訪問看護団体の2027年度介護報酬要望|夜間対応・処遇・情報連携の基準値を取る
団体要望は制度決定ではありません。改定を待ってから動くのではなく、現在の原価・処遇・夜間対応・情報連携の数値をそろえるための記事です。
2026年9月16日の第267回社会保障審議会介護給付費分科会で、日本訪問看護財団と全国訪問看護事業協会の提出資料が公表されました。資料は、2027年度介護報酬改定に向けた関係団体の要望です。加算の新設、要件変更、賃上げが決まった資料ではありません。
経営側が今行うべきことは、要望どおりに制度が変わると見込んだ先行発注ではなく、自事業所の処遇、夜間対応、地域別の採算、情報連携を同じ定義で測ることです。
要望・根拠データ・自社判断を分ける
| 論点 | 団体資料で示された内容 | 自事業所で取る基準値 |
|---|---|---|
| 看護職の処遇 | 病院と訪問看護の賃金差等を踏まえた評価を要望 | 年代・職種別給与、定期昇給、待機・出動手当、離職 |
| 地域別の継続性 | 人口規模による利用者数・経営差を提示 | 利用者数、訪問距離、移動時間、訪問別粗利、空き枠 |
| 夜間の初回訪問 | 現行要件では夜間等加算を算定できない初回訪問があるとして見直しを要望 | 時間帯、初回か継続か、出動時間、翌日勤務、手当 |
| 入院・入所時連携 | サマリー等の情報提供の評価を要望 | 作成時間、依頼元、提供先、手戻り、再照会 |
右列は制度上の必須項目ではなく、要望の採否に左右されず運用を見直すための編集部提案です。
分母の違う数値を一つの割合にまとめない
提出資料には、複数の調査・図表があります。調査ごとに対象と分母が異なるため、横並びの「訪問看護全体の実態」として合算できません。
たとえば、入院・入所時のサマリー等の情報提供については、図表で1,791事業所を対象とし、情報提供あり1,467、なし324と示しています。図表表記は「あり66.2%」ですが、単純に1,467を1,791で割った値とは一致しません。資料中の数値・割合の対応に不整合があるため、この記事では件数と掲載割合を併記せず、公表資料の図表に数値不整合があることを明記します。意思決定に使う場合は提出団体または今後の公表資料で訂正・補足の有無を確認してください。
同じ図表群では、情報提供の依頼元として、入院予定の病院等52.1%、依頼なしの自主提供26.7%、ケアマネジャー16.3%、入所予定施設4.0%、利用者・家族0.9%が示されています。これは依頼経路を表す資料で、情報提供による効果を証明する比較試験ではありません。
夜間初回訪問は「件数×時間×翌日勤務」で見る
資料は、緊急時訪問看護加算を算定している事業所でも、初回の夜間帯等の緊急訪問では夜間等の加算を算定できない現行要件があるとして、見直しを求めています。資料の調査は、2025年12月から2026年2月までの緊急訪問の状況を収集したものです。
制度要望を自社の給与改善へ直結させる前に、次を月次で取得します。
- 緊急訪問の時間帯と所要時間
- 初回訪問か、通常訪問のある利用者か
- 連絡受信から帰宅までの拘束時間
- 待機・出動・深夜等の手当
- 出動者の翌日勤務と休息
- 算定できた項目と、算定できなかった理由
これにより、報酬改定の有無と、現行の勤務設計で直せる課題を分けられます。看護職本人側の確認項目は訪問看護のオンコール手当・出動ルールガイドに整理しています。
地域差は売上だけでなく移動原価まで測る
団体資料は、人口2万人未満の自治体に所在する事業所では赤字事業所が半数を超えると整理し、地域規模別の利用者数や定期昇給の差を示しています。これを、特定地域の全事業所が赤字だという意味には使えません。提出団体の調査結果であり、調査対象・回答状況とともに読む必要があります。
自社では次の単位をそろえます。
- 利用者1人当たりの訪問回数と売上
- 1訪問当たりの移動時間・距離・駐車等費用
- キャンセル・緊急差込み・記録時間
- 地域別の採用費・欠員・応援配置
- 管理者、教育、オンコールを含む間接時間
利用者数だけで撤退・出店を判断せず、地域に必要な提供体制と、継続可能な原価の両方を確認します。
情報連携は件数より手戻りを測る
サマリーを「送った件数」だけでは、情報連携が機能したか分かりません。依頼から送付までの時間、再照会、欠落項目、二重入力、利用者・家族への説明、入院先での受領確認を分けます。
システム改修を検討する場合は、改定内容が確定する前に加算専用画面を作り込まず、現行の作成・確認・送信・受領の工程とデータ項目を先に棚卸しします。記録・連携工程の整理相談では、制度の採否を予測せず、現在の原価・手戻り・責任分界を整理します。
改定前の意思決定ゲート
| 判断 | 今行えること | 待つべき根拠 |
|---|---|---|
| 現状把握 | 原価、手当、時間、連携件数を同じ定義で記録 | 不要 |
| 業務改善 | 二重入力、連絡漏れ、翌日勤務を見直す | 現行法令・契約・就業規則を確認 |
| 報酬前提の投資 | 要件変更を見込む大規模開発・採用 | 答申、告示、通知、Q&A |
| 給与の約束 | 未決定の財源を前提に昇給を告知 | 経営判断と確定財源 |
この記事の確認範囲
- 会議・資料公表日:2026年9月16日
- 最終確認日:2026年9月19日
- 確認済み:第267回分科会資料、訪問看護関係団体の提出PDF
- 未確認:分科会の最終結論、2027年度改定の答申・告示・通知(未決定)
- 注意:提出資料の情報提供図表は、掲載された件数と割合が計算上一致しません