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給与制度・定着5分で読めます

看護職員の賃上げ緊急調査を給与制度改善へ生かす|病院・訪問看護の点検表

緊急調査へ回答するだけで終わらせず、給与明細と人事データを同じ定義で並べ、採用・定着に効く配分へ見直すための実務ガイドです。

9月14日までの調査を、次の賃金改定の起点にする

日本看護協会は、看護職員本人と病院・訪問看護ステーションの管理者を対象に、2026年9月1日から14日まで「看護職員の賃金に関する緊急実態調査」を実施しています。職員側の回答と管理側の回答が別に用意されているため、経営側には「上げたつもり」と「上がった実感」のずれを確かめる機会があります。

調査への回答だけでは給与制度は変わりません。締切までに現状値を集め、回答後30日以内に配分と説明方法を見直すところまでを一つのプロジェクトにします。

最初に同じ定義で並べる6項目

点検項目集める数値判断すること
基本給等級別の平均・中央値、前年差恒常的な賃上げが基本給に入ったか
固定手当職務・資格・処遇改善等の名称と金額役割との対応、重複、対象外の理由が説明できるか
夜勤手当1回単価、月平均回数、職位別差夜勤確保の課題と配分が合っているか
賞与算定基礎基本給・手当のうち算定対象となる範囲月例賃金の増加が賞与にも反映されるか
採用採用単価、充足日数、内定辞退率相場差か、説明・選考・勤務条件の問題か
定着12か月離職率、部署・経験年数別の退職賃金以外の勤務負担と切り分けられるか

平均値だけでは、夜勤者、短時間勤務者、訪問看護師、新卒、中途の違いが消えます。個人を特定しない範囲で、職種、等級、部署、雇用区分、夜勤有無、経験年数をそろえて比較してください。

失敗しやすい三つの判断

1. 一時金を恒常的な賃上げとして説明する

一時金は可処分所得を増やしますが、翌年度も続く基本給の改定とは意味が異なります。職員には、基本給、毎月の手当、一時金を分け、開始月と終了条件も示します。

2. 金額だけを上げ、役割との対応を示さない

同じ資格手当でも、資格保有だけを評価するのか、院内横断活動や相談件数などの役割遂行を評価するのかで制度の意味が変わります。日本看護協会の看護職の賃金モデルは、一般職・専門職、管理職、高度専門職の職群を設け、職務・役割・貢献度と基本給を結びつける考え方を示しています。

3. 離職を賃金だけで説明する

離職には、夜勤回数、休暇、配置、上司との関係、教育機会、業務量も影響します。退職理由を一つ選ばせるだけでなく、「残留のために何が変わればよかったか」を複数回答と自由記述で確認します。

30日で行う給与制度点検

  1. 1週目:定義を固定する:基本給、固定手当、変動手当、賞与、時間外、夜勤の集計定義を人事・看護部・経理で合わせます。
  2. 2週目:職員側とのずれを確認する:匿名の短いパルス調査と少人数ヒアリングで、何が賃上げと認識されているかを聞きます。
  3. 3週目:配分案を三つ比較する:基本給重視、夜勤・不足部署重視、役割・専門性重視の各案について、原資、対象人数、採用・定着への仮説を並べます。
  4. 4週目:制度と説明を同時に決める:給与規程、就業規則、労使手続き、給与明細の表示、管理者向け説明資料を同じ改定日でそろえます。

経営会議に出す一枚

  • 調査回答時点の基本給・手当・夜勤単価
  • 職員が感じる上昇額と法人が計上した上昇額の差
  • 採用充足日数、紹介料、派遣・応援費、時間外、離職率
  • 配分変更による年間原資と対象者数
  • 3か月後、6か月後に確認する先行指標
  • 規程改定、労使手続き、職員説明の担当と期限

賃金改定の効果は「満足度が上がった」で終えず、応募、内定承諾、欠員期間、夜勤充足、離職、外部人材費まで追います。制度変更前に基準値を保存しておくことが重要です。

看護職賃上げデータ整理シート

施設内で次の列を持つ表を作ると、調査回答後も毎月の点検へ再利用できます。氏名ではなく、分析に不要な個人識別情報を外した職員IDを用います。

入力内容注意点
基準月改定前・改定後の年月夜勤回数や所定日数が近い月を選ぶ
職群・等級一般、専門、管理等名称だけでなく実際の役割も確認
雇用・勤務常勤・非常勤、夜勤有無短時間勤務を単純に常勤平均と比べない
基本給月額、号俸定期昇給と一律改定を分ける
固定手当名称別の月額名称変更前後を対応づける
夜勤区分別回数と1回単価回数増と単価増を分ける
賞与算定基礎と月数・率臨時加算と恒常的変更を分ける
採用・定着採用月、退職月、理由区分少人数部署は個人特定を避ける

比較結果は「平均との差」だけで判定せず、同一等級内の分布、役割差、説明可能性を確認します。賃金制度の公平は全員同額という意味ではなく、差の理由が職務・負担・貢献に対応し、本人へ説明できる状態です。

三つの配分案を同じ条件で比較する

各案について、年間原資、対象人数、一人当たり月額、賞与・社会保険を含む総人件費、欠員対策への仮説を並べます。

  • 基本給重視案:幅広い職員の恒常的処遇を改善する一方、夜勤者や不足部署への集中的な効果は小さくなる
  • 夜勤・不足部署重視案:確保課題へ直接配分できる一方、夜勤できない職員や他部署への説明が必要になる
  • 役割・専門性重視案:キャリアと処遇を結びつけやすい一方、役割定義と評価者訓練が必要になる

「どれが正しいか」ではなく、自院の欠員・採用・役割配置の課題にどの案が合うかを判断します。複数案を組み合わせる場合も、各目的と金額を分けて職員へ示してください。

改定後に経営側が受ける質問

職員から「自分はいくら上がったのか」「なぜ夜勤者と日勤者で違うのか」「賞与にも入るのか」と聞かれたとき、管理者ごとに回答が変わると不信につながります。対象者、対象外の理由、開始月、基本給・手当・賞与の関係、問い合わせ先をFAQにし、給与明細の初回発行前に師長と給与担当へ共有してください。

個人の給与に関する回答は、他者の情報を示さず、本人の等級・勤務実績・規程に基づいて行います。制度全体の説明と個人明細の照会窓口も分けます。

次の一手

看護職の給与制度・定着改善を相談するでは、給与台帳、人員データ、職員の受け止めを匿名化して整理し、配分案と経営会議用の指標へ落とし込みます。複線型等級制度の設計方法もあわせてご覧ください。

参考資料