看護師の勉強をしていると「看護観」という言葉をよく耳にしますよね。特に学生の方であれば、「看護観って何？」「看護観は必要なの？」「どうやって看護観を見つけるのか難しい」という方も多いのではないでしょうか。
確かにそう感じるのも分かりますが、看護観をもつことは看護師の仕事をしていくうえで非常に重要なこと。また、就職やレポートの作成などでも役に立つので、しっかり覚えておく必要があります。
そこで本記事では、看護観の基礎知識から伝わりやすい看護観の作り方まで詳しく解説していきますので、自分の看護観を考えるヒントにしてください。
看護観とは？
そもそも看護観について、きちんと説明できない方も多いと思います。まずは、看護観とはどんなものなのかを解説していきます。自分の看護観を作るためには、看護観についてしっかり理解することが重要になります。
理想の看護師像
看護観とは、看護や看護師に対する考え方や価値観、信念、理念のことを指します。簡単にいえば、「自分はどんな看護師になりたいか」という、理想の看護師像のようなものです。
ただし、看護師像は自分に対してのものというよりも、あくまで患者目線に経って考えることが大切です。こちらをご覧ください。
・どんな看護師でありたいか
・将来どんな看護師になりたいか
・看護師として何を大切にしたいか
・患者さんにどんな看護をおこないたいか
・患者さんにどう思ってもらいたいか
これらを考えたことは皆さんもあるはずです。ここに挙げた例は、看護師が「患者さんからどのように思われるか」というもので、看護観を考えるうえで重要な要素になります。
これらをどのようにして看護観に変え、作り上げていくのかは後ほど解説していきます。
看護観は人それぞれ異なる
看護観は、これが正解というものはありません。これまで勉強し実践してきたことから作り上げた、自分なりの看護師像になります。そのため、看護観は人それぞれ異なるのが当たり前です。
まわりはこんな看護観だけど、自分だけ違うと感じることもあるでしょうが、それもどちらも正解です。
特に学生の場合、こんな看護師になりたいという看護師像を持っていると思いますが、それには患者目線の自分の考えが含まれていないので看護観として不十分です。看護観は、様々な経験をすることで変化したり深くなっていくものなので、経験が圧倒的に少ない学生は、看護観を作り上げるのは大変かもしれません。
しかし、多くの経験を積んだり先輩の意見を参考にしたり、周りの人の働き方に目を向けてみたりして、自分の看護観というものを作り上げてみてください。
＜看護師・ナースのリアルな声＞まわりの看護師の看護観は気になる？その理由は？
看護観は看護実習にも活かされる
明確な看護観をしっかり持つことができれば、看護学生が必ず経験する看護実習にも役立てることができます。
実習では、次週目標や看護計画を立てる必要がありますが、それが大変だという声を多く聞きます。看護観がしっかりあれば、目指すべきものが明確になり立てやすくなります。
実習目標・看護計画が立てやすくなる
看護観は「自分はどんな看護師になりたいか」というものだと解説しましたが、言い換えれば「自分が患者さんにこういう看護がしたい」ということでもあります。
どんなに忙しくても患者にこうしたいということが看護観になります。それが明確になっていると、実習目標が立てやすくなります。
以下に例を挙げてみましたので、あなたがどのイメージに近いか想像してみてください。
①患者中心のケア
看護観が患者を中心に置くものであれば、実習時に患者のニーズや希望を優先し、その人に最適なケアを提供することが重要です。
②ホリスティックケアの実践
ホリスティックケアとは、「心も身体も癒される最高の状態」のことを言います。看護観がホリスティックケアを重視するものであれば、実習では身体的・精神的・社会的な側面を総合的に考慮しながらケアを提供することが求められます。
③コミュニケーションと連携
看護観がコミュニケーションやチームワークを重視するものであれば、実習時には他の医療スタッフや患者、その家族と良好な関係を築きながら、連携を図ることが重要です。
このように看護観が明確になっていると、実習目標も変わってきます。患者に対して、どのようなケアをしていけばよいかということが明確になり、実習目標や看護計画が立てやすくなることにつながります。
明確な実習目標を設定するために、看護観に基づき、どのような看護を提供したいかを具体的に設定します。例えば、「患者のニーズを的確に把握し、そのニーズに応じた看護を提供する能力を向上させる」など、明確に設定することができるでしょう。
また、実習目標に向けて、具体的な看護計画を立案します。患者の状態やニーズに基づき、適切な看護介入や評価方法を計画し、実践します。
看護観はなぜ必要？
中には、しっかり仕事をすることができれば看護観なんて必要ないと考える方もいるでしょう。そこで、なぜ看護師には看護観が必要なのかを解説していきます。
実際の看護に反映される
看護観が必要な理由は単純明快です。それは、「自分が定めた看護観が実際の看護に反映されるから」です。
看護観は、看護の目的や価値観を示す基盤となります。これにより、看護師は患者ケアにおける方向性やガイドラインを持つことができ、看護の目的や役割を明確に理解することができます。もし看護観がはっきりしない場合、その場しのぎの対応になり、患者ファーストのケアができない可能性があります。
いい看護を提供するためにも、看護師それぞれがしっかりとした看護観を持つことが必要ということになるわけです。
＜看護師・ナースのリアルな声＞しっかりとした看護観を持つことは大事だと思いますか？その理由を教えてください？
看護観は就活でも重要項目
しっかりとした看護観をもつことは、就活でも大きな力を発揮します。それでは、そのような場面で重要になるのか解説していきます。
就職先を選択する際に重要
自身の看護観に合う職場を選ぶことは、仕事の満足度や適性に大きな影響を与えます。価値観の違いが生じた場合、長くその職場で働くことは困難といえるでしょう。
自分の看護観が明確であれば、公式ホームページやサイトなどをチェックし、それに合致する職場を選ぶ基準として活用できます。
履歴書の志望動機や自己PRの手段
看護観は、自身の看護に対する信念や価値観を具現化したものです。これが就職先を選ぶ際の志望動機や自己PRの根拠となります。
履歴書や面接で「なぜこの職場で働きたいのか」「なぜ看護師になりたいのか」という問いに答える際に、自分の看護観をしっかり明示することで、担当者の印象も変わってくるでしょう。
面接時にも問われることが多い
面接では、看護観に関連する質問がほぼ100％されます。「看護の意義は何だと思いますか」「患者中心の看護とは何ですか」といった質問が看護観に関連するものです。また病院によっては、「あなたの看護観を教えてください」と直接聞かれる場合もあります。
看護観が明確であれば、自信をもって回答することができ、担当者にもいい印象を与えることができるでしょう。
注意点としては、面接用の看護観を伝えることです。今回の記事のように、看護観の例文を記載しているサイトはいろいろありますが、それをそのまま暗記して使用する方もいます。面接担当者は面接のプロです。暗記した看護観をそのまま話せば、「これは暗記してきたものだ」というのはすぐにバレてしまいます。
看護観はあくまでも自分の経験に基づいて自分の言葉で考えるべきです。参考にするのはかまいませんが、それをそのまま使用するのはやめましょう。
＜看護師・ナースのリアルな声＞看護観が役に立ったと思うことを教えてください！
面接でも伝わりやすい看護観の作り方
自分が持っている看護観をそのまま伝えるのもいいですが、少しだけ工夫を加えるだけで面接官に伝わりやすい看護観を作ることができます。そのためには、PREP法を活用しましょう。
PREP法の活用
PREP法とは、ビジネスシーンで用いられる文章を構成する方法のひとつです。面接でも伝わりやすい看護観を形成するためには、以下の方法で構成していくといいでしょう。
Point（結論・要点）：自分がもつ看護観
Reason（理由）：その看護観をもつ理由
Example（具体例）：実習などで得た具体的なエピソード
Point（結論・要点）：自分がもつ看護観と入職後の意欲
それぞれの頭文字をとってPREP法といいます。この順に文章を組み立てることで、分かりやすく簡潔な文章に仕上げることができます。
それでは、それぞれの項がどんな内容になるのか解説していきます。
自分がもつ看護観
最初に、自分の看護観の要点を明確に述べます。これは、あなたの看護に対する基本的な信念や価値観です。
例えば「患者中心の看護」「コミュニケーションを重視した看護」「常に新しい情報を取り入れてスキルアップする看護」など、自分がどんな看護観を持っているかを明確に示しましょう。
その看護観をもつ理由
その後、その看護観を持つ理由や背景について説明します。これは、なぜそのような看護観を持つようになったのかを示します。
「患者中心の看護」という看護観を持っているのであれば「患者に接する機会が多かった」、「コミュニケーションを重視した看護」であれば「チームで患者の毛愛当たる機会が多かった、「常に新しい情報を取り入れてスキルアップする看護」であれば「最新医療の前線に立ったケアをする機会があった」となるでしょう。
どんな看護観を持っていても、なぜその看護観を持つことになったのかというきっかけを簡潔に述べましょう。
その看護観を持つことになったエピソード
次に、具体的なエピソードを披露しましょう。どこで、誰が、どのような状況になり、自分（まわり）はどのような対応をしたのか、もしくはどう思ったのかということを具体的かつ端的に言葉にしましょう。
自分の看護観を活かしながら、どう働きたいのかをアピール
ここまで作成したら締めの文面です。最後に、自分の看護観を活かしながら、将来的にどのように働きたいのか、そしてその組織でどのように貢献したいのかを述べます。
この流れで披露することができれば、面接担当者にいい印象を持ってもらえる看護観を披露することができるでしょう。何も分からずに面接用の看護観を作成しようとすると難しくて頭がパンクしてしまいそうになりますが、要点さえつかめば、簡単に作成することができるでしょう。
＜看護師・ナースのリアルな声＞看護観は仕事に活かされていますか？
現役看護師がもつ看護観をご紹介！
看護観の作成方法や基礎知識についてご紹介してきましたが、まわりの看護師や看護学生はどんな看護観を持っているんだろうと気になる方も多いのではないでしょうか。
そこで最後に、現役看護師が持つ看護観をいくつかご紹介していきます。こんな看護観もあるんだという参考にしてください。
その① 28歳 女性
私の看護観は、患者中心のケアを最優先に考えることです。
患者の状態や希望を的確に把握し、その人に最適なケアを提供することが看護の根本であると信じています。患者の立場に立ち、共に治療やケアプランを立てることで、信頼関係を築けると考えています。
以前、高齢の患者さんが手術を受ける際、生活状況や恐れていたことを丁寧にヒアリングしました。その情報をもとに、手術前のサポートやアドバイスを行い、患者さんが手術に前向きな気持ちで臨むことができました。
将来は、この看護観を活かしながら、患者のニーズを優先に考え、共にケアプランを立て、チームと連携しながら最良のケアを提供したいと考えています。
その② 31歳 女性
私の看護観は、患者を単なる病気の状態だけでなく、身体的、心理的、社会的な側面から総合的に評価することです。
人は身体的な健康だけでなく、心の健康や環境も重要です。これらを総合的に理解することで、患者のニーズに応えられると信じています。
長期入院の患者さんの担当を受け持っていた時、手術により身体的な症状は改善しましたが、病気に対する不安や手術に対するストレスにより心の負担が残っていました。私は心理カウンセリングや支援を提案し、心の健康も重視したケアを行いました。
将来は、この看護観を活かしながら、患者を総合的に評価し、心と身体の両面からのケアを提供したいと考えています。
その③ 25歳 女性
私の看護観は、医療チームの一員として、他の医療スタッフと連携を図りながら、患者のケアを行うことです。
チーム医療は、患者にとって最適な治療とケアを提供するために必要不可欠であり、連携の強化が質の高い看護を実現するポイントだと考えています。
以前急患の患者が運び込まれた時、チームで患者のケアプランを共同で作成し、それぞれの専門知識を活かして協力しました。この連携により、患者のケアが効果的に進められ、一つの命を助けることができました。
この看護観を活かしながら、これからもチームと連携し、患者にとって最善のケアを提供したいと考えています。
その④ 33歳 女性
私の看護観は、倫理的・法的な規範を遵守し、患者の権利を尊重することです。
倫理的・法的な枠組みは、患者の安全や信頼を確保するために不可欠であり、これに基づくケアが質の高い看護の基盤だと考えています。
以前看護協会の講習会に参加したとき、看護職は、保健・医療・福祉のあらゆる研究参加に対する人々の意向を尊重し、いかなる場合でも人々の生命、健康、プライバシーをまもり、尊厳及び権利を尊重するということを学び、それがとても心に残りました。
将来は、この看護観を活かしながら、倫理的・法的な規範を順守し、患者様がいかなる状況においても安心して治療を受けられる場を提供していきたいと思っています。
その⑤ 23歳 女性
私の看護観は、継続的な学びと専門知識の更新を重視し、専門職としての成長を目指すことです。
医療は日々進化しており、最新の情報や技術を習得することで、患者への最適なケアを提供できると信じています。
私の働いている職場では、最新の研究を追いかけ、実践に取り入れることで、患者の治療に新しいアプローチを提供していますが、ある患者を担当した時、対処方法に迷いがあり私自身まだまだ勉強が足りないと痛感しました。
この看護観を活かし、継続的な学びと専門知識の更新を通じて、より質の高い看護を提供したいと考えています。
＜看護師・ナースのリアルな声＞あなたの看護観を教えてください！
まとめ
この記事では、看護師が必ず持っている看護観について解説してきました。
看護観は「自分が持つ看護師像」です。経験や知識が足りない場合は、まだぼやけて見えるかもしれません。これから様々な経験をすることで、自分の看護観を生み出すことができるでしょう。看護観は人それぞれ違うものです。また、印象的な経験をすることで形も変化します。これからの経験が、あなたの看護観を唯一無二のものにしてくれるでしょう。
自身の看護観を明確に持つことは重要です。そして、現場での経験や学びを通じて、その看護観を磨き続ける姿勢が求められます。患者さん一人ひとりと真摯に向き合い、連携を大切にすることで、看護の本質に寄り添いながら、専念できる貴重な仕事です。
志を持ち、学び続けることで、看護の道で充実したキャリアを築いていくことでしょう。未来の看護師としての成功を心より祈っています。