
静脈確保は看護師にとって最も基本的かつ重要な医療技術の一つです。
本記事では、解剖学的知識から実践テクニックまで、確実な静脈確保に必要な要素を載せています。すべての看護師の技術向上に役立つ情報を、根拠に基づいて詳しく説明します。
成功率を高め、患者さんの安全と安心を確保するための実践的なガイドとしてご活用ください。
この記事でわかること
- 静脈確保の体系的な応用技術
- 解剖学的な知識に基づく確実な血管選択方法
- 患者さんの状態に応じた最適なアプローチ方法
- 失敗時の適切な対応と再試行の判断基準
- 継続技術向上のための具体的な方法
この記事を読んでほしい人
- 新人からベテランまで、静脈確保技術の向上を目指す看護師
- 静脈確保の成功率を上げたい医療従事者
- 静脈確保に関する指導的な立場の方
序論

静脈確保は、看護実践において最も基本的かつ重要な技術の一つです。この技術は、輸液療法や薬物投与、検査など、様々な医療行為の基礎となっています。
確保を実現するための知識と技術を体系的にまとめています。
本マニュアルの目的
技術向上の意義
医療の高度化に伴い、静脈確保の重要性が増しています。確実な技術は、患者さんの安全と治療効果の向上に直結します。
期待される成果
この実践により、静脈確保の成功率向上と患者さんの苦痛の軽減が期待できます。
静脈確保の重要性
医療における集中
静脈確保は、多くの治療や検査に定められた基本的な措置です。その確実性は、医療の質を考慮する重要な要素となります。
解剖学的基礎知識

静脈確保の成功には、人の体の血管構造に関する正確な理解が必要です。
このセクションでは、上肢を中心とした血管の走行と構造、さらに年齢による特徴の変化について詳しく解説します。
上肢の血管走行
主要な静脈の分布
前腕部から手背にかけての静脈は、橈側皮静脈、尺側皮静脈、正中皮静脈という三つの主要な静脈によって構成されています。
これらの静脈は、肘窩部で合流し、上腕に向かって上行します。
解剖学的特徴
橈側皮静脈は、手首の橈骨側を走行し、比較的直線的な経路をたどるため、静脈確保に適しています。
静脈の構造と特徴
血管壁の層構造
静脈は内膜、中膜、外膜の三層構造を持っています。内膜は一層上の皮細胞からなり、血液との直接的な接触面となります。
弁の重要性
静脈には逆流防止のための弁が存在します。この弁の位置は外観から判断できる場合があり、穿刺部位の選択時に考慮する必要があります。
神経走行との関係
神経損傷リスクの高い部位
前腕部では、正中神経、橈骨神経、尺骨が主要な神経に鋭敏にして走行しています。
特に肘窩部と手関節部では、これらの神経が表層を走行するため、穿刺の際には細心の注意が必要です。
安全な穿刺部位の選択
神経走行を重視した安全な穿刺部位として、前腕中央部の橈側皮静脈が推奨されます。この部位では主要な神経との距離が確保されており、合併症のリスクが低くなります。
年齢による血管の特徴変化
小児の血管特性
小児の血管は細く、皮下脂肪が多いため視認性が低くなります。また、血管壁が柔軟で可動性が高いという特徴があり、穿刺時の固定が重要です。
高齢者の血管特性
加齢に伴い、血管壁の柔軟性が低下し、脆弱性が増加します。また、皮膚の乾燥や萎縮により、血管の走行が不規則になることがあります。駆血時や、穿刺角度の工夫が必要です。
基礎疾患による影響
糖尿病や透析患者では、血管の石灰化や進行が進行している可能性があります。また、化学療法を受けている患者では、血管が脆弱化している場合があり、特別な配慮が必要です。
解剖学的変異
個人への対応
血管の進行には個人差があり、標準的な解剖知識を基礎としながらも、個々の患者に応じた適切な評価と対応が求められます。
血管の分岐パターンや深さの違いを理解し、柔軟な対応ができるようにすることが重要です。
アセスメントと血管選択

静脈確保の成功率を高めるためには、適切な血管アセスメントと選択が目安です。
このセクションでは、効果的な血管評価の方法と、状況に応じた最適な血管選択の基準について詳しく解説します。
視診によるアセスメント
血管の視認性評価
十分な明るさのもと、血管の走行をじっくり観察します。皮膚の色調、血管の怒張具合、皮下組織の状態などを総合的に評価していきます。
皮膚状態の確認
穿刺予定部位の皮膚に発赤、腫脹、傷跡などがないか確認します。また、静脈炎の既往や点滴漏れの痕跡なども重要な評価項目となります。
触診テクニック
基本的な触診方法
人差し指と中指を使い、血管の走行に沿って優しく触診を行います。血管の柔軟性、深さ、走行方向を丁寧に確認していきます。
血管の性状評価
触診により血管の太さ、弾力性、可動性、硬さなどを評価します。また、血管の深さや周囲組織との関係性も重要な判断材料となります。
最適な血管選択基準
目的に応じた選択
輸液の種類や予定期間によって、適切な血管径や部位が異なります。 高カロリー輸液では太い血管を、短期の補液では細い血管でも対応可能です。
部位による特徴
前腕部の静脈は安定性が高く、長期使用に適しています。
患者状態別の評価方法
循環動態の評価
脱水や心不全などの状態では、血管の怒張が得られにくい場合があります。患者の循環状態を適切に行った適切な評価が必要です。
既往歴の確認
透析や化学療法の場合、使用可能な血管が制限される可能性があります。患者の治療歴を十分に確認することが重要です。
特殊な状況での血管選択
緊急時の対応
場合によっては、太く安定した血管を優先的に選択します。時間的な余裕がない中でも、確実な血管確保が求められます。
困難な症例への対応
肥満や浮腫のある患者では、超音波機器の使用を検討します。また、血管が弱い場合は、より慎重な選択と穿刺手技が必要となります。
環境と器具の活用
適切な照明の確保
十分な明るさを確保し、必要に応じて補助照明を使用します。血管の視認性を高めることで、より確実な評価が可能となります。
駆血帯の効果的な使用法
適切な圧での駆血により、血管の怒張を助長します。
総合的な判断
リスク・ベネフィットの評価
選択した血管における穿刺の際の対処、成功時の有用性を比較検討します。必要に応じて、他の医療従事者との相談も重要です。
代替手段の検討
選択した血管での穿刺が困難と判断された場合、他の部位や別の投与経路の検討も必要となります。患者の状態と治療目的を考慮した柔軟な対応が求められます。
準備と環境整備

確実な静脈確保を実現するためには、正しい準備と環境整備が必要です。
このセクションでは、必要な物品の準備から感染対策、作業の環境整備まで、実践的な準備の手順について解説します。
必要品の準備
基本品目確認
静脈留置針、駆血帯、消毒綿、固定用テープ、手袋など、基本的な物品を処置の開始前に漏れなく準備します。
また、物品の使用期限や包装の破損がないことを確認することも重要です。
緊急時対応品
穿刺部位からの出血や血管迷走神経反射などの緊急事態に備え、止血用品や救急用品を常に利用可能な状態に保管しておきます。
作業環境の整備
適切な照明管理
十分な明るさを確保します。必要に応じて補助照明を使用し、血管の視認性を高めることが重要です。
作業スペースの確保
処置を行うベッドの高さを調整し、実施者が無理のない姿勢で作業できるスペースを確保します。また、必要物品を効率的に配置することで、スムーズな処置の実施が可能となります。
感染対策の実践
標準予防策の徹底
手指消毒や手袋の着用など、標準予防策を確実に実施します。また、清潔な操作を第一に、穿刺部位の適切な消毒方法を遵守します。
環境の清潔管理
処置台やベッド周囲の清掃、消毒を定期的に行い、清潔な環境を維持します。
使用済みの物品の適切な処理も、感染対策の重要な要素となります。
患者環境の調整
快適性への配慮
周囲や換気に配慮し、患者が安心して処置を受けられる環境を整えます。また、プライバシーの保護にも十分な注意を払います。
安全性の確保
転倒予防のためのベッド柵の使用や、緊急時対応動線の確保など、安全面での配慮も重要な要素となります。
患者対応とコミュニケーション

静脈確保の成功には、適切な技術だけでなく、患者さんとの関係構築が肝心です。
このセクションでは、効果的なコミュニケーション方法と、患者さんの不安軽減のための具体的なアプローチについて解説します。
処置前の説明
目的と手順の説明
処置の必要性と具体的な手順について、患者さんの理解度に合わせてわかりやすく説明します。医療用語は避け、患者さんが理解しやすい表現を選択することが重要です。
所要時間の説明
手続きにかかる予定時間を伝え、患者さんの対処を助けます。また、協力していただきたい点についても具体的に説明します。
不安軽減のための対応
心理的サポート
患者さんの不安や緊張を冷静に、共感的な態度で接することが重要です。過去の静脈確保の経験や心配事についても、丁寧に聞き取ります。
リラックス法の提案
深呼吸や注意を促す会話など、患者さんの緊張を忘れる方法を提案します。また、穿刺時の痛みを軽減するための工夫についても説明します。
特別な配慮が必要な患者への対応
高齢者への対応
聴力や聴力の低下に配慮し、ゆっくりと明確な説明を心がけます。必要に応じて、文字を大きくした説明資料を用意することも効果的です。
小児への対応
年齢に応じた説明方法を選択し、必要に応じて遊び心のある声を取り入れます。保護者への説明と協力依頼も重要な要素となります。
エンターテインメント
多様性への理解
患者さんの文化的背景や信念に配慮した対応を心がけます。必要に応じて、通訳サービスの利用も検討します。
コミュニケーションスタイルの調整
患者さんの希望する通話や対話方法に柔軟に対応し、良好な関係性の構築を目指します。
同意の取得と確認
処置の同意確認
説明内容の理解を確認し、措置への同意を明確に得ます。質問や不安な点がないか、最終確認を行うことも重要です。
処置中の声かけ
穿刺の直前や処置中も、適切な声かけを継続します。患者さんの表情や反応を観察しながら、必要に応じて追加の説明や励ましの言葉をかけます。
基本手技の詳細

静脈確保の成功率を高めるためには、基本的な手技を確実に実施することが重要です。
このセクションでは、駆血から固定までの一連の手技について、具体的な実施方法とポイントを詳しく解説します。
駆血の技術
物品の選択
駆血帯は、幅広で適度な耐久性を持つものを選択します。使用前に破損や劣化がないことを確認し、必要に応じて消毒を行います。
適切な圧の調整
駆血帯は上腕に装着し、静脈の怒張が確認できる程度の圧力に調整します。過度な圧迫は末梢の虚血や患者さんの不快感を考える可能性があるため注意が必要です。
消毒テクニック
消毒範囲の設定
穿刺予定を中心に、十分な範囲の消毒を行います。消毒は中心から外側部位に向かって円を描くように実施し、確実な滅菌の確保を心がけます。
消毒液の選択と使用法
消毒液は施設の観点に従って選択します。アルコールやポビドンヨードなど、適切な消毒液を使用し、十分な消毒効果が得られる時間を確保します。
穿刺角度の調整
基本的な穿刺角度
血管の深さに応じて15度から30度の角度で穿刺を開始します。皮下組織の厚さや血管の走行を考慮し、最適な角度を選択します。
血管の深さによる調整
表皮の血管では浅い角度で、深部の血管ではやや急な角度で穿刺します。 穿刺中も血管の状態に応じて角度を微調整することが重要です。
穿刺手技の実際
皮膚の固定方法
穿刺部位の皮膚を適度に伸ばさせ、血管の可動性を阻害します。この際、血管の進行には慎重に注意が必要です。
穿刺の実施手順
選択した血管に対して、確実な穿刺を行います。血液の逆流を確認しながら、慎重に針を進めていきます。
針の挿入
血液逆流の確認
初期逆流を確認後、さらに針を進める際は、血管内腔を維持しながら慎重に操作を行います。
スムーズな挿入のコツ
針の挿入時は、血管の走行に沿って進めます。抵抗を感じた場合は、無理な操作は避け、状況を慎重に判断します。
針の固定
固定材料の選択
針の固定には、皮膚への刺激が少なく、十分な固定力を持つ材料を選択します。
固定手順の実際
段階的な固定を行います。可動による抜去や位置ズレを防ぐため、適切な張力で固定を行うことが重要です。
処置後の確認
針の機能確認
通過性の確認を行い、漏れや抵抗がないことを確認します。また、逆血の有無も確認し、適切な位置に留まっているところを確認します。
刺入部の観察
発赤や腫脹、出血の異常がないことを確認します。また、患者さんの自覚症状などについても丁寧に確認をします。
記録の重要性
必要な記録項目
穿刺部位、カテーテルのサイズ、固定方法、実施時の注意事項などを、正確に記録します。また、患者さんの反応や合併症の有無についても記録を残します。
記録の活用方法
記録した情報は、次回の静脈確保時の参考資料として活用します。
また、チーム内での情報共有にも努めます。
高度な技術と応用

基本的な静脈確保の技術を習得した後は、より複雑な事件や特殊な状況に対応できる高度な技術の習得が必要となります。
このセクションでは、それらの応用について解説します。
困難症例への対応
細い血管への対応
知覚や触知が困難な細い血管に対しては、適切な照明と慎重な触診技術が必要です。必要に応じて血管への温罨法なども活用します。
蛇行血管への対応
血管の進行が不規則な場合は、穿刺前の十分なアセスメントと、穿刺角度の微調整が重要になります。必要に応じて超音波機器の使用も検討します。
特殊な機器の活用
静脈迅速化装置の使用
近赤外線を用いた静脈化装置は、視認が困難な血管の特定に有効です。機器の特性を正しく理解し、適切な使用方法を習得することが重要です。
超音波ガイド下穿刺
深部の血管や、視界が困難な血管に対しては、超音波ガイド下の穿刺が有効です。超音波画像の読影技術と、やはり操作の習得が必要となります。
合併症予防と対策
血管外漏出の予防
輸液の性状や投与速度に注意を払い、定期的な刺入部の観察を行います。早期発見と適切な対応により、重篤な合併症を防ぐことができます。
感染予防の徹底
清潔操作の徹底と、定期的な刺入部の消毒、固定材の交換を行います。感染徴候の早期発見にも注意を払います。
新しい技術への対応
新しいデバイスの理解
次世代の静脈確保デバイスや安全機構付き留置針など、新しい機材の特徴と使用方法をご理解ください。正しい使用により、安全性と成功率の向上が期待できます。
最新の手技の習得
根拠に基づいた新しい手技や、より安全な方法が開発された場合は、積極的に学習と技術の更新を行います。
チーム医療での連携
情報共有の重要性
困難な事件や特殊な状況では、チームメンバーとの情報共有と協力が重要です。経験豊富な同僚からのアドバイスも、技術向上の重要な要素となります。
教育的視点の活用
自身の経験や知識を最大限の指導に活かし、チーム全体の技術向上に貢献します。事例検討会などの機会を活用し、継続的な学習を進めます。
失敗時の対応

このセクションでは、失敗時の適切な対応方法と、その経験を今後の技術向上に活かすための方策について解説します。
失敗の原因分析
技術的要因の検討
穿刺角度、血管の選択、固定方法など、技術的な面で論点を冷静に分析します。また、準備段階での見落としがなかったかも確認します。
環境要因の確認
照明条件や作業スペース、体位の問題など、環境面での改善点を検討します。次回の実施に向けた具体的な取り組みを検討します。
リスクの判断
患者状態の評価
失敗後の患者さんの身体的・精神的な状態を慎重に評価します。痛みや不安の程度によっては、一時的な休憩や別の実施者への依頼を検討します。
タイミングの見極め
再試行のタイミングは、患者さんの状態と処置の緊急性を考慮して判断します。適切なタイミングを選択することが重要です。
患者へのフォロー
説明と謝罪
失敗の状況と今後の対応について、分かりやすく説明します。誠意ある態度で謝罪し、患者さんとの関係の維持に留意します。
心理的サポート
失敗による不安や不快感に対して、共感的な態度で接します。必要に応じて、次回の実施者の変更など、患者さんの希望に配慮します。
記録と報告
正確な記録
失敗の状況、原因、対応内容を正確にします。客観的な事実を基に、改善点を明確にします。
チーム内での共有
失敗例を他のスタッフと共有し、同様の失敗を防ぐための対策を検討します。
意見交換により、チーム全体の技術向上につながります。
技術の向上

静脈確保の技術は、経験を残すだけでなく、計画的な学習と訓練により向上させることができます。
このセクションでは、効果的な技術向上の方法と、継続的な学習のための具体的なアプローチについて解説します。
基本技術の強化
反復練習の重要性
正しい手技を定期的に見直し、シミュレーターを使った練習を行います。
正しい手技を基本的に繰り返し行うことで、確実な技術の準備を図ります。
自己評価の実施
実施した処置の成功率や技術的な課題を定期的に振り返ります。客観的な評価により、改善点を明確にすることができます。
知識の更新
最新情報の収集
医療機器や手技に関する新しい知見を積極的に収集します。学会や研修会への参加、文献の購読など子供時代、知識の更新を図ります。
エビデンスの活用
科学的根拠に基づいた実践を心がけ、最新のガイドラインや研究成果を臨床に取り入れます。
シミュレーショントレーニング
実践的な訓練
様々な条件下での穿刺を想定したシミュレーション訓練を行います。困難な事例への対応も、安全な環境で練習することができます。
フィードバックの活用
指導者からの具体的なフィードバックを受け、技術の改善につながります。外部の視点からの評価は、新たな課題の発見に役立ちます。
チーム学習の推進
症例検討会の活用
成功事例も困難事例も共有し、チームとしての技術向上を図ります。多様な経験の共有により、個々の技術の幅を広げることができます。
メンタリングの実践
経験豊富なスタッフから直接指導を受け、実践的なコツを学びます。
また、自身の経験を惜しむことなく伝えることで、理解の深化を図ります。
特殊な状況での対応

一般の静脈確保とは異なる配慮や技術が必要となる特殊な状況があります。
このセクションでは、様々な患者特性に応じた対応方法と、それぞれの状況で注意すべきポイントについて解説します。
小児患者への対応
年齢に応じた対応
年齢や発達段階に合わせた説明と対応が必要です。遊び心のある声かけや、ディストラクション技法を活用することが大切です。
特殊な手技の工夫
小児の血管は細く、可動性が高いため、より慎重な手技が求められます。正しいサイズの留置針の選択と、確実な固定方法の工夫が重要です。
高齢患者への対応
血管の特徴を理解する
加齢による血管の脆弱性や硬化を考慮した対応が必要です。穿刺時の圧力調整や、固定方法の工夫により、合併症を予防します。
認知機能への配慮
認知機能の低下がある場合は、より丁寧な説明と、安全な体の位置の保持に注意を払います。必要に応じて、家族の協力を得ることも検討します。
10.3 透析患者への対応
シャント肢の保護
シャント肢での血管確保は原則として避けます。
代替血管の選択
血管の荒廃が進んでいる場合は、超音波ガイド下の穿刺や、下肢での血管確保なども検討します。
10.4 肥満患者への対応
血管の同定方法
皮下脂肪により血管の視認や触知が困難な場合は、超音波機器などを積極的に活用します。
適切な体位の工夫
血管の怒張を有意義に行う体位の工夫や、穿刺部位へのアプローチ方法を考慮します。必要に応じて、複数のスタッフで協力体制を整えます。
1緊急時の対応
迅速な判断
場合によっては、緊急、状況に応じた優先順位の判断が重要です。確実性と迅速性のバランスを考慮した対応が求められます。
チームの重要性
緊急時こそ、チームメンバーとの効果的な連携が重要となります。役割的な分担を明確にし、効率化措置の実施を心がけます。
合併症の予防対策

静脈確保に関連する合併症は、適切な予防措置と早期発見により、多くを回避することができます。
このセクションでは、主な合併症の種類とその予防法、発生時対応について解説します。
主な合併症の理解
血管外漏出
薬液が血管外に漏れ出す血管外漏出は、組織障害が起こる可能性があります。定期的な観察と早期発見が重要となります。
静脈炎の発症
静脈炎は輸液刺激や感染により発症する可能性があります。適切な輸液速度の管理と無菌操作の徹底により予防を図ります。
予防のための対策
正しいカテーテル管理
カテーテルの固定状態や刺入部の観察を定期的に行います。また、輸液ラインの屈曲や閉塞がないことを確認します。
感染予防の徹底
手指衛生の徹底と清潔な運用に従い、感染性合併症の予防に努めます。定期的な消毒と固定材の交換が重要です。
早期発見と対応
観察項目の把握
痛み、発赤、腫脹などの症状に注意を払い、異常の早期発見に努めます。患者さんからの自覚症状の訴えにも、迅速に対応します。
適切な処置の実施
合併症を発見した場合は、とりあえず適切な措置を行います。必要に応じて医師への報告と指示の確認を行います。
品質管理と評価

このセクションでは、実践の質を維持・向上させるための具体的な方法と、評価の指標について解説します。
成功率の測定
データ収集
静脈確保の実施回数、成功率、合併症の発生率などを定期的に記録します。
評価指標の設定
配備や施設の特性に応じた評価指標を設定し、定期的なモニタリングを行います。
目標値の設定により、具体的な改善の方向性が明確になります。
改善活動の推進
PDCAサイクルの活用
収集したデータを基に、改善計画を立てて実行します。その結果を評価し、着実に改善につなげるという継続的なサイクルを確立します。
フィードバックの活用
患者さんやスタッフからのフィードバックを積極的に収集し、サービスの質の向上に活用します。定期的な振り返りの機会を大事にすることです。
おしえてカンゴさん!よくある質問と回答

Q1:静脈確保の成功率を上げるコツを教えてください。(新人看護師・1年目)
カンゴさん:静脈確保の成功率を上げるには、まずは適切な血管選択が重要です。
前腕の中央部で、まっすぐ進んでいる血管を選びましょう。
また、駆血後30秒ほど待って血管を怒張させること、穿刺角度を15〜30度に渡って行うこと、そして患者さんの緊張を和らげるために何度も声かけを行うことも重要なポイントです。
Q2:点滴漏れを早期発見するためのチェックポイントは?(病棟看護師・3年目)
カンゴさん:点滴漏れの早期発見には、以下の4つのポイントを定期的にチェックすることが大切です。
刺入部周囲腫脹や発赤、患者さんの痛みの落ち着き、点滴の滴下速度の変化、特に、抗がん剤や高カロリー輸液を投与している場合は、より頻繁な観察が重要です。
Q3:血管が見つかりにくい高齢者さんの安全確保のコツはありますか?(訪問看護師・5年目)
カンゴさん:高齢者の血管は脆弱で見つけにくいものですが、まず上肢を温めて血管を怒張させることが有効です。また、適度な水分補給をすることも血管の確保しやすさにつながります。
手背の血管は見つかりやすいですが、皮膚が薄いため慎重な操作が必要です。必要に応じて静脈化装置を使用することについても検討してください。
Q4:小児の静脈確保で気をつけることは何ですか?(小児科病棟・2年目)
カンゴさん:小児の静脈確保では、年齢に応じた説明と適切なディストラクション(気を紛らわせる工夫)が重要です。
また、血管が細く動きやすいため、確実な固定と留置針の選択が必要です。両親の協力を得ることも、措置をスムーズに行うポイントになります。
Q5:化学療法を受けている患者さんの血管確保で注意することは?(がん化学療法認定看護師・8年目)
カンゴさん:化学療法を受けている患者さんの血管は、治療の影響で脆弱化している可能性があります。また、頻繁な穿刺による血管損傷を恐れるため、計画的な血管選択と確実な固定が重要です。
Q6:止血に時間がかかる場合の対応方法を教えてください。(透析室看護師・4年目)
カンゴさん:止血に時間がかかる場合は、まずは基礎疾患(抗凝固薬の使用や血液疾患など)の確認が重要です。
圧迫の強さと時間を正しく調整し、患者さんの体位も考慮します。上肢を挙上することで、止血が促進されることもあります。
5分以上の圧迫でも止血が困難な場合は、医師への報告を検討してください。
まとめ
より専門的な看護技術の習得や、キャリアアップについて詳しく知りたい方は、【はたらく看護師さん】看護師のためのサイト・キャリア支援サイトをご覧ください。あなたの看護技術の向上とキャリアアップを、全力でサポートさせていただきます。