ゴードンの11の機能的健康パターンは、看護過程のアセスメントで最も広く使われている枠組みの一つです。マージョリー・ゴードン(Marjory Gordon)が1987年に提唱したこのフレームワークは、人間の健康状態を11のパターンに分類し、それぞれの領域で情報を収集・分析することで、看護上の問題を体系的に抽出できる方法です。看護学生にとっては実習レポートやケーススタディで必ず使う枠組みであり、「どのパターンにどの情報を分類すればいいかわからない」「アセスメントの文章が書けない」という悩みが非常に多いです。この記事では、11のパターンそれぞれの定義、収集すべき情報、アセスメントの書き方と具体的な例文を網羅的に解説します。

この記事でわかること

  • ゴードンの11の機能的健康パターンの一覧と各パターンの定義
  • 各パターンで収集すべき情報とアセスメントの書き方
  • 実習レポートにそのまま使えるアセスメント例文(糖尿病患者の事例)

ゴードンの11の機能的健康パターン一覧

まず11パターンの全体像を一覧で把握しましょう。ゴードンは人間の健康を以下の11の領域に分けて捉えます。

  1. 健康知覚-健康管理パターン(Health Perception-Health Management)
  2. 栄養-代謝パターン(Nutritional-Metabolic)
  3. 排泄パターン(Elimination)
  4. 活動-運動パターン(Activity-Exercise)
  5. 睡眠-休息パターン(Sleep-Rest)
  6. 認知-知覚パターン(Cognitive-Perceptual)
  7. 自己知覚-自己概念パターン(Self-Perception-Self-Concept)
  8. 役割-関係パターン(Role-Relationship)
  9. セクシュアリティ-生殖パターン(Sexuality-Reproductive)
  10. コーピング-ストレス耐性パターン(Coping-Stress Tolerance)
  11. 価値-信念パターン(Value-Belief)

これらの11パターンは、身体的側面だけでなく、心理的・社会的・スピリチュアルな側面も網羅しています。全人的(ホリスティック)なアセスメントが可能になるため、NANDAの看護診断とも親和性が高く、多くの看護教育機関で採用されています。

各パターンの詳細解説とアセスメント例文

ここからは11パターンそれぞれについて、「パターンの定義」「収集する情報」「アセスメント例文」を解説します。例文は糖尿病で教育入院中の60歳男性(Aさん)を想定しています。

パターン1:健康知覚-健康管理パターン

定義:自分の健康状態をどう認識し、どのように健康管理を行っているかに関するパターンです。疾患への理解度、受診行動、服薬管理、生活習慣への意識が含まれます。

収集する情報:既往歴、現病歴、健診受診状況、服薬状況(自己管理の有無、飲み忘れの頻度)、喫煙・飲酒歴、アレルギー歴、予防接種歴、疾患に対する認識(「自分は病気だと思うか」「治療の必要性をどう考えているか」)

アセスメント例文:

「Aさんは5年前に2型糖尿病と診断されたが、自覚症状がないことから『大した病気ではない』と認識しており、内服薬の自己中断を3回繰り返している。HbA1cは9.2%と血糖コントロール不良の状態であり、今回の教育入院に至った。健康診断は職場の年1回の定期健診のみ受けており、眼科受診(糖尿病網膜症のスクリーニング)は行っていない。喫煙は20本/日×35年(ブリンクマン指数700)。健康知覚としては疾患の重大性の認識が不足しており、セルフケア行動が不十分である。合併症予防のための自己管理能力の向上が看護上の課題である。」

パターン2:栄養-代謝パターン

定義:食事・水分の摂取状況と、体内での栄養の代謝に関するパターンです。食事内容、食欲、体重変動、皮膚・粘膜の状態、検査データ(アルブミン値、血糖値等)が含まれます。

収集する情報:食事摂取量、食事内容(偏食、間食の有無)、食欲、嚥下機能、義歯の有無、身長・体重・BMI、体重の変動、皮膚の状態(乾燥、浮腫、褥瘡)、口腔内の状態、検査データ(TP、Alb、HbA1c、血糖値、電解質)、水分摂取量

アセスメント例文:

「Aさんは身長170cm、体重82kg、BMI 28.4で肥満度Iに該当する。食事は『お腹いっぱい食べないと気が済まない』と話しており、自宅での食事量は1食あたり約800kcalと推定される。間食として毎日菓子パン1〜2個を食べる習慣がある。入院前のHbA1cは9.2%、空腹時血糖212mg/dLであり、血糖コントロールは不良である。入院食(1,600kcal/日の糖尿病食)には『少ない、物足りない』との発言があり、食事療法のアドヒアランスに課題がある。TP 6.8g/dL、Alb 3.9g/dLで栄養状態は保たれているが、過剰摂取による肥満と血糖コントロール不良が問題である。」

パターン3:排泄パターン

定義:排尿・排便・発汗など、体外への排泄機能に関するパターンです。

収集する情報:排尿回数・量・性状(頻尿、残尿感、血尿)、排便回数・量・性状(便秘、下痢)、失禁の有無、下剤使用の有無、腹部の膨満、腸蠕動音、ストーマの有無

アセスメント例文:

「Aさんは排尿回数が日中8〜10回、夜間3回と頻尿があり、多飲多尿は糖尿病による高血糖の影響と考えられる。排便は2〜3日に1回で硬便傾向にある。自宅では酸化マグネシウムを頓用で使用している。腹部は軽度膨満あり、腸蠕動音は正常。排泄パターンとしては、高血糖に伴う浸透圧利尿による頻尿と、食物繊維の摂取不足および運動不足に起因する便秘傾向が認められる。」

パターン4:活動-運動パターン

定義:日常生活動作(ADL)、運動習慣、余暇活動に関するパターンです。呼吸・循環機能も含まれます。

収集する情報:ADL自立度(移動、入浴、更衣、食事、排泄)、運動習慣(種類、頻度、時間)、バイタルサイン(脈拍、血圧、呼吸数、SpO2)、呼吸状態(呼吸困難、咳嗽)、筋力、関節可動域、余暇活動

アセスメント例文:

「AさんのADLは全て自立している。バイタルサインはBP 148/92mmHg、HR 76/min、RR 18/min、SpO2 97%。血圧は高め。運動習慣は『仕事がデスクワークで、特に運動はしていない』とのことで、通勤は車で片道10分、歩行は1日2,000歩程度と推定される。余暇はテレビ視聴が中心。運動不足は肥満と血糖コントロール不良の一因であり、運動療法の導入と継続が課題である。入院中の活動制限はないため、病棟内ウォーキングから開始し、退院後に継続できる運動プログラムを計画する必要がある。」

パターン5:睡眠-休息パターン

定義:睡眠の量と質、休息の取り方に関するパターンです。

収集する情報:就寝時刻、起床時刻、睡眠時間、中途覚醒の有無、入眠困難の有無、睡眠薬の使用、日中の眠気、休息の取り方

アセスメント例文:

「Aさんは就寝23:00、起床6:30で睡眠時間は約7.5時間だが、夜間頻尿のため3回覚醒しており、睡眠の質は低下していると考えられる。『朝起きてもすっきりしない』との訴えがある。睡眠薬は使用していない。夜間頻尿は高血糖の改善に伴い軽減する可能性があるため、血糖コントロールの状況と合わせて睡眠状態の変化を観察していく。」

パターン6:認知-知覚パターン

定義:感覚機能(視覚、聴覚、触覚、痛覚等)と認知機能(記憶、判断力、理解力)に関するパターンです。

収集する情報:視力(眼鏡使用)、聴力(補聴器使用)、疼痛の有無と程度(NRS)、しびれの有無、意識レベル(GCS/JCS)、認知機能(HDS-R/MMSE)、見当識、理解力

アセスメント例文:

「Aさんは意識清明で見当識は正常。眼鏡使用で矯正視力は右0.8、左0.7。聴力は問題なし。足先に軽度のしびれがあり、本人は『正座した後のような感じ』と表現している。このしびれは糖尿病性末梢神経障害の初期症状である可能性があり、神経伝導検査の結果と合わせて評価する必要がある。認知機能はHDS-R 28点で正常範囲であり、教育入院の学習内容の理解は可能と判断される。」

パターン7:自己知覚-自己概念パターン

定義:自分自身をどのように認識しているかに関するパターンです。自尊心、ボディイメージ、自己効力感が含まれます。

アセスメント例文:

「Aさんは『自分は健康だと思っていた。まさか教育入院になるとは』と話しており、入院という事実にショックを受けている様子がある。一方で『会社の部長として部下の手前、入院したことが知られたくない』との発言もあり、社会的役割と自己イメージの間で葛藤がある。自己効力感については『食事制限は今までも何度かやったけど、続かなかった』と過去の失敗体験を語っており、セルフケアに対する自信が低い状態である。小さな成功体験を積み重ねることで自己効力感を高める関わりが必要である。」

パターン8:役割-関係パターン

定義:家庭・職場・社会における役割と、他者との関係性に関するパターンです。

アセスメント例文:

「Aさんは会社員(部長職)で、妻と2人暮らし。子供2人は独立している。食事は妻が調理しているが、Aさんが『味が薄いと文句を言うので、結局普通の味付けにしている』と妻が話しており、家庭での食事療法の実施にはキーパーソンである妻の協力と理解が不可欠である。仕事は忙しく、昼食は外食(定食屋やコンビニ弁当)が中心。取引先との会食も月に3〜4回あり、飲酒機会も多い。退院後の食事療法は、家庭内の食事だけでなく外食・会食場面での選択行動も含めて指導する必要がある。」

パターン9:セクシュアリティ-生殖パターン

定義:性に関する満足度、生殖機能に関するパターンです。

アセスメント例文:

「Aさんは60歳男性。このパターンに関する直接的な訴えはない。ただし、糖尿病の合併症として勃起障害(ED)が生じることがあるため、患者からの相談があれば対応できるよう情報提供の準備をしておく。現時点では本パターンにおいて顕在的な看護上の問題は抽出されない。」

パターン10:コーピング-ストレス耐性パターン

定義:ストレスへの対処方法と、ストレスに耐える力に関するパターンです。

アセスメント例文:

「Aさんのストレス対処法は『飲酒』と『食べること』が中心であり、これらは糖尿病の悪化要因と一致している。仕事のストレスを感じた時に『帰りに一杯飲んで帰る』『甘いものを食べると落ち着く』と話しており、ストレスコーピングが疾患管理と相反する状態にある。健康的なストレス発散方法(ウォーキング、趣味活動等)を一緒に探索し、代替コーピングの獲得を支援する必要がある。」

パターン11:価値-信念パターン

定義:人生で大切にしていること、信念、宗教、倫理観に関するパターンです。

アセスメント例文:

「Aさんは『仕事第一。定年まであと5年、会社に迷惑はかけられない』と語っており、仕事に対する責任感が非常に強い。宗教上の制約は特にない。治療に関しては『入院は仕方ないが、できるだけ早く退院したい』との希望がある。仕事への強い価値観は治療への動機づけとして活用できる。「合併症で仕事ができなくなることを防ぐために、今ここで血糖コントロールを学ぶ」というフレーミングが効果的と考えられる。」

ゴードンとヘンダーソンの違い

看護学生からよく聞かれる質問が「ゴードンとヘンダーソンはどう違うの?」です。結論から言うと、どちらも看護アセスメントの枠組みですが、視点とアプローチが異なります。

  • ゴードン(11の機能的健康パターン):健康のパターン(傾向)を分析する。パターンが「機能的」か「機能不全」かを判断し、機能不全のパターンから看護診断を導く。NANDAの看護診断体系と直結しており、看護診断を用いるアセスメントに適している
  • ヘンダーソン(14の基本的ニード):人間の基本的なニードが充足されているかどうかを評価する。未充足のニードに対して看護援助を計画する。「患者ができないことを看護師が補う」という考え方が基本にある

実習でどちらを使うかは学校の方針によります。ゴードンの方がより包括的で、心理社会的側面(自己概念、コーピング、価値-信念等)のアセスメントが充実しているため、看護診断を重視する教育機関ではゴードンが採用される傾向があります。

アセスメントの書き方のコツ3つ

11パターンのアセスメントを書く際に、看護学生が特に意識すべきコツを3つ紹介します。

コツ1:「情報の羅列」で終わらせない

アセスメントでよくある間違いは、収集した情報を並べただけで終わってしまうことです。「体重82kg、BMI 28.4、HbA1c 9.2%」はデータであり、アセスメントではありません。データから「何が問題なのか」「なぜそうなっているのか」「看護としてどうすべきか」まで踏み込んで書くのがアセスメントです。

コツ2:「S情報」と「O情報」を区別して記載する

S情報(主観的データ)は患者の言葉をそのまま「」で記載し、O情報(客観的データ)はバイタルサインや検査値などの数値データを記載します。アセスメント文の中で両方を明確に使い分けることで、根拠のある分析になります。

コツ3:パターン間の関連を意識する

11パターンは独立しているのではなく、相互に関連しています。例えば栄養-代謝パターンの過剰摂取は、コーピング-ストレス耐性パターンの「食べることでストレス発散」と関連していることがあります。パターン間の関連を見つけることで、表面的な問題の背景にある本質的な課題を抽出できます。

まとめ|11パターンで全人的アセスメントを実現する

ゴードンの11の機能的健康パターンは、患者の身体的・心理的・社会的・スピリチュアルな側面を体系的にアセスメントするための強力なフレームワークです。最初は11パターン全てを埋めるのが大変に感じるかもしれませんが、繰り返し使ううちに「このパターンではこの情報を集める」という引き出しが増え、効率よくアセスメントできるようになります。

この記事で紹介した糖尿病患者の例文は一例です。患者の疾患や状況によってアセスメントの内容は大きく変わりますので、例文を「型」として活用しつつ、目の前の患者に合わせた個別性のあるアセスメントを心がけてください。

看護過程の書き方をさらに学びたい方は「看護実習の目標の書き方|診療科別の具体例30選」や「看護実習の報告の仕方|緊張しないコツとSBAR報告の例文」も参考にしてください。