18歳の壁を越える成人移行支援|小児病院・成人診療・訪問看護の連携設計
18歳の誕生日に紹介状を送っても、成人移行は完了しません。診療・看護・生活支援が中断しない移行判定表と完了基準を整理します。
成人移行は「18歳で一斉に転科」する作業ではない
移行期医療は、小児を中心とした医療から成人を対象とする医療へ、ケアを切り替えていくプロセスです。転科はその一場面にすぎません。疾患、発達、意思決定への参加、地域の受入資源によって、開始時期も移行形態も変わります。
第15回日本小児在宅医学会学術集会では、移行期医療支援センター、成人医療機関との連携、訪問看護を含む看護連携、看護外来が扱われました。これは単一の正解が確立したことを意味するのではなく、複数機関で移行を設計する必要性を示す論点です。
最初に決める三つの基準
1. いつ準備を始めるか
18歳直前に一律開始するのではなく、疾患の見通し、本人の理解・意思表示、学校卒業、医療機器、福祉制度、成人診療側の受入条件から逆算します。年齢は入口であり、単独の開始基準にはしません。
2. どの移行形態にするか
- 成人診療科へ全面的に移る
- 小児科と成人診療科が一定期間併診する
- 疾患別診療は小児科、成人期合併症は成人診療科が担う
- 地域のかかりつけ医・訪問診療と専門病院が分担する
選択理由と見直し日を記録し、「受入先が見つからないため小児科継続」の状態を無期限にしないことが重要です。
3. 誰が移行完了を判断するか
紹介元だけで完了とせず、本人・家族、小児側、成人側、訪問看護、相談支援が必要な接続を確認できた時点で判定します。
移行プロセスを七段階にする
| 段階 | 確認すること | 未完了の例 |
|---|---|---|
| 1. 対象把握 | 年齢、疾患、医療的ケア、本人意思、生活変化 | 18歳到達者だけ抽出 |
| 2. 移行評価 | 診療、セルフケア、意思決定、家族支援 | 医学情報だけ評価 |
| 3. 受入照会 | 成人診療、訪問診療、救急、地域資源 | 紹介状送付後の返答なし |
| 4. 共同計画 | 併診期間、担当範囲、連絡方法 | 主治医が複数でも分担不明 |
| 5. 情報移管 | サマリ、薬剤、機器、急変、生活支援 | 古いサマリを一度送付 |
| 6. 試行 | 初診、処方、指示書、緊急連絡の実動 | 予約のみで利用未確認 |
| 7. 完了・再評価 | 受診継続、困りごと、受入不能時の代替 | 問題発生時の戻り先なし |
看護サマリに追加したい移行情報
通常の経過だけでなく、次を構造化します。
- 本人が理解している疾患・治療・ケアと、意思表示の方法
- 家族が担う手技と、本人・支援者へ移せる手技
- 人工呼吸器、吸引、経管栄養等の機器・消耗品・保守先
- 薬剤、アレルギー、禁忌、過去の急変パターン
- 平時・夜間・休日の連絡先と搬送先
- 訪問看護指示書の発行医、更新日、緊急訪問の条件
- 学校、福祉、住居、就労、相談支援の担当者
- 本人・家族が移行に不安を感じている点
情報を増やすだけでなく、誰がいつ更新するかを決めます。
移行完了の判定表
- □ 成人期の主担当と専門領域別の担当が合意されている
- □ 初回受診・処方・検査が実際に完了している
- □ 訪問看護指示書と緊急連絡が新体制で動く
- □ 医療機器・薬剤・物品供給が途切れない
- □ 夜間急変時の受入先と搬送条件が共有されている
- □ 本人が説明を受け、可能な方法で意思決定に参加している
- □ 家族の相談先とレスパイト等の生活支援が確認されている
- □ 受入困難・状態変化時の再調整責任者が決まっている
一項目でも重大な未接続があれば、移行完了ではなく移行中として管理します。
測るべきKPI
件数だけでなく、初回受診完了率、紹介から受入回答までの日数、処方・指示書の中断、救急時の情報不足、本人・家族の再説明回数、受入不能理由、再調整件数を測ります。これにより「紹介件数は多いが、実際にはつながっていない」状態を発見できます。
次の一手
成人移行・訪問看護連携を相談するでは、対象者一覧、移行段階、情報項目、完了基準を自院用に整理します。改正法の施行準備もあわせてご確認ください。
本記事は一般的な実務整理であり、特定年齢での転科や受入れを一律に求めるものではありません。診療方針、本人の意思、地域資源、各制度の要件を優先してください。