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令和9年度介護報酬改定とLIFE|訪問系への拡大決定ではなく、データ活用の論点を読む

訪問系サービスへのLIFE関連加算の新設は決まっておらず、資料は慎重な検討を求めています。今からできるのは入力を増やすことではなく、ケアに使うデータを整えることです。

「訪問看護でもLIFEが始まる」と決まった資料ではありません

2026年9月3日の第264回社会保障審議会介護給付費分科会では、科学的介護情報システム(LIFE)の現状と課題が資料として示されました。

資料は、LIFEの目的を利用者へのケアの質の改善と整理し、利用者フィードバック、事業所フィードバック、研究・分析という三つの経路を示しています。一方、訪問系・通所系サービスについては、一人の利用者へ複数事業所が関わること、小規模事業所が多いことなどから、令和9年度介護報酬改定に向けたLIFE関連加算の新規導入を慎重に検討すべきとしています。

したがって、訪問看護や訪問系サービスへ新しい加算が導入されること、提出項目、開始時期、単位数は未決定です。「制度が始まるからシステムを買う」という段階ではありません。

9月3日資料で分かったこと・まだ分からないこと

分かったことまだ決まっていないこと
LIFEの最終目的はケアの質の改善訪問系の新規加算の有無
施設系は約7割、通所・居住系は約5割が利用対象サービス、提出項目、頻度
LIFE関連加算は17種類あり、重複提出項目がある加算構造と単位数の最終形
データ提出負担と活用価値が検討対象システム改修仕様と開始時期
提出項目の作業部会結果は秋頃に報告予定ベンダー製品が新要件へ適合するか

この境界を曖昧にすると、未決定仕様を前提に発注したり、現場へ不要な入力を増やしたりします。

今から準備するのは「提出項目」ではなく、ケアの意思決定です

LIFEを提出業務で終わらせないためには、データを集める前に、何を変えるために見るかを決めます。

利用者単位で見る問い

  • 前回評価から何が変わったか
  • 悪化・改善が見られた項目は何か
  • ケア計画のどこを見直すか
  • 本人の希望と評価項目がずれていないか
  • 医師、看護、介護、リハビリ、栄養、歯科へ何を共有するか

事業所単位で見る問い

  • 入力が欠ける場面と理由は何か
  • 同じ内容を複数システムへ入力していないか
  • フィードバックを会議で誰が読むか
  • 介入を変えた後、どの時点で再評価するか
  • データ改善だけを目的に、記録やケアがゆがんでいないか

訪問系で特に難しい四つの条件

1. 一人の利用者へ複数事業所が関わる

訪問看護、訪問介護、通所、ケアマネジャーなどで、評価時点や記録様式が違います。同じ利用者について似た情報を別々に収集し、値が食い違うことがあります。

誰の評価を正解にするかではなく、評価日、観察場面、情報源、差が出た理由を共有できる設計が必要です。

2. 小規模事業所では入力担当を分けにくい

管理者が請求、教育、訪問、LIFE対応を兼ねる場合、制度追加は時間外労働へ直結します。入力件数だけでなく、収集、確認、修正、問い合わせ、会議までの総時間を測ります。

3. 訪問中に情報がそろわない

利用者本人、家族、他事業所の説明が異なることがあります。空欄を推測で埋めず、未確認、確認先、期限を記録できるようにします。

4. フィードバックを使う会議がない

画面を閲覧できても、ケア計画へ反映する場がなければ活用になりません。月次または評価周期に合わせ、誰が対象者を選び、誰が変更を承認するかを決めます。

二重入力を発見するデータフロー表

情報最初の記録者正本転記先利用目的廃止候補
ADL担当職種記録システム計画、LIFE等ケア見直し同一日の重複票
体重・栄養看護・介護等測定記録会議、計画変化検知手書き集計
口腔・嚥下担当職種評価票連携票専門職連携非共有の個人メモ

正本を決める前に自動連携を入れると、誤った値も速く広がります。入力者、確認者、修正権限、連携失敗時の扱いを先に決めます。

システム発注前の十問

  1. 未決定の制度仕様と現行仕様を分けているか
  2. 対象サービス・加算が変わったときの改修範囲はどこか
  3. 既存記録から再利用する項目と手入力項目は何か
  4. 同じ利用者の複数事業所データをどう区別するか
  5. 誰が提出前に確認するか
  6. 修正履歴と操作ログが残るか
  7. フィードバックを利用者単位・事業所単位で読めるか
  8. 出力・移行ができ、ベンダー変更時にデータを持ち出せるか
  9. 障害時に訪問と記録を継続できるか
  10. 入力時間、修正時間、会議利用を導入前後で測れるか

「LIFE対応」とだけ書かれた見積では、どの項目、どの連携、どの更新まで含むか分かりません。制度確定前は変更条件と追加費用の扱いも契約で確認します。

90日でできる準備

  • 1〜30日: 現行帳票、入力者、正本、二重入力、会議を棚卸しする
  • 31〜60日: 利用者一人・評価項目一つで、記録からケア変更までを試す
  • 61〜90日: 作業時間、欠損、修正、本人への説明、ケア変更を評価する

新しい提出項目を予測して大量に追加するのではなく、現在集めている情報をケア改善へ使える状態にします。

次の一手

LIFE・介護DXのデータ運用を相談するでは、入力項目を増やす前に、正本、二重入力、責任者、会議、システム変更条件を整理します。看護小規模多機能型居宅介護の働き方も、現場側の役割確認にご活用ください。

参考資料