はたらく看護師さんoperated by GXO
給与制度・定着12分で読めます

訪問看護・看多機に同時に届いた2つの賃上げ調査|9月28日正午の全老健調査と、期限延長中の処遇状況等調査で今そろえる給与データ

9月19日から締切までの実働日は9月24日・25日と28日午前だけです。2つの調査の違い、回収率の別紙の読み方、回答前に給与台帳で確かめる10項目を、訪問看護・看多機の管理者向けにまとめます。

この記事の読者は、訪問看護ステーションおよび看多機(看護小規模多機能型居宅介護)を運営する管理者と経営者、そして給与計算を担う事務担当です。2026年9月19日時点で、事業所には性格の違う2つの賃上げ関連調査が同時に来ています。1つは全国老人保健施設協会(全老健)が介護関係団体の共通調査として行うもので、日本看護協会経由の回答締切が9月28日(月)正午。もう1つは厚生労働省の統計調査「令和8年度介護事業実態調査(介護従事者処遇状況等調査)」で、提出期限の8月28日を過ぎたあとも引き続き受け付けるとされています。

読み終えると、どちらの調査が自事業所に関係するのか、給与台帳のどの数字を誰がいつまでに出すのか、連休を挟んだ残り日数で何を先にするのかが決められます。結論を先に書くと、締切までの実働日は9月24日(木)・25日(金)と28日(月)午前の2日半しかなく、賃上げ額とベースアップ分を分けて出す作業を連休前に給与担当へ依頼できるかどうかが分かれ目です。

全老健の調査を準備表つきで扱った記事は9月17日に公開しています(9月28日正午締切の全老健調査の準備記事)。この記事はその続きとして、9月17日に日本看護協会が掲載した処遇状況等調査の期限延長と回収率の別紙、調査票(Excel)の実際の欄を踏まえて、2つの調査を取り違えずに給与データをそろえる手順に絞ります。

2つの調査は主体も締切も提出先も違う

日本看護協会の新着情報には、9月15日に全老健の調査への協力依頼が、9月17日に厚生労働省の処遇状況等調査の提出期限延長の案内が、それぞれ別の項目として載っています。名前が似ているうえに掲載日が2日しか離れていないため、「先週の調査にもう答えた」という記憶が、もう一方の未回答を隠しやすい状況です。

確認項目全老健の共通調査厚生労働省の処遇状況等調査
正式名称介護分野の幅広い職種の賃上げ及び介護事業所の経営状況等調査令和8年度介護事業実態調査(介護従事者処遇状況等調査)
実施主体全国老人保健施設協会(依頼文は全老健第8-143号、令和8年9月11日付)厚生労働省老健局老人保健課(依頼文は老老発0907第1号、令和8年9月7日付)
性格介護関係団体が春に続いて行う共通調査。次期介護報酬改定の議論に向けて現場の実態を数字で示すことが目的と依頼文に記載統計調査。処遇の状況と処遇改善加算の影響等を評価し、令和9年度介護報酬改定の基礎資料等に活用と案内に記載
日本看護協会経由の対象訪問看護事業所と看多機の管理者調査票が届いた施設・事業所
締切令和8年9月28日(月)正午当初8月28日。回収率が前回を下回ったため引き続き受付。延長後の期限日は依頼文にも調査専用サイトにも示されていない
回答方法・提出先調査票(Excel)を記入し、日本看護協会の指定アドレス(shogu@nurse.or.jp。案内では@を☆で表記)へ添付送付。事業所名・記入者氏名・電話番号の記入は不要調査専用サイト(電子調査票)または届いた紙の調査票
質問先全老健事務局(enquete@roken.or.jp)。日本看護協会では回答しないと明記調査事務局 0120-021-226(9時30分〜18時、土日祝を除く)

上の表で管理者が最初に確かめるべきなのは「日本看護協会経由の対象」の行です。全老健の調査は訪問看護と看多機の管理者に広く呼びかけられていますが、処遇状況等調査は調査票が届いた事業所が客体です。厚生労働省名の調査票や事業者IDを受け取った記憶がないなら、事務局に客体かどうかを確認するところから始まります。逆に、届いていたのに8月28日を過ぎて「もう出せない」と判断して止めている事業所は、引き続き受け付けられている事実を知る必要があります。

回収率の別紙をどう読むか

厚生労働省が「回収率が前回を下回っている」と書いた根拠は、依頼文の別紙です。そこには12のサービス区分について、8月31日受付時点でいくつ返ってきたかと、その割合が、前回(令和6年度調査)の割合の隣に置かれています。在宅系の行を抜き出します。

サービス令和8年度 調査客体数回収数回収率令和6年度の回収率
訪問看護1,43859841.6%記載なし(「-」)
小規模多機能型居宅介護2,55130812.1%55.6%
訪問介護3,97747011.8%63.0%
居宅介護支援1,62868342.0%70.8%
合計(12区分)24,2605,56823.0%60.2%

読み方の注意が2つあります。第一に、訪問看護は前回調査の欄が「-」になっていて、前回より上がったか下がったかを別紙から判断することはできません。「訪問看護の回収率が落ちた」とは別紙からは言えず、言えるのは全体の回収率が前回の60.2%に対して23.0%にとどまっている、という点までです。第二に、看多機は別紙に独立した行がなく、小規模多機能型居宅介護の行が看多機を含むかどうかも別紙には書かれていません。看多機の管理者は、自事業所が客体かどうかを届いた調査票か事務局で確かめるしかありません。

そのうえで、これは編集部の見方ですが、この調査は令和9年度改定の基礎資料になると案内されている統計調査です。回答が集計に入らなければ、自事業所の賃金水準や加算の配分の実態は、その基礎資料に反映されようがありません。回収率が低い区分ほど、集計に残った少数の事業所の数字が「その区分の実態」として扱われることになります。回答が改定内容に結びつくかどうかは誰にも約束できませんが、回答しないことで自分たちの実態が資料から抜け落ちる方向に働くことは、仕組みとして確かです。

全老健の調査票で聞かれている欄と、給与台帳のどこを見るか

日本看護協会のページからダウンロードできる調査票(Excel、シート名「令和8年秋」)と、同じページの留意事項を突き合わせると、賃上げに関する欄は次の構造です。

  • 回答単位は4択(「1事業所/1施設」と、法人単位の3種)。留意事項は原則1事業所ごと、法人単位でもサービスごとに分けるよう求めています
  • サービス種別のプルダウンに「訪問看護」と「(看護)小規模多機能型居宅介護」があります
  • 賃上げの欄は「令和8年度」の増額分。事業所全体(医師を除く)と、主な構成職種(介護職・看護職・リハビリ専門職・介護支援専門員・生活相談員等・事務職)の行ごとに、賃上げ額(月額:円)、うちベースアップ分、賞与(月数分)を書きます。看護職の行は独立しており、職種別の賞与は「わかる範囲で」、全体の賞与欄は必ず記載
  • 物価高騰の欄は電気代・ガス代・燃料費を令和6年・7年・8年の各6月で千円単位、給食関係費は委託の有無で欄が変わり、提供食数は令和8年6月の総食数
  • 経営の欄は令和7年度の年間と令和7年6月・令和8年6月の単月で、収入総額(介護事業収益と介護事業外収益)と支出総額
  • 最後に次期介護報酬改定に向けたQ1〜Q4を各1つ選択

管理者が最初につまずくのは、賃上げ額の欄とベースアップ分の欄の境界です。留意事項では、賃上げ額の欄には月例賃金の増額分を丸ごと入れます(定期昇給で個々の号俸が進んだ分も、賃金表を書き換えた分も両方)。これに対してベースアップ分の欄に入るのは、賃金表を改定して基本給か毎月固定の手当を全員一律に上げた分だけで、定期昇給分、毎月固定でない手当、一時金は入りません。この定義は「原資が何か」ではなく「どういう形で支給したか」で線を引いています。処遇改善加算や診療報酬側の評価料を原資にしていても、賃金表を改定せず一時金で配っていれば、ベースアップ分には入りません。

もう1つの落とし穴は比較期間です。賞与は「令和7年度が3.0か月、令和8年度に4.0か月」という留意事項の例のとおり年度単位で、光熱費は3年分の6月単月、収支は年間と単月が混在します。賃上げ額の欄は「令和8年度」の増額分とだけ書かれており、どの時点の賃金表と比べた差額かは留意事項に明記がありません。事業所内では「令和7年度の賃金表と令和8年度の賃金表の差」のように比較の基準時点を決め、記入した数字の横に残しておくことをすすめます。基準の取り方に迷う場合は、日本看護協会ではなく全老健事務局に聞くのが案内どおりの経路です。

回答前に給与台帳で確かめる10項目

回答者(管理者)と、数字を出す人(給与・経理担当)が別であることを前提に、確認表を作りました。右端の「確かめ方」は編集部の提案で、留意事項と調査票の欄から導いたものです。

番号確認する点どの欄に効くか確かめ方
1正社員の範囲からパート・日雇・季節労働者・嘱託社員を除いたか賃上げ額の分母給与台帳の雇用区分で嘱託を別集計にする
2医師の賃金を除いたか(看多機で医師を雇用している場合)全体の賃上げ額職種欄に医師があれば計算から外す
3定期昇給分をベースアップ分に入れていないかうちベースアップ分賃金表そのものを改定した記録の有無で判定する
4一時金・臨時の手当を月額に含めていないか賃上げ額、うちベースアップ分支給の根拠規程が「毎月」か「一時」かで分ける
5賃上げ額は整数の円で、賞与は小数第1位までの月数で書いたか各欄の単位千円単位の概算でもよいが単位を混ぜない
6看護職の行を全体と別に出せるか、出せないなら空欄にするか職種別の欄職種別集計が難しければ全体欄だけ埋める
7比較の基準時点(何年何月の賃金表との差か)を決めて記録したか賃上げ額記入シートの外に基準時点をメモとして残す
8法人単位で答えるなら、収支の数字が「1事業所あたりの平均額」か「対象事業所の総額」かを選んだか経営の欄プルダウンの選択と集計方法を一致させる
9光熱費の3時点(令和6年6月・7年6月・8年6月)を同じ請求区切りで取ったか物価高騰の欄検針期間が月をまたぐ場合は同じ扱いで統一する
10事業所名・記入者氏名・電話番号を書かずに送ることを担当者に伝えたか基本情報日本看護協会経由の案内では記入不要と明記

3番と4番は同じ数字を2つの欄に転記してしまう誤りを防ぐためのもので、ここが崩れると、賃金表に手を付けていない事業所が全員一律の引き上げを行ったかのような数字になります。7番は調査票に欄がありませんが、来年度以降に同じ調査が来たとき、前回と同じ基準で答えられるかどうかを左右します。

連休を挟んだ残り日数で何を先にするか

今日9月19日(土)から9月28日(月)正午までの間に、9月21日(月・敬老の日)から23日(水・秋分の日)までの連休が入ります。事業所の実働日として数えられるのは、9月24日(木)、25日(金)、そして28日(月)の午前だけです。訪問の稼働が止まらない事業所ほど、この2日半に事務作業が集中します。

編集部としては、次の順序を提案します。

  1. 今日のうちに、全老健の調査票と留意事項をダウンロードし、給与担当へ「令和8年度の賃上げ額(ベースアップ分と定期昇給分を含む月額)、うちベースアップ分、賞与の月数」の3点を連休明け24日までに出すよう依頼する。上の確認表の1〜7番を一緒に渡す
  2. 同時に、処遇状況等調査の調査票や事業者IDが届いていたかを事務で確認する。届いていて未提出なら、電子調査票が今も受け付けられているかを24日の朝に事務局へ電話で確かめる。調査専用サイトの表示は9月19日時点でも「提出期限は令和8年8月28日(金)」のままで、サイトの文言だけでは受付状況が判断できないためです
  3. 24日と25日で光熱費・収支の欄を埋め、Q1〜Q4は管理者と経営者が同じ選択肢を見て決める
  4. 28日午前は送信の予備日として空けておき、25日中に送れるなら送る

処遇状況等調査については、設問の内容を本記事では確認していません。届いた調査票と記入上の注意に従ってください。上の手順の2番は「まだ受け付けているかを確かめる」ところまでで、延長後の期限を推定して社内に伝えることはしないでください。

集めた数字は改定議論を追う土台になる

全老健の依頼文は、本年春の共通調査の結果をもとにした要望活動の結果として、7月に閣議決定された骨太方針2026に経営実態の把握や処遇改善に関する文言が明記されたと書いています。これは全老健の側の説明であり、今回の調査結果が次期改定にどう反映されるかは、依頼文にも本記事にも約束できることではありません。

ただ、9月28日までにそろえた「賃上げ額」「ベースアップ分」「賞与の月数」「6月単月の収支」は、この秋から年末にかけて本格化する令和9年度介護報酬改定の議論を自事業所の数字と照らして追うための土台になります。9月10日・14日・16日に開かれた介護給付費分科会の団体意見交換(訪問看護の2団体資料は16日)の読み方は介護報酬の団体意見を自事業所の現在値で確かめる記事に、厚生労働省保険局の訪問看護経営実態等調査(抽出約300事業所、10月9日提出)の対象になっている場合の準備は訪問看護経営実態等調査の提出準備の記事にまとめています。

職員から「うちは調査に答えたのか」「自分の明細のどこが賃上げなのか」と聞かれたときのために、看護師の側から自分の明細を読む記事も用意しています(介護従事者処遇状況等調査と給与明細の見方)。管理者が集めた数字と、職員が明細で見ている数字が同じ言葉でつながると、賃上げの説明が具体的になります。

賃上げ額とベースアップ分の切り分け、法人単位で答える場合の集計方法、集めた数字を職員への説明や定着の課題にどうつなげるかを第三者の目で整理したい管理者・経営者は、お問い合わせをご利用ください。なお、記入欄の解釈や提出の可否そのものは、全老健事務局(共通調査)と厚生労働省の調査事務局(処遇状況等調査)がそれぞれ受け付けている質問先です。

参考資料

未確認の事項:処遇状況等調査の延長後の提出期限日、紙の調査票の受付状況、同調査の設問内容。全老健の調査で賃上げ額を比較する基準時点。別紙の「小規模多機能型居宅介護」に看多機が含まれるかどうか。全老健の調査の回収状況や結果の公表予定。

最終確認日:2026年9月19日。全老健の調査の締切と提出先は日本看護協会経由の案内に基づくもので、他団体経由の案内では条件が異なる可能性があります。処遇状況等調査の受付状況は、提出前に調査事務局へ直接お確かめください。