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Safety-IIと実装科学で医療安全を変える|現場の気づきを標準手順へ

事故原因を調べるだけでなく、難しい状況でも安全にできた条件を組織へ残す。Safety-IIを従来の事故分析と対立させず、8段階で実装します。

「うまくいった理由」は、放っておくと個人の経験で消える

医療安全では、事故・インシデントの原因を分析し、再発防止策を作ることが欠かせません。一方、忙しい、情報が不足している、予定外の変化がある状況でも、現場は日々の調整によって安全を保っています。その成功条件を集めなければ、経験者の異動や退職とともに失われます。

第30回日本看護管理学会学術集会の医療の質・安全学会合同企画では、Evidence-based Practiceの実装科学、Knowledge-to-Action、現場の違和感の可視化、Safety-IIが公式プログラムに掲げられました。

Safety-IIは、事故分析をやめる考え方ではありません。失敗から学ぶ仕組みに、通常業務や好事例から学ぶ仕組みを加えるものとして扱います。

気づきを標準手順へ変える八段階

1. 気づき・好事例を収集する

「危なかった」だけでなく、「なぜ今回は安全にできたか」を短い様式で集めます。記録の負担を増やさないよう、状況、行動、助けになった条件の三項目から始めます。

2. 発生条件を整理する

個人の能力ではなく、患者状態、時間帯、人数、情報、物品、環境、部門間連携を確認します。

3. 仮説と改善案を作る

「周知を徹底する」だけにせず、表示、配置、システム、役割、連絡経路など変更可能な要素へ落とします。

4. 小規模に試す

一部署、一業務、一期間に限定し、基準値、停止条件、責任者を決めます。

5. 標準手順へ反映する

例外条件、判断者、エスカレーションを含めます。理想的な状況だけで動く手順にしません。

6. 教育とシミュレーションを行う

説明を聞くだけでなく、夜間、欠員、機器停止など実際の難所を再現します。

7. KPIを監視する

実施率だけでなく、安全アウトカム、手戻り、負荷、中断、報告の質を見ます。

8. 再評価する

三十日・九十日後に、定着、形骸化、想定外の副作用を確認します。

Safety-IとSafety-IIを同じ会議で扱う

視点主な問い記録するもの
Safety-I何が起き、なぜ失敗したか事故、インシデント、逸脱、再発
Safety-II難しい状況でも、なぜ安全にできたか調整、支援、早期発見、回復、好事例

二つを対立させる必要はありません。同じ業務について、失敗条件と成功条件を並べると、標準手順で守るべき要素が明確になります。

好事例収集で避けたい失敗

  • 優秀な個人を表彰して終わり、再現条件を残さない
  • 報告件数を部署評価に使い、報告しにくくする
  • うまくいった結果だけを書き、必要な人数・時間・応援を省く
  • 現場の適応を前提にし、無理な運用を固定する
  • 手順改訂後の教育・監査・旧版回収を行わない

30分で始めるSafety-II実装チェック

  • □ 好事例・回復事例を報告できる入口がある
  • □ 患者、時間帯、人数、情報、環境を記録する
  • □ 報告を個人評価や処分へ安易に転用しない
  • □ 現場と管理者が仮説を共同で作る
  • □ 小規模試行の対象と停止条件が明確
  • □ 手順に例外とエスカレーションがある
  • □ 教育で実際の難所を再現する
  • □ 30日・90日の定着監査がある

次の一手

医療安全・業務標準化の整理を相談するでは、既存のインシデント報告を壊さず、好事例の収集から標準化までを設計します。再発防止提言を標準手順へ変える方法もあわせてご確認ください。

重大事故の報告、調査、患者・家族対応、法令上の手続は、Safety-IIの取組で置き換えられません。自院の医療安全管理体制と制度上の要件を優先してください。

参考資料