に実施することが重要です。
全施設のサーベイランスの実施
全施設のサーベイランスでは、医療機関全体での感染発生状況を把握します。
対象となる感染症の定義、情報収集方法、分析・評価の方法などを標準化し、継続的なモニタリングを行います。サーベイランスデータの収集では、感染管理担当者が中心となり、各部門との連携のもとで必要な情報を収集します。
患者基本情報、感染症診断情報、治療内容、転帰などの情報、特に、耐性菌の検出状況や抗菌薬使用状況なども重要な監視項目となります。
部門別サーベイランスの展開
部門別サーベイランスでは、特定の部門や処置に関連する感染症を重点的に監視します。
手術部位感染(SSI)サーベイランス、デバイス感染関連サーベイランスなど、目的に応じた適切な方法を選択して実施します。手術部位感染サーベイランスでは、手術の種類や創傷クラス、手術時間、予防薬の使用状況などの情報を収集します。 これらのデータを分析することで、感染リスク因子の特定や予防策の評価が可能になります。
プロセスサーベイランスの実施
手指衛生の遵守状況、個人防護具の適切な使用、環境整備の実施状況など、感染対策の基本的な実践について、定期的な評価を行います。
評価と改善
サーベイランスで得られたデータは、感染対策の評価と改善に活用します。定期的なデータ分析と結果のフィードバック、改善策の立案と実施、継続的な質の向上を図ります。
アフリカと解釈
サーベイランスデータの分析では、感染率の算出や経時的な変化の観察、ベンチマークとの比較などを行います。統計学的手法を用いた分析により、意識的な変化や問題点を客観的に評価することが重要です。分析結果の解釈においては、データの質や収集方法の検討性、影響を考慮する可能性のある要素なども慎重に入れる必要があります。
改善活動の展開
分析結果に基づいて、具体的な改善策を考え実施します。改善活動は、PDCAサイクルに基づいて計画的に進めることが重要です。現状の把握と問題点の明確化、具体的な改善目標の設定、実施計画の想定と実行、そして効果の評価という継続のプロセスを確実に実施します。
改善活動の成功には、現場スタッフの理解と協力が必要です。分析結果や改善策について、わかりやすい形でフィードバックを行い、スタッフの主体的な参加を促すことが重要です。状況や成果についても定期的に共有し、モチベーションの維持・向上を図ります。
おしえてカンゴさん!感染対策Q&A

医療現場での感染対策について、よくある質問にお答えします。実践的な疑問や悩み、具体的な解決方法をご紹介します。
Q1:手洗いと手指消毒、どちらを選べばいいですか?
A:状況に応じて使い分けることが大切です。
目に見える汚れがある場合や、クロストリジオイデス(旧名:クロストリジウム)ディフィシルなどの芽細胞菌による感染が疑われる場合は、必ず流水と石鹸による手洗いを行います。通常のケアの前後では、アルコールベースの手指消毒薬による手指衛生で十分です。 手指消毒のほうが望む時間が短く、皮膚への刺激も少ないため、遵守率の向上にもつながります。
Q2:感染対策の研修を実施しているのに、なかなか手指衛生の遵守率が上がりません。
A:効果的な改善には、多角的なアプローチが必要です。
まずは、手指消毒剤の適切な配置で、アクセスを改善します。次に、現場観察による具体的な取り組みを行います。また、幹部職員による率先垂範も重要で、組織全体で取り組む姿勢を示すことが遵守率向上につながります。
Q3:個人防護具(PPE)の外れを間違えやすいのですが、覚えやすい方法はありますか?
A:基本的な原則として、「清潔から不潔へ」の着用、「不潔から清潔へ」の除去を意識します。
着用は「ガウン→マスク→ゴーグル→手袋」の順序です。 特に重要なのが脱衣その時で、「手袋→ガウン→ゴーグル→マスク」の順に行い、各段階で手指衛生を実施します。実践的なトレーニングを定期的に行い、記憶を形成することが大切です。
Q4:隔離室の環境整備はどのくらいの頻度で行ってもよいですか?
A:基本的に1日1回の定期清掃と、必要な時に随時清掃を組み合わせて実施します。
高頻度接触面(ドアノブ、ベッド柵、照明スイッチなど)は、1日2回以上の清掃消毒が推奨されます。また、患者の状態や検出された病原体によって、より頻繁な清掃が必要になる場合もあります。退室時には、より入念な環境整備(ターミナルクリーニング)を行います。
Q5:針刺し事故が発生した場合、どのような順序で対応すればよいですか?
A:まず、傷口を流水で十分に洗います。この際、強くもみ洗いはせず、流水で優しく洗います。次に、現場配置の責任者から報告し、感染管理部門に連絡します。
発生源の患者の感染症情報を確認し、必要に応じて感染症内科などの医師の診察を受けます。事故発生時の状況を詳細に記録し、予防内服の必要性について判断を仰ぎます。 定期的なフォローアップを受けることも重要です。
Q6:術前の手指消毒に関して、時間を短縮できる方法はありますか?
A:ラビング法(アルコールベースの手術時手指消毒)の採用を検討してください。
従来のスクラビング法(ブラシを使用した手洗い)に比べて、時間が短く、同等以上の効果が得られることがございます。なお、目に見えて汚れがある場合や、最初の症例の前には、通常の手洗いを行ってから、ラビング法を実施する必要があります。
まとめ
感染対策は、医療安全となる重要な取り組みです。本ガイドで解説した標準予防策の基本と実践的な対策方法を、日々の業務に活用していただければ幸いです。医療環境は日々変化していきますが、基本に立ち返りながら、最新の知見も取り入れて、より安全な医療の提供を目指しましょう。
より詳しい情報や、実践的なツールをお求めの方は、【はたらく看護師さん】の会員専用ページをご覧ください。感染管理認定看護師による実践講座や、現場で使えるチェックリスト、配備別の具体的な対策例などを提供しています。