最低賃金1,177円を自院の時給にしない|職種別給与・求人条件・発効日の点検
全国平均を自院の昇給率にせず、時給換算、手当算入、発効日、常勤との賃金差、採用・離職を同じ表で見ます。
医療・福祉の賃金が前年同月比3.3%増と聞いて、「自院も平均並みだから問題ない」と判断するのは早計です。厚生労働省の2026年7月毎月勤労統計は、複数職種・雇用形態を含む事業所平均で、自院の看護師、看護助手、受付の賃金表を直接評価する数字ではありません。
さらに、地域別最低賃金は10月1日から12月2日にかけて順次発効します。全国加重平均は1,177円、前年から56円増です。発効日と金額は都道府県ごとに違います。
7月速報で比較できること
| 項目 | 医療・福祉 | 調査産業計 |
|---|---|---|
| 現金給与総額 | 362,767円(3.3%増) | 436,401円(4.7%増) |
| 所定内給与 | 264,899円(3.4%増) | 280,797円(4.1%増) |
| 特別給与 | 83,764円(3.8%増) | 134,819円(6.3%増) |
産業計より伸びが低いことは確認できますが、「医療機関の賃上げが遅れている」と個別施設へ一般化はできません。速報値であり、2026年1月の標本入替えによる断層も注記されています。
最低賃金前に行う4つの照合
1.対象労働者の時給換算
パートだけでなく、月給制の常勤・短時間職員も所定労働時間で時給換算します。最低賃金の対象は毎月支払われる基本的な賃金です。臨時に支払われる賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金、時間外・休日・深夜の割増賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当は除外して比較します。手当の名称だけで判断せず、労働局の案内と就業規則を確認します。
2.発効日
答申日ではなく、都道府県別の発効日から新額が適用されます。給与締日・支払日と混同せず、発効日をまたぐ計算方法を給与担当と確認します。
3.常勤との賃金圧縮
パートや看護助手の時給を最低額まで上げた結果、経験年数や責任が大きい常勤との差が縮む場合があります。違法性だけでなく、役割、夜勤、資格、教育担当への説明可能性を見ます。
4.求人票と在職者
新規求人だけ時給を上げ、在職者の条件を据え置くと不信につながります。求人掲載日、入職日、改定対象、既存職員の反映を一枚で決めます。
採用サイト、ハローワーク、求人媒体、紹介会社へ渡した求人票、院内掲示で、給与・手当・発効日の表記が一致しているかも確認します。掲載先ごとに修正担当と完了日を残し、古い求人条件から応募が来た場合の説明を決めます。
ベースアップ原資を台帳と照合する
ベースアップ評価料などの報告額と、給与台帳上の基本給・手当の増額を照合します。一時金、定期昇給、夜勤回数増による総支給増を恒常的なベースアップと混ぜません。報告期限後のベースアップ評価料対応も確認してください。
経営会議では次を出します。
- 職種・雇用形態・等級別の時給換算
- 新最低賃金との差額と年間影響額
- 基本給、固定手当、賞与算定への反映
- 新規求人と在職者の差
- 応募、辞退、欠員、早期離職の変化
- 追加原資と12か月後の継続可能性
独自の視点は、最低賃金対応額だけでなく、賃金差を維持するための「二段目の改定費」を見積もることです。最低層だけを修正すると、経験者の納得と定着が悪化し、再採用費が増える可能性があります。
30日で修正する順番
法令対応が必要な対象者を先に是正し、次に賃金逆転・圧縮、求人票、職員説明を見直します。全員一律の増額が難しい場合も、判断基準と次回見直し日を説明できる状態にします。
看護助手の定着設計と組み合わせ、給与だけでなく教育、身体負担、シフト、相談先を整えます。給与制度・求人条件の整理相談では、法的判断は社労士等へ確認しつつ、人件費と採用・離職コストを同じ表で点検します。
職員説明は「全体平均」から始めない
医療・福祉の前年比3.3%増や全国加重平均1,177円を、自院の一律昇給率として説明すると誤解を招きます。職員説明では、次の順番に分けます。
- 法令上、発効日までに修正が必要な人
- 最低賃金への算入可否を確認した賃金項目
- 等級間の逆転・圧縮を直す対象
- ベースアップ原資と実際の賃金改善の対応
- 今回対象外の人と次回見直し日
個人別の試算表には、現行時給換算、新額との差、算入した項目、発効日、月・年の影響を残します。職員が疑問を申し出る窓口と回答期限も決めます。説明会で他人の給与が分かる一覧を配布しないよう、個人通知と全体説明を分けてください。
改定後90日の検証
改定後は人件費だけでなく、応募数、辞退、欠員、残業、派遣・紹介利用、3か月以内の離職を確認します。賃金改定と同時に求人票や夜勤条件を変えた場合は、どの変更が影響したか断定せず、変更履歴を残します。
利益への接続は「人件費が増えた」で止めず、欠員残業、応援、紹介料、教育のやり直しがどう変わったかで見ます。定着効果が出る前に短期の人件費だけで元へ戻すと、職員説明と採用市場の両方で整合が取れなくなります。
参考資料
最終確認日:2026年9月11日。7月賃金は速報値、最低賃金は都道府県別です。個別の算入範囲は労働局・専門家へ確認してください。