病院長・事務長向けトップマネジメント研修|医師の働き方改革を看護部と進める
研修参加をゴールにせず、タスク・シフト、支援職、DX、患者安全、職種別負担を同じKPIで管理する実務ガイドです。
医師の残業が減っても、看護師へ移れば病院全体では改善しない
厚生労働省の「医師の働き方改革 トップマネジメント研修」は、2026年7月から2027年2月までオンラインで開催されます。病院長、副院長、診療科長、事務長、働き方改革担当部門長など、医師の労務管理・働き方改革に関与する人が対象です。
研修は無料で、定員は各回150人程度。開催時間は14時から16時で、行政説明、医療機関の事例、質疑、ディスカッション等で構成されます。申込締切は原則として開催日の3営業日前ですが、定員で早く締め切られる場合があります。9月6日時点でも受付状況は回ごとに異なるため、公式ページで確認してください。
看護部を参加後に呼ぶのでは遅い
医師の時間外労働を減らす施策は、業務の移管先、時間帯、責任、教育、緊急時対応を変えます。看護部、医事、薬剤、検査、診療支援、情報、医療安全が企画段階から関与しなければ、別職種の残業や中断業務が増えるおそれがあります。
研修前に、次のメンバーで30分の事前会議を行います。
- 経営責任者
- 医師の働き方改革責任者
- 看護部責任者
- 事務・人事労務
- 医療安全
- 対象業務の支援職・コメディカル
- システム・データ担当
同じ画面で見る5種類のKPI
| 観点 | KPI例 | 判断すること |
|---|---|---|
| 医師 | 時間外、連続勤務、呼出、文書作業 | 対象業務が本当に減ったか |
| 看護職 | 時間外、中断、夜勤負担、応援 | 業務が移っただけになっていないか |
| 支援職 | 業務量、教育時間、欠員、離職 | 受け皿の能力を超えていないか |
| 患者 | 待ち時間、説明、連絡、事故・苦情 | アクセスと安全が悪化していないか |
| 経営 | 人件費、委託費、採用、稼働、算定 | 全体原価と持続性が改善したか |
職種別時間外だけでなく、一件当たり処理時間、差し戻し、確認待ち、夜間・休日への移動も測ります。
研修で持ち帰るべき質問
タスク・シフト/シェア
- 誰から誰へ、何の業務を移したのか
- 権限、責任、最終確認をどう分けたか
- 教育・認定・再評価に何時間かかったか
- 移管先の時間外と安全指標はどう変わったか
DX
- 入力と確認は何分減ったか
- 二重入力や例外処理は増えていないか
- 導入費だけでなく保守・教育・端末更新を含めたか
- システム停止時の代替手順を訓練したか
マネジメント
- 経営者が毎月確認する指標は何か
- 現場が停止・修正を提案できる条件は何か
- 取り組みを一部署から全院へ広げる判断基準は何か
参加後30日で実行する
- 3営業日以内:研修内容を自院の課題一つへ絞り、関係部署へ共有する
- 1週以内:現行業務を観察し、職種別の時間・中断・差し戻しを測る
- 2週以内:移管範囲、教育、責任、例外、中止基準を設計する
- 3〜4週目:一部署・一勤務帯で試行する
- 30日目:医師、看護職、支援職、患者安全、経営の5面で継続可否を決める
業務移管数や研修受講者数を成果にせず、病院全体の労働時間、安全、患者体験、原価の変化を成果とします。
申込前の確認
- 参加者が医師の労務管理・働き方改革に関与する立場か
- 医師リーダーと非医師管理者が一緒に参加・共有できるか
- 開催回の受付状況と3営業日前の締切
- 研修中のグループディスカッションへ参加できる環境
- 受講証明が必要な場合の出席要件
- 参加後30日の試行テーマと責任者
公式FAQでは、受講証明の発行に全体とグループディスカッションそれぞれ70%以上の出席が必要と案内されています。運用は変更される可能性があるため、申込時に最新情報を確認してください。
タスク・シフト候補の判定シート
候補業務ごとに、次の表を埋めます。「移せるか」だけでなく、移した後に病院全体で改善するかを確認します。
| 判定軸 | 確認する質問 |
|---|---|
| 目的 | 医師の何分・何件を減らし、患者の何を改善するか |
| 法令・資格 | 実施できる職種、指示、記録、最終責任は何か |
| 現行工程 | 依頼、実施、確認、差し戻し、例外はどこにあるか |
| 受け皿 | 移管先の人員、勤務帯、教育、端末、場所は足りるか |
| 安全 | 誤り・遅延を検知し、中止・エスカレーションできるか |
| 労務 | 職種別の時間外、中断、夜勤負担はどう変わるか |
| 経営 | 初期・運用原価と、確認できる効果は何か |
| 評価 | 基準値、試行期間、継続・中止基準は何か |
法令上の可否や施設基準は、対象業務ごとに院内の医療安全、法務、関係専門職が最新の通知・ガイドラインで確認します。他院の事例が自院でも同じ条件で実施できるとは限りません。
「看護師へ移さない」選択肢も比較する
医師業務の受け皿を看護師だけに限定しないでください。
- 医師事務作業補助者、病棟クラーク等へ移す
- 薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師等と役割を分ける
- 依頼・承認・予約の工程そのものをなくす
- テンプレート、音声入力、システム連携で重複を減らす
- 実施時間帯や患者動線を変える
- 集約部署を作り、病棟ごとのばらつきを減らす
候補ごとに安全、職種別負担、費用、実施速度を比較し、看護職への移管が最適な場合だけ選びます。
研修参加者の院内報告フォーマット
- 自院の課題と研修で確認できた事例
- 自院と事例施設で異なる前提
- 試したい一業務と対象部署
- 医師・看護職・支援職・患者・経営の基準値
- 必要な承認、教育、システム、予算
- 30日試行の責任者と中止基準
報告会で「良い事例だった」と共有するだけで終わらず、試行しない判断を含め、経営会議で次行動を決めます。
よくある質問
事務長や看護部長だけでも受講できますか
公式FAQでは、主な対象は病院長で、医師でない管理者も受講可能と案内されています。ただし、可能なら院内の医師リーダーと一緒に参加することが推奨されています。申込時は最新の対象条件を確認してください。
どの開催回を選んでも内容は同じですか
行政説明など共通要素がありますが、事例発表を担当する医療機関は回によって異なります。自院の課題に近い事例と受付状況を公式ページで確認します。
受講証明が目的でもよいですか
証明が必要な事情はあり得ますが、出席だけでは自院の業務は変わりません。申込前に一つの課題と基準値を決め、参加後30日以内の試行または見送り判断まで予定してください。
次の一手
病院経営・労務改善を相談するでは、研修で得た事例を、自院の業務一覧、職種別KPI、30日試行計画へ変換します。看護職の勤務環境改善チェックもあわせてご活用ください。